中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

いつの間にか、、、おせち作り40年!;^‐^ゞ

2014年12月30日 | こぼれ話



今年も押し詰まってまいりました。

昨日で工房の仕事は終了し、今日明日はお正月の準備に専念します。
毎年20歳の頃からおせち料理は私がほぼ一人で作ってきました。
以前はたくさんの種類と量をこなしてきました。
今は種類も10種類位で、量もわずかになりました。
生活クラブのおせちの少量のものを2~3品買ったりもします。

料理は元々好きな方ですが、この染織の仕事で自立し、経済を立てていくことは半端なことではできませんので、毎日料理に時間をかけることはできなくなり、その代わり素材の良いものをさっと煮たり、焼いたり、炒めたりのシンプルな料理に徹するようになりました。
普段は凝ったものはほとんど作りません。

ただ、20歳の頃に土井勝料理学校で学び覚えたおせち料理は毎年作らないと気分が落ち着きません。
昆布巻きのカンピョウの結び加減、田作りのからいりのやり方、蜜を絡めるときに炒ったものを鍋からサーっと入れてはいけないこと、栗きんとんの裏ごしのコツ、菊花かぶの切れ目の入れ方、ナマスの人参と大根の切り方を少し違えることなど、習ったことを40年以上経った今も本当によく覚えていて、若い頃に一心に覚えたことは一生この身から離れないのだなあと思います。
料理の基礎は理にかなっていることが多いです。

伝統的なもの以外にも2~3日日持ちするおかずを作ります。
レシピ本などほとんど見なくても大体同じように毎年作ります。

おせちも冷蔵庫での保管をすれば、濃い味付けにしなくても3が日は持ちますので、私は市販のものなどよりも薄味で作ります。
薄ければ良いとも思いませんが、素材の持ち味が残るような、あるいは引き出せるような味付けです。
栗きんとんも砂糖はかなり減らします。

きんとんの裏ごしは大変ですが、やはり潰しただけのものでは舌触りが悪いです。
以前はいろいろなやり方も試しましたが、ステンのふるいの目をバイヤスに置き、少しずつ気長にやるのが一番早くて美味しいと思います。
というか、おっとり気長な家人がクラシックのCDをかけながらやってくれるのです・・・


お芋は金時、砂糖は素精糖、栗は愛媛の栗を用意します。


工房の庭のクチナシで少し色を付けます。


さつまいもを茹でる時にお茶パックなどにいれて一緒に色だししても良いようですが、私は別にさっと煮出しておいて、裏ごししたさつまいもと砂糖で練るときに加減しながら入れていきます。
あんまり黄色が強いのは好みではありませんので。
でもクチナシは薬効成分もあるようですね。
染色の仕事では堅牢度の点で、あまり着尺には使いませんが、これからは部分的に使っていこうかと思います。


田作りは出来上がったらなるべく広げて冷まします。
小さくても尾頭つきです。目が可愛いです

おせちは手間がかかりますが、何もかも少量を作りありがたくいただきます。
お正月らしく器に盛りつけるのも楽しいです。
そして何より朝から質素だけれど手塩にかけたおせちをつまみながらお酒が飲める嬉しさです!!
このためにあとひと頑張ります!まだおせち作りは続いています。


さて、本題の・・・、
今年もお陰さまで紬の仕事をさせてもらいました。
いろいろとたくさんの方にお世話になりありがとうございました。

来年もいろいろ計画がありますが、またブログでお知らせいたしますのでご覧いただければと思います。
紬塾のみなさんも今期あと一回で終了となりますが、18日にお会いできることを楽しみにしています。
ブログをいつもお読みいただいてるみなさまもそれぞれの良いお年をお迎えください。



