八月になると戦争の話が多くなる。
しかしながら第二次大戦を知る人たちが、かなりご高齢になって体験者の話と言うものが聞けなくなりつつある。
私の母方の祖父は大戦時、海軍の下士官だった。幼き頃より戦争の頃の話を聞いていたが、話をする時はいつも懐かしげで、それでいてそんなに暗い話は無かった。ただ辛い思い出もあるようで、亡くなった戦友の写真を眺めている時もある。
今も尚、健在で今年で95歳になる。規則正しい生活と、庭の軒先で家庭菜園に勤しむのが長寿の秘訣だと皆が言っている。
そんな祖父は懐中時計が好きで、いっぱい持っていたのだが壊れたものも多く、いらないからと言うことで貰った懐中時計を今も持っている。
この時計は貰った時から壊れている。動く時は動くのだが、動かなくなると動かなくなる。本当は本命のほしい時計があってそのバーターで貰ったのだ。しばらく会社の机の引き出しに入れっ放しだったのだが、一年ほど前、祖父と時計の話をしていたら、この時計は、戦時中オランダ(だったような?)の捕虜からいくらかの金銭とタバコと交換したものだと言う。
それを聞いたらなんか捨てるに捨てられなくなり、現在も机の引き出しにしまいっ放しである。たまにネジを巻いてやると気まぐれに動く。
その元捕虜さんは今も健在なら祖父と変わらない歳であろう。とりあえず保管している僕の戦争遺産(?)だ。
で、本当にほしかったのはこの時計でして、祖父の家に遊びに行くと祖父の机の上にこの時計はあった。別に何の変哲も無い懐中時計なのだが、なにか祖父の人柄を現しているような感じがして、文字盤が回転してしまって使えなかったのを、西一之江の江戸川区が誇る名店「ハナジマ」にて修理してもらった。
部品が無いということであきらめて新しいのを買ったらどうですか?と言われたが、「祖父から貰った時計だから直らなかったらあきらめる」と言ったら、時間はかかったが、職人さんを探してくれて直してくれた。
「おじいさんも、こんなに大事にしてくれてさぞかし喜んでいることでしょう・・・。」と店員さんがななめ45度上を見上げて遠い目をするので、僕はなんとも言いようが無かった。が、とりあえず「今度直った時計を見せにいってきます」と健在なことを付け加えておいた。
僕の戦争は祖父から聞いた話でしかない。でもいつもこの時期になると思うことがある。
人間誰しも若かりし頃を懐かしく想うものだが、あの時代の祖父もまた男として軍人として真っ盛りであったということは事実だ。そんな良い部分も負の部分の話も聞ける僕は恵まれていると思う。時計の話に戻るが、決して憎しみだけがあの時代では無いと僕は解釈しています。
八月は戦争について想うそんな月でもある。
2ne