日本は地球環境問題に取り組むべく、ほぼ2年に一回のペースで『GEA国際会議』を開催、更に温室効果ガス削減を議題とした『コップ28』の検証と課題克服に積極的な立ち位置を築いてきた。
『気候変動に関する国際連合枠組条約』(1994)発効以降、『京都議定書』(1997)にて、まず先進国が温室効果ガス削減に署名。
その後途上国を巻き込み、全世界的な取り組みに規模を拡大した国連気候変動枠組み条約締約国会議(通称COP)として毎年開催。
COP24『パリ協定』(2015)にて実施ルールを採択、現在は『コップ28』に発展、具体的対策の推進と問題解決に向けた対応を話し合う機会となっている。
COP25(2019)に於いて〇泉〇次郎環境大臣の行った消極的な演説に対し、国際環境NGOが「化石賞」を贈るなど、誠にふざけた対応を見せてきたことからも分かる通り、この件に対しても国際社会は決して真面目に取り組んでいるとは、残念ながら言えない。
真剣そうに見えるのはポーズだけで、誰も自分の身に降りかかる深刻な状態と考えていないから。
特にEU諸国は伝統的な白人至上主義的差別主観を持ち、自分たちの遅々として進まない現状を棚に上げ、一番環境保全技術開発に取り組む日本を揶揄する姿勢を見せ、笑いものにする時点で真剣とは言えないのだ。
〇泉〇次郎環境大臣も馬鹿正直に、技術的裏付けのないテーマを排除した取り組み内容しか示さず、化石燃料依存を今後も継続するなんて言っちゃったから批判されても仕方ないが。
実際はその時点で既に日本は新たな技術開発が進み、世界をリードしていた。
特に水素燃料の実用化の分野では生産技術は確立され、残りはサプライチェーン・マネジメント(原材料の調達から最終目的地への配送までの製品やサービスに関連する商品、データ、財務の流れを管理すること)の確立を、どのように達成するか、までこぎ着けている。
サプライチェーン体制の確立は民間企業単体では実現は極めて困難であり、本来なら国家主導で推進するべきであった。
だがネット政変以前の政府はご承知の通り、何もしない・考えない木偶の坊だったため、COP25 で発表できなかったのである。
けれどもネット政変以降、歴代内閣は最優先事項として環境整備にあたってきた。
しかしこの取り組みは、日本一国で全世界をカバーできる訳ではない。
いくら持続可能な取り組みの目玉技術であっても、中国を筆頭に、インド、アメリカ、ロシアなど取り組みの足を引っ張る戦犯国を動かす事が出来ない限り、実現は不可能なままなのだ。
それに加えてポーズだけのEUは更に曲者。
実は真剣に取り組んできたと言えるのは、日本だけかもしれない。
このままでは孤軍奮闘・孤立無援の結果に終わるかもしれない、そんな瀬戸際にあった。
そんな訳でCPO28では日本代表として、平助が乗り込み演説する事になる。
これは極めて異例ではあるが、本来の話者である環境大臣というポストでは、インパクトと注目度に限りがあり、成果が期待できないための措置であった。
平助の演説
皆様ご承知の通り、温室効果ガス削減は世界各国が合意したにも関わらず、遅々として進まない状況にあります。
我が国は以前、この場での消極的発言を含む内容の演説をしたため、名誉ある【化石賞】を頂きました。(きつい皮肉だけど、誰も理解していなかった)
しかし、その後も含め、一体誰が(どの国が)実際に効果ある対策を打ち出せたのでしょう?
あなた方は本当に真面目に取り組んできたと、胸を張って言えますか?
上から目線で物を云う割には、何もしない。
そんな事で良いのでしょうか?
異常気象は待ったなしの状況まで人類を追い込んでいます。
ただ人の批判をするだけでまともに行動せず、座して死を待つつもりでしょうか?
