黒幕「ルフィ」ワルの履歴書 凶悪犯行手口の“原点”は11年前の札幌強盗事件 - Yahoo! JAPAN
>11年前、札幌の強盗事件で逮捕された経験から、罪をすべて他人にかぶせ、逃げ切る手口を学んだのでは
広域連続強盗事件の指示役だった「ルフィ」ら4人は、来週中にもフィリピンから日本に移送される方向だ。これまで「ルフィ」は、どんな犯行を重ねてきたのか。
ワルの原点は札幌にあった。
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フィリピンの入国管理局が、日本から来た「かけ子」36人をマニラの廃虚ホテルで拘束したのは、2019年11月13日のことだった。
まんまと摘発を逃れた渡辺優樹容疑者(38)ら「ルフィ」を名乗る特殊詐欺グループの幹部らは、偽名を使ってマニラの高級ホテルに長期滞在。ぜいたく三昧の生活を送りながら、特殊詐欺を繰り返していた。
「寝泊まりしていたのはスイートルームで、ダマし取った現金を日本から運ばせ、カジノで豪遊したり、現地の女性を連れ込んではドンチャン騒ぎをしていた。連日数十万円を使っていた」(地元関係者)
国際手配されたリーダー格の渡辺容疑者をはじめ、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)ら4容疑者がフィリピン当局に身柄を拘束されたのは21年4月。入管施設に閉じ込められるまで4人は約1年半もの間、優雅な逃亡生活を送っていた。
警視庁は渡辺容疑者ら4人が全国各地で約2300件、被害総額35億円に上る特殊詐欺事件に関与したとして、逮捕状を取得。4人のうち渡辺、今村、藤田の3容疑者は北海道出身で、同じ1984年生まれだった。
「実家が酪農家の渡辺は道東の別海町から札幌に出てきて、大学時代にキャバクラ店の経営を始めたが、うまくいかなかった。新店舗の開業資金を調達するため、11年前、札幌市内の元ホストの自宅に押し入り、現金1000万円と300万円相当の腕時計などを盗んだ。その時の共犯者が、20代前半から行動を共にしていた藤田です。渡辺、藤田の2人と夜の街で親しくなった今村も10代の頃からススキノで働き、風俗店を経営していた」(地元関係者)
男たちは海を渡り、フィリピンで大がかりな特殊詐欺グループを組織し、次々と凶悪犯罪に手を染めていく。
「大口の特殊詐欺グループは、人手や事務所、通信機器が必要で、人の出入りが激しくても怪しまれず、すぐに逃亡できる海外に拠点を置くケースがほとんどです。これまでも拠点を移しながら、何度も摘発を逃れてきた。渡辺が、現金をフィリピンまで届けさせる『運び屋』を任せていたのが、当時29歳だった自分のオンナです。共通の知り合いである風俗関係者から紹介されたそうです。渡辺はそうやって役割分担をし、本人が直接犯行に関わらない組織をつくり上げてきた」(捜査事情通)
■過去の失敗を教訓にしたのか
そんな特殊詐欺グループがタタキ(強盗)にシフトしたのは、22年春ごろ。何があったのか。
「一連の特殊詐欺事件で70人以上の実行犯が逮捕され、本人たちも入管施設に拘束され、これ以上、特殊詐欺を続けることが難しくなった。それまでかけ子や受け子を捨て駒にして、その都度、摘発を逃れてきた渡辺らは、それをタタキに応用した。実行役を『闇バイト』として雇い、匿名性の高い『テレグラム』を使えば、アシもつきにくい。スマホ一つあれば簡単にできます。複数の指示役が『ルフィ』を名乗っていたのも、首謀者を明らかにしないためでしょう。11年前、札幌の強盗事件で逮捕された経験から、罪をすべて他人にかぶせ、逃げ切る手口を学んだのでは」(捜査事情通)
悪名高い渡辺容疑者が、地元で「ビッグボス」と評されるわけだ。
ルフィ事件の黒幕は相当な大物」懲役4年半喰らった“闇バイト”スカウトマンが語る犯罪集団の組織図
>「“OS”(オレオレ詐欺)と違って“ルパン”(窃盗)だと、ひとつの案件で3人ほどがグループになり交通費、宿泊費、レンタカー代、バールや作業着代など、費用は計20万円ほど。ところがOSとなると、掛け子や受け子、見張りなどで最低4、5人必要なうえに、名簿代や足がつかない電話機代などで、500万円は必要になる。“叩き”(強盗)だと、かかるカネはルパンとそう変わらないが、人数は5、6人は必要です」
