中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

麻の長襦袢を染めてもらいました

2016年03月29日 | 麻ローライズステテコ&肌襦袢/長襦袢


先日の展示会で紬を単衣仕立てにするということで決めてくださったお客様から、襦袢が合うものがないので、袷と麻の襦袢も作ってほしいとご依頼を受けました。
色見本から色を決めさせてもらい、上質の麻地をブルーグレーに染めてもらいました。
袷も洗える仕様で今染めてもらっています。

逆光で撮影してみましたが平織は透けすぎず単衣用にも良いと思います。

単衣仕立ての紬を襦袢を替え、長い期間着用するのは合理的です。
たくさん着物をそろえるのは難しい人にとっても、少ない枚数で、長く着続けられるのは良いと思います。
ただ、紬なら何でもよいわけではなく、長い期間着用できるかは、色や地風、糸質などを見なければなりません。

<単衣を長く愉しむ>もご参考まで。
今回決めていただいた紬はやや太めの糸で、経て密度を少し上げてありますので、充分単衣で長くお召いただけるものです。

私は盛夏は絽の麻の白い襦袢ですが、5月、6月、9月は真っ白ではなく色のついた麻の襦袢(グレー)を着用しています。
5月は絹の単衣用のものでも暑く感じられて、色のついた平織の麻です。
そして何より自分で手軽に洗濯できるのがよいです。

10月から4月までは袷用のものに替えて、羽織やコート、ショールと組み合わせて、いろいろと愉しんでいただければと思います。

麻は吸湿性、速乾性、抗菌性に優れ、肌着にするにもとても良いです。
次回はヘンプ(大麻)のステテコ、肌襦袢をご紹介する予定です。
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『ジョルジョ・モランディ ――終わりなき変奏』展

2016年03月22日 | 工芸・アート



昨日は少し早めに仕事を終え、東京ステーションギャラリーへ『ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏』展へ行って来ました。休日で多少込んではいましたが、案外、ゆっくり観ることができました(~4月10日)。
詳細はこちらから。

モランディは20世紀を代表的するイタリアの画家。
主に、花瓶や水差し、四角い物体、丸い物体、上戸を逆さまにして溶接したオリジナルな物体、それらをテーブルにどう配置するか、順番や奥行き、窓からさす光の加減などにこだわり絵を描いた。
モチーフとなる物体に積もる埃さえも絵の重要な要素となっているらしい。

特別な器物と言うわけでもなく、柔らかいけれど、少し黒を含んだ色調の静かな世界に引き込まれて見入った。見かけは静物画のようだけれど、観ていると普遍性をもった抽象絵画に見える。
水墨画を想起させる水彩画の小品も少しあって、東洋の影響も当然受けているのでしょう。
それから額縁もとても素敵でオシャレで、絵と共にしっかり鑑賞してきました。(@_@)

紬塾の染織実習で、3寸ほどの布を毎年織ってもらっています。
数種類の地糸と、自分でつむいだ少し太めの淡く染めたオフホワイト系の糸、ほんの少しの挿し色は使っても使わなくてもよいという条件。
条件は一緒だけれど、無数なバリエーションの布が生まれてくる。
モランディの絵を観て、この紬塾の実習にも通じるところがある・・と思いました。


チラシ裏面(印刷物では良さが伝わりませんが‥)

モランディは限られた数種類の物体や自然な状態をよく見、その配置や見え隠れする分量、あるいは窓から差し込む光を戸板で加減し描く。先に頭の中で構図を練りまわすのではなく、物体の形や色、状態を見ながら配置を生み出していく。

たとえば河原の石を数種類集め、ある大きさの枠に配置したとする。
どう配置するかは無数な可能性がありながら、また納まるべき位置は一つに限定されていくようなところもある。自然に導かれて生まれてくる世界。

