偶然の出会いって?
「何の事?」
そんな質問がでること、間違いありません。
本人もびっくりしているのです。
誰かに,話さずにいられない気持ちです。
何時もの駅前の喫茶店の読書です。
池波正太郎の著書「食卓の情景」を読んでます。
この書籍は昭和55年4月発行です。
当時の懐かしい場面が、詳しく書かれている箇所があります。
「とんき」
ご存知ですか?
山手線目黒駅近くにあります「トンカツ屋さん」です。
美味しいと評判のお店です。
岩波正太郎さんが、「とんき」のカツレツをはじめて口にしたこと
そして、お店の事、オヤジさんや女将さん、若い女の子の溌溂とした従業員のこと
偶然の出会いです。
嬉しくて、懐かしくて何遍も読み返しました。
その文章の行間に次から次へと、懐かしい思い出が重なります。
こんな感動って、そんな頻繁にあるものではありません。
「とんき」とのご縁は、その息子さんと学友になったこと。
苦学生のころ、お店に招待されました。
その時頂いた、トンカツの味は一生涯忘れられません。
お店のオヤジさんとおかみさんは田舎の親父とお袋といった感じ。
オヤジさんはトンカツを油鍋からの「揚げ方」専門職。
揚がったトンカツに包丁を入れて、皿に盛り付け役は一番弟子。
おかみさんは注文取り専門。
そして若い女の子の溌溂とした動作。
この店で働く若い女性スタッフは皆、新潟の人。
おやじさん、おかみさんの故郷です。
店内はカウンター席のお客さんの後ろに、何重もの行列。
待つことも苦にならない雰囲気が漂ってます。
苦学生を卒業して、会社務め。
時々、同僚や今の家内と食事に伺うと
おかみさんが飛んできて、注文より先にご挨拶されます。
学友の息子は、その店へ弟子入り。
「揚げ方」専門職までには何十年かかるとの事。
一番弟子、二番弟子それぞれ暖簾分けして独立、
その後を任される職人の世界に学友は仲間入りした。
御曹司と言えども、特別待遇は許されない。
あれから、50年が過ぎた。
駅前の喫茶店に、家内が立ち寄りました。
読書の偶然の出会いの感動を告げる。
「今度、目黒のとんきに食事に行こう!」
中々、良い女房だ!
これも感動ものです。