退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

泣かないで、花を見なさい

2014-08-31 05:14:34 | 韓で遊ぶ

イタヤカエデの春
白雲山の頂上に暮らす子供のイタヤカエデが頭を上げて山の下を眺めていた。平野の遠くに見えるか細いソムジン川の流れに沿ってゆらゆらとかげろうが起こった。
「お母さん、春が来た。」
子供カエデが母カエデに向かって何か大きな秘密でも発見したかのように大きな声を出した。
「そうだね。春が来た音が母さんの耳にも聞こえるわ。すぐに雪が融ける音があなたの心をさっぱりさせてくれるわ。」
子供カエデと母カエデがこんな会話をして何日もたたないうちに白雲山に春が来た。
春が来ると母カエデが葉も出ないうちにまず淡く黄色い花を咲かせた。
「お母さん、私はなぜ花が咲かないの。」
子供カエデは花の咲いた母の美しい姿に比べ花の咲かない自分の姿があまりにもみすぼらしく感じました。
「いつかお前も花を咲かせることができるわ。もう少し待ちなさい。」
「いつまで待たなければならないの。」
「お前が青年になるまでよ。」
「いつ青年になるの。」「さあ、はっきりといつとは言えないわね。花が咲くためには待つことが必要だと言うこと以外には母さんもよくわからないわ。」
子供カエデは母さんの話にがっかりして不満に満ちた声で母に質問を続けた。
「ところで、母さんはなぜ花を咲かせるの。」
「世の中を美しくさせるためよ。世の中は花がなければ美しくないでしょ。」
「世の中が美しくなると何がいいの。」
「人間が美しくなり、それに私が実を結ぶことになるわ。」
「お母さんが実を結ぶと何がいいの。」
「私たちの人生に新しい意味が生まれるのよ。実を結ばないと私たちの人生に何の意味もないのよ。」
「それなら、お母さん、私も実をつけたい。」
「そう思うのかい。母さんもそうあってほしい。だけど、実を結ぶためにはまず花を咲かせなければならないし、花を咲かせるためには待たなければならないという事実を忘れてはならない。」
「はい、お母さん。」
子供カエデは母の言葉の通りに花が咲くのを待った。しかし、どんなに待っても花が咲かなかった。何回か春が来て、冬が来て、風が吹いて、雪が降っても花が咲かなかった。
子供カエデは待ちきれずに母にまた聞いた。
「お母さん、私は待っているのになぜ花が咲かないの。」
「それはお前が忍耐心無く待っているからよ。待つことには必ず忍耐が必要なの。」
子供カエデは母の言うとおり心の中に忍耐心を持って花が咲くのを待った。
するとある年の春の日、子供カエデは自分の体に淡い黄色の花房がどっさり咲いているのを見て驚いて叫んだ。
「お母さん、私も花が咲いた。」
「そうだね。お前もこれで青年になったんだね。本当におめでとう。」
母カエデは子供カエデがあまりにも愛しくて子供カエデの背を撫でてやった。

その後、子供カエデは毎年花を咲かせた。ところがある年の早い春の日、まだ花も咲かず、雪も融けていない白雲山の頂上に、あれこれと話をしながら上ってくる人々がいた。
「頂上にあるものほど味がすごくいい。薬効もすごくいい。胃腸病とか神経痛とか関節炎とか痛いところにみんな効く。あんまりいいからと言ったとか。「木の水」ではなく「水の樹」を使って骨利樹というが、統一新羅の時、道詵國師が飲んで膝がまっすぐになったという話がある。道詵國師が何ヶ月か白雲山で座禅をした時に立ち上がろうとしたが膝がまっすぐに伸びなかったのだ。それですぐ横にあったイタヤカエデをつかんで立ち上がろうとしたら、木の枝が折れて、その枝から水がぽたぽた落ちて、それを飲んだらすぐに膝が伸びたと言うのだ。」
50をとうに超えたと思われるジャンバー姿の男が言い終えると横にいたもう一人の男が口を開いた。
「暖かい部屋でイカやふぐを、コチュジャンをつけて骨利樹と一緒に食べると最高だ。骨利樹はいくら飲んでも問題がない。飲みたいだけ飲んでもいい。まったく、そんなことを言っていると喉がからからに渇いたのをマッコリみたいにグーと飲みたいね。」
子供カエデはそんな話をする人々が恐ろしくて素早く頭を他のほうに回した。そうしたらそのまま、その人たちと目が合ってしまった。
「ほう、こいつはまだ一度も水を抜かれていない幼いヤツだな。お前はとても特効がある。特効。」
ジャンバーを着た男がまるで宝でも見つけたように子供カエデを見て大きく叫んだ。そして、かばんの中からあれこれ道具を出して子供カエデの体に「ウィウオン」と鋭い音を立ててドリルをさした。瞬間、子供カエデはただ気絶してしまった。
子供カエデが気がついた時は子供カエデの体のあちこちに人の指ほどの穴が何箇所かあけられていた。
子供カエデはあまりにも恐ろしくて何も言えずただ人々がすることを呆然と見ていた。
人々はすぐに穴にビニールホースをつけた。そしてその端に大きなプラスチックの薬瓶をつけた。
すぐに子供カエデの体から水がチュルチュル流れ出した。空咳をするたびに体の中にあった樹液がトクトクとビニールの中に流れ出した。
子供カエデは胸ががくんと落ちた。こうしていたらこのまま死んでしまうのではないかとあわてて母を見た。母も体にホースが刺さったままトクトク樹液を出していた。
「お母さん、痛くないの。」
「痛いけど我慢しているわ。お前も痛いけど我慢しなさい。」
「お母さん、一体人々がなぜこんなことをするの。お母さんこれは私たちの血と涙です。」
「私たちの血と涙が人々にとって薬になるから私たちが少し我慢しないと。」
「いやだ、そんなことはできない。」
子供カエデはすごく怒った。こんなことはあってはならないことだと思った。母は人々を美しくするために花を咲かせると言ったのに、人々は母の体に傷をつけて樹液を奪っているじゃないか。
「お母さん、私は薬にならない。人々にとって毒になる。」
子供カエデは口を食いしばって言った。
「そんなことをしたらだめ。私たちは先祖代々薬になりながら生きてきた。それが私たちの人生なの。」
「だけど、私はいやだ。」
「すべての愛には犠牲が伴うものなの。犠牲のない愛はない。愛すると言うことは犠牲になるということなの。泣かないで私の言うことをよく聞きなさい。犠牲の無い慈悲がどこにあるの。自分の体を差し出すことより大きな慈悲は無いわ。私たちはそんな慈悲と愛を見せてあげようとこの世に生まれてきたの。それが私たちの人生の新しい意味よ。」
「わ、わかったよ。お母さん。いやだけど、お母さんに従うよ。」
子供カエデは母の言葉を聞きながらだんだん気を失った。
遠くでカッコウが鳴き、白雲山に春がまた来た。人々は「薬水祭り」と言う名前の祭りまで開いてイタヤカエデの樹液を採って飲んだ。
それがイタヤカエデの慈悲と愛であることも知らないで、、、
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울지 말고 꽃을 보라

