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中国夜話 毛沢東異界漫遊記(一話) 天国で周恩来と、再会の巻

2021-10-13 22:22:56 | 小説

 1976年9月9日、中国の赤い巨星、毛沢東は落ちた。
 享年82才、稀代の革命家、共産国家建設の父は、ようやく眠りについた。
 彼の死を待ち望んでた人も、五万といる。
 文化人、知識人はこれで文化大革命が終わる、新時代が来ると。
 あおり役の四人組は震えた、今度はこちらが粛清される。
 踊らされていた紅衛兵たちは、急に目が醒め、我に返って行った。
 彼の黄泉への旅立ち、何がどうでどうなるのか……
 そこでは、どんなことが待っているのか……
 闇は知っているのか、私は聞き耳を立てる、はっ、何っ……



毛沢東(なんだよなんだよ、ここはどこじゃ。あの世とはここかいや)
   (あんま変わらないんやな。身は軽いのう、あんなに太ってたのにな)
   (ん、向こうから誰か来るやない、ガリガリのごま塩の角刈り男や)
   (眼光鋭いのう。どっかで見たことがある。もしやもしや)
   (あれ、ありゃ、あ、周恩来やないか、そうに違いないわ)
   (仕返しに来たんかいな、あれは違う、誤解、誤解じゃよ……)


周恩来「おーい、おーい、同志、毛大兄、私ですたい、周恩来ですわ」
   「8ヶ月ぶりですな、手ぐすね引いてお待ちしていました」
   「言いたい事が山ほどありますわ。峨眉山どころでねえです」
   「私のガン闘病、わざと遅らせましたな、そのせいで……」
毛沢東「いや、違うわい。政務が立て込んでいから、そこまで悪いとは」
周恩来「そんでもって、私の葬儀にも来ませんでしたな」
毛沢東「病身だったんじゃ、行きたくても行けなかったんじゃよ、わかっとくれ」
   「大長征を共にやりとげ、抗日を戦い抜き国民党を追い出した戦友やないか」
周恩来「ははははっ、いやぁ、初めて一本取りましたな」
   「あの世では、私の方が先輩ですわ、いいって事ですわ」
   「結党当初、あなたに会って惚れ、実務を譲ってからというもの、ずっと」
   「ずっとずっと、心酔して来ましたわな、ガンの痛みなんか、そんなん」
   「毛大兄、ようこそ、さあ、酒を呑みかわしましょう」
毛沢東「我が片腕、片足、それでもたらん、我が左金玉よ、こっちも嬉しいわい」
周恩来「さあ、あなたの目がないマオタイです。天国の千年古酒ですわ」
   「斗酒をも辞さず、お互い呑み比べしましょう」
毛沢東「うん、周恩来よ、水に流してくれるんかいな、痛み入る」
周恩来「毛大兄、まずはいっこん、ささっ、どうぞ……」




 これから、この兄弟は激動の中国史、よもやま話を永遠にし出した。
 もちろんの事、天国に時間なんてない、あるようなないような、流ればかりなり。
 ただ、真実のみは、やけに見える世界。近代中国の内輪話なり。
 呑む程に、始まり始まり……


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