uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】 第29話 『COP28』国際会議

2024-01-06 06:46:25 | 日記

 日本は地球環境問題に取り組むべく、ほぼ2年に一回のペースで『GEA国際会議』を開催、更に温室効果ガス削減を議題とした『コップ28』の検証と課題克服に積極的な立ち位置を築いてきた。

 

『気候変動に関する国際連合枠組条約』(1994)発効以降、『京都議定書』(1997)にて、まず先進国が温室効果ガス削減に署名。

 その後途上国を巻き込み、全世界的な取り組みに規模を拡大した国連気候変動枠組み条約締約国会議(通称COP)として毎年開催。

 COP24『パリ協定』(2015)にて実施ルールを採択、現在は『コップ28』に発展、具体的対策の推進と問題解決に向けた対応を話し合う機会となっている。

 

 COP25(2019)に於いて〇泉〇次郎環境大臣の行った消極的な演説に対し、国際環境NGOが「化石賞」を贈るなど、誠にふざけた対応を見せてきたことからも分かる通り、この件に対しても国際社会は決して真面目に取り組んでいるとは、残念ながら言えない。

 

 真剣そうに見えるのはポーズだけで、誰も自分の身に降りかかる深刻な状態と考えていないから。

特にEU諸国は伝統的な白人至上主義的差別主観を持ち、自分たちの遅々として進まない現状を棚に上げ、一番環境保全技術開発に取り組む日本を揶揄する姿勢を見せ、笑いものにする時点で真剣とは言えないのだ。

 

 〇泉〇次郎環境大臣も馬鹿正直に、技術的裏付けのないテーマを排除した取り組み内容しか示さず、化石燃料依存を今後も継続するなんて言っちゃったから批判されても仕方ないが。

 

 実際はその時点で既に日本は新たな技術開発が進み、世界をリードしていた。

 特に水素燃料の実用化の分野では生産技術は確立され、残りはサプライチェーン・マネジメント(原材料の調達から最終目的地への配送までの製品やサービスに関連する商品、データ、財務の流れを管理すること)の確立を、どのように達成するか、までこぎ着けている。

 サプライチェーン体制の確立は民間企業単体では実現は極めて困難であり、本来なら国家主導で推進するべきであった。

 だがネット政変以前の政府はご承知の通り、何もしない・考えない木偶の坊だったため、COP25 で発表できなかったのである。

 けれどもネット政変以降、歴代内閣は最優先事項として環境整備にあたってきた。

 

 しかしこの取り組みは、日本一国で全世界をカバーできる訳ではない。

 いくら持続可能な取り組みの目玉技術であっても、中国を筆頭に、インド、アメリカ、ロシアなど取り組みの足を引っ張る戦犯国を動かす事が出来ない限り、実現は不可能なままなのだ。

 それに加えてポーズだけのEUは更に曲者くせもの

 実は真剣に取り組んできたと言えるのは、日本だけかもしれない。

 このままでは孤軍奮闘・孤立無援の結果に終わるかもしれない、そんな瀬戸際にあった。

 

 そんな訳でCPO28では日本代表として、平助が乗り込み演説する事になる。

 これは極めて異例ではあるが、本来の話者である環境大臣というポストでは、インパクトと注目度に限りがあり、成果が期待できないための措置であった。

 

 

 

 

   平助の演説

 

 

 皆様ご承知の通り、温室効果ガス削減は世界各国が合意したにも関わらず、遅々として進まない状況にあります。

 我が国は以前、この場での消極的発言を含む内容の演説をしたため、名誉ある【化石賞】を頂きました。(きつい皮肉だけど、誰も理解していなかった)

 しかし、その後も含め、一体誰が(どの国が)実際に効果ある対策を打ち出せたのでしょう?

 あなた方は本当に真面目に取り組んできたと、胸を張って言えますか?

 上から目線で物を云う割には、何もしない。

 そんな事で良いのでしょうか?

 異常気象は待ったなしの状況まで人類を追い込んでいます。

 ただ人の批判をするだけでまともに行動せず、座して死を待つつもりでしょうか?

