中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

「江戸の衣装競(くら)べ ―国立歴史民俗博物館 野村コレクション―」

2014年09月29日 | 工芸・アート
 
「京名所模様小袖」 江戸時代中期 18世紀 国立歴史民俗博物館蔵 (後期展示)町田市HPより転載

「江戸の衣装競(くら)べ ―国立歴史民俗博物館 野村コレクション―」を町田市博物館で観てきました。

町田市博物館は櫻工房から30分ほどの所に在り、ウォーキングを兼ねて昨日行ってきました。
市博は工芸関係の良い展示を観ることができますので時々出かけています。

たいがい空いていますのでいつでもじっくり作品を観ることができるのですが、昨日は年配の二人連れが大きな声で作品の前でしゃべり続けるのに閉口しました。>_<
連れの人と話をするときは小さなヒソヒソ声ですよね。(^。^

一旦展示室を出て図書コーナーで閲覧して二人連れが出てからもう一度じっくり観てきました。
シ~~ンとしてました。
江戸初期から後期の流れがわかるように展示されています。
友禅染の出現がモードの変化へとなります。

当時の人々はこんな衣装をどんな気持ちで、どんな表情で纏っていたのでしょうか?
生き生きとした様子を想像します。
そして現代の着物へ思いを馳せました。
着物の姿は変わっても、生き生きとした美しい上質の布をまとう歓びを繋ぎたいと思いました。

前期(~10月5日)・後期(10月11日~11月3日)で小袖は全点入れ替えということです。
後期も行ってこようと思います。

町田駅からはバス便がたくさんありますので不便ではありません。
鶴川からも町田行きがあるのですが本数がとても少ないので鶴川の方は調べてから利用したほうが良いです。

詳細はこちらから。

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9月の紬の取合せ――初秋の陰りの中で

2014年09月19日 | 着姿・作品



前回のブログでもご紹介した講演会には紬の単衣にシナ布の帯、紋紗の羽織で出かけました。
9月初旬~中旬の着物は悩むところですが、この日はやや残暑の振り返しはあったものの紬の単衣でも大丈夫な気候でした。

下着の肌襦袢はリネンの汗取りのついたもの、キュプラのステテコ、グレー地の平織りの麻の襦袢で汗対策もしました。半衿は楊柳を付けました。

夜でしたので、帰りのラッシュにも対応すべく薄羽織も着て行きました。

紬の着物は独立して間もない頃に織り、数年後に自分用に初めて仕立てたもので、真冬と真夏を除いて本当によく着ています。
当ブログでも度々着ている画像がありますので見飽きたかもしれませんが、^-^; 私は飽きずに毎回新しい気持ちで着ています。

色は大分褪せてきましたが、なめし革のような滑りが出てきました。
作品集『樹の滴』でもこの着物にまつわるエピソードを紹介しています。

表裏を返して仕立て替えもしています。平織りのものなら紬は表裏を返すこともできます。
そんな話も講演会でもしてきました。

帯はいろいろ持ってまして、取っ替え、控え!楽しんでいます。^ヘ^♪

この帯は原始布と呼ばれるシナ布の濃淡2色で織られた微塵格子は、植物素材の特徴を上手に生かしているように思います。
織りの技術もかなりよく織れている品物で気に入ってます。
先人の知恵と労苦には頭が下がります。

帯揚げはあまり出番のなかった藍とヤマモモで緑に染めたものに昨年化学染料の青を少しかけ青緑にしたものです。

帯締めはインドネシアのトンボ玉を組み込んだ灰桜色の組紐です。
更紗の帯を買い始めた頃(この紬を着始めた頃)に購入したものです。


羽織は画像ではわかりにくいのですが、表が深緑、裏が紺になっていて、柳の葉の紋紗織になっています。
経糸が2色使われた紗織りで、深い織り色の味わいがあります。
着物を羽織に仕立て変えましたが、5月から9月のチリよけにもなりとても重宝しています。

一枚の着物を、季節の移ろい、あわいを感じ取り取合せの素材や色を選ぶ。
初秋の割り切れない陰りのような色合い、でも澄んだ空気の透明感を演出してみました。

単なる西洋的配色ではなく、日本の自然と日本人の感性の機微の取合せには
着物の数は少なくても、自足する豊かさを覚えます。








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「ミニ紬きもの塾」講演をしてきました

2014年09月15日 | 「紬きもの塾」移動教室
先日あるグループの方からご依頼を受け、「紬織りと現代の暮らし」というテーマで講演をしてきました。

聴衆は、会社経営者、会社員、自営業者、工芸家、美術家、音楽家、大学教授など、たまたま懇親会の時に個別にお話をさせていただいた方だけでも様々なご職業の方でした。また年齢層も幅がありました。

日本の文化を中心にした内容の講演会を企画、2ヶ月に1度講師を招いて開催されているようです。
二十数名の初対面の方ばかりでやや緊張いたしました。

いつもの「紬きもの塾」はそれなりに着物や織物に関心のある方を対象に話をしますが、全く一般の方を対象に話をするのは初めてです。ただ呉服的な紬の話をするわけにはいきません。
興味を持って聞いていただかなければなりませんし、飽きずに^^;聞いていただけるか心配でしたが、、、

