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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

塩川原道祖神の屋根葺き替え

2025-01-24 23:55:09 | 民俗学

下ろされた昨年の屋根

ケヤキの根元の道祖神には松飾りで利用された注連縄が掛けられる

ケヤキの根元の道祖神屋根完成

道祖神の屋根完成

 

 明科に寒念仏を訪れた日からだいぶ日が過ぎてしまったが、寒念仏と一緒に行われていた道祖神の屋根葺き替えを記録しておく。寒念仏の日はサンクローの日でもある。午前9時に塩川原農業研修センター近くの水田に子ども達が集まるが、その前に各戸から松飾りを集めて歩く。軒数が少ないからそれほど多くの飾りが集まるわけでもなく、増量するために藁が使われる。このあたりでは山の木ではなく藁を使って増量するところが多いようだ。したがってそれほど大きな櫓にはならず、三角錐形にでき上った櫓は高さにして2メートルほどと小さなもの。真ん中に親柱を建てるのではなく、三方から竹を三脚風に組んで形作っていて、この形式もこのあたりのやり方のよう。

 サンクローの準備ができると、道祖神の屋根の葺き替えと、寒念仏のお堂の掃除のふたてに別れる。実際のところ子どもが少ないこともあって、屋根の葺き替えは子どもの親が近年はやっているよう。お堂の掃除も子どもというよりはおとながやっているのが実際のよう。

 塩川原には道祖神が何体もある。いわゆる双体道祖神もあり、屋根をの葺き替えをされていた方もそれが道祖神なのかどうかはっきりとした認識はされていなかった。もちろん道祖神であることは事実だが。とはいえ屋根付きの道祖神は、いずれも自然石ということもあって、認識が薄れているのも仕方ないのかもしれない。お年寄りにはなしを聞いた際にも、はっきりと道祖神であるということを口にされなかった。

 2箇所にある自然石道祖神は、いずれも近い位置にある。最初に屋根を葺き換えたのは天狗社のケヤキの根元にある道祖神である。小さな自然石であり、その道祖神に三角状に屋根を掛ける。桑棒に似た木を利用しているが、毎年同じところから採ってくるという。三角状に2方向からヤスで葺くもので、構造は簡単なもの。そのケヤキの木から北へ100メートルほど行った、河原に下りる道沿いの畑の脇に、やはり自然石の道祖神が祀られている。こちらの道祖神の方がケヤキの根元にある道祖神よりは大きい。したがってまさに小屋風に土地の傾斜を利用して2点支持された屋根組をして、その上にヤスを葺いていく。道祖神の屋根が葺き替えられると、「寒念仏」となるのである。もちろん寒念仏でこの道祖神もお詣りされる。


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