ある図書館へ平日の昼間訪れた。もちろん調べものに行ったわけだが、机でしばらく調べていると、まず高齢の女性がわたしの前にやってきた。本を読む風でもないが、落ち着きがなかったので「なぜなのだろう」と様子をうかがっていた。しばらくすると、今度は高齢の男性が手荷物を持って女性の横に座った。袋の中からアルバムのようなものを取り出して、机の上に出した。最初は女性は関係のないのかと思っていると、女性が小さな声を掛けていて、その様子から二人は夫婦だとわかった。女性も男性も、よそ行きの姿ではなく、まるで家の中で過ごしているのと変わりない格好のよう。普段着よりもさらに自宅着という感じ。机の上に持ってきた荷物を雑然と広げ、大きな机の上はその夫婦の持ってきたモノが広がっている。最初は図書館にある新聞を広げていた女性は、それを返すと編み物を始めた。男性の方は、写真の整理をしている。なるほどアルバムはそのため持ってきたのだ。編み物をしている女性を見て、男性の写真整理が終わるまで続けるのかと思っていると、間もなく編み物に飽きたようで、また違うことを始める。
このように夫婦は図書館にやってきたが、そもそも図書館の本を読みに来た風でもない。時は午後2時を過ぎ、疎とは炎天下。今日はどう見ても35度以上の暑さ。お二人は、家からここに避暑に来たのだろう。まるで自宅で過ごしているような動き。自宅に冷房がないのか、あるいは電気代を抑えるためにここに来たのか、そのあたりは定かではないが、もちろんこの夫婦に限らず、同じ意図で訪れている人がいるのかもしれないが、これほど図書館とは異なった空間を醸し出している姿はなかなか見たことがない。暑い夏が故の、唖然とする光景だった。
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