退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

幸福な世界

2015-02-28 07:25:04 | 韓で遊ぶ


愛の街路灯

ソウルの町外れ、小さな家がごちゃごちゃ集まっている町に夜が来ました。
路地が狭くて暗くて、日が暮れるとその迷路のような町では大小の事故がどれだけ起こるか。ところがその片隅、風が吹けばすぐにでも倒れそうな家の前には、いつも、こうこうと外灯がついているのでした。
その家には目の見えない夫婦が住んでいます。
心に火をつけて互いの目になってやる妻と夫、彼らには、灯りは有っても無くてもいい存在ですが、毎日夕方、日が暮れるとまずやることは外灯をつけることです。部屋の中で休んでいても、妻が夫に一つ確認することを忘れませんでした。
「あなた、街頭はつけたの。」
「もちろんだ。それを忘れるはずがなかろう。」
見ることもできない灯をつけること、それは、もしや近所の人たちが暗い路地で転んだり怪我をしたりしないかと心配する障害者の夫婦の配慮でした。
勾配のきつい町内に雪がこんもりと降った明け方でした。坂の上から練炭の灰をリヤカーに一杯に積んだおじさんが家の前にやってきました。
そして門の前に練炭の灰をまきました。
目の見えない夫婦が雪道で滑ったらと心配したのでした。
明け方早く門の外に聞こえた足音の主が誰なのか、道がなぜ滑らないのか夫婦は知っていました。
障害者の夫婦にも、リヤカーのおじさんにもその年の冬は本当に暖かいものでした。
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幸福な世界

2015-02-27 07:31:32 | 韓で遊ぶ



もう一度生まれたら

脳性まひの息子を持つ母親がいました。
ともすると、友達に馬鹿にされたりする息子、母親は息子が心だけは健やかにまっすぐな人になってほしいと、いつも肯定的な考えをするように助けてあげ、学校も特殊学校ではなく一般学校に入学させました。
不自由な身体で、その中に簡単に入って行けると思った訳ではありませんが、時間が解決してくれると信じました。
母親は息子が授業をしている間、いつもはらはらしながら運動場の隅で息子を待っていました。ですが息子は他の子供たちにのけ者にされ、からかわれ耐えることができず、段々閉鎖的でゆがんだ性格に変わっていきました。
まるで戦争のような一日一日でした。何時間かに一回ずつ服を汚し、洗濯物が山のようになっても、学校へ行かないと泣いて駄々をこねても、母親は怒ることが出来ませんでした。
ですが、母親の献身的な努力は無駄ではありませんでした。苦痛と試練の中で息子は中学校を卒業し高校に入学したのでした。
高校に通う3年間、母親はただの一日も欠かさず息子と一緒に登校し一緒に下校しました。
そして卒業式の日、息子は、この間母親の心を痛めてきた自分を省みました。授業が終わるまで、窓の外に立って自分を待ちながら暖かい励ましのまなざしを送ってくれた母。その母の胸を痛める釘をどれほどたくさん打ち込んだかわかりません。息子は卒業式場の片隅で心の中で泣いている母親にゆっくりと近づいて行って言いました。
「母さん、僕がもしもう一度生まれることができたならば、その時は母さんの母さんとして生まれてきたいよ。」
あれだけ強く見えていた母の目にも涙が浮かびました。
息子がまた言いました。
胸が恨みで一杯になり、ゆがんだ道を行こうとする度に自分を摑まえて抱きしめてくれた母さん、、その大きくて深い愛に恩返しするためには母さんの母さんとしてもう一度生まれるしかないということです。
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幸福な世界

2015-02-26 06:35:48 | 韓で遊ぶ



世の中で一番やさしい手

田舎の小さな村に暮らす貧しい家の末っ子が大学生になりました。
末っ子は一日でも早くうっとうしい現実から抜け出したかったのですが、暮らしが苦しくて、毎日2時間かかる汽車通学をすることになりました。
その日も汽車時間に合わせようと朝早く起きた娘は、探してみてもぼろぼろになった服しかない洋服ダンスから大事にしておいたスカートを見つけてはきました。
「これくらいなら、いいわ、、、」
ですが、ストッキングが問題でした。いくつもないストッキングが全部破れて伝線していたのでした。脱いだ時まではなんともなかったのに。娘はストッキングを持ってぶしつけに母親を責めました。
「母さん、これは一体何なの。」
「あれまあ、それは、私が洗濯をしたからそうなんだね。私の手が熊手のようだから。どうしたらいいかね。」
娘は、すまない気持ちでどうしていいかわからない母親の前に、ストッキングの塊を放り投げました。
「母さん、二度と私のストッキングに触らないで。これからは私が洗うから。」
母親は娘の怒りを言葉もなく受け取りましたが、その後本当に娘のストッキングには手を触れませんでした。
その年の夏休みになって娘が家でごろごろしていた時、役場から電話がかかって来ました。
「えっ、家の母の指紋が磨り減っているですって。」
母の住民登録証を新しく作らなければならないけれど、指紋が磨り減って押印できないので、どうか何日間か仕事をしないようにということでした。
娘はしばらく呆然と空を眺めました。
なぜストッキングを使えなくするほど荒れた母の手を、ただの一度も握ってあげることができなかったのか。
娘は、畑へ母を捜しに行きました。
日陰もなく照りつく日差し、くの字のように曲がった背中、、、
生涯をそうやって田んぼに縛られ畑に縛られ、ススキのようにオオバコのように生きてきた母でした。娘は言葉もなく近づいて母を抱きしめました。
「母さん、、ううう、、」
「おやまあ、うちの末っ子がどうしの、畑まで来て、」
訳のわからないまま母親は娘を抱きしめました。
母の手はたとえ日に焼けて、でこぼこし土がついる手だけれど、それは世の中で一番やさしい手だったのでした。
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幸福な世界

