浅野ゆうじの独り言

社会・政治に関連する本の感想や日々の出来事についての私なりの考え方を書いています。

「現実」主義の陥穽

2013-01-27 10:49:12 | 国際・政治
 ある方の薦めで丸山真男先生の本を読むようになったのですが、そのきっかけがが表題の丸山先生の小論です。というのも、私自身は現実主義者だという話から、この小論に書かれてある様な現実主義の危険や問題を指摘されたのです。

 小論の内容については読んでいただければと思うのですが、確かに現実を認める、また受け入れるという姿勢は、危険な方向への事実としてその危険性をも認めてしまうということになりかねないという見方は、その通りであろうとしか言いようがありません。例えば、今問題になっている原発問題を取り上げれば、原子力の危険性は明らかであり、廃棄物の処理が技術的にも解決されていない状況の中で、原子力発電を続けるということは、災害の危険性を問う前に、原子力の利用は即時撤廃しなければならないということになるのでしょう。

 しかし、そうであっても、グローバル化が進む世界にあって、原発を受け入れざるを得なかった現実、状況、またその時の判断も事実(エネルギー問題、環境問題、生活の向上などに対する対応として)であり、目先の解決と将来の解決の比重の平衡をとっていかなければならないといのが現実主義であり、保守性だと思うのです。もちろんここでは原発の危険性というものをしっかり認識していなければならないのは当然のことなのです。

 安倍政権の発足後、自民党は経済の再生を最優先をしています。昨日の中日新聞に掲載された佐伯啓思先生の話でも、アベノミクスの現実主義を述べておられますが、まさにその通りで、今ある危機に対応しなければ政治は進められないことも事実なのです。けれども、現実主義の陥穽を考えると、よく言われる財政規律や、グローバル化や外交、原発の問題も忘れてはならないということです。当然のことながら国民にとって痛みを伴う政策も必要になるのであり、そうした側面でも説明をきっちり果たすことが、批判はあっても何より重要ではないかと思います。

以上