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糸を繋ぐ

2014年12月25日 | 制作工程



大掃除の季節ですがみなさまお忙しくされていると思います。
私も糸棚の糸の片付けを兼ねて、繋ぎ糸の入った着尺を制作しています。

少しずつ木枠に残った糸を眺め、どれとどれを使い、どの順番にするかなどを考えながら木枠に巻き取っていきます。

繋ぎ糸を使いすぎるとうるさくなりますので、効果的に少し取り入れます。
繋ぎ目もしっかり機結びにします。

偶然性からヒントをもらい、意図的に繋ぎ、出来上がった時にはそのことが気にならないような感じで上がればいいなぁと思っています。いい感じで機にかかりました。

繋ぎ目が出てくると嬉しい気持ちになります。

工房も少しずつ掃除をしています。
窓ガラスを磨いたら庭木が綺麗に見えてよい気が回ってくるような感じです。
糸の整理も仕事場の掃除も制作するうえで大事なことですね。

29日で仕事納になります。お正月まであとひと頑張りです!
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第9回紬きもの塾――半衿を付ける

2014年12月17日 | 紬塾 '13~'16



今期の紬塾も大詰めになってきました。着物の簡単な着方に入る前に、
先日実習で織った布の仕上げもしてもらいました。

湯通し(糊抜き)のあとスチームアイロンで仕上げます。
絹糸は糸自体は縮みませんが水を含ませると(洗うと)布が詰まります。
まずよこの幅を整えるようにアイロン掛けし、次に軽くたて方向に引きながら、弓なりにならないよう地の目をよく見て整えます。
経糸と緯糸のバランスが整ってくると、みるみる布が美しい色を呈してきてみなさんからも「見えてなかった経糸が見えてきた・・」などその変化に驚きの声が上がりました。


それぞれ自分が織ったところを切り離しふっくらした自分で紡いだ糸を愛おしみ、車座になってひとしきり眺めました。4人4様でした。
「この布についてずうっと話ができそう・・」などという人もいました。

今までこんなふうに布を眺めたことはなかったと思います。
この実習を通して糸の一本一本が見えてきたのです。
紬塾の成果です。よかったです!


着物の着方を練習したあとは、着物を着る上でちょっと面倒な襦袢の半衿のつけ方も実習しました。

半衿も幾通りか付け方がありますが、私のやり方は衿芯(三河芯)に半衿を取り付けてから襦袢に付けます。
このやり方は襦袢につけるときに最も簡単に付けられます。もちろん縫い付けてもいいのですが、私は小さな安全ピンを使うこともしばしばです。
衿肩あきのところの内側を20cmほどまつるだけです。


縫って付ける場合も大針で構いません。
プラスチックの差し込み式などよりも紬には自然な衿元の感じでお勧めです。


針を持つ基本を小中学校でみなさんほとんど習ってないのでこんな簡単なことでも
いろんなことが起きます。・ー - ×- ~, (^-^;

義務教育では人間の基本的な生きる力を衣食住身につけられるようにして欲しいです。
衣食住の生活技術を少し知ってるか否かは大きいと思います。
自分の中から生まれてくるゆるぎのない幸福感につながる大元だと思うのです。

紬塾に勇気を持って!?参加してくださるみなさんは、すぐにできなくても真摯に向き合う姿勢があるので、私もできる限りのことは伝えたいと限られてた時間に目一杯やります。

さて、次回で '14紬きもの塾最終回になります。
締めも気合をいれていきましょう!
楽しみにお待ちしています。o(^▽^)o




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アート鑑賞いろは塾――床の間奪回!

