2012年5月1日(火)
朝、目を覚まして・・・、昨日のパーティの疲れが無い。(^^)
というか、翌日疲れが出るほど若くない・・・。
明日になるか、明後日になるか・・?(^^;)
さて、今年は、自治会の班長なんだけれど、前回、数年前に班長を
引き受けたときの話・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「屋号」
朝、インターフォンに呼ばれて外へ出ると、門の前に、裏の奥さんが来ていた。
昨年度は、裏のお宅が自治会の当番で、この班の班長を引きうけてくださっていた
のだが、四月からは、うちが当番になるという話である。裏の奥さんは、少し言い
にくそうな様子で、
「それで、奥さんの名前を教えていただきたいんです。自治会名簿の班長の欄に、
載せるので……」
近所では、普段から、「誰々さん」と、苗字で呼び合うので、お互い、
フルネームまでは、はっきりとは覚えていない。だが、それだけではなく、
私が一年前に夫を亡くしたことを気遣いながらも、「会員名」をどうするのか
ということのようだ。今年度の自治会の会員名簿を作る際、私は、自分の名前へ
の変更届けを出さず、亡くなった夫の名前のままにしておいた。だから、自治会の
会員名は、正式には、まだ、夫ということになる。私が班長になる場合、
それではまずいのだろうか。
「角のAさんのお宅は、ご主人を亡くされてから、名簿は奥さんの名前になって
いますけれど」と、言われたが、確か、あそこのお宅は、息子さんと同居して
いらっしゃる筈。それに、隣りの班のBさんは、若くしてご主人を亡くされて
十数年、名簿はずっとご主人の名前のままだ。私は、
「班長をお引き受けするのはかまいませんが、すみませんが、名簿は、主人の名前
のままにしておいていただきたいんです。防犯のためにも……」
『夫の名前の陰で生きていくのか』とか、
『堂々と自分の名前を名乗って、生きていこう』とか言うことではなく、今の
ご時世、まずは、防犯だ。偏見かもしれないが、自治会には、某新聞販売店も
加入しているので、この名簿、仕事にも使っているのではないかとも思うし、
毎年の名簿の更新時に、古いほうが名簿業者に流れていないとは言い切れないと、
以前から私は疑っている。一人暮しという個人情報は、外に垂れ流したくはない。
「じゃあ、自治会の役員さんにそう言っておきます」
と、笑顔で返事をしてくれた奥さんの顔をみていて、ふと疑問が湧いてきた。
<何故、あなたが、ここにいて、そんな話をしているの……>
名簿上は、今年度のうちの班の班長は、裏のご主人だ。でも、こういう相談に
動くのは、奥さん。それどころか、ここに住んで二十数年、自治会費の集金の際
には、奥さんと別居中という方が班長になったときが唯一の例外で、あとは、
みんな奥さんが集めに来る。勿論、うちもそうしてきた。自治会の役員会となると、
ご主人本人が出席されるそうだが、それでも、私の友人のご主人が役員になった
ときには、友人は、
「主人が忙しくって、ちっとも出席できなくて、しょっちゅう私が出てるのよ」
と、愚痴をこぼしていたから、代理出席もかなりあるという。
自治会の細々した仕事は、代理の奥さんたちの手で、恙無く動いていく。
夫が生きていれば、私も他の奥さん方と同様、「代理」という立場にひっかかった
りはしなかったろう。だが、それこそ夫が幽霊会員となり、その「代理」という
立場は通るものなのだろうか、どうなのだろうと、さすがに、私の心の中でも
治まり具合が良くはない。が、それでも自治会に、「なあなあ」で認めて欲しい
と思う。
奥さんを送りだすと、門に掛かる石の表札に目が止まる。家を買った時、
苗字だけの表札にしたかったのだが、夫の希望で、夫の名前まで
彫り込んでもらった。
今では、「この方が、防犯になるよ」と、人に言われ、自分でもそう言っている
表札だが、これを掛けた時、当時の夫には、初めて一戸建ての主になったという
感慨があったことだろう。この表札の家から夫は勤めに出かけ、子供たちは学校へ
通った。そして、子供は巣立っていき、夫の棺もこの家から出した。それらの日々の
形見のような表札を、わざわざ取り外すことはないと、心の中では思っている。
その時、「夫の名前」は、「屋号」と考えれば良いではないかと、閃いた。
田舎などで、同姓が多い地域では、昔の先祖の名前からとった「孫兵衛」とか
「伊左衛門」等のような屋号で呼び合っているという。うちは、「屋号の表札
を掛けて、屋号で自治会に参加しているのだ。自治会の仕事で動き回るのは、
これまで通り、私の役目」ということにしよう。私の心の中での「夫の名前」の
立ち位置が決まり、やっとすっきりした。
私は、エプロンのポケットからガーゼのハンカチを出して、久しぶりに「刻まれた
夫の名前」をぬぐった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後からはハハの病院へ。ハハはベッドに横になって、バラの模様の
フリースをかけていた。これはウィステが去年、縫った膝掛けなんだ。
それにすっぱり包まれたハハの体・・・小さくなったねえ・・。
明後日頃、ゆ~ちゃんが来るよと言うと、ハハはにっこりしてくれた。
