
梅雨の晴れ間をぬって節糸や玉糸の精錬をたくさんしていました。
蚕が吐き出した糸はすぐ使うのではなくアルカリ液の中で練る作業が必要です。
樫の灰から灰汁を作りその上澄みを使って練ります。
糸に触れた時の感触で練り具合をみます。
練り減り率をきっちり出します。
普通練り(セリシンを完全に取り除いた柔らかな絹糸の状態)は25%と言われていますが、草木で何度も染め重ねをする場合はやや若練にします。
私は若練の中にも練り具合を色々用意して織るものによって使い分けています。
未精錬の糸は固いので擦れ易く、筋切れすると聞いたことがあり私は使うことはありません。
当初はマルセル石鹸練りをしていましたが、灰汁練りに変えてから試行錯誤をしてきました。
今は精錬の釜の止め時を人差し指と親指の間で糸をきしませ、ヌメリや繊維の膨らみの感触でほぼ掴めるようになりました。
精錬は染る前の大事な工程であり、織物の骨格をなすものともいえます。色の発色にも影響します。
上の干してある画像は比較的おとなしめの玉糸です。
写真のピントが手前に合っているのでわかりづらいですが、左と右の糸の違いがわかりますか?撚糸の違いがあります。左が甘撚りです。ちょっとフワッとしてます。

こちらは左が正繭と玉繭との混じりの糸、右は赤城の節糸の若練。
枠はずしの節糸は白くはないけれど糸の波状形(営繭曲線)がしっかり残っていて力強い美しさです。この糸の形が本来の紬の美しさの原点だと思います。
それにしても蚕が吐き出した糸の回りは接着剤の役目のセリシンで25%も固められているのは繭を固く作る必要があるからですが、お蚕さんも偉いけれど、繭をお湯につければそこから1本の繋がった糸を挽き出していけることに気付き、またその糸を灰汁で煮ればしなやかな光沢のある繊維が取れることにも気付き、撚り合わせ、何千年も前から織物に利用してきた先人も偉いですね。
この神秘の糸を絶やさないよう微力ながら私も上質な織物を織ること、着ることを推進していきます。
時代は進んでも、太古の昔に思いを馳せものを作り使うことは大事だと思います。