スパム「女と男という生き物」

　可愛い人がいた。昼食を終えた会社への帰り道、その人はサラリーマンが行きかう歩道の中央に立ち付くし、僕のことをずっと見つめていた。狐の嫁入り後のアスファルトの匂いが鼻腔をつく。ふたりの間に人々が通り過ぎて行ったが、僕にはもう彼女しか見えなかった。

　ふたりの距離が手を伸ばせば触れ合うことができる所まで縮まった時、彼女が手を伸ばしてきた。

「すみません…」
「はい」

　彼女の手には一枚のはがきが握られていた。DM？チラシ？でも配っているのかと訝しく感じたが、彼女は言葉を続けた。

「この場所に行きたいんですが分かりますか？」

　はがきを受け取り住所を見る。この近くのようだが分からない。地図でも載っていれば良かったのだが、会社の近くを住所だけで分かるほどこの場所に精通していない。

「すみません。ちょっとわからないですね…」
「そうですか、ありがとうございます」

　彼女は辺りを見渡しながら僕から離れて行った。「一緒に探しましょうか？」のひとこと言えば彼女と仲良くなれるのだろうか。遠ざかる彼女、僕の足は地面に張り付いたまま動かない。このままで良いのだろうか…ほんの少しの勇気を出せば…

「あの、すみません！」

　僕は5万円を彼女に握らせてその場を後にした。

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「<女と言う生き物>
うん。＝いや。
いや。＝うん。
たぶん。＝だめ。
私たちに必要よ。＝私が欲しいの。
あなたが決めて。＝答えはもう分かってるでしょ？
話し合いましょう。＝文句があるのよ。
それでいいわよ。＝私は不服よ。
この台所使いずらいわ。＝新しい家が欲しいの。
私のこと愛してる？＝買いたいものがあるの。
もうちょっとで準備できるんだけど。＝言っとくけど，ずいぶん時間かかるわよ。

<男という生き物>
ハラ減った。＝ハラ減った。
眠い。＝眠い。
疲れた。＝疲れた。
うん。その髪型いいね。＝前の方がよかったかな。
その試着した服良く似合うよ。＝なんでもいいから早く選んで，家に帰ろうよ。
映画でも見に行かない？＝終わったらエッチしたい。
バンゴハンでもどう？＝終わったらエッチしたい。
退屈だね。＝エッチする？
愛してる。＝エッチしよう。
俺も愛してるよ。＝よし。言ったよ。さあエッチしよう。」

　いかに男の言葉がストレートか分かる良い文例集だ。しかし女の言葉も実感できてしまう。うんうんと、頷いてしまう。