「影なき男」 1987年 アメリカ
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監督 ロジャー・スポティスウッド
出演 シドニー・ポワチエ
トム・ベレンジャー
カースティ・アレイ
クランシー・ブラウン
リチャード・メイサー
アンドリュー・ロビンソン
ストーリー
サンフランシスコのとある宝石店でダイヤが盗まれた。
早速FBIのヴェテラン捜査官スタンティンが現場に駆けつけるが捕まった犯人は何と店の主人。
店主を問いつめてみると、実は店主の自宅にある男が侵入し、夫人を拉致して立てこもっていた。
男は夫人の命と引き換えに宝石をよこせと要求していたのだった。
スタンティンらは店主宅を包囲し男を捕まえようとするが人質の生命の安全を図るため思うように動けず、男の巧妙な手口によってまんまと宝石を奪われ、しかも人質の夫人は左目を撃ち抜かれ殺されてしまう。
スタンティンは責任を強く感じこの凶悪犯追跡に執念を燃やす。
犯人は、カナダの国境に近い北大西部の大山岳地帯に釣り客のふりをして逃げ込む。
何も知らない他の釣り客やガイド役のサラの命が危なかった。
スタンティンは犯人を追うため山に詳しいガイドのジョナサン・ノックスに案内を頼むが、サラの恋人であり人嫌いなノックスは、自分1人で探すと言い張る。
最初からウマの合わない2人だったが凶悪犯追求のためにとりあえずコンビを組み、2日遅れで山に登る。
その間に凶悪犯スティーヴは正体を現わし他の釣り客4人を次々と岩壁から突き落とし、サラを脅して国境を越えようとする。
岩壁から落ちそうになったり大雪で凍死しそうになりながらも、スタンティンとノックスは力を合わせて山を越えスティーヴを追うが、すんでのところで取り逃がし国境を越えられてしまう。
だがスティーヴが取り引きをしようとしていた宝石ブローカーを問いつめ連絡場所を聞き出しスティーヴを待ち伏せたところ、公園でのカー・チェイスの後スティーヴはサラを人質に連れたままフェリーに逃げ込んだ。
寸評
今では主演を務める黒人俳優は大勢いるが、僕が洋画に親しみ始めたころの黒人俳優と言えば「野のゆり」で黒人初のアカデミー主演男優賞を受賞したシドニー・ポワチエしかいなかったように思う。
ポワチエの演じる黒人像は白人が望む「素直でおとなしく、礼儀正しい黒人」で、端正なルックスが後押しした。
「夜の大捜査線」や「招かれざる客」で人種差別問題を真正面から提起する重い題材に挑んでいるが、最後には白人と理解し合うと言う役柄である。
この作品でも山岳ガイドのノックスがポワチエ演じるFBIの捜査官スタンティンを拒否するところから始まり、最後には打ち解け合うと言う同じような結末を迎えている。
人種差別問題を扱った作品はそのように描くことが多かったが、その後は黒人差別が解決されないままで終わることによって人種差別の非道さを訴えるというひねった作品も登場してきている。
さて本作だが、宝石店の店主が自分の店に強盗に入るところから始まっているが、どうして自分の店に強盗に入らねばならなかったかが描かれていない。
妻を救うためというのは分かるが、それなら店からダイヤを持ち出せばよいと思うし、どうして強盗として逮捕されることになったのかも分からない。
僕に疑問を持たせて映画はスタートしたが、その後の追跡劇はなかなか見ごたえのあるものとなっている。
人質の夫人が殺されてしまうのもストーリー的に納得のものだが、宝石店主から責められる場面があってもよかったかもしれない。
その方がスタンティンの犯人逮捕にみせる執念がもっと浮かび上がったと思う。
ノックスが車でカナダへ逃亡を図るが、交通事故処理のパトカーを自分の捜査をしているものと思い込んで山越えに至るという描き方は説明が効いていて無理がない。
釣り客に紛れ込んだ犯人は一体誰なのかと興味を持たせ、なかなか明かさないのも観客を引き付ける要因の一つとなっている。
ただ、犯人が明らかになる釣り客一人目の殺害はちょっとおかしい描き方と感じる。
なぜ一度助け上げる必要があったのか?
