「虫の知らせ」 ！

科学では解明できない「虫の知らせ」は、あると思っている。いや、あるということを思い知らされたことがある。
まだ実家にいた頃の話。

自分の部屋での喫煙は、寝タバコなんて当たり前の生活だった。テレビを見ながら横になってタバコを吸うことが、何もかも　から開放されるリラックスしたヒトトキだった。
当時使っていた灰皿は、陶器のおわん型したもので、吸殻は一目瞭然で本数が分かるタイプのものである。
いつも決まって就寝前にタバコを一本。　灰皿に吸殻を落とし布団に潜り込む・・。
眠りについてからどのくらい経っただろうか、自分の頭の上で「カサカサッ、カサカサ・・・」と何かが動いてる音がした。その音が夢の中なのか、現実の音なのか、必死に聞き分けるが、どうも寝ぼけた頭では判断能力が欠けていて、その音が現実の音であると聞き分けるには暫く時間がかかった。
聞き分けられたと同時に、
「虫がいる？・・・・。えっ！ゴキブリ！？」　　と思い、
大っ嫌いのゴキブリを想像し、飛び起きたら　部屋が煙で真っ白　　だった。
逆にびっくりしたが、同時に咳が止まらなくなり呼吸が出来なくなった。慌てて窓を開け換気をしていくと、うっすらと部屋の間取りが見えてくる。
驚いた事に、灰皿の吸殻が真っ黒だった。おそらく、最後に吸ったタバコが完全に消えていなかったのだろう・・。他の吸殻に引火し、フィルターまでもが燃え尽きている。
危うく一酸化炭素中毒になる所である。時間が経つにつれて恐ろしくなって部屋で立ちすくみ、暫く眠りに就く事ができなかった。

あの時、音を聞いていなければ命を落としていたかも知れない。
ゴキブリには、嫌いなだけあって細心の注意を払っているはずで、この部屋では絶対にいないと確信していた。
考えられることは、「虫の知らせ」だけだ・・。

それからというもの、灰皿は蓋式の物に変えたのは　いうまでも無い・・。