自然や物や日常との関係性と向き合う世界こそ先端的であり、普遍性のある世界が、静かに存在してくるように思うのです。

紬きもの塾が「紬」や「きもの」という既存の概念に押し込められたりされるのではなく、また先入観や刷り込まれた知識で捉えるのでもなく、自分の目で素直に、自然を見詰め、見極められる目を養うことができれば、あるいはそのきっかけになればと思います。
「紬きもの塾‘16」申し込み受け付けは3月24日(木)からです。詳細は前記事をご覧ください。
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「中野みどり紬織展ー早春の光の中で」終了しました

2016年03月04日 | 個展・展示会
白樫、紫根、茜、藍、玉ねぎなどで染めた格子の着物

東慶寺ギャラリーでの個展が無事に終了いたしました。
ご来場くださいました皆様ありがとうございました。

今回は富山、岐阜、他にも遠くからわざわざ北鎌倉までお越し下さった方もありました。
また梅見の一般観光客の方も多かったのですが、ご当地、鎌倉市在住の方も多かったです。

みなさん入って来られると多くの方が「きれいだねぇ‥きれいだねぇ‥」「わ~きれい!わ~きれい!」とリピートしてつぶやかれ、目を輝かせます。中には涙を流される方もありました。
今見てきた梅やマンサク、フクジュソウの美しさと何ら変わりないものとしてご覧いただいているように思いました。私もギャラリーの窓から見える木々や花の色素を紬糸に移していると思っています。


ギャラリートークもワークショップも最後にみなさんから感想なども戴いたのですが、「勉強になった」「楽しかった」「有意義でした」ということでした。

きものは好きでたくさん着てきたけれど、素材についてなどはあまり知らなかったという方も今後は布をよく見ていきたいという趣旨の発言もありました。
繭からの糸繰りでは「波動を感じる」という発言もありました。
あのお蚕さんの小さな繭玉は小宇宙だと私も思っています。

限られた時間で十分な説明も出来ませんでしたが、ワークショップは自分でよく観察したり、触れたり、考えたり、何かは掴んでいただいたと思います。みなさん真剣に取り組んでいただきました。さらに詳しく学びたい方は4月からの「紬きもの塾’16」へご参加ください。

もしも自分が着るならいつ、どんな状況や思いで取り合わせるか…の取り合わせワークショップ中。


以前織ったすくい織の丸文様の帯の試し織りの部分を額装にしたもの。
今回も着物や帯、ショール、帯揚げ、額装、卓布などご自分のものとしてお決め下さる方もたくさんありましたが、こちらも皆さん真剣な表情で選ばれていました。
また6月に出産を控えた若い方が着物を決めて下さったのですが、次の世代にもつないでいく意思を感じました。この紬のような健康で丈夫な赤ちゃんを!と祈らずにおれません。
そして高年齢の方も多かったのですが、ショールを選ばれ「この歳でもきれいな物は買うわよ~。元気になれるから」と。生きる力は老いも若きも一緒ですね。
それぞれの方が自分にふさわしい物を帯揚げ一つでもしっかり見極められているのが印象的でした。

「もの買って來る。自分買って來る。」―― 『いのちの窓』河井寛次郎


綾織りのショールをしてお出かけ下さったお客様と一緒に。地厚ですが総綾織りですのでドレープもきれいに出ています。

お客様が重なる時間帯が多く、作品写真や着姿の写真がほとんど撮れませんでした。
私も毎日紬の着物でしたが、写真に納められませんでした。
あと、会場の自然光が美しく、写真にしても色や立ち上る「気」の再現は難しく、自然な光の中で見ているだけで十分でした。今この時が、この場が大事なのだという気持ちでした。

以前、私の指導の下で自分用の紬を織った方が、その紬に節糸使いの「羊歯文刺繍入り帯」を取り合わせて締めてきてくださいました。
拙著、作品集『樹の滴』に掲載されているものです。


さて、今後は単衣向けの紬や八寸、半幅帯を中心にした「紬の会」を5~6月に予定しています。
また「紬きもの塾’16」の申し込み受け付けは3月24日からになります。
後日、詳細はブログにてお知らせします。日程はこちら



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