それならば仕方がない。
人類は滅んでしまうべきでしょう。
他国を脅し貪るだけの国や、戦争に明け暮れ殺戮を楽しむ国、自国では何の努力もせず、ただ支援に頼るだけの国。
自国は開発途上にあるのだから、大目に見ろという国。
さあ、座して死を迎えてください。
それが嫌なら、もっと真剣に考えてください。
我が国日本は、有効な具体策を提示できます。
水素燃料は温室効果ガスを全く出さない、次世代の技術であり、持続可能な資源です。
そして我が国はそのサプライチェーンを提供する用意があります。
ただ言葉だけで何もしない国の皆さん、どうか助かりたいならこの技術を受け入れ、一緒にこの危機を乗り越えませんか?
それが嫌なら、どうぞ戦争でも脅しでも好きにしてください。
どうせ人類は滅びる運命を選んだのですから。
この演説は激しい反発と反響を呼んだ。
我が国を馬鹿にするのか!
偉そうに言うな!間抜け面の有色人種のくせに!
あまりのふてぶてしさと挑発的な演説に、それが大勢を占める反応であった。
であるにしても、先を見据えた考えを持ち、素直に賛同できないのか?
だが時が経つにつれ、冷静な判断ができるようになった者たちから平助の呼びかけに応えるべきだ!との動きが起きる。
次第に各国の情勢は、化石燃料から日本の技術提供を受け、水素燃料に転換しようとの考えが主流となってきた。
今後はまだ、どう動くか分からない。
頭の凝り固まったトップが治める国ばかり。予断は許されない状況に変わりはないから。
でも平助の演説が、国際社会に一筋の光明を指示したと誰もが思った。
狡猾で一筋縄ではいかない各国首脳たちに、ワザと挑発的な演説をぶった平助。
ただ正攻法で説得を試みようとしても、暖簾に腕押し・小馬鹿にされるのが落ちだから。
その狙いが効果を発揮し出したのを自国で固唾を呑んで見守った官邸のメンバーから、安堵の表情が見られるようになった。
帰国した平助は、出迎えた面々から歓声と歓待を受ける。
特にカエデからは。
何を思ったか、カエデが自ら進んでいきなり平助に抱きついた瞬間、当の平助も目撃した仲間たちも飛び上がる程驚いた。
カエデって、こんなに人目を気にしない女性だった?
更に驚いた事に、カエデから進んでキスをしてきた。
「え!」
誰もが同時に声にならない声を発する。
そこに居た者たち全てが我に返った時、平助の締まりの無い顔が更にとろけるような垂れ目になっている事に気づく。
口元からよだれを流さんばかりの平助を見て、さすがにカエデも引いてくる。
「平助!その助平丸出しの締まらない顔を何とかしなさい!ヨダレが出てるでしょ!恥ずかしいわね!」
「締まらない顔じゃないし!ヨダレなんか流してないし!
それに『お帰りなさい、私の大好きな愛する平助さん!』だろ?」
「な・な・な・何を言ってんの!『私の大好きな愛する平助さん?』バッカじゃないの!」
思い切り狼狽えて見せたが、抱きついてキスまでした後じゃ、何の説得力もないし、誤魔化しも効かなかった。
対照的に茫然と佇むエリカ。
何だか勝負がついたみたい・・・。
「カエデ、明日はお前の誕生日だろ?45歳だっけ?プレゼントを用意してあるから明日の朝、僕のアパートにおいで。」
卓球の素振りのように、パコーン!と平助の後頭部を豪快にシバくカエデ。
「お前って言うな!私は平助と同い年!!何度も何度もワザと間違えたフリするんじゃないわよ!」
ついこの前も同じ光景を見たような・・・。
ワンパターンで懲りないふたりであった。
ふたりの世界に浸る平助とカエデ。
対照的にエリカの表情には、何かの決意を思わせる雰囲気が漂ってきたのを強く感じた。
明日は波乱の予感?
つづく