古今東西のアートのお話をしよう

日本美術・西洋美術・映画・文学などについて書いています。

三井高利と越後屋 三井記念美術館

2023-07-13 13:09:09 | 美術ブログ

『三井越後屋が延宝元年(1673)に開店してから令和5年(2023)で350年を数えます。公益財団法人三井文庫・三井記念美術館では、これを記念して特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」を開催いたします。 三井グループの創業者、三井高利(1622〜94)。52歳のときに呉服店「越後屋」を開き、「現金掛け値なし」の商法で当時の商慣習を覆した、江戸時代の革新的経営者です。

江戸時代最大級の豪商、三井の世界をご堪能ください。』web開催概要より

大井戸茶碗 銘須弥 別銘十文字
朝鮮時代 16世紀

大振りの井戸茶碗を十文字に切った後でもう一度つぎ直した。高台も1cm削ぎ取られる。”ひょうげもの“古田織部所持の伝来がある。
見込みは、青みが輝き星雲にも見え、口縁の漆も宇宙空間を思わせる。われ目、ゆがみ、かいらぎ…見飽きることがない茶碗。

唐物肩衝茶入 北野肩衝 
南宋時代 12〜13世紀
足利義政が所持していたという東山御物。肩がきっかり張った肩衝茶入。釉流れが見事な景色をつくる。
秀吉の北野大茶会に烏丸家から出陳された。

珠光青磁茶碗 銘波瀾
南宋時代 12〜13世紀

日本の茶の湯の祖、村田珠光が草庵茶の美意識に叶うとこのたぐいの茶碗を愛でたことから珠光青磁と呼ばれる。琵琶色で、“猫掻き”という櫛の刻文が釉下に見える。
現物は、写真ではわからない心を落ち着かせる茶碗。
(上記写真4点ネット画像借用)

三井高利夫婦像 山本宗川
江戸時代 享保16年(1731)

江戸京都浪花三店絵図
江戸時代 19世紀
江戸、浪花は大店であるが、統括する「大元方」の京本店は小ぶりですね。井原西鶴の『日本永代蔵』で”大商人の手本“と称賛された三井高利、
かえって“すごみ”を感じます。

三井越後屋京本店記念庭園
三井高利は1673年、呉服の仕入と江戸、大阪を統括する越後屋京本店を室町通りに設ける、1704年から室町通り冷泉町に移転し、その後三越京都支店となり1983年(昭和58年)の閉店まで営業していた。
現在の『三井越後屋京本店記念庭園』になっている。
堺筋、小西儀助商店(現コニシ株式会社)の奥に大阪三越
江戸時代初期1961年、高麗橋に江戸の呉服店越後屋(現三越)が出店、大塩平八郎の乱で全焼、その後移転しながら明治の終わり、堺筋に三越大阪店として開店。
堺筋は、当時は大阪一の繁華街だったようです。大阪の変遷も面白い。
大阪三越(2005年5月5日閉店)
跡地には高層マンションが建つ
(上記写真3点ネット画像借用)


松阪から、江戸、大阪に大店を持ち京に住む江戸店持京商人」
(えどだなもちきょうあきんど)
という商人の理想を実現した三井高利
越後屋から商人目線の京、江戸、大阪の立ち位置が分かって
大変興味深い
ちょっと変わった展覧会

★★★★☆

歴史が好きな人にお勧めします

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映画 ”遠いところ“

2023-07-13 12:52:54 | 映画(レビュー感想)


『沖縄では、一人当たりの県民所得が全国で最下位。子ども(17歳以下)の相対的貧困率は28.9%〘2000年頃の全国平均は14%※〙であり、非正規労働者の割合や、ひとり親世帯(母子・父子世帯)の比率でも全国1位(2022年5月公表「沖縄子ども調査」)。さらに、若年層(19歳以下)の出産率でも全国1位となっているように、窮状は若年層に及んでいる。『遠いところ』は、そんな沖縄市のコザを舞台に、幼い息子と夫との3人暮らしをする17歳のアオイ(花瀬琴音)が、社会の過酷な現実に直面する姿を描き、全編沖縄ロケにこだわって撮影された。

『遠いところ』で描かれているのは、沖縄における局地的な社会問題などではない。日本中のどこでも今まさに起こっている事象である。愛する人からの暴力は、地獄のような現状から必死で逃げる道を間違えてしまうのは、すべて自己責任なのだろうか。社会の理不尽と不条理を突きつけられ、悲痛な想いを抱いて絶望しながらも、もがくアオイの姿には、自らの選択肢が正しいかどうかの想像力を持てない少女たちがいることを思い知らされる。』映画『遠いところ』オフィシャルサイトより

※筆者注


映画のオフィシャルサイトでは、『沖縄の貧困問題を根底に、そこから発生するDVや買春を、避け難い不条理な社会問題として描いた』という事を強調しているが、実際に映画を観ると、沖縄の貧困問題にフォーカスしているというより、アオイが ”お金“ “社会” ”性差別“に無自覚に蹂躙 される前半から、“怒り”を自覚し反撃する “カタルシス” の映画に思えた。




主人公の17歳のアオイは幼い息子と頼りない夫と暮らし、親友の海音と朝までキャバクラで働いている。中卒のアオイはキャバクラで働くことに何の違和感も持っていない。




夫は仕事を辞め、働こうとしない、責めるアオイに激しいDVを行う。
夫はアオイの貯金を奪って家を出る。
アオイの働くキャバクラは、未成年を働かせていると手入れが入り、アオイはキャバクラで働けなくなる。

アオイは実家に帰っていた夫のもとに息子と転がり込むがまたDVを受ける。
夫が傷害事件を起こし、示談のため慰謝料が必要になり、”お金“のために買春に手を染める。
親友の海音はアオイの買春を止めさせようと説得するが、アオイは自己嫌悪から酒に溺れ、育児放棄になる。児童保護局が息子を保護する。

親友の海音が自殺した。
買春を手引している海音の彼氏に、アオイが反撃する、”力“と“自覚”を手にしたアオイは、息子を取り戻しに施設に向う…


劇中の音楽が素晴らしい!!
主題歌のラップ
唾奇「Thanks」のビートが
こころを揺さぶる

★★★★★

見終わって、時間が経つほどに、
ジンワリくる不思議な映画


ラストの海面から上る朝日は、生きる、再生に見えたがどうなんでしょう…





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