
夏から秋にかけ工房の玄関を飾ってくれていたフジの鉢植えを片隅に追いやる^^季節になりました。
フジの枝は染めたことがありませんが黄色の色素をたくさん持っているのですね。
紬塾もいよいよ終盤の着ることについての具体的な話に入りました。
受講者のお一人が、この日の講義を終わってから「なぜ着ることの話が最後の方なのかがやっとわかった」と話してくれました。
まずは糸や染の話や体験、そして着物の更生などの着物の文化的な話、そして着物を選び取り合わせたり、またあるものを生かす方法。そして着方で締めくくるようになっていますが、布を見る力や着物というものの背後にある文化的なことを少しは理解してから着物に入ると良いと思うからです。
昔であれば、子供の頃から親や周りの人達から自然に学べたことだとは思うのですが、今は親も祖父母も着物を知らない世代になっています。
ゼロから着物の世界に入ることは容易くはないと思います。
今回も思い込みや刷り込まれた情報ではなく、素直にものを見極められるように講義を勧めました。

まず取り合わせといえば上モノの取合せをすぐに思いがちですが、人の肌の色、髪の色、瞳の色などのパーソナルカラーについて話しました。
また似合わない色を身につけるときにも取合せでカバーすることもできるということについても少し触れました。
それから実は下着や足袋、長襦袢などがとても重要なのです。
初心者こそいい加減に選ばないで良いものを、自分の寸法にあったものを身につけると良いと思います。そのほうが着やすいのです。
小物一つ一つの選び方から、重要な長襦袢の素材、選び方についても話しました。

次にいよいよお楽しみの上モノの着物と帯の合わせ、小物を実際に色々取り合わせて話をしました。
私の個人的好みや世間で言われる決まりごとを話すのではなく、たとえばという事で茶の無地系の紬帯に帯締めを色々合わせ、どんな感じに見えるのかを皆さんと一緒に見ていきました。
自分の好みや季節のイメージだけに囚われることなく、帯や着物や小物がそれぞれよく見えてくるように選んでいきます。そうすると自分の小さな世界観では気づかなかった取合せにも出会えるのです。
たとえば「私はピンクは似合わない!柄ではない!」と決めつけないでピンクも色の質は様々です。
淡紅色は人や自然界の命の色です。血の色です。最も大事にしたい色です。
モノをよく観察すると色の声が聞こえてきます。
色は理にかなった様相を呈しているだけです。
あとは自然光で観ることが大切です。

次は具体的に、この藍の着物に帯はインド鬼更紗、あるいはレースのように織り出された絹の服地から仕立てた黒地の帯のいずれかを自分が身につけるならという指定をして帯揚げ、帯締めをまずは頭の中だけで思い描いてもらいました。
T.P.O.も設定してもらいます。
途中、言葉に出さないでもらい、全員が決まったところで順番に帯締め帯揚げを取り分けていきましたが、同じになる人はいませんでした。
この頃になるとみなさんの頬が紅潮して脳が活性化されている感じでした。*^-^*
取合せで大事なのはたった一つこれだけは避けるというルールだけだと思います。
いろいろな組み合わせがあるのが当然です。
でも高度な取合せを目指すなら本当は小さなものでも自立している質の高いもの同士を互角に合わせ、そこにハーモニーを奏でさせることだと思います。
そこを目指して研鑽を積みたいですね。

最後は自分で買ったリサイクルの着物をどうしたらよいのかという質問に答えました。
八掛を交換するだけでも人のモノから自分のモノになっていきます。
八掛帳を見ながらみんなで話し合いました。
八掛は裏地ですが、着物ではとても重要ですね。
リサイクル着物から入る人も多いですが、サイズがあったからとか、可愛いとか、リーズナブルとかで買うのは本当は初心者ではなくそれなりに着物に慣れている人のやることです。
まずは新しい反物からきちっと採寸して着物と襦袢を同時に作ることを特に初心者には勧めたいです。
あるいは洗い張りに出して自分のサイズに仕立て替えるのもよいでしょう。
着物を着るにはそれなりにお金はかかります。ある程度のお金を用意してからスタートすべきだと思います。結局中途半端になって遠回りし、途中で着物を着ることへの熱も醒めてしまうのではないでしょうか?
着物は単品で完成するのではなく、取合せの足し算をして(もちろん自分という人間も)
はじめて完成するものです。
一生をかけて一枚の着物と付き合う使う世界に大事なことがたくさん潜んでいます。
日本の美の世界、もう一度取り戻したいです。創るにせよ、使うにせよ。
12月7日(日)のアート鑑賞塾でも関連の話が聴けると思いますのでご参加ください。
あと1~2名の方大丈夫です。
詳細は前回のブログを参考にしてください。