それならば仕方がない。

 人類は滅んでしまうべきでしょう。

 

 他国を脅し貪るだけの国や、戦争に明け暮れ殺戮を楽しむ国、自国では何の努力もせず、ただ支援に頼るだけの国。

 自国は開発途上にあるのだから、大目に見ろという国。

 

 

 さあ、座して死を迎えてください。

 

 

 それが嫌なら、もっと真剣に考えてください。

 

 我が国日本は、有効な具体策を提示できます。

 水素燃料は温室効果ガスを全く出さない、次世代の技術であり、持続可能な資源です。

 そして我が国はそのサプライチェーンを提供する用意があります。

 ただ言葉だけで何もしない国の皆さん、どうか助かりたいならこの技術を受け入れ、一緒にこの危機を乗り越えませんか?

 

 それが嫌なら、どうぞ戦争でも脅しでも好きにしてください。

 どうせ人類は滅びる運命を選んだのですから。

 

 

 

 

 この演説は激しい反発と反響を呼んだ。

 

 我が国を馬鹿にするのか!

 偉そうに言うな!間抜け面の有色人種のくせに!

 

 あまりのふてぶてしさと挑発的な演説に、それが大勢を占める反応であった。

 

 であるにしても、先を見据えた考えを持ち、素直に賛同できないのか?

 だが時が経つにつれ、冷静な判断ができるようになった者たちから平助の呼びかけに応えるべきだ!との動きが起きる。

 次第に各国の情勢は、化石燃料から日本の技術提供を受け、水素燃料に転換しようとの考えが主流となってきた。

 

 今後はまだ、どう動くか分からない。

 頭の凝り固まったトップが治める国ばかり。予断は許されない状況に変わりはないから。

 でも平助の演説が、国際社会に一筋の光明を指示したと誰もが思った。

 

 狡猾で一筋縄ではいかない各国首脳たちに、ワザと挑発的な演説をぶった平助。

 ただ正攻法で説得を試みようとしても、暖簾に腕押し・小馬鹿にされるのが落ちだから。

 その狙いが効果を発揮し出したのを自国で固唾を呑んで見守った官邸のメンバーから、安堵の表情が見られるようになった。

 

 

 帰国した平助は、出迎えた面々から歓声と歓待を受ける。

 

 特にカエデからは。

 

 何を思ったか、カエデが自ら進んでいきなり平助に抱きついた瞬間、当の平助も目撃した仲間たちも飛び上がる程驚いた。

 

 カエデって、こんなに人目を気にしない女性だった?

 更に驚いた事に、カエデから進んでキスをしてきた。

「え!」

 誰もが同時に声にならない声を発する。

 そこに居た者たち全てが我に返った時、平助の締まりの無い顔が更にとろけるような垂れ目になっている事に気づく。

 口元からよだれを流さんばかりの平助を見て、さすがにカエデも引いてくる。

「平助!その助平スケベ丸出しの締まらない顔を何とかしなさい!ヨダレが出てるでしょ!恥ずかしいわね!」

「締まらない顔じゃないし!ヨダレなんか流してないし!

それに『お帰りなさい、私の大好きな愛する平助さん!』だろ?」

「な・な・な・何を言ってんの!『私の大好きな愛する平助さん?』バッカじゃないの!」

 思い切り狼狽うろたえて見せたが、抱きついてキスまでした後じゃ、何の説得力もないし、誤魔化しも効かなかった。

 

 対照的に茫然と佇むエリカ。

 何だか勝負がついたみたい・・・。

 

 

「カエデ、明日はお前の誕生日だろ?45歳だっけ?プレゼントを用意してあるから明日の朝、僕のアパートにおいで。」

 卓球の素振りのように、パコーン!と平助の後頭部を豪快にシバくカエデ。

「お前って言うな!私は平助と同い年!!何度も何度もワザと間違えたフリするんじゃないわよ!」

 

 

 ついこの前も同じ光景を見たような・・・。

 

 ワンパターンで懲りないふたりであった。

 

 ふたりの世界に浸る平助とカエデ。

 対照的にエリカの表情には、何かの決意を思わせる雰囲気が漂ってきたのを強く感じた。

 

 明日は波乱の予感?