2014-08-30 07:02:28 | 韓で遊ぶ

バイオリンの涙
晩秋の夜でした。道には冬を早める秋の雨がしとしと降っていました。朝から降った秋の雨は夜になってもやみそうもなかった。ヨンドンポ駅の地下商店街でバイオリンを弾いていた盲人の奏者キムさんは「先駆者」を弾き終え時計を触ってみた。一般人の時計とは違って時計の針が外に突出している盲人用の時計はすでに夜の10時をさしていた。
キムさんはもう家に帰るのがいいと思ってバイオリンをケースにしまっていた。籠に入った100ウォンコインを何個もポケットに入れて古いビニールのかばんの中に入れておいた携帯用の白い杖を長く伸ばした。するとその時杖の端に一人の男の足が引っかかった。以外にもその男が声をかけてきた。
「おじさん、雨がたくさん降っているけどどうやって帰ろうと思っているのですか。」
酒に酔っている人の声ではなかった。とても澄んだ20代青年の声だった。声だけでもかなり信頼できる人だった。
「大丈夫です。いつもこうやって通っていますから。」
キムさんはその青年に感謝の表情を表して地下道の出口に向って歩き始めた。すると青年が急いでキムさんの前に近づいてきた。
「私は向かい側のカメラ店で働くチェチョルホと言います。一日に何回もおじさんのバイオリンを聞いています。おじさんの熱烈なファンだと言うか。全部が好きです。」
「あ、はい。そうですか。ありがとうございます。」
キムさんは、青年が自分のファンだと言う言葉に再度感謝の表情をしました。
「お家はどこですか。バスに乗っていくのですか。私がバスに乗るところまでお連れします。」
「いいえ、大丈夫です。家はポンチョンドウですが、いつも通っている道なのでよくわかります。」
「でも、今日は雨がひどいし、、今、雨脚が強くなっています。」
いつの間にか青年は地下道の階段を上るキムさんの腕を軽くつかんでいた。
キムさんはそんな青年の行為をあえて振り払わなかった。どんなに世の中が干からびていると言っても、それでも自分のような人が何とか生きていけるのは世の中の人心がそんなに悪くないのだといつも思っていた。
通りには青年の言葉通り本当に雨がたくさん降っていた。青年が傘をさしてくれようとしたが顔に当たった雨粒が結構大きく冷たかった。キムさんは杖をできるかぎり上手く使って歩いた。だけど何度か通行人と肩をぶつけたりし、水溜りがあるのも知らないで歩いた。
「そのバイオリンをこちらにください。私が持ってあげます。」
キムさんは青年にバイオリンを渡した。まれに彼の演奏の腕前をほめてくれる人からこのような親切を受けてきたから彼は特に他の考えもなく楽器を渡した。ところが、キムさんがバスの停留所にまだ着かないときだった。
「雨がとてもひどいです。家に電話して車を呼ばないと。私が車で家まで送ってさし上げます。このままいてください。携帯どこにあったかな。あれまあ、どうかしているなぁ、事務室に置いてきちゃったな。公衆電話ででも電話しないと、公衆電話は、、、あ、あそこにある。こちらに来てください。あっちの公衆電話のあるところまで一緒に行きましょう。」
キムさんは青年について公衆電話のあるところに行った。青年が家に電話をかけるために公衆電話ボックスの中に入っていくとキムさんも雨を避けるためにその横のボックスに入った。
10分ほど過ぎた。だが、どこかに電話をかけていた青年の声が聞こえなくなった。
「チェさん、チェさん。」
キムさんは電話ボックスの間の壁を手で叩きながら青年を呼んだ。しかし、青年の答える声は聞こえなかった。キムさんは「しまった。」と言う思いがしてすぐに青年のいたボックスの中に行った。しかし青年がもうそこにはいなかった。
キムさんはもしや何か急なことで青年がちょっと席をはずしたのかも知れないと思って、そのままボックスの前で1時間待った。しかし、青年は現れなかった。全身ずぶぬれになってヨンドンポ駅の前を何回も行ったり来たりしたがバイオリンを持って行ってしまった青年はとうとう現れなかった。
その日、ずぶぬれになったまま、真夜中を過ぎてポンチョンドウの貧民街の貸間に帰ってきたキムさんはオイオイ声を出して泣いた。同じく盲人である彼の妻も声を出さずに涙を流した。
彼はこのまま死んでしまいたい思いに駆られるほど青年を信じた自分の愚かさが嘆かわしかった。湧き上がる悲しみに一度あふれた涙は止まることなく、普段特別に話もしない隣に住む男性が、寝ていてたのに起きてきて派出所に申告してくれた。すると、朝早く警察が訪ねてきてキムさんの話を聞いて行った。