2/14(火) 6:01配信
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2月7日に送還され、憮然とした表情を見せた今村容疑者
「『ルフィ』らは、いくらなんでも強盗のやり方が雑すぎる」 そう語るのは、かつて特殊詐欺容疑で逮捕され、4年半服役した経験を持つ中山則文氏(仮名・40代)だ。
【画像あり】一目でわかる「悪の階級社会」図
フィリピンを拠点に特殊詐欺事件に関わったとして、強制送還とともに逮捕された渡邉優樹(38)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の4容疑者。東京・狛江市の強盗殺人事件など、連続強盗事件への関与も併せて捜査されるが、彼らの上に「黒幕」がいるのかも焦点になっている。
中山氏は、自身の経験から「黒幕はいるはずです。“OS”(オレオレ詐欺)を組織的にやるにはかなりの予算が必要ですからね」と話す。
「“OS”(オレオレ詐欺)と違って“ルパン”(窃盗)だと、ひとつの案件で3人ほどがグループになり交通費、宿泊費、レンタカー代、バールや作業着代など、費用は計20万円ほど。ところがOSとなると、掛け子や受け子、見張りなどで最低4、5人必要なうえに、名簿代や足がつかない電話機代などで、500万円は必要になる。“叩き”(強盗)だと、かかるカネはルパンとそう変わらないが、人数は5、6人は必要です」
なぜ、ここまで中山氏は詳しいのかーー。彼は、実際に「闇バイト」と称して、素人を犯罪集団にスカウトする「リクルーター」を務めているからだ。ルフィらの逮捕で、社会問題になった闇バイトだが、
「今のところ、応募者数は減っていない」と、中山氏は言う。
「警察は今回のルフィ事件を徹底的に調べるだろうし、今後は動きづらくなる。ただ、下火にはなるが、犯行自体は続いていくと思うし、実際、私に依頼するグループは、今も強盗を計画しています」
ルフィ一味の犯行規模が巨大なことを、中山氏は犯行計画に必要な予算から考えて、指摘している。
「掛け子を数十人募り、フィリピンに渡航させ、かなりの期間、人数分のホテルを借りる。その分よけいに費用がかかるので、2000万円ぐらいの予算が必要だったと考えます。それを出せる黒幕は、相当な“大物”ではないか」
予算が2000万円かかったとしても、一連の特殊詐欺事件の被害総額は60億円以上。実行グループに報酬を分配しても、ルフィらの黒幕にはかなりの金額が渡っているだろう。
中山氏は、計画的な特殊詐欺や強盗・窃盗の場合、ピラミッド状の組織が作られると明かした。
今回逮捕されたルフィ一味で、トップとされる渡邉容疑者は「まとめ役」、それ以外の3人は「番頭・班長」にあたるとみられている。こうしたピラミッド型の組織が、日本全国に複数存在し、中山氏はそれらの組織の「箱」と呼ばれる無数の実行犯グループに人材を手配するという。
「闇バイトの募集をネットに出せば、1日に2、3人は応募してくる。ハキハキと電話で話し、自分から質問してくるやつは合格。逆に自信なさそうにおどおど話し、質問してこないやつは不合格。自分の頭で物事を考えないやつは、“仕事”のシミュレーションができないから危ない。遅刻したり、大事なときに連絡が取れないやつも使えない。
実行犯は、けっして使い捨てじゃないですよ。ちゃんと仕事をこなすやつには、次は金額がより大きい仕事を回す。ルパンを1件こなして実行犯がもらえるのは、奪ったカネの約10%。いいときで200万~300万円ぐらい。何件も仕事をこなしたやつは、番頭・班長に昇格できる。ただ、叩きはよほどじゃないとやらない。殴る、縛るはリスクが大きいし、捕まれば当然、懲役も長い」
強盗の場合、ピンポイントでカネを奪いたい事情があると、在京暴力団関係者は話す。
「組を破門になった元組員が、確実にカネの在り処がわかるという情報や、名簿を流すケースがある。なかには、ヤクザの身内を狙うこともある。そもそも、暴力団内では『強盗や特殊詐欺に手を出すな』という通達を出している。責任追及が上部団体にまで及ぶからだ。今回、黒幕に北海道の暴力団の名前が浮上していて、ある指定暴力団は、自分の組が関与してないかとひやひやしながら見ているようだ」
ルフィ一味の逮捕で、強盗犯罪への警戒を解くのは早すぎる。