結局いつものように原初的な紬、それ以前の布の話をし、真綿から糸をずりだしてもらうワークショップ、染の話、そして私の紬の着物を羽織ってもらい、着物を畳むところまでご覧いただきました。
 
真綿から糸をずりだすワークショップではまずは真綿の感触、蚕が吐き出した一本の糸のかたちをみてもらいました。


真綿や繭に触れていただき、草木で染めた糸を見て触り、リアルに何かを感じ取っていただけたように思いました。
みなさんからも質問などもあり、熱心に耳を傾けていただき、ホットしました。

懇親会の時にはタンスで眠らせている着物を着てみようかな。。とおっしゃる方もいらっしゃいました。

また紬の着物からの学びとして、着物を着ないまでも自分が良いと思う服やものを選び、大切に使っていくことが現代においても大切ではないかということも話しました。


どこでも集まりは女性が多いですが、今回は夜の時間帯ということもありますが、半数近くが男性でした。とても素敵な大人のグループでした。

当日私が着ていた着物についてはまた次回ご報告します(と言ってもいつものですが・・・ ~-~;)。









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第12回アート鑑賞いろは塾のお知らせです

2014年09月09日 | かたち塾、アート鑑賞いろは塾

左/ 月に薄柄鏡 銘「天下一吉次作」 江戸時代、右/ 栗柄鏡 銘「天下一家重作」 江戸時代(東京国立博物館本館8室にて)

秋の気配が感じられるようになりました。

今週末の13日土曜日に迫ってまいりましたが、第12回アート鑑賞いろは塾のお知らせです。
町田市鶴川駅すぐのところにあるポプリホール3階です。
テーマは[ものの美について(中級編)日本の形を例にして」

詳細は塾長の笹山央さんのブログをご覧ください。

とても興味深く、重要なテーマだと思います。

知識とかではなく感じたことを素直に言葉にしていきながら鑑賞を深めていかれたらと思います。
中級編となっておりますが初めての方もご参加いただけますのでぜひお越しください。
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黒を染めています

2014年09月07日 | 制作工程


黒を染めています。

数年前に桜や白樫で染めた焦げ茶にログウッド、アセンを重ね、深みのある黒にしていきます。

黒染めは何回も染重ねますので糸も傷みやすいのですが、
ログウッドと併用すると回数も減らせるので使っています。
ただ、深味を出すためにログウッドだけの黒を染めることは私はしません。


糸繰りも糸を毛羽立たせたり、もつれを増やしますので無駄にやる必要はありませんが、
ポイントを抑えて最小限よく繰ります。


途中ガラス瓶に染液を取り、染液と媒染剤の関係、吸収の度合いを観察します。
火から下ろした放冷後もこうして染液をよく観察します。
濃い染液だから濃く染まるわけではありません。
染料も媒染剤も過剰に使わないようにしています。


沸騰後は火を弱め綛全体を鍋に沈め煮染めします。


上の染めている画像では純黒に見えますが、乾くとご覧の通り茶味の墨色に近い感じです。

左の綛は灰緑系に重ねたので色相が違います。純黒にやや近いです。
藍下に重ねると純黒になります。

古来より、様々な身近な植物で染重ね黒系の色を作ってきたわけですが、
鉄媒染をするために糸が劣化しやすいのです。
正倉院御物などの古い染織品で黒いところだけ生地が抜け落ちているものをみかけます。

私も染色では気を使います。
もちろん後媒染でやりますが、鉄分をなるべく残さないよう
水洗い、湯洗いをよくやり、ソーピングもします。

染めてからも湿気は禁物です。
錆がでることがあります。

草木染の鉄媒染を使った焦げ茶やグレー、黒系の着物をお持ちの方は保管に気をつけてください。

今までは草木だけで黒染めをしてきましたが、
黒に関しては草木と化学染料の併用の方が安心かもしれません。
宗廣工房でも化学染料を上手に併用していました。

長く受け継いでもらう紬の着物の場合は特に。









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カヤツリグサ(マスグサ)で遊ぼう!

2014年09月03日 | こぼれ話


染色の合間にこんなことをしてみました。。。

近くの畑の際でカヤツリグサを採ってきました。
子供の頃から好きな草です。
穂を下に向けると線香花火の火花が散る様に似ているからです。
「パシャッ、パシャッ」と。

昔々、^^;二十歳すぎのある日、雑草生花というのをやろうと思い立ち草を集めてきました。
その中にこのカヤツリグサも入っていたのですが、母がそれを見て、茎を切って私に片方を持たせ、自分も反対側を持ち「みどり、見てみ」と嬉しそうな顔をして茎を裂いていったのです。
「これはマスグサって言うんだよ」と教えてくれたのです。
面白くて何度も何度もやってみました。

茎が三角形をしているのでこれができるのです。
二人でしないとできない遊びなので「なかよし草」とも言うようですね。



みなさんも空き地や道端をよく探してマスグサで遊んでみませんか?楽しいですよ!
7~9月の植物です。

昔の人たちは植物をよく観察して繊維を様々に工夫し暮らしに利用してきたわけですが、
こんな遊びもしてたのですね。(^-^)


こちらのサイトも参考まで。
わかりやすいです。



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