中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

木斛染「一崩し」着物

2023年01月19日 | 着姿・作品
先月、お客様が木斛(モッコク)染ピンクの着物に、染帯を取り合わせ、工房までお越しくださいました。写真のピンが合ってなくて、質感わかりにくいですが…。落ち着いたピンクの着物と、濃い紫の縮緬帯とよく合っています。
小物は薄青紫の帯締めと、薄緑の帯揚の寒色系で抑えたところもスッキリします。 ※ご本人の許可を得て着姿をアップさせてもらいました。


また、12月とはいえ、この日は暖かく、ショールをラフに颯爽と巻き付けただけでお越しくださいました。ショールは少し前の作で、お母様用にお求め頂いたシックなものですが、引き継いで使って下さっています。
紬のコンパクトなショールは季節の変わり目や、気候不順な時にバッグに入れておくと、とても重宝します。ショールは櫻工房onine shop千成堂着物店で販売中。




ピンク「一崩し」の着尺は定番で、今まで何反も織ってきました。色違い、網代タイプも含め、紬らしいこの織りが、修業時代から好きでした。「崩し」という濃淡の色糸効果による織りです。
染めは木斛の枝葉で3~4年かけて染め重ねた落ち着いたピンクです。
糸の太細から生まれる織りの表情に、味わいがあって見ていて飽きないのです。16.08.02の記事でも藍の「一崩し」を紹介してます。

着尺の仕立てのご相談で見えたのですが、着姿を拝見しながら、寸法の確認もさせてもらい微調整しました。

以前仕立士の方に詳しく教わりましたが、着物の寸法は身体の寸法だけでなく、どんな着方をするかで違ってきます。
着付けと寸法の関係も奥が深いのですが、自分自身が寸法をどうすればよいか意識しなければなりません。
生地による違いもあります。他にもいろいろありますが、紬塾でも詳しくお話ししています。
みんな判で押したような、同じ着方である必要もなく、自分らしい着方を探りたいです。

工房でも現在ピンク「一崩し」着尺がご覧いただけます。
年齢、肌の色を問わず、どなたにでも似合う落ち着いたピンクです。



無地感覚ですが、無地ほどあらたまらず、カジュアルになりすぎず、現代の着物シーンには、帯次第で出番の多い着物です。
年配者向けには寒色系の緑味グレーの吉野の帯など合わせると落ち着きます。帯揚げは青白磁色。リンゴで黄色の下染をして、化学染料を1滴、2滴、2.5滴…。古い時代の焼きもののような微妙な色です。 (^_-)-☆

他の色でも糸をご覧頂き注文もお受けします。お問合せください。

工房は、南東からの障子越しの自然光で静かに集中して作品と向き合って頂くのに最良な環境です。
1~2月の午前中は陽射しが低く差し込みますので、色を特によく観て頂けます。
ご好評を頂いております帯揚げも、お手持ちの着物と帯との取り合わせの相談も承ります。

事前にWebからご予約いただく際には、あらかじめお好みやお探しの色などをお書き添えいただければセレクトして準備いたします。ご希望の日程を何日かご記入下さい。調整いたします。日曜日も可能な範囲で対応いたします。

冬の間も感染対策のため、常時換気します。暖かい格好でお出かけ下さい。
お車の場合は駐車スペース1台分あります。
ご予約、お問合せはこちらから。




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草木染帯揚げのこと

2023年01月06日 | 着姿・作品
初春のお慶びを申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年ショールを織り上げてからは、ヤマモモの剪定枝が手に入り、糸染、帯揚げを染めていました。
草木の生木を使った染めにしていこうと思ったのは、40年程前に実家のヤマモモの枝を試しに染めたことがきっかけでした。
10月頃だったと思うのですが、ヤマモモは黄色を染める染料として古くから使われてきました。私も乾材やエキスのヤマモモはよく使っていました。
生木のチップを煮出した染液は、無媒染の状態で、淡いピンクが染まり、赤ちゃんの頬の薄紅のような生き生きとした美しい色でした。いままで見たことのない草木のいのちの色でした。
ヤマモモも枝先に関しては、季節でかなり色の違いがあります。

トップの画像、ヤマモモなどの、オフホワイト&ベージュ系も自然光では、薄いけれど深い色できれいですが、画像は微妙すぎて難しいです。
ピンク系と黄色系があります。PC画面ではそれなりに写っているのですが、スマホで見るとかなり違う感じで、日々、陽にかざして見ている作者としては満足いかないのです。(-_-;

草木染と言っても、染料店などで、乾燥させたもの、エキス状のもの、液体のものなどが販売されています。
一般には商品として売られている多くはこういったものが使われています。
それらを宗廣力三先生の工房でも使っていましたので、独立した初期にはそういうもので染めていました。

しかし、生木の染材を染めてみると全く別の世界でした。染料としては酸化が不完全な状態で、不安定ですので、下手をするとムラになったり、染材を細かくする労力、煮出しの時間、ガス代、同じものが染まらないなど難しい点もあります。ただ、長年やってきましたのである程度は工夫と、見極めができるようになったかと思います。染重ねや、染めてからの空気酸化を十分にさせることなど堅牢性も高めるようにしています。


そして、濃い色にする場合などは乾材も使います。クロムなどの媒染材を使いませんので、繰り返し染めて濃い色にしています。何日もかかります。

着物や帯のことを想像しながら、時に自作の帯と合わせて、色の確認をしながら染め重ねて行きます。
この丸紋の帯揚は、生地に艶がありますので、帯揚げを主役にするような取り合わせも良いかと思います。右端、一番濃い色は華やぎがあり、薄い寒色系の地色の染の着物などにも良いと思います。グレーは紫のように見える瞬間もあり、これも華やぎがあります。これ以外にもオレンジ茶のグラデーションで、微妙な色違いを染めています。

帯揚げは糸染めと違い、付きっきりで染めます。
淡い色でも染め、干すを繰り返しています。一点もの帯揚げ自体がかなり仕事としては採算の合わないものなのですが、染めるのは料理をするように楽しいです・・(^^♪。が、本業は紬の着尺を織ることなので、暫く帯揚げ染めは休もうと思っています。

白生地代、ゆのし仕上げ代、送料などの高騰で、ギリギリ抑えておりますが、昨年夏から価格を5%程上げさせてもらっております。14,000円~19,000円(+税)です。染の回数などで価格は違います。

オレンジ系+グレーの上の画像のものは一番薄い、パウダーオレンジは16,000円~一番濃い蘇芳がかった赤茶色19,000円です。
オンラインShopにはパウダーオレンジと薄オレンジ、一番濃い赤茶色だけしか上げてませんが、shop内からお問い合わせいただければ、他のも個別に通販もいたします。不明な点はお問合せ下さい。

トップの画像、ヤマモモなどの、オフホワイト&ベージュ系は、直接工房でご覧頂ける方のみになりますが、ご遠方の方はHPからお問合せ下さい。

工房では他の色もご覧いただけますので、来房可能な方は、ご予約の上お越しください。





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