遊ちゃんと2人だけの夜

・・自分記録の独り綴り・・

彼岸花で ふふふっ

2019-09-28 04:03:56 | ごく日常のこと
仮に私の名前をユキちゃんとしよう。


なんだ、それ。
ユキちゃんというのは、馴染みのスナックのママの名前だ。
他にばっと思い浮かぶのがなかった。



ご近所のおばさんに、よく言われる。

ユキちゃんは、花が好きだねえ。

↑ たったこれ一言のために仮名を必要としたのだ。


花が好きだね、と言われると、非常に違和感がわく。




子どもが好き、と公言する人がたまにいるが、

嘘だろ、と思う。

ワンコやニャンコの赤ちゃんは、皆可愛く見えるが、
人間の赤ちゃんや子どもは、半分以上は可愛く見えない。
顔かたちや喋る中身が可愛く感じなくても、


他人の赤ちゃんや幼い子や小学生を大雑把にくくって、
私は子どもが好き、なんて言う人がいる。

内心ゾッとする。

どうして? ほんと?

んなわけないじゃん。
可愛く感じる子だけが好きなんでしょ?

なんかこう、
子ども好きっていうと、それだけで善人みたいな、

そういうのも気に入らないし、

子どもっていう、雑なひとくくりを、
好き、なんて言える神経のザッパクさも気にくわない。


顔や仕草が可愛らしくても、うっかり笑いかけると、
3歳4歳のおチビが憎々しい言葉を投げ返してきたりする場合もある。


小学生ともなると、こちらが優しく接しているのに、いきなり、
あ! シワがある! シミがある!とか大声で言いやがったり、
もっと育つと、うっせー! くそババア! とかほざくわけで、

うっせー、くそガキ! この未熟な生き物が!

品のある私の口は決して言い返さないが、胸の内で叫び返す。



自分の気にそう子だけが可愛いのだ。
可愛いく感じる子だけ限定で、その子は好きでも、
子ども全部好き、なんて有り得ない。



だから、
さも人が好さそうに目を細めて微笑みながら、
わたし、子どもが好き!
なんて目の前で明るく言われると、背中に悪寒が走る。




赤ちゃんが産まれた直後に友人知人を見舞う時は、心底思う。

よくしゃあしゃあと、皆さま言えるもんだと。


あのさ、ほんとに可愛い?
愛おしいという感情はわくだろうが、人様の子、可愛いか?
まだ産まれて間もなくて、
まだ母親の内臓の一部みたいなホカホカのカタマリを、
口々に可愛いと言う。

母親が産んだこと、子が誕生したことには、おめでとう。
それはほんと尊いことである。
母も子も神々しくはあるが、
赤ん坊は見た目に可愛くはない。
産まれたては、おしなべて醜い、と言ってよい。
肉親以外は、正直そう感じなければ感覚がおかしい。


あ、話がずいぶん逸れた。

まあ、そんなのも含めて、
子どもが好きという表現に私はとてつもなく違和感があるのだ。





あたなは花が好きね、と言われるのも同じ感覚で、やだ。


私は「わたしは花が好き」とは決して言わない。

嫌いな花も、興味ない花もたくさんあるからだ。

私の感覚では「花」と総称しては好きと言えない。


青い色、紫色の花が好き。ツユクサの青が好き。
ジャストジョイやマダムビオレが好き。 ←バラ

面倒だからいちいち挙げないけど好きな花もたくさんある。


そして、ここからやっとのことで本題だけど、
嫌いな花の筆頭は彼岸花だ。

彼岸花。曼珠沙華。

白いのは可憐だけど、あの、赤い彼岸花、嫌い。


見ただけで、ツツツーと心に赤い雨が降る。
ほぼ条件反射だ。
ゾゾゾーより細いツツツーという神経に障る感覚。


嫌いだあ。

その彼岸花は今が時期。
田んぼのあぜ道、畑の端っこ、公園の片隅などによく見かける。

我が家の裏、手入れしない隣の庭のあちこちに咲いてる。
最近毎日、おトイレの窓から見えて不快だ。


私がこの花を嫌いになったのは、
うちの母が嫌っていたから、その影響もある。
彼岸花に触るなとか、家に持ち込んではいけない花だとか、
母がよく言っていた。


それより、すごく強烈に決定的に、
彼岸花が嫌いになったのは、大学生の時のことだ。


デザイン学科の先輩達は、
課題提出前になると毎晩徹夜して作品を仕上げていた。

徹夜続きで眠くなる。しかし寝たら提出日に間に合わない。

先輩2人は、どこから手に入れたのか、
眠くならない、寝ないで起きていられる薬を飲んだ。


ずいぶん前のことだから、
そんな薬も、当時はお店で売っていたのか分からない。


真夜中、徹夜3日目の先輩の部屋にリンゴを届けたら、

先輩Aはギラギラした目で天上を見ながら、

虫がいっぱいや。気持ち悪いわぁぁ。

とか細い声を絞り出して怖がっていた。


虫など1匹も見当たらない天上を見上げながら、
どんな虫かと尋ねると、


カブトムシ! カブトムシ!