 

 

 

 

 

         つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第28話 地方議会

2024-01-03 06:33:19 | 日記

 ネット政変が起きる少し前、直接民主制を可能とするための憲法改正が行われた。

 それによりまず、国政単位で直接民主制の制度が確立、現在に至る。

 だが、地方議会はそうはいかない。

 間接民主制から直接民主制に移行するためには、住民の声を吸い上げ、公正に対処できる機関が必要になるから。

 その役割を地方議会と役所が受け持っていたが、国政同様、数々の問題を孕んでいた。

 

 

 間接民主制の議員は選挙で選ばれる。

 そこに問題があった。

 選挙に立候補するためには多額の選挙費用を要し、資金を持つ者、若しくは団体に所属していない者は、実質立候補できない。

 普通に暮らす庶民には憲法で保障されていながら、はなから立候補の権利すら存在しないのだ。

 では立候補できる者は、何故立つのか?そんなに多額の費用をかけてまで。

 それはうま味があるから。知意欲、名誉欲を満たせるから。

 

どんなに高邁こうまいな理想を持った者でも、資金を捻出できない者は議員の地位を維持できない。

余程の資産家であるか、潤沢な資金を持つ政治団体に所属し頭角を現さなければ、立候補できないのだ。

政変以前の令和5年頃、政治家の派閥パーティー券問題が明るみになり政権を揺るがす大問題になったが、そもそも資金を集める事が出来ない者は、議員でいられない。

そう云う背景の中でどうやって理想を燃やし、議員として生きてゆけと云うのか?

一定の政党に属し組織の論理に縛られる者に、本来なら議員個人が持っている筈の固有の理想や信念を貫ける仕組みが、一体何処にあるのだろう?

そんなものはどこにも無い。

所属組織や政党の論理、それらを超えた議会全体の論理が総て。

見えない束縛が存在する閉鎖社会でしかない。

 

また、それらを助長するのが政府官僚や、地方の役所を牛耳る高位役人たち。

何処の行政機関もタブーの政治的問題を多数抱えている。

それらの問題を議会が改善しようとしても、軋轢を生むだけ。

そもそも国会や地方議会、国の機関である省庁や地方の役所はズブズブの関係にあり、特に地方議会はそのものが自治体の一機関に過ぎないのだから、どうしたって限界がある。

もし理想に燃えた議員が当選したとしても、タブーに触れた途端、議会組織または役所の行政組織に潰される。

議員として生き残るには組織の論理に妥協し従順になるか、さもなくば議員を辞めるしかない。

つまり現在の議員たちは、総てそうした世界の中で生き残る、汚れた存在なのである。

 だからネット政変以前の旧社会では、私利私欲に溺れプライドの高いロクデナシしか議員を目指さないし集まってこなかった。

 特に国政に於いては、こうしたロクでもない議員や高官が国を危うくし、国民を苦しめる結果を招いてきたのをこの国に生きる全ての者たちは目撃し、体験してきた。

 その反省と怒りからネット政変は起こり、国政改革が行われた。

 

但しその制度改革が地方行政にまで及んでいるのか?と云うと それはまだ途上にあり、否としか言えない。

 

現状、直接民主制を構築出来ているのは、都道府県議会で全自治体の約半分、市町村議会では政令指定都市のみである。

残りは過疎などの人口減少や、組織規模自体が小さく、直接民主制を支える人的基盤が無い。

故に未だ地方では間接民主制が健在であり、土地の有力者が幅を利かせ、特権が維持されている現状は否めなかった。

 

早急に組織統合やAIを活用した意見集約システムを構築し、直接民主制を推進しなければならないが、そこでも旧体制派が改革の動きを阻み、力を維持しつつ改革を阻害してきた。

自分達の利権や特権を、みすみす手放すバカはいない。

彼らも必死なのだ。

 

人材が不足し、立候補者を定数ギリギリまでしか集める事が出来ない地方議会では、選挙を行わない無投票当選が散見するが、これは有権者にとって自殺行為に等しい。

選挙を行わず、総ての議員が決まると云う事は、議会は誰も有権者の投票による支持を得ていないと云う事。

つまり議員としての資格・根拠が無いのに、条例などの立法や行政に権限を手にしていると云う事になる。

確かに定数立候補の場合、選挙を行わず議員を決める事は法で定められている。

だがそれは、選ばれた者しか実質的に立候補できない仕組みが醸造されているからである。

例えば立候補者が定数なので、このままでは候補者全員が無投票当選となる場合、一般人であるあなたは、異を唱え立候補しますか?できますか?