3歳の時白内障を患って視力を失ってしまったキムさんはソウル盲学校を卒業した後ギターを弾く流浪の音楽家として全国各地を回った。そうしていたところ30半ばを過ぎてソウルに定着した後、録音機を回して曲を覚えながらバイオリンを習った。安い下宿でうるさいと叱られると、冬でも寒い路地に出て練習をしたりした。
キムさんは2年の間バイオリンを練習した後にやっと、通りに出て客を呼び集めることができた。体が悪くない限り一日も休んだことがなかった。運がいい日には一日に3万ウォン以上稼ぐ時もあった。4年前には食べたいものも食べないで大事にしたお金でチェコ製のバイオリンをひとつ買った。主に人々が好む歌曲やクラッシクの小品、シャンソン等を演奏しながら、楽しみながら演奏する曲の中には「碑木」「恋しい金剛山」「アベマリア」などもあった。

バイオリンを失ってしまった後、キムさんはただ失意の日々を送った。仕事に行きたくてもバイオリンがなくては行くこともできなかった。妻は地下鉄に乗ってハーモニカを吹きながら物乞いをしようと言ったが彼は何も答えなかった。ただ、彼を訪ねてくる新聞記者を捕まえて訴えた。
「私のバイオリンには通りの音楽家が流した涙とため息が染みています。お金が必要で持って行ったならお金をさし上げます。どうか私の命であるバイオリンを返してください。」
新聞には「通りの盲人音楽家、バイオリンを失ってため息だけ、、おくっていってくれると親切を装った若者、楽器を持って行方をくらます」と言う題目で記事になった。
記事が出た次の日、ある楽器の製造者の社長が彼のところに訪ねてきて、バイオリンを1台贈ってくれた。彼はキムさんの手をしっかり握って「これは私が若いときに使ったドイツ製の弓です。どうか勇気を失わないで一生懸命生きてください。」と激励して行った。
キムさんはまた新しい命を得たようだった。彼は次の日からすぐにヨンドンポ駅の前でバイオリンの演奏を始めた。
その後2年過ぎたある日、晩秋の夜だった。バイオリンの演奏をしていたキムさんの足元に静かにバイオリンを1台置いていく青年がいた。他の人々はなぜあの青年がキムさんにバイオリンを上げていくのかわからなかったがキムさんは知っていた。
「バイオリンをお返しします。私を許してください。」
キムさんはバイオリンを弾いていたがその若い青年の澄んだ声をもう一度聞いた。しかし、彼は籠にお金を投げ入れた音を聞いた時のように少し腰を曲げて口元に微笑を浮かべただけでバイオリンを弾き続けた。
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泣かないで、花を見なさい

