晴天が続いて畑に田んぼの水を入れた。
野菜はさることながら、雑草も待ってましたとばかりに息を吹き返す。
焼けつくような陽射しにもめげることなく、植物はぐんぐんと大きなる。
植物が我が物顔にはびこっているのに、逆に、人はぐったりとしなびている。
炎暑の昼は、クーラーを利かした暗い部屋でじっと淀む(澱む)しかない。
夏の炎天下に虚しく過ごす時間の何んと長いことか。
生ぬるい水の底に沈む泥のように澱んでいる。
よどむ……。
川の流れの滞る場所を意味する「よど(淀・澱)」に、動作を表す「-む」がついて「よどむ(滞る・沈む)」という動詞ができた。
洗ひ衣(きぬ)取替川(とりかいがわ)の川淀(かわよど)の淀まむ心思ひかねつも /万葉集
(洗いたての着物に着替えるかのように、他の女に乗り替えでもしたのかしら……。だから、私の所へ通うのをためらっていらっしゃるのね。そう思うと、悲しくて耐えられないわ)
取替川は鳥飼川のシャレ。鳥飼川は淀川の別称。淀川に架かる鳥飼大橋はその名残。
男が心変わりしたのか、女の所へ通うことが滞る(淀む)。
それを思うと女の心は沈む(淀む)。
二人の関係に澱みができる。
「流れる水は腐らない」という諺(ことわざ)がある。逆に、「淀む水に芥(あくた)たまる」ともいう。
何ごとにつけても、流動、活動しているものには、沈滞とか腐敗といった現象は起きない。
日々の生活が常に同じ状態だと、いろいろな問題が起こってくる。
流れてやまない川の水のように、刻一刻、新たなものにしていかなければならない。
昨日より今日、今日より明日なのだ!
しかし、昨日も今日も、明日も暑い!
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