日々徒然です

カフェにようこそ!

月例食事会

2013-05-26 02:44:05 | 小説
会社の帰り道に、どこか懐かしい佇まいのレストランを見て、自然と足が向いていた。

あれから1年近くになるが、月に2、3回は通っている。

俺は、ホテルレストランのスーシェフ。
ここの所、忙しくてご無沙汰だ。息抜きには良い!ホッと出来る。
今日、お客様にアントレをお作りした。
お客様より、挨拶がしたいとの事でしたので、ご挨拶をさせて頂いた。
気に入って頂けたようで、お客様の声って良いな。

仕事が一段落し久しぶりにお気に入りのレストランへ!
最近、食べている人の顔が間近で見えている方が俺には合っているのかも・・・。こじんまりとしたアットホームなお店・・・。
そんな事を考えつつ。

レストランは定休日か?
3日間通っているがシャッターが閉まっている。おかしいな。
お店の前で偶然、シェフのお孫さんに会った。
聞くと、仕込み中に倒れて、軽い脳梗塞だとの事。入院を余儀なくされているようだ。
そのお孫さんから来週行われる食事会のお手伝いを頼まれた。
メニューも決まっていて、シェフも俺に頼みたがっていると、お孫さんから聞く。

食事会のお客様をお迎えする。
この方たちは!先日、ホテルレストランでご挨拶させて頂いたテーブルの方々だ。

デセールのメニューが無いが男の方々だからいらないのか?

早速、前菜から作らさせて頂く。

外野の僕達

2013-05-24 00:07:47 | 小説
ガストロミーノ「ルコンティ」今日もここは戦場だ。

最高の美食は最愛の人と囲むテーブル・・・。

あの人は今日もサードシェフの叱られています。
しゅんとして見えますが、背中は怒られているのが嬉しそうです。
厨房ではそうですが、フロアに出ると女性客に人気があります。かなりのイケメンです。
僕には何故か犬のゴールデンに見えてしまうのです。

最近、あの人はサードシェフの試食係りが自分ではなくなった事に、とても落ち込んでいます。
そこで励まそうと、ラーメンを食べに行きました。

僕じゃ力になれませんが・・・。
ラーメンを食べる時、湯気でメガネが真っ白になっているのを見て。
笑ってくれています。
嬉しいな!やっと笑ってくれている。
「俺がへこんでいたから誘ったの?」
「僕もお腹が空いていて」
「メガネ取っちゃえば?」
「わっ!」
なんだかジッと見られている気がしました。

何故か胸がいっぱいで食べ終わるのに時間が掛かりました。

サードシェフのレシピ

2013-05-21 00:26:43 | 小説
とある街に、その店はひっそりと佇む。
最高の美味をサーヴィスする。

俺はサードシェフに恋してる。
テリーヌは美味しかった、彩も綺麗で野菜それぞれの味や歯応えがしっかり残っていて魚介とのバランスも抜群で!
「ただ優等生のお堅いレシピ」そんな表現がピッタリだった。
実際に会ってみたくなった。
おじいちゃんの店に、あの人は居た。
お客様の要望で、メニューにないオーダーを受けてきた。
もちろん、サードシェフはカンカンだった。でも、あの人なら出来ないわけじゃない。きっとやってくれる。

「鮭のポワレ味噌と濃厚チーズ添え」を作り上げてきた。さすが!
お客様があの人の料理で満足そうな顔を見るのが、とても楽しい。
メニューにないオーダーもあの人なら難なくクリア出来る。そう思うと胸が高鳴る。
料理を作ることが本当に好きなあの人。

クリスマスメニューが決まらなくて悩んでいた時、試食係としてあの人の傍らに居た。
「俺の舌は信用してくれている」それだけで嬉しかった。
でも俺は舌だけでなく・・・。
あの人に「好きです。俺の恋人になって下さい。俺は、あなたの気持ちが欲しいのです」と告白した。
クリスマスの夜、全部の仕事が終わったら返事を聞かせてもらう事になった。
それがどんな答えでも受け止める覚悟でいる。
あの人はビックリしていたが、ちゃんと答えてくれる。
俺は、あの人の返事を待っている。

俺の天敵

2013-05-18 01:11:45 | 小説
とある街の片隅でひっそりと佇む知る人ぞ知るガストロミーノ「ルコンティ」

厨房では戦っています。
生意気なギャルソン・・・。あいつだけは許さない。
お客様に喜んでもらえる事!それが我々の使命!だけど・・・。
フレンチレストランに味噌風味のポワレ!魚貝のピッツァ!シャンツアイ入の粥!そんなのはメニューに無い。
だけど、あいつはお客様のご希望だと言い受けてくる。
メニューのバランスだってある。朝から仕込んでいる食材だってある。
それをあいつは、いとも簡単に変えてくる。

ヘラヘラしていてもサービスは完璧にこなす。あいつはギャルソンとしては一流だ。
それでもどうしても認めたくない。

俺の料理を食べたことがあるらしく。あいつは俺の自慢のテリーヌに「レピシ通りのお堅い優等生」と命名しやがった。
そりゃ俺の料理はオーナーには程遠いが・・・。
あいつはこの店に入って何日も経っていないのに。

明日の仕込みが終わり、ロッカーで着替える。
そこにあいつが来た!
後ろから抱きついてくる。俺は抵抗するが長身のあいつには、かなわない。
「今日、あなたの作った料理が褒められました。なんか妬けます」と耳元で話す。
やめろ!俺はお前なんか・・・。
お前はいつも俺を翻弄しっ放しで俺を怒らせてばかりだけど、俺は嬉しかった。楽しかった。

あいつの体温が伝わってくる。切ない声。嬉しそうな顔。
俺にはあいつが必要だ。



学園のアイドル

2013-05-15 01:02:12 | 小説
男子校のアイドルは実は獰猛だ!
同級生や先輩方からもちょっかいを出されている。
今日は、生物準備室に呼ばれていた。外から鍵が掛けられていた。
俺も生物に餌をあげないといけなかったので準備室に入っていくと、あいつが息巻いていた所だった。
俺を見て、先輩方もそそくさと出て行った。
あいつは礼も言わず「お前以外ここに来る奴いるのか」
「いや。薄暗くて、気味悪いから誰も来ない」
「じゃあ、俺がここに通っても文句言われねーよな」
「特に問題は無い」
「おしっ。明日から顔出しに来るわ」と言い放っていた。観察のしがいがある。

警戒心も無く、昼食や放課後にはやってくる。
俺はそんなあいつを見ていると楽しい。「ここ居心地良いわ~。一人で居ると変な奴に絡まれてくるんだよ」

昼食、いつものように弁当を広げる。あいつの弁当がやけに小さい事に気づく。
「ああ。5時限目にはパンを2個食うし」
そんな事を言っている。
なんだか餌付けしたくなる・・・。
俺も弁当を多めに作ったりしている。好みも解ってきた。

あいつの好きなカレーを作った。「3日目のカレーを作った。来ないか」誘ってみる。
「行く」素直な返事が返ってくる。

食べながら色んな話をした。
徐々に距離が近くなる。
あいつはそろそろ意識してきたかな。俺も告白してみよう。
繋がりあえるかもしれない。
あいつの笑顔が愛おしかった。