先輩の目が怖い。
一緒に行ったはーちゃんと私は途方に暮れた。


先輩、寝てないから、頭、狂ったんちゃう?

気持ち悪いから、先輩Aの部屋をささっとおいとました。

ほなね〜
頑張って〜


大学生ばかりが住むそのアパートの別棟に、
先輩Bも住んでいた。

先輩Bは元気に見えた。

リンゴを持って来たと言うと、リンゴをじっと見て、


皮、向いてぇ。
なあ、窓の外な、彼岸花が真っ赤やねん。


と訳わかんないことを言った。

ひ〜〜


先輩Bの部屋は一階で、窓の外は草ボウボウの荒地だ。
彼岸花など1本も咲いていない。


なあ、見てみ、真っ赤やろ? 嫌やわあ。

ひぃぃ〜〜〜!


はーちゃんと2人、スクーターに飛び乗ってスピードを上げ、
一目散に住んでる学生マンションに戻った。

とっても怖かった。先輩AもBも。


その薬を飲むと幻覚を見ることがある、と後で聞いた。
カブトムシの話はさほどでもなかったが、
窓に立って外を指しながら、
彼岸花で真っ赤だと言った先輩Bの後ろ姿が異様で不気味だった。


その時だ。
彼岸花への嫌悪感が全細胞に染み込んだのは。


んだから、大嫌い。



私の仕事する場所の、子どもらの遊び場にも、
赤い花がチラチラ咲き始めたのに気づいてはいた。

昨日、外遊び中に、子どもの1人が、

センセイこれ見て、きれいでしょ。お部屋に飾ろう!

と彼岸花を10本くらい手で摘んで持ってきた。

あら、どうしよう、花瓶ないわ。
受け取ったセンセイは戸惑いながら嬉しそうにしていた。


ふーん、何も知らないらしい。
覚めた目でながめながら、覚めた声をかけた。


あのぅ、彼岸花は家に持ち込むと、火事になるとか言うけど。
え? そうなの? ダメな花?
まあ、そう言われたりするけど、それに花も茎も毒があるわよ。
え! うそ! みんなに触るなって言ってー!



ノロノロっと窓を開け、彼岸花の辺りの子ども達に、

ねえ、彼岸花に触らないで〜
触った子は手を洗いに来て〜

と覚めた声を張り上げて伝えると、
15人くらいの子が大慌てで戻って来た。


ねえ、なんで? なんで?
触るとダメなの?


うん? 彼岸花は毒があるからね。


あー、俺、汁を舐めたー!
えいた、死ぬよ!
死ぬのー?
えいた、死ぬ!

子どもら、ギャアギャア大混乱。

そんなんじゃ死にません。食べなきゃ大丈夫。

ほんとに? 俺、死なない?

うん、ぜんぜん大丈夫。
根っこの球根食べたら良くないなけどね。
さあ、みんな石鹸つけて手をよく洗って。


手洗い場は、
いつの間にか彼岸花を触ってない子も並んで渋滞。


うちのお婆ちゃんも言ってた。彼岸花は毒だって。
そうなの? 私もう触んない。
ねえー! 早く手を洗ってよー!
怖いねー!
こわーい!
私、この花、嫌いになった。
オレも嫌い。



しめしめ。 ふふふふふ。

これで彼岸花嫌い派が確実に増えた。
この子達は、きっと学校で友達に教えるだろう。
中学高校大学、社会に出ても、
何かのきっかけがあれば言うだろう。
そして彼岸花を忌み嫌う人が増えていく。



もうちょい脅せば良かったかなあ。

えいた、汁舐めたの? えっ大変だわ!
と青ざめて見せたら、もっと強烈な思い出になったかも。


あら、いけない。
いくら「子ども嫌い」「えいた嫌い」なわたくしでも、
彼岸花嫌いなわたくしと言えども、

人の道理に外れた事はいけませぬ。

内心ほくそ笑むくらいで収めましょう。



ふふふっ
ふふふふふ

ちょっと楽しかったぁ。












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