2014年12月11日 | かたち塾、アート鑑賞いろは塾



毎回、気づきや発見のあるアート鑑賞いろは塾ですが、今期最後の塾は櫻工房で7日に行われました。女性ばかりの参加となりました。

いくつかのテーマの中で、特に「床の間奪回」の話と共に、具体的に床の間に、かたちコレクションの絵画や置物を置いて鑑賞したり、他の物と置き換えてみたり参加者の若手アーティストの作品も飾ったり、、の実践は特に面白かったです。

床の間の飾り方は西洋的な単品の鑑賞方法ではなく、2点、3点を取り合わせるところに意味があるのですが、参加の若いアーティーストも、「自分の作品をこんなふうに展示してみたことはないので新鮮でした!」と言ってました。

波長の合うものを時間をかけて探すのも楽しいです。

床の間は必ずしも伝統的スタイルのものでなくても、見立てで良いのです。
自室の一角に、玄関の下駄箱の上に、床に板を一枚敷き、一段高くすればそこは床の間空間になります。

そこに何かを飾り取り合わせる。絵を掛け、置物や花や石やとりあわせる。
ものと向き合ってみる。
自分に出会えるかもしれませんね。

参加のお一人から一昨日、床の間の画像が添付されたメールが届きました。
ご本人の許可を得て少しご紹介します(斜体が引用文です)。

20代の方で、現在アルバイトをしながらいろいろ勉強中なのですが、糸や布、手わざ、古いもの、現代のもの、民俗的なものなど様々に興味を持って見聞きすることに夢中のようです。

この日の講義を受け早速一人暮らす家に帰り床の間に手持ちのものを置いてみたようです。



「飾る絵がなく上に視線を逃すことができず糸巻きなどごちゃごちゃ置いてしまいましたが、
一つ間違えると古道具屋の商品棚ですね。

左にある女神像は半身虫食いでぼろぼろなのですが、こう取り合わせると、過酷な労働の時代の女性を彷彿します。
病的なところが人々の身代わりのようでなんとなく気になって購入したものですが、床の間に取り合わせるとまた違う目線で見られます。
(中略)
これまでも写真にある机の上に抹茶腕や水差しを置いていたのですが、
どちらかといえば飾り棚に近い感覚でした。
なので、今回取り合わせて物を置いたことで、やっと床の間へ昇格です!!

知っている人にしかわかりませんが、写真の座繰り機は新潟のものなので、
水が飛んでも凍り付かないように、歯車が隠れています。
そこに寒さ(自然)の条件に対する人の知恵を感じるので、そういう気分で
眺めると良い感じです。ちなみに実用してみる予定です。」




いわゆる茶道などでいうところの床の間飾りとしての体は全く成していないのですが、私は前衛的な強い印象を受けました。

私も床の間を美術品の鑑賞や自分の心の置き場所としたりはしているつもりですが、こんな取合せを考えたことはありません。
道具を置くなんて・・と思いがちですが、糸は本来は人の命を守るために紡がれてきたわけですし、仏像も悲しみ、苦しみを抱えた人々の祈りの対象物ですから彼女の取合せの発想もうなずけます。

彼女が提示してくれた画像からもう一度糸のことや布を織ることの歴史、道具の叡智と美しさを再確認させてもらいました。

自分の身の丈に合わせ、今の自分を反映させ、取合せを考え、心の置き場所にもなっているこの床の間飾りは私にとって刺激的でした。
自分が大事にしたいものや事を少し高く掲げてみる。

美術館で名品を眺めるのも良いことですが、現代の暮らしにも床の間空間を持つことは誰にでもできるし、自分の美意識や興味を高め鍛えることにもなります。

お正月前の大掃除で少し片付けをして、自分の暮らしに床の間スペースを確保してみませんか?

アート塾でも今後も「床の間」は継続していきます。

今回のアート塾は20代の方が3名参加してくれていたのですが、フレッシュな空気が漂ってよかったです。

また紬の着物に先日お求めくださった小川郁子さんの帯留めを締めて参加してくださった貫禄充分!の60代の方もあり、様々な年代、立場の方と終了後も飲み会に突入し楽しい時間が過ぎました。

モノと出会い、毎回新しい目でモノを観続ける――。
新陳代謝のある床の間を奪回したいですね。

来年も充実した内容で開催していきますので、ぜひたくさんのかたの参加をお待ちしています。





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