朝、目を覚まして・・・、昨日のパーティの疲れが無い。(^^)
というか、翌日疲れが出るほど若くない・・・。
明日になるか、明後日になるか・・?(^^;)
さて、今年は、自治会の班長なんだけれど、前回、数年前に班長を
引き受けたときの話・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「屋号」
朝、インターフォンに呼ばれて外へ出ると、門の前に、裏の奥さんが来ていた。
昨年度は、裏のお宅が自治会の当番で、この班の班長を引きうけてくださっていた
のだが、四月からは、うちが当番になるという話である。裏の奥さんは、少し言い
にくそうな様子で、
「それで、奥さんの名前を教えていただきたいんです。自治会名簿の班長の欄に、
載せるので……」
近所では、普段から、「誰々さん」と、苗字で呼び合うので、お互い、
フルネームまでは、はっきりとは覚えていない。だが、それだけではなく、
私が一年前に夫を亡くしたことを気遣いながらも、「会員名」をどうするのか
ということのようだ。今年度の自治会の会員名簿を作る際、私は、自分の名前へ
の変更届けを出さず、亡くなった夫の名前のままにしておいた。だから、自治会の
会員名は、正式には、まだ、夫ということになる。私が班長になる場合、
それではまずいのだろうか。
「角のAさんのお宅は、ご主人を亡くされてから、名簿は奥さんの名前になって
いますけれど」と、言われたが、確か、あそこのお宅は、息子さんと同居して
いらっしゃる筈。それに、隣りの班のBさんは、若くしてご主人を亡くされて
十数年、名簿はずっとご主人の名前のままだ。私は、
「班長をお引き受けするのはかまいませんが、すみませんが、名簿は、主人の名前
のままにしておいていただきたいんです。防犯のためにも……」
『夫の名前の陰で生きていくのか』とか、
『堂々と自分の名前を名乗って、生きていこう』とか言うことではなく、今の
ご時世、まずは、防犯だ。偏見かもしれないが、自治会には、某新聞販売店も
加入しているので、この名簿、仕事にも使っているのではないかとも思うし、
毎年の名簿の更新時に、古いほうが名簿業者に流れていないとは言い切れないと、
以前から私は疑っている。一人暮しという個人情報は、外に垂れ流したくはない。
「じゃあ、自治会の役員さんにそう言っておきます」
と、笑顔で返事をしてくれた奥さんの顔をみていて、ふと疑問が湧いてきた。
<何故、あなたが、ここにいて、そんな話をしているの……>
名簿上は、今年度のうちの班の班長は、裏のご主人だ。でも、こういう相談に
動くのは、奥さん。それどころか、ここに住んで二十数年、自治会費の集金の際
には、奥さんと別居中という方が班長になったときが唯一の例外で、あとは、
みんな奥さんが集めに来る。勿論、うちもそうしてきた。自治会の役員会となると、
ご主人本人が出席されるそうだが、それでも、私の友人のご主人が役員になった
ときには、友人は、
「主人が忙しくって、ちっとも出席できなくて、しょっちゅう私が出てるのよ」
と、愚痴をこぼしていたから、代理出席もかなりあるという。
自治会の細々した仕事は、代理の奥さんたちの手で、恙無く動いていく。
夫が生きていれば、私も他の奥さん方と同様、「代理」という立場にひっかかった
りはしなかったろう。だが、それこそ夫が幽霊会員となり、その「代理」という
立場は通るものなのだろうか、どうなのだろうと、さすがに、私の心の中でも
治まり具合が良くはない。が、それでも自治会に、「なあなあ」で認めて欲しい
と思う。
奥さんを送りだすと、門に掛かる石の表札に目が止まる。家を買った時、
苗字だけの表札にしたかったのだが、夫の希望で、夫の名前まで
彫り込んでもらった。
今では、「この方が、防犯になるよ」と、人に言われ、自分でもそう言っている
表札だが、これを掛けた時、当時の夫には、初めて一戸建ての主になったという
感慨があったことだろう。この表札の家から夫は勤めに出かけ、子供たちは学校へ
通った。そして、子供は巣立っていき、夫の棺もこの家から出した。それらの日々の
形見のような表札を、わざわざ取り外すことはないと、心の中では思っている。
その時、「夫の名前」は、「屋号」と考えれば良いではないかと、閃いた。
田舎などで、同姓が多い地域では、昔の先祖の名前からとった「孫兵衛」とか
「伊左衛門」等のような屋号で呼び合っているという。うちは、「屋号の表札
を掛けて、屋号で自治会に参加しているのだ。自治会の仕事で動き回るのは、
これまで通り、私の役目」ということにしよう。私の心の中での「夫の名前」の
立ち位置が決まり、やっとすっきりした。
私は、エプロンのポケットからガーゼのハンカチを出して、久しぶりに「刻まれた
夫の名前」をぬぐった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後からはハハの病院へ。ハハはベッドに横になって、バラの模様の
フリースをかけていた。これはウィステが去年、縫った膝掛けなんだ。
それにすっぱり包まれたハハの体・・・小さくなったねえ・・。
明後日頃、ゆ~ちゃんが来るよと言うと、ハハはにっこりしてくれた。