どんなに不満を持っていても、自分個人に力が無ければ支持基盤も供託金も出せないのだ。

 

更にそうした閉じた社会に居る議員や高官は、その地位に長くいると、権益が一致する特権階級同士癒着し必ず腐敗する。

だから同じ地位に長くいてはいけない。

その地位にうま味を持たせてはいけないのだ。

 

 

この国の国や地方選挙における投票率は、非常に低い。

 

選挙に関心が無い。

投票しようと思う候補者がいない

政治なんて難しくて分からない。

どうせ自分の一票なんて、何の影響も持たない無力な権利だと思う。

投票に行くのが面倒くさい。家の中でゲームしたり、のんびりテレビを見ていたい。

今日は雨(雪や嵐、風が強い)だから外に出たくない。

 

それ等が投票を棄権する主な要因である。

 

その結果この国をここまで落ちぶらせたのは、汚れた議員に投票した者たちと、投票すら棄権する無関心層に責任があると言える。

 

だから自ら積極的に政治に参加する事が罪滅ぼしになり、国勢復活に繋がる。

その事に気づいた者たちが決起し、ネット政府を立ちあげた。

自分達の希望や意見を直接訴え、政治に参画する。

それこそが今考えられる最良の方法ではないのか?

 

 

そこで直接民主制に移行し、一般庶民が地方政治に参画するとはどういう事か?見てみたい。

 

それは市民(都道府県民)が、直接要望や意見を上奏するのが一般的な方法である。

 

具体例

 

最低賃金を上げろ

保育所を増やせ

道路・橋梁を補修、若しくは新たに建設しろ

年金から税金を取るな

PTA会費を公費から補填しろ

進学助成金をもっと充実させろ

(雪国などでは)除雪対策を徹底し、更にロードヒーティングを広く普及させろ

 水素燃料を使用して運転費用を抑えろ

 など。

 

 だが、それらの意見・要望を叶えるには財源が必要。

 増税せずに歳入を増やすには、どうする?

 広く案や意見を求め、積極的に検討、採用する。

 政治参画とはそう云う事。

 

 

 でも外交や経済の舵取りは、高度な判断を要求される別の話なんじゃないのかな?

 

 実は経済動向の判断は経済専門家やAIの見解を参考にできるし、外交はもっと簡単。国益を考えたら、やることは自ずと決まる。

 国際社会で平和共存と協調を図るなら、独善的であってはならない。

 隣の国みたいに自分の利益のみを追求し、他国を踏みつけにする行為は信用を失い、恨みを買う。

 人の欲求とは、平和で豊かな生活を継続させ、将来に於いても保障する事。

 それは国を問わず、何人なんびとにも共通する願いである。

 だとしたら対策も明快なはず。

 

 だから旧政界に巣食う魔界の主のような明晰な頭脳は、敢えて要らない。

 権謀術数や派閥の統率術などを弄する必要はない。

 必要なのは社会常識とモラル、責任感と正直さ。人間としての良心。途中で投げ出さない強い意思。

 能力としては、中高程度の学力(赤点ギリギリの平助の成績でも可)。

 

 それだけあれば十分理想的な人材なのだ。

 つまり平均的庶民で、不必要なトラブルメーカーでなければ誰でも適任と云える。

 だから会社勤めで可もなく不可もなく勤めてこられた平助などがそれに当たる。

 

 誰でもできる!情熱さえあれば!