2014-08-29 05:39:26 | 韓で遊ぶ

腐らないゴム靴
5月のその日以後、私は今まで土の中に埋もれている。昼になれば澄んだ日差し、涼しい風一吹きを全身に浴びたい、夜になれば暖かい星の光を眺めたいと、暗く湿気に満ちたここ、小川のほとりに深く埋もれている。
もう、私と一緒に埋められたすべてのものは腐ってしまった。私を履いていたヨンオクのノートも日記帳もかばんもお母さんに書いた手紙も、今はもう皆腐ってしまい痕跡さえなくなった。
しかし、私はまだ腐らないでそのままいる。それは私がゴム靴だからではない。私はまだヨンオクを愛しているからだ。私は今もヨンオクが私を履いて楽しくあぜ道を走る日を待っているからだ。
1980年5月のある春の日だった。私はその日もいつもと同じようにヨンオクの足に履かれ道を歩いていた。ヨンオクは学校の授業を早めに終えて友達と一緒に家に帰るところだった。ヨンオクはあぜの横の小川のほとりを歩いていた。村の入り口には手に銃を持った軍人たちが数百人ずつ押し寄せていた。軍人は氷のように冷たい顔をして道にバリケードを立てて、村に入る車を一台一台調べて、すべて引き返させた。
「ジェムン、急に軍人たちが何であんなにたくさん来たのかな。何かあったのか。」
ヨンオクが一緒にいた友達に聞いた。
「何だか、知らない。銃を持っているから訓練でもしているんだろ。」
「いや、何かおかしい。車も入っていけないじゃないか。」
ヨンオクはそれでやっと自分の国に再び軍事独裁政権が始まったと心配していた大人たちの話を思い出した。」
「ジェムン、軍事独裁政権って何だ。」
「う、、それは、、僕も大人になんだと聞いて、話は聞いたけど、よくわからなかった。やぁ、ヨンオク、そんなの気にしないで蛙でも捕まえて遊んで行こう。」
ジェムンがヨンオクの言葉をさえぎって小川のほうにヨンオクの袖を引っ張った。
「いや、このまま帰ろう。今日は母さんが遊ばないで早く帰って来いと言っていた。」
「なら、紙の船を作って浮かべて少しだけ遊んで帰ろう。」
ヨンオクは遊びたくなかった。しかし何も言わないでいたナンチョルさえ「誰の紙の船が遠くまで行くか競争しよう。」と言ったのでそのまま川辺に下りていって紙の船を作った。
ヨンオクは美術の時間に使い残した画用紙で紙の船を作り小川に浮かべた。ジェムンとナンチョルは国語のテスト用紙で船を作り小川に浮かべた。
紙の船はゆらゆらと揺れながら流れていった。
「僕の船が一番だ。」
「ちがうよ、俺のが一番だ。」
子供たちは互いに一番だと叫びながら船を追いかけた。
船は前になったり後になったりしながら波に揺られ楽しげに流れていった。
小川に紙の船が流れるのをはじめた見た私は面白かった。私も紙の船になって遠く海まで流れて行きたいと思った。
「パン!」
急に銃の音がしたのはその時だった。
紙の船について行っていた子供たちの笑い声が銃の音にかき消された。子供たちは驚いて向こう側のあぜ道に走った。
ヨンオクも素早く向こう側のあぜ道に走った。だけど、その時ヨンオクの足から私が脱げてしまった。
瞬間ヨンオクが立ち止まったまま私を振り返った。そうしていたら四方から銃弾が飛んでくる危険な瞬間に私に向って力いっぱい走ってきた。
「来るな。危ない。ヨンオク。」
私は力いっぱい叫んだ。
「死んでしまうぞ。来るな。」
私はありったけの力で声を上げた。
だが、ヨンオクは私の声を聞くことはできず、ずっと私に向って走ってきた。
あ、銃弾のひとつがヨンオクのやせた胸を貫いたのはその時だった。小川に脱げた私を拾おうとした瞬間、ヨンオクは「あ。」と言う短い悲鳴とともに横にひっくり返った。
私は目の前が真っ暗になった。全身が震えた。ジェムンとナンチョルはどこへ行ったのか見えなかった。恐ろしい銃声が続いた。
小川に一番最初に走って来たのはヨンオクの母だった。
「ヨンオク、ヨンオク、一体どうしたの。一体どういうことなの。」
ヨンオクのお母さんは私を拾い上げ地を打ちながら慟哭し、そのまま気を失った。
「悪いやつら、国を守る銃で国民を撃つのか。天罰を受けろ。子供に何の罪があると。」
あたふたと村の人々が走ってきて怒りを噴出した。
しかし、村の人々は怒りを噴出すしかなかった。ヨンオクとヨンオクの母を背負って病院に走って行った。すると今度は軍人たちが何人かが急いで走ってきてヨンオクのかばんと一緒に私を小川の横のあぜ道に軍靴で埋めた。
「紙の船、元気でいろ。」
紙の船だけが何事もなかったように波に揺られ流れて行った。

歳月が流れた。もう、ヨンオクを覚えている人は誰もいない。だけど私はまだ、ヨンオクを覚えている。ヨンオクがこの地に再び生き帰ると信じている。だからヨンオクに会える日を待ちながら腐らないでいる。
「待っていることは私たちを腐らせない。」というある若い詩人の言葉を覚えている限り私は決して腐らない。
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울지 말고 꽃을 보라

2014-08-28 06:30:24 | 韓で遊ぶ

風の言葉
太陽と月がけんかをした。
「木の葉は緑色だ。」と太陽がいうから、月が「いや、銀色だ。」と言い張った。
月が「人は仕事もしないで寝てばかりいる。」と言うから、太陽が「いや、人は一生懸命動き回って仕事をする。」と言った。
「ならば、なぜ地球はこんなに静かなんだ。」
月が負けないでまた太陽に聞いた。
「お前、誰に何を聞いたんだ。地球はいつもうるさいことこの上ない。」
「いや、お前こそ誰に何を聞いたんだ。地球も他の星のように静かだ。」
彼らのけんかは終わらなかった。すると彼らの話を聞いていた風が出てきて言った。
「お前たちこそ本当にばかだなぁ。一体何のためにこうやってけんかするのだ。私は太陽が出ている時も吹いて月が出ている時も吹く。昼に太陽が出ている時はまさに太陽が言うとおりだ。地球はうるさく人々は一生懸命動き回っている。葉の色も緑で、だけど夜になって月が出ている時はすべて変って、人々は寝て、静かさが全世界を治める。もちろん木の葉は月の光を受けて銀色になる。もし雲が月を隠すと黒くなることもある。だから、太陽、お前も、月、お前もすべて知ることができないと言うことだ。世の中は自分の主張ばかりが正しいのではない。世の中を自分の立場からだけ理解したらだめだ。」
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泣かないで、花を見なさい

