金曜午前、支所の担当から自宅に電話が来た。
私の勤務時間は、夏休みは午後0時半からだ。
今週水曜日に、
市の子ども課が、これが解決案として開いた会議
◆的外れで、こちらが求めるものから程遠い筋書きに沿ったもの。
前日下打ち合わせの辛辣な攻防戦の末、
モンスター親子だけに配慮した、
大怪我に絆創膏を貼るような絵空事に、こちら側が諦めをつけ、
市に合わせた協力ポーズで臨んでこの場を流すと決めて、
会議に出席した。
市の子ども課2人、家庭相談員1人、このエリアの支所室長と担当者、
モンスター両親と本人、副主任と私が出席。支所の会議室使用。
の翌日の、
木曜夕方に起こしたモンスター君の暴力の件を、
◆夏休みだけの学童利用で来始めた、
モンスター君と小学校同クラスの男児に、
「クズ!死ね!」と言って首を殴りつけて泣かせて、
その30分後、男児が畳の部屋で寝そべっている時に、
「死ね。殺してやる」と連発しながら、右目を蹴った件。
何のきっかけもない。
モンスター君が急に男児のそばに行き、いきなりやった。
彼の暴力は常にそうだ。
私は昨夜、
(午前勤務で夕方のトラブルを知らない)主任に電話報告した。
翌朝、学童の事務所に被害男児の保護者からクレームが入る可能性もある。
支所担当者は毎日数回事務所と連絡を取るから、
もちろん、この件は主任から報告された。
私に詳細を確認するために電話してきた。
事の経緯と、
双方の保護者が迎えに来てからの、
(迎えに来るのが数分違いと思われたので、
被害男児祖母にはモンスター保護者を待ってもらい、
双方揃った現場での、)
被害男児の言葉、祖母の言葉、
モンスター母が発した怒鳴りながらの言葉も、
立ち会って聞いたままを伝えた。
支所担当者は、
「昨日の今日で、親子に反省はないんですか?」と聞いた。
「ありません。●●君の祖母にも謝罪はありません。
祖母に顔も向けませんでした。」と答えるとタメ息をついた。
合計10分間繰り広げられたモンスター母子の、
ヤンキー言葉の怒鳴り声と、
泣き叫んで逃げようとする騒ぎの中、
ポイントはここだ。
「謝ったのか!」とモンスター母が怒鳴ると、息子は、
「ごめんなさいと言ったよ。」と嗚咽まじりに答えた。
(母が迎えに来たと分かった時、叱られるのを恐れて、
モンスター君はサッと男児に寄ってきて、
謝ったという事実を作っておいた。いつもの事だ。)
ここで、被害男児は、
「でも、許さないよ。」と、
(1人っ子でおっとりしてるが)はっきり強く言った。
するとモンスター母は、
「ふうーん。」と被害男児に向き直り、
「死ね、殺す、殺してやる。」と言われた時に、
何か言い返さなかったかと尋ねた。
被害男児は、
「死ねと言った。・・1回だけ。」とポツリ答えた
母から逃げようと、
泣きながら玄関を動き回る息子を隅に追いやり、
首のあたりを押さえつけながら、母親が息子に言わせる。
「ほら、お前も言われてんだよ!●●君に謝ってもらったのか?!」
「●●は、オレに謝ってないよ!」
「じゃあ、お前は許すのか?!」
「オレだって、許さない!」
「そうだよな? あっちが許さないんだから、こっちだって許さないよな!」
祖母と副主任と私は、目を見合わせた。
呆れる、を遥かに超えた・・
感覚が一瞬フリーズする異世界の会話だった。
親子の怒鳴る泣くの舞台劇のような激しいドタバタには、
私達はもう驚かない。何度か見せられてきたからだ。
市役所の支所長がいる前でも、やって見せたことがある。
しかし、大人しい1人っ子の祖母はどれ程驚いただろう。
そして、あの言葉は、
問題が親にあることの「答え」だ。
これが親子の実態。
会議前日の下打ち合わせで、
「そんな悠長なことをやっている状況ではありません。」
と繰り返す私に、
市の職員達は怒り(あるいは敵意)を剥き出しにして、
「すぐには改善しないと思いますがっ、
少しずつ1つ1つやっていくしかないんです!!
それしかないんです!!」
と叱りつけるように大声を上げた。
見よ、
会議の2時間では、
あの、しおらしい子と、優しさに溢れた母の、
翌日の姿がこれだ。
当然、自宅では、もっともっと酷いはずだ。
このモンスターに育てられ、
ある意味、あの子は正統に、
実にパワフルなモンスターに仕上がったのだ。
毎日モンスター追跡をしている、
日頃、物静かな話し声の支所担当は、
「えー!えー! 呆れるかえる。」と悲鳴のような声を出した。
「でしょ? 全部動画で撮って、
あのお姉ちゃん達に見せたかったわ。ハハハハ。」
(↑ 市の生意気な職員達)
現実問題として、
ハハハと高笑いできるはずもないが。