 

 だからそれら(国民の要求)を実現するために行動する事が本来の政治であって、小狡い輩が無駄に難解にしてきたこれまでの政治は【まがい物】に過ぎない。

 その事に気づいた国民が政治意識に目覚め、ネット政変の原動力になった。

 

『誰にでもできる政府、誰にでもできる役職』それが見えないスローガンとなって今がある。

 

 

 そんな最中さなか、平助たち一行が前話(第27話)で記述のアニメテーマパーク候補地視察と銘打って、現地の温泉旅行に赴いた。

 

 当然受け入れ側の自治体は慌てて応対しようとする。

 

 だが、この旅行は公務とは言えない。

 あくまで視察と銘打っただけの私的旅行だから。

 だが県もそれぞれの市もそんな事を知ってか知らずか、表敬訪問を受けるものと期待し、問い合わせてくる。

 一国の首相が訪れるのだから仕方ない反応ではあるが、首相と云っても以前のような強い権限はないし、その地位も只の一年限りの役職に過ぎない。

 だから私的な旅行なのに歓待を受けるのは筋違いであり、色々と誤解を招くようなアクションをされるのは、返って迷惑であった。

 

 でもそれが内閣総理大臣であり、内閣官房長官や財務省主計局長なのだ。

 今まで経験してきた執務上の公務とは違う、利権の絡む場所での私的旅行は誤解を避けるためにも慎まなければならない。

 平助一行はこの時、立場を考えない軽率な行動であったと強く反省した。

 

 

 

 だけど・・・、とても楽しかったぁ。

 四角関係の微妙な空気が流れたが。

 

 旅行から帰ってきても、エリカの平助に対する対応が気になる。

 平助は相変わらず鼻の下を伸ばしたままだし、カエデはエリカをライバルとしてけん制しながらも、自らは政治の世界に深く関与するようになってきた。

 と云っても余計な口出しをするのではない。

 あくまでカエデは平助のご意見番なのだから表にシャシャリ出るのではなく、

 平助を支える姿勢に徹する事にしたのだ。

 午前中は鯖江さばえに学び、午後は首相官邸で積極的に雑用を受け持つ。

 そうしているうちに自然と政治の動向をカエデなりに見定め、自分なりの考えを持つようになってきた。

 元々賢いカエデ。恋の確執と平行しながら財務省庁や官邸で経験値を積み上げ、首相のサポート役として大いにその能力を発揮するようになる。

 

 

 

「なぁカエデ、お前最近ドッシリしてきたな。

 存在感が増してきたように感じるぞ。

 何で?」

「私をお前って言うな!

 それにドッシリ?存在感?私がデブになったっていうつもり?失礼な!!」

「いや、デブなんて言ってないし。

 何だか言葉に重みが出てきて、説得力が増してきたんじゃないか?って言いたいんだよ。」

「そりゃ、有能で美人の私だもの。当ったり前でしょ!

 今頃私の素晴らしさに気づいたの?だから平助は鈍感だって云うのよ。

 私に感謝しなさいよ。

 もうすぐ私の誕生日なんだから、心のこもったプレゼントを期待するからね。」

「アッ!そうか!!もうすぐカエデの誕生日だったな。

 いくつになるんだっけ?

 35?40?」

 

いきなり後頭部を思い切りシバかれる平助。

 

「誰が35よ!40よ!平助の同級生ってことは同い年でしょ!

 ワザとボケて怒りを買ってんじゃないよ!

 それに、本当に私の誕生日を忘れていたんじゃないの?

 白状しなさい!バカ‼!」

「ちゃんと覚えていたさ!忘れる訳ないジャン!」

「どうだか・・・。最近平助はエリカさんの事が気になるようだし。

 鼻の下を伸ばしちゃって、みっとも無いったらありゃしない。」

 微かに狼狽える平助。

「ぼっ、僕が秘書のエリカを気にしてるって?そんな訳ないだろ!

