中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

『ジョルジョ・モランディ ――終わりなき変奏』展

2016年03月22日 | 工芸・アート



昨日は少し早めに仕事を終え、東京ステーションギャラリーへ『ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏』展へ行って来ました。休日で多少込んではいましたが、案外、ゆっくり観ることができました(~4月10日)。
詳細はこちらから。

モランディは20世紀を代表的するイタリアの画家。
主に、花瓶や水差し、四角い物体、丸い物体、上戸を逆さまにして溶接したオリジナルな物体、それらをテーブルにどう配置するか、順番や奥行き、窓からさす光の加減などにこだわり絵を描いた。
モチーフとなる物体に積もる埃さえも絵の重要な要素となっているらしい。

特別な器物と言うわけでもなく、柔らかいけれど、少し黒を含んだ色調の静かな世界に引き込まれて見入った。見かけは静物画のようだけれど、観ていると普遍性をもった抽象絵画に見える。
水墨画を想起させる水彩画の小品も少しあって、東洋の影響も当然受けているのでしょう。
それから額縁もとても素敵でオシャレで、絵と共にしっかり鑑賞してきました。(@_@)

紬塾の染織実習で、3寸ほどの布を毎年織ってもらっています。
数種類の地糸と、自分でつむいだ少し太めの淡く染めたオフホワイト系の糸、ほんの少しの挿し色は使っても使わなくてもよいという条件。
条件は一緒だけれど、無数なバリエーションの布が生まれてくる。
モランディの絵を観て、この紬塾の実習にも通じるところがある・・と思いました。


チラシ裏面(印刷物では良さが伝わりませんが‥)

モランディは限られた数種類の物体や自然な状態をよく見、その配置や見え隠れする分量、あるいは窓から差し込む光を戸板で加減し描く。先に頭の中で構図を練りまわすのではなく、物体の形や色、状態を見ながら配置を生み出していく。

たとえば河原の石を数種類集め、ある大きさの枠に配置したとする。
どう配置するかは無数な可能性がありながら、また納まるべき位置は一つに限定されていくようなところもある。自然に導かれて生まれてくる世界。

自然や物や日常との関係性と向き合う世界こそ先端的であり、普遍性のある世界が、静かに存在してくるように思うのです。

紬きもの塾が「紬」や「きもの」という既存の概念に押し込められたりされるのではなく、また先入観や刷り込まれた知識で捉えるのでもなく、自分の目で素直に、自然を見詰め、見極められる目を養うことができれば、あるいはそのきっかけになればと思います。
「紬きもの塾‘16」申し込み受け付けは3月24日(木)からです。詳細は前記事をご覧ください。
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