2014-08-27 06:27:09 | 韓で遊ぶ

友を愛する犬
私はエスキモーの犬です。北極のエスキモーと共に暮らす犬です。エスキモーは伝来の交通手段として白熊の皮で作った雪そりを利用しますが、そのそりを私が曳きます。胸と胴に締めた皮の紐をまるで韓国の女性のコゴムシンのようなそりに長くつないで楽しく北極の氷の上を走ります。
もちろん私一人で曳くのではありません。そりが小さく1人とか2人の時は2、3匹で曳きますが、普通は10匹が共に曳きます。北極の太陽の下、長く影を伸ばして氷原を走る私たちの姿は壮観だと言います。
ところが、私はある年からか病気になりました。もはや気力もなくなり少し走っても息が切れただ座り込んでしまいたくなります。誰よりも胸の筋肉が発達していて、誰よりも早く走り、主人の愛を独り占めにしてきたのですが、もう年をとったのでしょう。
氷河地域でツンドラ地帯を移動する時でした。主人は綱を短くして私をそりの近くにおいて走らせました。そりの走る速度が遅くなったり、友が少しでも疲れた色を見せると鞭を持って容赦なく私の背中に振り下ろしました。
私は悲鳴を上げないではいられませんでした。苦痛に満ちた私の悲鳴を聞いた犬たちは力の限り走りました。私が悲鳴を上げる度に他の犬は鞭を自分たちの背中に振り下ろされるかと恐れてより一生懸命走りました。
以前は私もそうでした。病弱で死んでも惜しくない犬がいると主人はその犬をそりの近くにつないで皮の鞭を振り下ろしました。そうすると私はその犬の悲鳴を聞いて一生懸命氷原を走りました。まかり間違ってその鞭が自分の背中に落ちるのではないかとどんなにやきもきしながら走ったか知れません。友の凄絶な悲鳴が私たちを力の限り走らせるということでしょう。主人はまさにその点を狙ったのです。
私はもう自分に死が近づいてきている事実をよくわかっています。この間主人の鞭を受けながら氷原を走ってきては、死んでいった友がどれだけたくさんいたか見てきましたから。走っていて倒れたら主人はそのまま氷原に捨ててしまいます。白熊のえさになっても関係ありません。
私は過ぎた日々が後悔されます。今まで私が友のためにしたことが何もなかったと思いました。この間主人の愛を独り占めにするためにひたすら自分自身のために生きてきたと言う思いがしました。
だから、よくよく考えました。友のために私が最後にできることは何か。どうすれば友のために生きることができるか。
すると、こんな考えが浮かびました。
「そうだ、もうこれ以上悲鳴を上げるのはやめよう。主人の振り下ろす鞭がどんなに苦しくてもこれ以上苦痛に満ちた声を出すのはやめよう。そうすれば友をその暴力の恐怖から救うことができる。私の悲鳴を聞いて震える友を恐怖から救うことができる。私の苦痛は私一人で十分だ。」
だから、私は本当に泣きませんでした。主人がどんなに鞭を振り下ろしても決して悲鳴を上げませんでした。北極の冷たい氷原の上で倒れて私一人捨てられるまで
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泣かないで、花を見なさい

