中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

カスハラの特異性(続々編)

2024年05月20日 | 情報
カスハラ「対応いたしません」 厳格な方針発表 JR東グループ
4/26(金) 時事

JR東日本グループは26日、客が従業員らに過度な要求や迷惑行為などを行う「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対処方針を発表した。
カスハラが行われた場合、「お客さまへの対応をいたしません」としている。
JR東グループは、対応を中止するカスハラとして、身体的・精神的な攻撃や土下座の要求、社員の個人情報のSNS投稿などを例示した。
悪質な場合は警察や弁護士などに相談するという。
客の意見や要望には「今後も真摯(しんし)に対応する」とした上で、
「カスハラには毅然(きぜん)と対応し、社員一人ひとりを守ることも、
継続的に安全で質の高いサービスを提供していくために不可欠と考えた」と説明している。
JR各社でカスハラへの対応方針を発表したのは初めてとみられる。
鉄道事業者では東京メトロが3月に対応ポリシーを制定している。


◎JRのカスタマーハラスメントに対する方針


JR東日本グループは、グループで働く社員一人ひとりが持つ能力を最大限発揮し、
心身ともに健やかに、いきいきと活躍することができる、安全で働きやすい職場環境を確保することが、
お客さまへ安全で質の高いサービスを提供する基盤であるものと考え「JR東日本グループカスタマーハラスメントに対する方針」を策定しています。

はじめに
JR東日本グループは、安全で質の高いサービスを提供し、お客さまのご期待に応え、
国内外の法令遵守はもとより、それぞれの地域の文化の尊重、地球環境・人権に配慮した事業活動に取り組むことで
すべての人の心豊かな生活の実現を目指しています。
一方で、当社グループのサービスをご利用されるお客さまの一部には、
暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等のカスタマーハラスメントに該当する迷惑行為が見受けられることがあります。
これらの行為は、安全で質の高いサービスの提供を担う当社グループで働く社員の尊厳を傷つけ、安全で働きやすい職場環境の悪化を招くものです。
当社グループは、お客さまからのご意見・要望に対して、これからも真摯に対応してまいります。
しかしながら、カスタマーハラスメントに該当する行為に対しては、
毅然とした対応を行い、グループで働く社員一人ひとりを守ることも、
継続的に安全で質の高いサービスを提供していくためには不可欠と考え、
「JR東日本グループカスタマーハラスメントに対する方針」を以下のとおり策定しました。

カスタマーハラスメントの定義
お客さまからのクレーム・言動のうち、要求内容の妥当性が認められないもの又はその妥当性に照らして、
当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであり、
当該手段・態様により、当社グループで働く社員の就業環境が害されるおそれがあるもの

【該当する行為】
以下の記載は例示でありこれらに限られるものではありません。

・身体的、精神的な攻撃(暴行、傷害、脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)や威圧的な言動
・継続的な言動、執拗な言動
・土下座の要求
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動、性的な言動
・当社グループで働く社員個人への攻撃や要求
・当社グループで働く社員の個人情報等のSNS/インターネット等への投稿(写真、音声、映像の公開)
・不合理又は過剰なサービスの提供の要求
・正当な理由のない商品交換、金銭補償の要求、謝罪の要求

◎カスタマーハラスメントへの対応姿勢
当社グループは、グループで働く社員一人ひとりを守るため、カスタマーハラスメントが行われた場合には、お客さまへの対応をいたしません。
さらに、悪質と判断される行為を認めた場合は、警察・弁護士等のしかるべき機関に相談のうえ、厳正に対処します。



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カスハラの特異性(続編)

2024年05月17日 | 情報
東京都の検討中の条例案です。

カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会
第4回令和6年4月22日(月)資料

以下、資料より抜粋です、
ルールに盛り込む内容に関して(議論のたたき台)③

◎「カスタマーハラスメント」を表す用語

○「著しい迷惑行為」とは、次のいずれかに該当する行為が考えられる
⑴違法な行為
暴行、傷害、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害、不退去他
⑵不当な行為
申出の内容又は行為の手段・態様が社会通念上相当であると認められないもの
※社会通念上の相当性は総合的に判断

