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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ムラを用水から見つめる⑤

2014-07-04 23:33:01 | 農村環境

ムラを用水から見つめる④より

 以前利用した西天竜周辺の取水量を「ムラを用水から見つめる③」に示したが、西天竜幹線水路を開設するにあたっては、これら周囲の取水施設に対して協定を結んで文書で交わしている。今風に捉えれば開田する土地には既存の水田以上に水がいることは容易に解ることではあるが、それでは周囲の既得権に影響する。したがって綿密な調査を経て水量を決定しているわけであるが、容易に解るのに西天竜の単位用水量が少ないということは、逆に捉えれば他の地域の水量には余裕があるとも考えられる。以前にも触れたように、西天竜ができた後、大規模な水争いが何度か繰り広げられた。取水量に対する制限はあっても、実質的に最上流に近いところで大量な取水が行われれば、河川の水位が下がり、下流域に影響が発する。今までとは違う状況が発生すれば、必ずと言って西天竜がその原因にされるのは致し方ないことだったのである。したがって、前回示した一覧でも解るように、東天竜の取水量が西天竜の3倍にもなるのに、東天竜は水不足を訴えたわけである。

 ここに県内の主要な土地改良区の単位用水量を示してみよう。

 佐久平土地改良区 1073ha 8.5m3/s 0.0079m3/s/ha
 五郎兵衛用水土地改良区 377.5ha 0.736m3/s 0.0019m3/s/ha
 美篶土地改良区 538ha 5.028m3/s 0.0086m3/s/ha
 春富土地改良区 1000ha(内畑139ha) 5.5866m3/s 0.0056m3/s/ha
 竜西土地改良区 1035ha(内畑170ha) 5.56m3/s 0.0054m3/s/ha
 勘左衛門堰土地改良区 295ha 2.781m3/s 0.0094m3/s/ha
 善光寺平土地改良区
  裾花川水系 306.7ha 3.08m3/s 0.0100m3/s/ha
  犀川水系 682.41ha 5.53m3/s 0.0081m3/s/ha

というような数値である(『長野県土地改良史 第二巻 土地改良区誌編』)。五郎兵衛用水は別にため池など補給用水施設によって補っている。また畑を含んでいる地域ではたいがい畑分の単位用水量は水田より低く設定している。これら数値と比較しても西天竜の0.0047m3/s/haという値はかなり低い数値と言える。ここからはあくまでも印象であって、取得されている水利権に対して異論を挟むものではない。西天竜の場合、受益エリア内で開田後にほ場整備をした面積は少ない。数十ヘクタール程度といったところで1割にも満たない。ようはかつての1反区画の水田が広がる地帯である。したがって比較的転作がされていない地帯でもある。水田が見渡す限り広がるといってもよいほど今なら緑の絨毯が敷かれているよう。それだけに用水を従来並みに利用していると言えるわけである。そして前回も触れたように、比較的浸透量が多い地域と考えられる。南箕輪村の大泉川周辺では扇状地特有の「川に水が流れない」光景を見ることは珍しくない。故に遠く岡谷から水を導水することになったわけであるが、そんな条件でありながら、現状を見る限り、水は絶えず流れ、流末にある小沢川に余分な水を落としているのである。ようは、けして他と比較して多くないこの条件下であっても、極端な水不足の印象を、今抱くことはないということである。これはため池に完全に依存している我が家の水利条件とはまったく異なるといっても間違いはない。

続く


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