今回の紬塾のテーマは
1.「紬」とは?
2.糸のかたち
3.生木での染色
4.幸田文の、着物をめぐる文章についての受講者のみなさんそれぞれの感想やコメント
でした。
ここでは1.の「紬」とは? についてご報告します。
受講者のみなさんに、「紬」に対して持っているイメージを話していただいたのですが、
一人ひとりの発言を要約しますと――、
普段着。
ハレの場にはそぐわない。
素朴な印象。
ざっくりとしてフシのある着物。ぬくもりがある。
先染めの織りの着物。糸は生糸と違って太い。
真綿から紡いだフシのある糸で織られている。温かみのある風合い。
現代ではおしゃれ着として使われるけれども、フォーマルな場所では着れない。
真綿から紡いだ太い糸で織られている。風合いがある。
糸にもいろんな種類がある。
昔は普段着として着られたけれども、今は略礼装的にも着られる。
などでした。
[中野のコメント]
染織辞典なんかに書かれているのでは、真綿から紡いだ糸をタテ糸にもヨコ糸にも使って
織られた布を「紬」というとなっています。
しかしタテ糸にも紬の糸を使うと織りにくくなりますので、
現実の産地では生産性も上がらないし、コストも高くつくということで、
タテ糸は生糸あるいは生糸に近い玉糸、
ヨコ糸に真綿の糸あるいは玉糸を使っているのが多いようです。
現在の大きな産地ものとしては、タテ糸にも紬糸(真綿から紡がれた糸)を使っているのは
結城ぐらいと言ってよいでしょう。
ぬくもりがあるとかざっくりしているとか、
みなさん紬に対していいイメージを持ってくださってますが、
実際には、そういう紬は今は非常に少なくなっています。
私はそれをもう一度、かつて自家用に織られていたような真綿紬のよさをみなさんにお話して
いきたいなと思っているわけです。
また、今の紬に対してのもっと一般的な評価は、「硬い」「薄い」、そして
「細い糸を密度を詰めて織り上げ、平絹のような光沢を出そうとしている」
というイメージで見られています。
ですから最近は、フシがはっきりと分かるようなきものはあまり見てないはずだと思います。
逆に言うと、それだからセミフォーマルな着方もできるようになっているわけですね。
しかしそのように「硬く」「薄く」「密度を上げて」織ると
ざっくり感とかぬくもりとかが失われていきます。
糸の肥痩やフシがあるのを利用して、適度に隙間を作って織っていくことが、
隙間に空気の層ができて通気性とか保温性を持つようになります。
それがまた風合いや堅牢性を生み出すわけです。
ここに書ききれないこともありますが、私はその点を押さえた上で、
昔のままでもなく、現代の紬を目指したいと思っています。
布を見るときには表面的な色やデザインに目を奪われがちですが、
タテ糸ヨコ糸にそれぞれどんな糸が使われているのかを、
先入観を持たないで素直によく観察してみることが、
いい布を見分けるポイントになると思います。
「糸の話」では、精錬前や精錬後の節糸の匂いをかいだり、
感触をみたりしました。
個展(5月29日~6月1日)が迫ってまいりましたが、まだ製作中です。遠くからの
問い合わせもいただいているそうですが、また間際に更新したいと思います。
中野みどりの
HP