◎各主体の責務・役割
○都の責務・役割
・情報提供、啓発・教育、助言・相談その他必要な施策を実施
※施策の推進の内容を、別途規定
・区市町村と連携 ・施策を推進するため、必要な財政上の措置
○都民の責務
・都が実施するカスタマーハラスメントの防止に関する施策に協力
○消費者(等)の責務 ・カスタマーハラスメントに関する理解を深める
※都民か否かを問わない
○就業者の責務
○事業者の責務
・カスタマーハラスメントに関する理解を深める
・事業者が実施する防止の取組に協力
・都が実施する施策に協力
・カスタマーハラスメントを受けた就業者の安全を確保行為者に中止の申し入れなど適切な措置
・就業者(従業員等)がカスタマーハラスメントを発生させない

 ※事業者による措置(体制整備、被害者への配慮、防止手引の作成など)を、別途規定

◎事業者による措置
※事業者の措置の詳細は、指針(ガイドライン)に記載
⑴相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・相談先(上司、職場内の担当者)をあらかじめ定め、これを就業者に周知する
・相談を受けた者が、あらかじめ定めた留意点などを記載したマニュアルに基づき対応する等
⑵被害を受けた就業者への配慮のための取組
・事案に応じ、カスハラ行為者に複数人で対応することやメンタルヘルス不調への相談対応等
⑶カスタマーハラスメントによる被害を防止するための取組
・カスハラ行為への対応に関するマニュアルの作成や研修を行う等
(業界団体が作成したマニュアルを参考とすることを推奨)
⑷取引先と接するに当たっての対応
・立場の弱い取引先等に無理な要求をしない、取引先の就業者への言動にも注意を払う
・自社の社員が取引先でカスハラ行為を疑われ、事実確認等を求められた場合は協力する等
※ 関係法令・告示・厚生労働省の企業マニュアルに沿って内容を検討
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カスハラの特異性

2024年05月16日 | 情報
カスハラの特異性

〇カスハラは、パワハラ等同じハラスメントの中でも、異質ですので慎重に対処しなければなりません。

まず、カスタマーハラスメント(カスハラ)については、公式の定義づけがありません。
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、一般的には小売店や飲食店で客から店員に対して行われるBtoC型ですが、
取引先から自社の従業員に対するBtoB型もカスハラになります。
当原稿からは、離れますが、東京都は都条例で「カスハラ」を定義づけし、防止条例を制定する(24.4.21NHK報道)見込みです。

〇さて、カスハラと、カスハラ以外(パワハラ、セクハラ、マタハラ等)とは、何が違うのか?

カスハラ以外は、各法令によって「防止措置」が義務づけられています。
措置の内容は、いわゆる「パワハラ指針」(令2、厚労省告示5号)に示されている通り、
・方針の明確と周知・啓発
・相談体制の整備
・発生時の調査、被害者・加害者への対応
です。
一方で、カスハラ対策では、体制整備が望ましいとされているものの、義務化はされていません。

(参照)
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して
雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】

〇しかし、カスハラ対策では、上述の防止措置義務はないものの、労契法第5条に基づく「安全配慮義務」が求められています。
労契法第5条では、
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、
必要な配慮をするものとする。」とされています。
つまり、従業員がカスハラを受けているのが明白であるのに、これを見逃す経営層、管理職層は労契法第5条に違反することになります。
ただし、会社側が然るべき処置を施している場合には、例えトラブルがあったとしても、
会社側には、安全配慮義務違反が否定された判例もありますので、会社側は対策を怠らないように注意が必要です。
結果的に、内容的にはカスハラ以外と同様になります。

〇続いて、労災保険関係です。今回(23.9.1施行)、「心理的負荷による精神障害の認定基準」の別表に、
顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」とあるように、カスハラが具体的な出来事として追加されました。

〇従業員がカスハラを受けているのが明白であるのに、これを見逃す経営層、管理職層は処罰の対象になりますので、
細心の注意・配慮が必要であることを強調します。

〇参考になるサイト
「あかるい職場応援団」厚労省

カスタマーハラスメントを知っていますか?