 彼女とは仕事以外の付き合いはないし。鼻の下も伸ばして無いし。

 生まれつきこんな顔だし。」

 ジトーとした目で覗き込むカエデ。

「怪しいなぁ~!なんか怪しい!でもいいわ、許してあげる。

 だから誕生日プレゼントは心のこもった豪華なものにしてね。」

「別にカエデに許してもらう筋合いはないし。

 それに僕は貧乏だから、安物しか買えないし。」

 

 

 本当はカエデにとって平助から貰えるプレゼントは、どんなものでも良かった。

 小学校の時から毎年くれるプレゼントを、宝物のように大切にしていた。

 どんな安物でも、カエデにとって世界一のダイヤモンドより価値があるから。

 例え大昔に貰ったオモチャのビーズ一個でさえも。

 

 

 

 

 

      つづく


ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第27話 日本発 巨大アニメテーマパーク

2024-01-01 10:18:16 | 日記

 ネット国民アンケートには救済を求める投稿の他、様々な意見が大量に集まってきた。

 それらはAIによって内容別・案件別等に分類され、ファイリングされる。

 そして要望の多い順にアンケート議題に上り検討、投票された。

 

 第四代平助内閣組閣当初から、ある案件が検討されていた。

 

 それは日本の宝であり、対外イメージを爆上げした功労者である『アニメコンテンツ』。

 そのテーマパークである。

 だがアニメコンテンツはインバウンド需要を満たす稼ぎ頭であるのに、今まで政治の世界では見向きもされてこなかった。誠に奇妙な事である。

 

日本の誇るアニメ文化。この分野でも誰かに忖度してきたのか?

 もしかしてアメリカが誇るウオルト・ディズニーの作ったディズニーランドに?

 はたまたこちらもアメリカは誇るハリウッド映画のユニバーサルスタジオが作ったUSJに?

 どちらもアメリカ資本だから、疑念が晴れる事は無いだろう。

 

 でも時代はネット政府に代わり、アメリカからの従属状態から脱却する途上にある日本。

 独立独歩の道を歩む旗頭として、相応しいテーマと云えた。

 

 あらゆる老若男女から高い支持を受け、外国人からも要望が多いアニメの殿堂テーマパークの建設は、ある意味悲願とも言える。

 ただ、今まで構想さえ表面化されなかったのは、誰も音頭取りをしてこなかったため。

 巨額の資金を要し、コンセプトの設定、用地の選定と取得、プロジェクト・リーダーを誰にするか?主要な交通手段をどうする?など、乗り越えなければならない問題が山積みだったから。

 

 公的な目的(例:国際会議場や競技場等)とは言えない施設、アニメに目的を絞った殿堂テーマパークを称するのだから、国や自治体主導はそぐわない。

 あくまで有志を募り、民間主導で進めるべきとの固定観念が邪魔をし、プロジェクトを立ち上げる事を妨げてきた。

 しかし機は熟している。今を置いて他に実現の機会はないだろう。

 

 そうした経緯と社会の空気が後押しし、政府主導のプロジェクトを立ち上げる事に成功した。

 元々この国は一部の国民の反対を押し切りオリンピックや、万博や何やらを開催、巨額の税金を投資し無駄に費やしてきた。

 お祭り騒ぎの後は記録と記憶の他、何も残らなかったのに。

 

 無神経に税金を無駄遣いできた旧政府。

 それなのに日本の至宝を生かそうとしない伝統は、将来にために必須なエネルギー開発や先端技術の育成や主要産業保護を故意に怠ってきた無能で国賊的怠慢体質が証明していた。

 

 だが、一発勝負のオリンピックや博覧会を実現させる力は健在だったのだから、それをテーマパークプロジェクト発足に尽力する事など、造作もない筈。

 実際、現在のネット政府がアンケートの結果、音頭取りをしプロジェクト委員会を発足させ、実現に大きく寄与している。

 しかもこのテーマパークは、一定の期間限定開催ではなく、恒久施設として建設する計画である。

 

 では建設にかかる費用の捻出は?

 

 旧政府の政治献金の資金源になる程、潤沢な財力を持つ財界・経済団体から湯水の如く資金を募り、イザという時の出資資金に対し政府が補償するという、いわば実質政府がバックの一大プロジェクトになった。

 

 建設地は?