2014-08-26 06:30:49 | 韓で遊ぶ

風を憎む銀杏の木
風が嫌いだと言う1本の銀杏の木があった。元々木と風は親しい間柄だった。この幼い銀杏の木は風が少し吹いても顔をしかめた。
銀杏の木が故郷を離れどこかの街の街路樹として植えられた日のことだった。春風だったが肌寒かったので彼は身を縮めていた。
「家を出てきたことはうれしくもあり、怖い気もするな。」
彼は胸を広げて星を眺めながら出てきた故郷の家を思った。
「母さん、僕は母さんと暮らしたい。行くのは嫌なんだ。」
彼が母の手を離さないで、母にしがみつくと母は「行かないと大人になれないわ。」
と彼をなだめた。
「お前がここを出て行かないと大人になることができない。お前の兄さんたちも皆ここを出て行ったから美しい街路樹になったのよ。」
「僕は大人にならなくてもいい。このまま母さんのそばにいる。」
「お前はどうしてそんなに心が小さくて子供なの。夢を大きく持たなきゃ。私たち銀杏の木は何百年も生きるのよ。だから人間が子供を生めない時に私たちのところに来て祈ったりもするのよ。竜門寺という寺の前には千年になる古い木があるというわ。」
「私たちがそんなに長生きするの。」
「そうよ。だからお前もここを出て行って大人にならなければならない。大人にならなければ銀杏の木ということはできない。」
彼は大人になりたくなかったが、大人にならないと銀杏の木ということができないと言う母の言葉に従って人が運転するトラックに載せられある町の街路樹として植えられた。
「君、寒くない。」
横にいた友達が青く唇を震えさせながら声をかけた。
「僕も寒い。だけど星の光を暖かく感じて大丈夫だ。君も星を見てごらん。」
彼は友達にそういった後に眠ろうとした。ところが眠ることができなかった。いつからかだんだん風が吹いてきたからだ。「どこへ行ってもはじめから根をちゃんと下ろせば死なないで生き抜くことができる。」と母がよくよく念を押したことを思い出し、彼は根をちゃんと下ろそうと絶え間ない努力をした。
しかし、根は一晩では下ろすことができるものではない。土が彼をしっかりと包んではくれるが、まだ多くの時間と努力が必要だった。しかし、根を下ろす前に強い風が吹いてきて彼を揺らし始めた。
風はやまずずっと吹いてきた。彼はこのまま倒れて死んでしまうのではないかと思ってすごく怖かった。しかし、ただ、風に身を任せて自ら倒れないように我慢して耐えるしかなかった。幸いにも夜が明けて朝が来ると風はやんだ。
「風がやんだからもう大丈夫だ。もうこれ以上風は吹かないだろう。」
彼は朝の日差しに身を任せて安堵のため息をした。
しかし風は夜になると恐ろしく吹いた。
風が吹くたびに彼は根ごとを揺らされた。
「こんなに風が吹くのに、母さんはどうして家を出て行くようにいったんだろうか。」
彼は母が恨めしかったが、今は母を恨む前にまず、吹いてくる風に勝たなければだめだった。
「星さん、何とかして風が吹かないようにできないものか。君たち何とかしてみてくれ。」
「それはできない。私たちが夜空に浮かんでいてこそ生きていけるように、風もそうやって動いてこそ生きていけるのさ。」
彼はどうすれば風に倒れないでいれるかと思って可能な限り地の中に根を伸ばしておろそうと努力した。
しかし、いつも風が問題だった。風は枝に降り注ぐ星の光と日差しを落とし、鳥の追っ払ってしまったりもした。ある時には鳥が作り始めた巣までも落としてしまった。久しぶりの深い眠りについているといつの間にか眠りをゆするのはやはり風だった。それだけではなく風はビニール袋や紙くずのようのものを幹の下に山盛りに集めた。
銀杏の木がそんな風をいつも憎んだ。どうすれば風を捕まえることができるかと思い、一日たりともそれを思わない日はなかった。しかし、風は彼には捕まえられなかった。両手を広げてすばやく捕まえても風はいつの間にか1歩前で彼の手中をすり抜けていった。
「僕は風が憎くて仕方ない。どうすれば風を捕まえることができるだろうか。」
彼がそんな話をすると友達はいつもケラケラ笑うだけでした。
「いや、君たちは風が憎くないのか。私たちにこんなに苦労をさせるのに。」
彼は友達が笑おうとどうしようと風を捕まえようという努力を放棄しなかった。少し大げさに言うと、彼の毎日はどうやって風を捕まえることができるかと言うことに焦点を合わせていた。
秋が過ぎて道には落葉がはらはら落ちた。団扇のような彼の葉と小さな飴のような彼の実も黄色く色づいた。彼の友達は風が吹くたびに黄色の実と葉を落とした。少女たちが銀杏の葉を拾って本のページにはさんでキャッキャッと笑ったりもし、ある人は落ちた実を薬として使うと言いながらひとつひとつ袋に集めたりもした。
彼の葉ももはや根に戻らなければならないときが来たことを知って地に落ちるのを待った。彼の実もまた同じだった。木を離れてこの世のどこかでまた1本の銀杏の木になる日を夢見た。
あ、だけど一体これはどうしたことだ。どんなに待っても彼の葉と実は落ちなかった。友達の木は葉と実を落として初雪を待ちながら冬を迎えているのに、ただ彼だけが葉と実を落とさないでいた。
「お、冬なのに、何で僕だけが落葉しないんだ。一体どうしてこうなんだ。」
彼は体を無理やりに振ってみた。だけどどんなに体を振っても葉と実は地に落ちなかった。
そんな中、冬がやってきた。他のイチョウの木は葉を皆落として、寂しい枝だけが残っていたが、彼は依然と全身に葉と実がそのまま残っていた。
通り過ぎる人が不思議に思って彼を見てささやいた。すると、新聞記者が来て写真を撮って新聞に出ると、テレビ放送でも彼を写してニュースの時間に「落葉しない銀杏の木」があると報道した。
彼は一躍有名な木になった。多くの人が彼を見物しようと訪れた。彼は思い上がっていった。とても特別な存在になったと思った。しかし、友達はそんな彼をかわいそうな目で見ていた。「なぜ、僕をそんな目で見るんだ。」と言っても何でもないといいながらちゃんと答えてさえくれなかった。
「友達がなぜああなのだろうか。僕が有名になったから妬んでいるのか。」
彼は友達がなぜそうなのかわからずある日夜空の星を見ながら静かに考えにふけった。
その夜、彼はふと葉を実が落ちなければ春を迎えることができなくなる、春を迎えられないと結局死ぬしかないと言う事実を知った。
「そうだ、だから友達が僕をかわいそうな目で見ているんだ。一体この葉をどうしたらいいだろう。」
彼は深い悩みに包まれた。誰に助けを請わなければならないのかわからなかった。彼はどきどきした気持ちに、あんなに憎んでいた風に助けを頼んだ。
「すまない。風君、僕を許してくれ。君を憎んだせいで私がこうなったのはよくわかる。僕が悪かった。もう、僕を許して、僕の葉と実を落とさせてくれ。」
その日に限って風が吹かなかったが、夜が明けるまで懇切にそんな頼みをして、眠った。
次の日の朝、全身が冷たい感じがして起きてみると彼の葉と実が皆落ちていた。
「よかったね。私たち君をどんなに心配したか知らない。」
友達が互いに枝を伸ばして彼を祝福してくれた。彼は涙を浮かべた。
「風が強く吹くのは君を強くするためだ。風が吹かないと君は根が弱くなってすぐに倒れてしまうかもしれない。だけど、風がしょっちゅう強く吹くから、君は倒れないように深く深く根をおろすことができるのだ。それは皆風が私たちのためにしていることなんだ。実は、私たちは風に感謝しなければならない。風がなかったらこうやって成熟した大人になれないのだ。」
「そうか。そうだ。僕が馬鹿だった。」
彼は恥ずかしさで友達の手をさっとつかんだ。風がそっと彼の肩を撫でてくれた。
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울지 말고 꽃을 보라