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個人のうつ病リスクが増加

2024年05月15日 | 情報
重要な情報と受け止めました。

京都大学HPより転載

家族間での心血管疾患とうつ病の関連を明らかに-配偶者の心血管疾患により個人のうつ病リスクが増加-

井上浩輔 白眉センター/医学研究科特定准教授、近藤尚己 医学研究科教授、
古村俊昌 米国・ボストン大学(Boston University)修士課程学生、津川友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授らの研究グループは、
全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診および医療レセプトのデータ(約28万人)を用いて、
配偶者の心血管疾患(CVD)によって本人のうつ病リスクが上昇することを明らかにしました。
これまでの研究により、個人レベルではCVDとうつ病には様々な関連が存在することが報告されていました。
一方で、個人のCVDがその家族のメンタルヘルスにどの程度影響しているかについては明確な検証がされていませんでした。
本研究では、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する世帯主(被保険者)とその被扶養者を対象とし、
被扶養者のCVD発症(脳卒中、心不全、心筋梗塞)の有無における世帯主のうつ病リスクの変化を比較しました。
その結果、被扶養者がCVDを発症した家庭では、
そうでない(被扶養者がCVDを発症していない)家庭に比べて、世帯主のうつ病リスクがより高く認められました。
また、被扶養者の発症したCVDがより重症である場合、世帯主のうつ病リスクがより高くなることが示されました。
本結果は、配偶者がCVDを発症した際に、そのパートナーに対してメンタルケアを提供することの重要性を示唆しています。
予防医療が注目を浴びる近年において、患者本人に加えて患者の家族を意識したケアを提供することは重要な視点となる可能性があります。
このような家族単位での健康に着目した研究は世界的に見ても限られているため、さらなる知見の創出と効果的な施策の開発が求められます。
本研究成果は、2024年4月13日に、国際学術誌「JAMA Network Open」にオンライン掲載されました。




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(プラス情報)Z世代は有望 社会を変える力

2024年05月12日 | 情報
Z世代は有望 社会を変える力
The Economist 2024年4月30日

一つの大きな人口動態グループが成人を迎えつつある。1997年から2012年に生まれの「Z世代」だ。この集団に属する人は世界で約20億人に上る。米国と英国ではZ世代が人口の20%を占め、その割合はベビーブーム世代に匹敵する。インドとナイジェリアでは、Z世代の人口がベビーブーム世代を大きく上回っている。
それぞれの世代には特徴的な物語がある。ベビーブーマーは戦後の出産ラッシュで生まれた世代だ。ミレニアル世代は07〜09年の金融危機に大きな影響を受けた。一般的にZ世代はスマートフォンに疲れていて、上の世代より厳しい時代を生きることを余儀なくされているとされる。

精神的不安感が強い世代
欧米諸国では、今日の子どもは親世代より経済的に豊かになることは難しいと世論調査に回答する人が増えている。若い世代自身、マイホーム購入の難しさから気候変動が生活に及ぼす危機に至るまで、幅広い問題を危惧している。
人格形成期に暗いニュースや書き込みをネット上で読みあさり、FOMO(Fear Of Missing Out=取り残される恐怖感)にさいなまれてきたZ世代の間では今や、不安症やうつがまん延している可能性があると社会科学者は懸念する。
米国と英国の政治家は、16歳未満を対象とするスマホの利用禁止やSNS(交流サイト)の利用制限を検討している。親や教師はいたるところで子どものスクリーンタイム(ゲームやスマホなどの画面を見ている時間)に目を光らせている。
これだけの材料をみれば、Z世代について楽観的になるのは難しいような気もする。しかし、世界を見渡し、広い視野でよく見ると、Z世代は必ずしも不運ではないことがわかる。彼らは多くの点において、なかなか恵まれた状況にあるのだ。

新興国の高成長や技術普及が追い風
まず、前述したZ世代の一般的な説明には、重要なポイントが抜け落ちている。世界の12〜27歳の約5人に4人が新興国に住んでいるという点だ。ジャカルタやムンバイ、ナイロビなどでは高い経済成長と技術の普及を受けて、若年層は親世代よりはるかに豊かになっている。
経済的に恵まれているだけでなく、健康状態も良好で教育水準も高い。スマホを所有していれば、情報を集めて活用する力が強く人脈も広い。国連が21年に実施した調査で新興国の若者のほうが先進国の若者より楽観的だと結論付けられたのも、それほど不思議ではない。

だが、世界の中には、ここ数十年間のような急成長が二度と訪れることはないだろうという懸念が根付いている地域もある。顕著な例が中国だ。経済の先行きが不透明なことと、進学率が高まって高等教育の価値が低下するなかで、中国の学位取得者の3人に1人以上が失業している可能性があるとみられている。
先進国の状況は一般的に思われるほど悪くない。Z世代は米国では就業者数で今やベビーブーム世代に迫り、職場の中心で大いに活躍している。労働需要の強さが追い風になっている面もあるが、Z世代が賢明にもセールスポイントになるスキルを身につけていることが役立っている。理工・医学系を専攻する人が大多数であり、人文系の人気が低下しているのだ。

