前回につづき、サンカの実態も の生涯と共に全滅して私の死後においてはまったく記録することが
不可能になるので ここに33年間に得た資料を記録して後世の論究にする事とした。
ここには研究者としての強烈な自負が表明されている。執筆に当たって参考にした文献は一つ
としてなく、もっぱら自分のフールドワークによる成果であることを揚言しさらにサンカに
ついて語れるのは自分だけだとも宣言しているのである。
このような確信に満ちた記述は 同書か博士号を得た論文の要約であったことと合わせて
内容への信順の点で それなりの影響力をもつたことは間違いあるまい、さらに当時は、
精密なサンカ研究書がほかになかつだこともあって 出版当初から信憑性への疑問か語られながら
わが国を、代表するような百科事典、専門辞典にも、ときに全面的に、ときには部分的に、
引用されることになる。
そうしてそれは平成の今日もなお ほとんど改められていないのである。
つづく