2014-08-25 06:42:17 | 韓で遊ぶ

ラクダの母性愛
3人の商人がラクダに乗って砂漠を進んでいた。彼らが家を発って砂漠を歩き始めてからすでに2ヶ月だった。彼らは疲れていた。たっぷりと準備した水と食料も底をついて久しかった。
彼らは進むほどに乾きと餓えに我慢できずに精神が混迷して行った。いつも通っていた道だったがどこがどこだか方向さえもわからなくなっていた。行っても行っても砂の丘だけがあるだけで道を失ってからも久しかった。彼らはだんだん絶望の中にはまっていった。もうじき死が訪れると言う恐ろしさに身を任せた。
彼らが生き残れる道はオアシスを見つけることだけだった。水があるところを発見することができなったら、死ぬだけだという事実を彼らはよく知っていた。
しかし、彼らはオアシスを発見できなかった。急にオアシスが見えてやっと走っていくとただの蜃気楼に過ぎなかった。
彼らの中で一番年の若い3番目の隊商がラクダの背に座って気を失った。続いて残った二人も気を失った。
太陽の日差しは依然と暑かった。彼らはそうやってラクダの背に乗ったまま熱い砂漠を進んでいた。
しかし、神は彼らの味方だった。神は彼らをそのまま死なせることはなかった。彼らはラクダの背に乗って気を失っている時、神はラクダをして彼らを木と日陰がある水辺に導いたのだった。
彼らは元気を回復した。しかし、神は完全には彼らを助けなかった。3番目の隊商が熱にやられて病んでそのまま死んでしまった。残った二人の隊商は涙を流して彼を砂漠の砂の中に埋めた。
「これから、こいつの墓も探すこともできないな。」
2番目の隊商が涙を流しながら悲しんだ。
すると、1番目の隊商が言った。
「そんなに悲しむな。ラクダの子供を殺して、こいつと一緒に埋めて行けばいい。」
「ラクダは我々を助けてくれたのに、どうしてその子供を殺すことができると言うのだ。」
2番目の隊商は1番目の隊商の言葉に強い危惧心を表した。
しかし、1番目の隊商は2番目の隊商の言葉を黙殺して善良な目をしたラクダの子供を殺した。母ラクダが見ている目の前で子供ラクダを殺して3番目の隊商と共に砂の中に埋めた。そして遠くの砂漠の丘を見ながら言った。
「ラクダは自分の子供が死んで砂漠に埋められたら、長い間その場所を覚えています。だから、私たち隊商の中で誰かが死んで砂漠に埋める時は、ラクダの子供を殺して一緒に埋めるのです。後で、母ラクダについてくるとその墓を簡単に見つけることができるからです。それほどにラクダは自分の子供に対する母性が強いのです。あなたもいつか私のようにどうすることもできずラクダの子供を殺すようになる日が来るでしょう。」
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泣かないで、花を見なさい

2014-08-24 05:11:28 | 韓で遊ぶ

大当たりの主人
シンさんは先祖代々受け継がれた小さな畑を売って金鉱の坑道ひとつを買ったことを後悔した。鉱山ではいくつかの重要な坑道以外は「分坑」と言って分けて売ったのだが、そこから金が出ると見てシンさんは畑を売って分抗を一つ買った。
シンさんは大当たりを掘ると言う多少荒唐無稽な夢だったがその夢を成し遂げるために一生懸命仕事をした。家で寝る日よりは金鉱で寝る日が多かった。他の人のようにつらい仕事をすると言って酒に頼るようなこともほとんどなかった。
「シンさんは大当たりを掘るはずだ。間違いない。見てみろ。あんなに一生懸命しているのにシンさんが掘らなくて誰が掘ると言うのだ。」
人々はまじめに仕事をするシンさんを見て、皆こう言った。彼の誠実性を見て何も言わないでお金を貸してくれる人もいた。しかし、天は味方をしてくれなかった。シンさんは3年、坑道を掘って行っているが金が入った鉱石一つ出てこなかった。隣り合った他の坑道からは時々大当たりを発見したと言う知らせが聞こえてきたが、シンさんにはそんな幸運が届かなかった。
シンさんはがっかりしたあまり体と心がだんだん疲れていった。酒を飲まなかったシンさんが酒屋に行くことがだんだん頻繁になった。もう大当たりを掘ることよりもあちらこちらから借りたお金を返すことが急務だった。
シンさんは悩んだ。心ではすべてのものを売り払ってすぐに借金を返したかった。だが、そうすることはできなかった。
「いや、私にはできない。やりとげることができる。」
シンさんは後一年一生懸命やってみようとまじめに穴を掘った。しかし、自ら約束した1年、何の所得もなく過ぎた。シンさんは残っていた田畑を売って急ぎの借金を返した。そしてまた1年一生懸命仕事をした。しかしその年も何の所得もなかった。
それでシンさんは自分が失敗したと言う事実を認めないわけにはいかなった。これ以上金鉱にしがみついていることは無謀なことだった。
シンさんは金鉱を売ろうと思った。金鉱は売りに出すとすぐに買い手が見つかった。隣に住むキムさんだった。シンさんとしては金も出てこない金鉱を買うと言ってくれた人がいることだけでもよかった。
ところが、シンさんが金鉱を売った後10日ぐらいたった頃だった。酒屋に行って酒を飲んでいたら、キンさんが大当たりを掘ったと言う話を聞いた。シンさんは驚いて杯を投げ出してキンさんのところに走って行った。
「なんだ、私が5年も掘っても出なかった穴からキンが出たとは、それは本当か。」
「本当です。これを見てください。」
キンさんは興奮した声でこぶしぐらいの金鉱石ひとつをシンさんに見せてくれた。
「仕事を始めて2日間で1mぐらい掘っていったらこんな大当たりが出てきた。」
シンさんは何と言っていいのかわかりませんでした。ただ呆然と自分が地の汗を流して掘った穴だけを眺めていました。あと1mだけ掘ればよかったものを、我慢できずに他の人に金鉱を売った自分があまりにも愚かだと感じた
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울지 말고 꽃을 보라