犯人の殺人を楽しむ異常性を示すような描き方ではなかったので、おそらく演出として彼は犯人ではないともう一度観客に思わせたかったのだろう。
一人一人というサスペンス性はなく、一気に全員を殺害しているのは逃亡劇と追跡劇のの第2幕へ入るための時間的余裕のなさだろう。
逃げる側より、追う側に次々と困難な状況が襲ってくるのだが、山の厳しさが伝わるもので見所の一つだ。
道路の出たところで犯人はサラを殺してもよかったと思うが、それでは映画にならない。
強盗に入られたと訴え出ている婦人の登場あたりからの描き方はもう少しシャープに描けたと思う。
それが犯人だと気づき、現場検証で確信を得、仲買人が判明するまでの一連の流れは盛り上がりに欠ける。
冒頭の一件と言い、もう少し詰めていれば大傑作になっただろう。
スタンティンの最後の決め台詞は決まっている。
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監督 ロジャー・スポティスウッド
出演 シドニー・ポワチエ
トム・ベレンジャー
カースティ・アレイ
クランシー・ブラウン
リチャード・メイサー
アンドリュー・ロビンソン
ストーリー
サンフランシスコのとある宝石店でダイヤが盗まれた。
早速FBIのヴェテラン捜査官スタンティンが現場に駆けつけるが捕まった犯人は何と店の主人。
店主を問いつめてみると、実は店主の自宅にある男が侵入し、夫人を拉致して立てこもっていた。
男は夫人の命と引き換えに宝石をよこせと要求していたのだった。
スタンティンらは店主宅を包囲し男を捕まえようとするが人質の生命の安全を図るため思うように動けず、男の巧妙な手口によってまんまと宝石を奪われ、しかも人質の夫人は左目を撃ち抜かれ殺されてしまう。
スタンティンは責任を強く感じこの凶悪犯追跡に執念を燃やす。
犯人は、カナダの国境に近い北大西部の大山岳地帯に釣り客のふりをして逃げ込む。
何も知らない他の釣り客やガイド役のサラの命が危なかった。
スタンティンは犯人を追うため山に詳しいガイドのジョナサン・ノックスに案内を頼むが、サラの恋人であり人嫌いなノックスは、自分1人で探すと言い張る。
最初からウマの合わない2人だったが凶悪犯追求のためにとりあえずコンビを組み、2日遅れで山に登る。
その間に凶悪犯スティーヴは正体を現わし他の釣り客4人を次々と岩壁から突き落とし、サラを脅して国境を越えようとする。
岩壁から落ちそうになったり大雪で凍死しそうになりながらも、スタンティンとノックスは力を合わせて山を越えスティーヴを追うが、すんでのところで取り逃がし国境を越えられてしまう。
だがスティーヴが取り引きをしようとしていた宝石ブローカーを問いつめ連絡場所を聞き出しスティーヴを待ち伏せたところ、公園でのカー・チェイスの後スティーヴはサラを人質に連れたままフェリーに逃げ込んだ。
寸評
今では主演を務める黒人俳優は大勢いるが、僕が洋画に親しみ始めたころの黒人俳優と言えば「野のゆり」で黒人初のアカデミー主演男優賞を受賞したシドニー・ポワチエしかいなかったように思う。
ポワチエの演じる黒人像は白人が望む「素直でおとなしく、礼儀正しい黒人」で、端正なルックスが後押しした。
「夜の大捜査線」や「招かれざる客」で人種差別問題を真正面から提起する重い題材に挑んでいるが、最後には白人と理解し合うと言う役柄である。
この作品でも山岳ガイドのノックスがポワチエ演じるFBIの捜査官スタンティンを拒否するところから始まり、最後には打ち解け合うと言う同じような結末を迎えている。
人種差別問題を扱った作品はそのように描くことが多かったが、その後は黒人差別が解決されないままで終わることによって人種差別の非道さを訴えるというひねった作品も登場してきている。
さて本作だが、宝石店の店主が自分の店に強盗に入るところから始まっているが、どうして自分の店に強盗に入らねばならなかったかが描かれていない。
妻を救うためというのは分かるが、それなら店からダイヤを持ち出せばよいと思うし、どうして強盗として逮捕されることになったのかも分からない。
僕に疑問を持たせて映画はスタートしたが、その後の追跡劇はなかなか見ごたえのあるものとなっている。
人質の夫人が殺されてしまうのもストーリー的に納得のものだが、宝石店主から責められる場面があってもよかったかもしれない。
その方がスタンティンの犯人逮捕にみせる執念がもっと浮かび上がったと思う。
ノックスが車でカナダへ逃亡を図るが、交通事故処理のパトカーを自分の捜査をしているものと思い込んで山越えに至るという描き方は説明が効いていて無理がない。
釣り客に紛れ込んだ犯人は一体誰なのかと興味を持たせ、なかなか明かさないのも観客を引き付ける要因の一つとなっている。
ただ、犯人が明らかになる釣り客一人目の殺害はちょっとおかしい描き方と感じる。
なぜ一度助け上げる必要があったのか?
犯人の殺人を楽しむ異常性を示すような描き方ではなかったので、おそらく演出として彼は犯人ではないともう一度観客に思わせたかったのだろう。
一人一人というサスペンス性はなく、一気に全員を殺害しているのは逃亡劇と追跡劇のの第2幕へ入るための時間的余裕のなさだろう。
逃げる側より、追う側に次々と困難な状況が襲ってくるのだが、山の厳しさが伝わるもので見所の一つだ。
道路の出たところで犯人はサラを殺してもよかったと思うが、それでは映画にならない。
強盗に入られたと訴え出ている婦人の登場あたりからの描き方はもう少しシャープに描けたと思う。
それが犯人だと気づき、現場検証で確信を得、仲買人が判明するまでの一連の流れは盛り上がりに欠ける。
冒頭の一件と言い、もう少し詰めていれば大傑作になっただろう。
スタンティンの最後の決め台詞は決まっている。
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