中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

黒を染めています

2014年09月07日 | 制作工程


黒を染めています。

数年前に桜や白樫で染めた焦げ茶にログウッド、アセンを重ね、深みのある黒にしていきます。

黒染めは何回も染重ねますので糸も傷みやすいのですが、
ログウッドと併用すると回数も減らせるので使っています。
ただ、深味を出すためにログウッドだけの黒を染めることは私はしません。


糸繰りも糸を毛羽立たせたり、もつれを増やしますので無駄にやる必要はありませんが、
ポイントを抑えて最小限よく繰ります。


途中ガラス瓶に染液を取り、染液と媒染剤の関係、吸収の度合いを観察します。
火から下ろした放冷後もこうして染液をよく観察します。
濃い染液だから濃く染まるわけではありません。
染料も媒染剤も過剰に使わないようにしています。


沸騰後は火を弱め綛全体を鍋に沈め煮染めします。


上の染めている画像では純黒に見えますが、乾くとご覧の通り茶味の墨色に近い感じです。

左の綛は灰緑系に重ねたので色相が違います。純黒にやや近いです。
藍下に重ねると純黒になります。

古来より、様々な身近な植物で染重ね黒系の色を作ってきたわけですが、
鉄媒染をするために糸が劣化しやすいのです。
正倉院御物などの古い染織品で黒いところだけ生地が抜け落ちているものをみかけます。

私も染色では気を使います。
もちろん後媒染でやりますが、鉄分をなるべく残さないよう
水洗い、湯洗いをよくやり、ソーピングもします。

染めてからも湿気は禁物です。
錆がでることがあります。

草木染の鉄媒染を使った焦げ茶やグレー、黒系の着物をお持ちの方は保管に気をつけてください。

今までは草木だけで黒染めをしてきましたが、
黒に関しては草木と化学染料の併用の方が安心かもしれません。
宗廣工房でも化学染料を上手に併用していました。

長く受け継いでもらう紬の着物の場合は特に。









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