2014-08-23 02:05:18 | 韓で遊ぶ

ソウルのイエス
ソウル市庁の向かい側の壽宮の石垣の通りが終わるところに聖公会の聖堂がある。その聖堂の出入り口の赤い壁には十字苦像ひとつが架けられている。そこにはとても人間的な体つきをした、まるでロダンの彫刻のような男性の筋肉美が際立った一人の男が頭を下げてぶら下げられている。
人々はその男をとても愛した。近くの会社員たちは昼の時間になると聖公会の庭に座って自販機のコーヒーを飲みながらその男が人間に愛を教えるために十字架に架けられて死んだと言う話をしたりした。
そんなある日の夜、十字苦像にぶら下げられた男が見えなくなった。昼には明らかに十字架にぶら下がっていたのに、夜になると十字架はそのままで男の姿だけがどこかへ消えて見えなかった。
夜毎男がいなくなると言う事実をはじめて発見した修女が即刻主教に報告したが、主教だからと言って男を簡単に探し出せるものではなかった。いいえ、あえて、探そうと努力しなくてもよかった。朝になると男はいつの間にか両足をたらして、一方のひざを少し上げたまま、いつそんなことがあったのという風にいつものように十字架にぶら下がっていた。
そんなことが毎晩続いた。修女は男がどこへ行くのか気になり、晩に後ろをついていってみたが壽宮大漢門の前で男を取り逃がしてしまうのが常だった。修女はこれ以上男を尾行することをあきらめた。尾行しなくても男は朝になれば間違いなく十字架にぶら下がって、日差しにひっそりと頭をたれていた。
ところがソウルに初雪が降った日の朝、男が帰ってこないという不祥事が発生した。壽宮側の雪の上に足跡だけがあるだけで、男の姿はどこにも見えなかった。
一日過ぎても、2日過ぎても男は帰ってこなかった。聖堂のすべての人が男を探しに回ったが誰も男を見つけることができなかった。ただ、何日か後の朝刊に新林洞の貧民街の少年の家の親戚のような青年一人が一酸化炭素中毒で変死体で発見されたと言う記事が短く載っているだけだった。
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泣かないで、花を見なさい

2014-08-22 06:07:17 | 韓で遊ぶ

極楽鳥
彼は世の中に花として生まれた。それは彼が花として生まれ人間のために生かさせて暮れとお釈迦様に懇切にお願いをしたからだった。お釈迦様は彼をとてもかわいいと思い、彼が望む花に生まれさせてやった。
はじめ、彼は赤いバラの花に生まれた。人々が愛する人にバラの花を捧げながら愛を告白する姿が見てもいいので彼はまずそんな花になりたかった。
彼の願いはすぐにかなった。うららかな6月のある日、彼は背の高い青年の手に抱えられて一人の女性の家を訪問することになった。
「あら、いらっしゃい。」
女性は彼を受け取ってぱっと笑った。バラの花に生まれたことがまたとない幸福な瞬間だった。
しかし、バラの花として生まれたことが必ず幸福なことだけではなかった。バラの花を捧げても人の間に愛が成就しない場合もあった。
一度は男からもらった彼をゴミ箱に投げ入れた女性もいた。またある女性は人々が多くいる地下鉄駅の構内に彼を捨てたこともあった。彼はどんなに驚いたかわからない。しかし、もっと驚いたのはそうやって捨てられた彼を誰も拾ってみようともしないと言うことだった。ある男が捨てられた彼を拾おうとしたら、その腕を組んでいた女性が「拾わないで。それは事情のある花だわ。縁起が悪い。」と言った。
バラの花に生まれた彼は、そうやって人の足に踏まれながら悲しく死んでいった。清掃員のおばさんが彼をゴミ箱に入れるときにはバラの花として生まれたことがとても後悔された。

次の春、彼は貯水池がある田舎の土手の上に紫色のスミレとして生まれた。彼ははじめ、貯水池の水面の上にきらめく日差を眺めることだけでも幸福だった。時々日差しを含んだやさしい風が彼を通りすぎながら世の中に自分より幸福な花はないように思った。
しかし、だんだん時間が過ぎると寂しさを感じた。学校へ行く小学生たち以外には誰も彼を見てくれる人がいなかった。それに、彼にスミレと言う名前以外にも野蛮人花というあまり言い意味ではない他の名前がある事実が多少失望させた。
だから、次の春にはソウルのアパートに場所を移して咲いてみた。依然と誰も彼に関心を持たなかった。関心どころか芝を刈る機会の中に入ってスミレとして短い一生を終えてしまった。

その後毎年春になると彼は連翹、木蓮として、いろいろな花として生まれた。しかし、そんな花たちはなぜか彼が咲きたい花ではなかった。だから、ある年の春からはある詩人の家の春蘭として生まれひっそりとした香を抱きながらそれなりに満足した暮らしをしていた。しかし、彼の香を誰よりも大事にして好きだった詩人がある日急に死んでしまった。
彼はその詩人のためにどうしていいかわからなかった。長い旅にたつ彼の霊柩車を春蘭の香で一杯に包むこと以外には他にすることがなかった。
ところがその日、霊柩車がスーとあの世に向って走ったその日、どこから飛んできたのか全身に朱黄色を帯びた美しい鳥が1羽飛んできてずっと霊柩車の後ろに従った。
「君の名前は何と言うの。一体君はどこから飛んできたの。」
彼は鳥に近づいて行き続けざまに質問をした。
「私は極楽鳥と言います。遠い海辺の森の中で詩人の霊魂を慰めてあげるために飛んできました。死んだ人の霊魂を極楽へ導いてやるのが私の仕事です。」
「あ、そうなんだ。僕はだれだか言っただろ。どうかこの若い詩人を極楽へ導いてやってくれ。」
彼はそう言って、自分でも極楽鳥のような役割をする花に生まれたいと思った。
次の春、彼は人間の霊魂を極楽へ導くことのできる「極楽鳥」と言う名前の花として生まれた。そして、その後もずっと極楽鳥として咲いた。
今も斎場に置かれた花輪を見ると、白い菊の花の中に鳥のくちばしの形をした朱黄色の花が首を出している。その花がまさに彼だ。
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