前回のような事実から考えて 辰三郎もヒロも戸籍などといったものには
ほとんど関心をもつていなかつたことがわかる 有籍 無籍の区別もろくに
ついていなかつだのではないか これが ある時代までの「サンカ」と呼び
得る集団に身をおいていた人びとの普通のありようであった 辰三郎にいたっては
二度にわたる一括届け出の際にも ついに同調することはなかった とにかく父親を
除く一家をさえた戸籍の記録である謄本には 当然のことながら それぞれの生年月日が記されている しかし これはおそらく きわめて不正確なものであろう 家族十一人のうち いちばん下の二人を別にして 皆一字も読めなかったなかった いつ生まれたのか父母とも書き残しておく事は無かった。
つづく
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