中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

「桶谷寧の茶碗を観る会」のご案内

2013年02月14日 | お知らせ
「桶谷寧の茶碗を観る会」のご案内です。

世界に三碗しか現存しないといわれる南宋時代に焼かれた曜変天目茶碗を再現された、
京都の桶谷寧さんの茶碗を観る会を新宿の玄海「桐の間」で行います。

2008年にかたち21の企画で桶谷さんの展覧会を町田市の可喜庵でさせていただきましたが、私もその時以来、彼の茶碗に魅了されている一人です。
2011年に櫻工房内で「観る会」をした時の様子はこちらから。

私は若い頃に、大阪の東洋陶磁美術館で油滴天目茶碗(国宝)を観たことがきっかけで、静嘉堂文庫美術館の曜変天目茶碗を知ることになったのですが、観た当時「すごい!」と思っていました。
先月久し振りに観てきましたが、桶谷さんの曜変を自然光の中で手にとって朝から晩まで時間帯による色の変化まで観てしまったせいか、少しトーンダウンしてしまいました。。。
というのは美術館の照明では曜変は真価を発揮するかたちで観ることができないということです。
曜変の深い深い青黒い地の部分に光が反射して虹彩を放つのですが、もう少し「光を!」と言いたいです。
モノは光によって見えるのですから、光による褪色などはないやきものは、自然光が少しでも入ったらもっと美しいのだろうにと思います。
静嘉堂に限らず美術館全般に言えると思いますが、展示に工夫があると良いと思います。
玄海「桐の間」は障子越しに自然光が入ります。

また今回静嘉堂でもう一つ確認できたことは桶谷さんの黒織部は長次郎(楽家初代)の黒織部を彷彿とさせるということです。

そのことで気づいたことは桶谷さんの制作は小手先の技術や陶土、釉薬の調合にこだわるのではなく桃山期の陶工のあり様に思いを馳せているような気がします。
アバウトだけれど大事な所は押さえてある。
何を目指すのかがきちっと見えていて、そしてその再現だけをしようとしているわけではなく今という時代の中で自分の世界も築こうとしているのかと推察いたします。
もちろんその努力は大変なものだと思います。

その曜変天目茶碗も含め井戸、黒織部、志野茶碗、盃などをご覧いただきます。
工芸評論家の笹山央さんの進行で、桶谷さんにもお越しいただき、二人の話をまずは伺います。

やきものだけでなく、モノを作る上での臨む姿勢や発想の方法などはジャンルを超えて普遍性をもって参考になる点があります。

それにしても桶谷さんはいかにも陶芸家風でないところがいいです。
飾り気のない方ですが、淡々と自分にできる本当のことを、賢く頑張っておられるようにお見受けします。

会の後半はお食事をしながら歓談を楽しみたいと思います。
よかったら着物でご参加ください。

最新号の『かたち』No.11この度の会でも手にとってご覧いただける作品をご紹介しています。
2月1日が5期目の更新時期になっておりまして、更新をいただいたみなさまありがとうございました。

「かたちの会」新規の会員も募集しております。
暮らしや生き方、ものの見方、創作を深めてくれます。一度是非会誌のご購読を!


詳細は笹山さんのブログからご覧ください。
次号の発行は4月になります。



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冬の装い

2013年02月08日 | 着姿・作品
友禅ワンポイントの半襟は仁平幸春作 

寒い日が続いていましたが、急に暖かくなったり、また東京では雪が降ったり体調を崩されている方も多いのではないでしょうか?
1月下旬に地方へ出かけていたのですが帰る頃には風邪の症状が出始め6日間寝込んでしまいました。
久々に高熱が出ましたが、野口晴哉さんの考えに基づき薬は飲まずに水分だけは補給しながら経過させて治しました。
自分の体が治そうと必死に頑張っていますので、横から邪魔はせず、病の様子を観察しながら自分の体の声を聞いていました。
「生身の体、私を大事にしてください」と言ってました。

さて、毎年12月から3月初旬くらいまでよく締める帯があります。
着尺地から帯に仕立て変えたものですが、銀糸が使われていて光ります。
25~6年前のことですが、ある人から「この着物を何にしようかしら?」と相談を持ちかけられたとき、即座に「帯にしましょう!」とお勧めしました。
そしてちゃっかり私の分まで作らせてもらいました~。
素材の絹糸もとても質の良いものです。
クリスマスの頃になると飾りつけされた街路樹をよく見かけますがそんなイルミネーション風にも見えますし、うっすら雪化粧のようにも、また寒い地方の樹氷のようにも見えてきます。

そして着物は…紬にヒカリモノ?と思われる方もあるかもしれませんが、やはり冬の着物の自作の梅染刺子織の着物に合わせてみました。

縞はよこ絣の技法と組み合わせて織り出しています。
この刺子織は織るのは大変ではありますが、刺してある分地厚ですので単衣でも対応できます。
とても着心地が良くシワにもなりにくいです。張りはあるけれど柔らかいのです。

作品集『樹の滴』の中でも「早春の光」と題して刺子織をご紹介していますが、公募展に出品していた頃の入選作品です。刺子織は現在この1点のみ在庫しています。

染は梅ですが、木をチップにして煎汁をとります。煮出している時には梅酢のような気品のあるいい香りがします。
母が梅の花が好きで実家の庭に植えてありましたので、たくさん染めてきました。
一輪咲いても凛と絵になる梅の木に、故郷を離れ東京で生きる自分を梅の一枝に重ねていたのではないかと思います。
梅を見ると優しく強かった母を思い出します。
梅の開花も待たれます。

季節を楽しみに待ち、季節感のある着物や帯があるのは幸せなことですね。
寒い冬を気持ちは暖かく過ごしたいものです。







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