 当初、立地条件として集客が容易な人口密集地域である、関東と関西の中間地点、静岡県が候補地となった。

 静岡県はリニアモーターカーと、新幹線の通過地点。

 それまでなにを思ったか、リニア建設に頑強に反対し、妨害工作に明け暮れた〇勝知事が退陣して以降一気に建設が進み、平助の代になりようやく開通の見通しがついたのも、有力候補地とした要因となった。

 そのため、候補地は二か所。

 新幹線沿線に近い伊豆方面と、リニア沿線に近い内陸。

 

 今現在は広大な用地を必要とする関係で、リニア沿線の内陸の用地取得が容易である状況を活かし一歩リード、優位に立っている。

 それに対し、新幹線沿線候補地は海の幸特産の強みを生かし、巻き返しを図った。

 どちらも国際的に知られた日本のシンボルの景勝地、『富士山』を背にした立地では共通する。

 平助内閣は、これらの条件を集約し、国民に新たな判断材料を提供、判断を仰ぐための準備を進めていた。

 

アニメパークのコンセプト。

 

 日本アニメの黎明期『凸坊新書帖 芋助猪狩の巻』(1917)『桃太郎の海鷲』(1943)『桃太郎 海の新兵』(1945)など桃太郎シリーズ等を網羅した短編・長編の独立上映館パビリオン。

 

 その他、テレビアニメスタート時の世界的大ヒット作『鉄腕アトム』(1963)放映以降、テレビアニメの第二黎明期が始まり、『鉄人28号』(1963)『オオカミ少年ケン』(1963)『エイトマン』(1963)『0戦はやと』(1964)『風のフジ丸』(1964)『ビッグX』(1964)『オバケのQ太郎』(1965)『ジャングル大帝』(1965)『おそ松くん』(1966)『レインボー戦隊ロビン』(1966)『魔法使いサリー』(1966)『サイボーグ009』(1968)等、この場に紹介できない程、数えきれない超人気作品が溢れた、時代ブース別パビリオン。

 

 それ以降の『宇宙戦艦ヤマト』(1974)シリーズ、『機動戦士ガンダム』(1979)、『新世紀ヱヴァンゲリヲン』(1995)(映画版含む)『ルパンⅢ世』(1971)などの他、実写・アニメ映画ヒーローの『ゴジラ』(1954)シリーズ、『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968)制作メンバーが『風の谷のナウシカ』(1984)を経てスタジオジブリ設立、それ以降『となりのトトロ』(1988)など一連の作品群などの独立パビリオンにて、迫力ある3D映像を駆使した演出を売りにする計画を発表している。

 この場では紹介しきれない程たくさんのアニメコンテンツがあるが、それら大小100をゆうに超える常設パビリオン・ブースだけでなく、その作品の世界を再現した街並みや、ジェトコースターなどの遊具。更に人気アトラクションを多数散りばめるなど、ディズニーランドやUSJに負けず、むしろ大きく上回る巨大施設として立ち上げる計画をぶち上げた。

 

 日本と云えば、代表的な施設は『アニメテーマパーク』と強く印象づけるような、訪れた人に夢と希望を等しく与える事をコンセプトにした、超大型プロジェクトである。

 

 さらに言えばこの巨大施設の周辺には、どちらの候補地も温泉歓楽街を有し、宿泊インフラは整備されている。

 こちらはゼロからの建設の必要はなく、新たな集客の結果、不足する分を新たに建設すれば良い。

 

 海外からのインバウンドに対する評価について、日本を現わす特徴として、

 

・美しい四季の移ろい、景勝地や神社・仏閣などの施設など、見るべき観光地が多い。

・『おもてなし』文化が根付いている。

・治安が良い。

・トイレがきれい。

・人が親切。

などで高い評価を受け、【行ってみたい国】第一位の人気を誇っている。

 

 それら全ての評価の特徴を全部併せ持ったテーマパーク建設は、今後の発展シンボルとして国策事業と云える。

 やらない理由など無いのだ。 

 

 だからそのプロジェクト始動に平助内閣が深く関わった事で、一般国民のみならず、特に閣内を含めたネット政府第四代世代全体のアニメ好きな面々が、飛び上がるように喜び沸き立った。

 

 

 

 

