
「第10期 紬きもの塾'18」が開講しました。
お陰様で10年目に入りました。
今期は遠方からの参加者もあり、また以前から気になっていたものの、今年、やっと日程が合ったということで参加してくださった方もいました。和裁をされる方、お茶、お香、日舞など和の趣味の方もいらっしゃいます。
着物はみなさんお持ちで着ることもできるということです。
ただ、紬に惹かれながらもよく素材のことなどわからないということで参加をしてくださいました。
まずは私の師であり、紬の基礎の教えを受けた紬織人間国宝、宗廣力三先生(1914-1989)の作品集を一緒に見ながら、先生の創作の原点にあるものについてなど説明しました。

上の写真は竹文様の手結絣で、シンプルなデザイン、色数は抑えながらも織物の奥行き、深さを醸し出した作品です。
織は研究生が担当しますが、きれいに絣を合わせています。
シンプルなデザイン故に技量のある方でないと織れません。ごまかしがきかないのです。

こちらは緯絣で織り出した「十草縞」原寸大の部分写真を見ながら解説しました。私もこの絣縞は2~3反色違いで織らせていただきました。初めての絣でしたが括るのも大変、織るのも大変でしたが無心で夢中で仕事をしました。織り上がったときに先生の奥様から「絣が合いすぎね!」と皮肉交じりに言われたのです。悲しい気持ちになりました。。(;_;)
そばにいらした宗廣先生が、それに対して「始めは合い過ぎぐらいでいいんだ」とフォローして下さったことを思い出します。合わせられるからずらすこともできる、という意味だったと思います。
修業時代は辛いことも多い日々でしたが、宗廣先生の本質を突いた言葉に納得し、また支えられてきました。
先生は郡上の土地に根ざした郡上紬を興し、紬織の根源を見極めつつ独自の世界を創り出した方です。私もその仕事の根っこは学ばせてもらいながら今の時代の中で私なりの道を切り拓いていくつもりです。来年は宗廣力三先生没後30年になります。
みなさんからもどんどん質問が出て予定の時間をオーバーして説明させてもらいました。

中盤では私が着ている紬を2枚用意しまして、服の上からですが、交替で纏ってもらいました。
袷と単衣、真綿系と玉糸系、ピンク系と黄色系。
紬といっても対局にあるものを二通り纏ってもらうことでどんな感じを受けるのか、違いをみてもらいました。私からは先に何の解説もしていません。みなさんの根源的感覚を呼び覚ましてほしいからです。
次回、このことは糸や色、織についての解説の中で解きほぐしていきたいと思っています。

それにしても毎回そうですが、紬を纏うと自然な色や風合いに「ワ~ッ」とみなさんから声が上がります。
また初対面の方ばかりですが、着るところを見ている方からも笑顔がこぼれ、和やかに会話が始まります。
素直にものを観察するところから始まり、先入観や固定観念ではない“紬織”と出会ってもらいたいと思います。