高い賃金上昇ペース
Z世代の賃金は上の世代より速いペースで上昇しており、富裕国では若者の失業率が数十年ぶりの低水準にある。米国で年齢が同じ時点における各世代の実質平均所得(税・社会保障調整後)を比較すると、Z世代はミレニアル世代やX世代を優に上回っている。
一般的にみて、住宅の取得しやすさは1980年代以降確実に低下している。しかしZ世代の場合、賃金上昇率が他の世代より高いため、住宅価格の年収倍率は10年前のミレニアル世代とほぼ同水準にある。さらに、今日の若年層は少なくとも、他の世代より所得に占める貯蓄の割合が大きい。
Z世代はすでに労働市場に変化を起こしている。この世代の労働者は交渉力が強く、自分たちもそれを自覚している。ミレニアル世代の多くが成人を迎えた時期には、金融危機の影響が残っていた。彼らは雇用面で不安感が強く、賃上げを要求することには及び腰だった。一方、Z世代はよりよい機会を求めて転職したり、あくせくせずに人生を謳歌したりすることをためらわないようだ。
この世代への対応に不慣れな上司は不平をこぼすかもしれない。しかし、Z世代の動きによって全社的に賃金や手当が手厚くなれば、上の世代もひそかにZ世代に感謝するだろう。

高い環境意識
Z世代は他の面でも社会を変える可能性がある。若年層は気候変動に対する危機感が強い。彼らが選挙権年齢に達すれば国は政策を実施することを迫られるだろう。より大局的には、世論調査によるとZ世代は大きな政府を求める傾向があることがわかっている。自分たちの納税額が増えるとわかればZ世代も考えを変えるかもしれないが、大きな政府を志向し続ける可能性もある。
Z世代は概して真面目だ。上の世代と比べて夜更かしや深酒、不特定多数との性交渉に浸ることが少ない。これにはマイナス面もある。人と面と向かって交流することや性交渉が少なく、孤独を訴えることが多い。
欧米のほとんどの国では、不安症やうつを訴える人の割合が上昇している。メンタルヘルスに関してオープンに話そうとする風潮の高まりを反映している可能性はある。しかし、それ以外の要因も関係しているとみられる。
SNSが若者の精神にどの程度ストレスを与えているかという点については様々な議論がある。欧米では、SNSの普及と同じタイミングで心理的不安が増大した。だが、その因果関係を証明するデータは限られているし、そのほとんどは富裕国の成人を対象とする調査で得られた結果に基づいている。

技術革命の最前線に立つ世代
明らかに言えるのは、Z世代が技術革命の最前線に立っているということだ。スマホに続いてSNSアプリが世界で急速に普及した結果、ユーザー、特に若者たちは競って有効に活用する方法をマスターしようとした。SNSは娯楽のほか、人や情報とのつながりなどの利点をもたらしたが、その利用には代償も伴った。コンテンツの中には有害なものがあり、勉強や睡眠にあてられたはずの時間が、画面のスクロールに費やされた。
革新的な技術は往々にして欠点を伴うが、人間はこれまでそうした問題に対処してきた。車の危険性に対して、シートベルトと交通規則が安全確保の役割を果たしたことを考えればよい。前向きな動きとして、SNSの利用者はその弊害と利点を比較検討し、使い方を変え始めている兆しがある。
一例として、自分自身のプライベートな情報に関する投稿を不特定多数に公開するのではなく、メッセージアプリの非公開グループに公開する人が増えている。
これまでのところ、若者のスマホ利用を全面的に禁止することを正当化するようなデータや研究結果はない。だが、学校が教室でのスマホ利用を禁じるのももっともであり、親が子どものスクリーンタイムを制限するのもまっとうなことだと言える。
年長者が若者を心配するのは自然なことだ。それでメンタルヘルスへの対応が改善されたり、住宅規制が緩和されて建設件数が増えたりすれば、悪いことではない。Z世
代が持つ創意工夫する力と実際に成し遂げている成功をきちんと評価するべきだ。

(c) 2024 The Economist Newspaper Limited. April 20, 2024 All rights reserved.
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