 平助は言った。

「近いうち建設候補地視察を目的に、実際の場所に行ってみたいな。」

それを聞いた鯖江さばえがすかさず口を挟む。

「 公費を使って行くのはダメよ!公私をわきまえなさいね。

 自分の欲を叶えるために税金を使うなんて以ての外!職権乱用ですからね!」

「別に公費で視察なんて言ってませんよ。

 最近多忙だったから、静養を兼ねて温泉旅行でもしたいな、って思っただけです。もちろん自腹でね。」

「それなら問題ないでしょ。

 でもね、前回の日帰りバス旅行の件もあるし、国民に誤解されるような行動は慎まないといけませんよ。

 あくまであなたは公の立場にある、総理大臣なんですからね。」

 

 ヤッパリ鯖江さばえはお目付け役のカエデより厳しい存在だな、と思った。

 そのカエデだが聞いた途端、一も二も無く賛成する。

「良いわねぇ~!私も絶対行きたいわ!行く!行く!是非そうしようよ!」

 これを聞いた平助はその助平な本性から、何か良からぬ考えが浮かび、ニンマリする。

 その微かでよこしまな表情の変化に、敏感に気づいたエリカもすかさず、

「そうね、少人数のプライベートグループで私的な視察ぐらいなら、してもいいと思うわ。」

 心の中で(チェッ!ふたりじゃないの?)と思った平助。

 ホントはカエデと二人きりで行きたいと思ったのに。

 

 エッ!二人で温泉に宿泊旅行?若い独身男女だけで?

 何とよこしまで邪悪な、平助らしい発想!

 

 エリカの発言によって、その企ては阻止された。

 と云うかこの発言は、エリカの企ての始動ともいえる。

 

 そうした訳で平助、カエデ、エリカ、田之上、SPの杉本、何故かおばちゃんの鯖江さばえまで公休を取り、この二泊旅行についてきた。

 くどいようだが、あくまで自費で。

 

 現地に到着するや否や、同行した男衆と真っ直ぐ温泉につかり平助は、

「いい湯だなぁ~」と鼻歌交じりに景色を眺めた。

 そしてその夜はもちろん海の幸、山の幸と素晴らしい景勝を堪能し、楽しいひと時を過ごし、親交を深める・・・・ハズだった。

 

 エッ?候補地選定の視察じゃないの?

 

 そんな目的、はなからどっかに吹っ飛んでいた。

 誰もその事に触れることなく楽しんでいる。

 

 そんな事で良いのか?

 

 知らん。

 

 

 二日目の夕方、温泉に浸かった平助が一足先に湯から出てくると、脱衣所外にカエデが居た。

「あら、平助、早かったのね。

 私も今出たところ。ここのお湯は肌にも良いんだって。」

 髪がまだ完全に乾いていないカエデの白いウナジを見て、ゾク!とする平助。

 ふたりで窓の外の夕日を眺めていた。

 暫くして女湯と男湯からガヤガヤと残りの面々が出てきて、

「何だ!平助さん、居ないと思ったらこんな所で逢引?何だか油断も隙もないなぁ~、ダメですよ、身勝手なスタンドプレーは!」

 杉本の言葉に他のメンバーも同調する。

「ヤダなぁ~、逢引なんて!そんな訳無いっしょ!湯に当たりそうだったから早めに出て来たら、そこに偶然カエデがいただけですよ。

 ただ皆が出て来るの、ふたりで待っていただけですから。

 ほら、コーヒー牛乳、美味しいですよ、皆で飲みましょう!」

 平助の取り繕いの言葉に騙される残りのメンバーだが、エリカただ一人騙されない。

 ジトォ~とした目で平助を睨み、

「私ももう少し早く出てくれば良かったなぁ~。」

 と言って田之上の腕をとり、

「さあ夕食よ!今夜は山の幸だったかしら?楽しみね!」と部屋の方向に歩き出す。

 突然のことで戸惑う田之上を、お構いなく引っ張るエリカ。

 

 一同唖然とするが、これはエリカの作戦?

 楽しい夕食も微妙な空気が流れていた。

 

 そしてその空気は、旅行が終わり日常業務に戻っても変わらず続く。

 

 あれ?くどい様だけど、テーマパークは?

 

 やはり知らん。

 

 

 

 

 

 

     つづく