2015-02-25 06:09:42 | 韓で遊ぶ


母の教え

彼は、限りなくほほえましくて素直な子供たちが好きでした。
彼が田舎の小さな学校の先生として赴任して1年が過ぎたある日のことでした。ソウルに住んでいる母親が食べるものや服などをたくさん持って息子に会いに来ました。
「母さん、私が少し遅れてしまいました。大変だったでしょう。」
息子は授業が終わった後、母親を迎えに来ました。母親はいつの間にか先生らしくなった息子にとても満足でした。久しぶりに母の寝息を子守唄にして穏やかに寝た次の日の朝、彼は遅刻しないように急いで家を出ました。
「行ってらっしゃい。私の心配はいらないから、ちゃんと教えてきなさい。」
母親は満足げな目で息子に手を振りました。
小さなアパートから学校までは5里、そんなに長い距離ではないのですが、途中に小川があって渡って行かなければなりませんでした。ですが、川を渡る飛び石の一つが不安定で小川に落ちてしまいました。
彼は服を取り替えようとアパートに戻りました。全身水浸しで水をぽたぽた落としている息子を見て、母親は飛び出して来ました。
「おや、一体どうしたの。」
「大したことではありません。飛び石が不安定で渡りそこなったのです。」
母親を安心させ服を着替えようとしたその時、母の厳しい声が聞こえました。
「それで、その石をちゃんと直してきたのかい。」
母の問いに彼はどうしていいかわからず顔を赤くしました。
「そんなことでどうして先生だと言うことができるのだ。早く行って石をちゃんと置いてきてから服を着替えなさい。」
仕方なく彼は小川に走って行って、ぐらぐらしている飛び石をぐらつかないように置きました。
月日が流れ、初めて教壇にたった時の気持ちを忘れそうな時、彼は母のその手厳しい叱責を思い浮かべました。
「石をちゃんと直してきたのかい。」
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幸福な世界

2015-02-24 06:34:50 | 韓で遊ぶ


少年と水鳥の卵

小さな島の村に一人の少年が住んでいました。
少年は毎日海に行って青い空、白い水鳥、押し寄せる波を友にして遊びました。そんなある日、少年は草むらの中で水鳥の卵を発見しました。
「わあ、かわいい。」
かわいい水鳥の卵を拾った少年は急いで家に帰って母親に見せました。
「母さん、母さん、鳥の卵だ。砂の中にあったんだよ。」
母親は何も言わないで水鳥の卵を料理して、少年は母が作った料理をおいしく食べました。
次の日も少年は海に行きました。ですが、少年はもう波と遊ぶことはありませんでした。一日中海辺を歩いて水鳥の卵を探しまわりました。
そうして、水鳥の卵を見つけると手をたたいて喜び、見つけることができなかったら肩を落とし悲しく思いました。
その日も徒労に終わり力を落として家に帰ろうとした少年は、一軒家の鶏小屋で雌鳥がちょうど卵を産むところを見ました。
少年は水鳥の卵と似ている鶏の卵を盗んで家に帰って行きました。母は今回も黙ってそれを料理してくれました。
その日以後、少年はもう海辺を歩き回ることはなくなりました。その代わり一軒家の鶏小屋の前で鶏が卵を産むのを待ちました。
歳月が流れ少年が青年になった時、彼はいつの間にか他人のものをこっそりと盗み取るすりになっていました。彼の盗癖は治すことができずひどくなり仕舞いには監獄へ入れられる羽目になってしまいました。
老いた母親が監獄に訪ねてくると少年は、いえ、今や大人になった息子は涙を流して言いました。
「母さん、私が水鳥の卵を拾って帰った時になぜ怒ってくれなかったのですか、、お母さん水鳥が卵がなくしてどんなに心配しているかしらと一言、言ってくれたら、、ううう。」
息子の恨みに母の胸が詰まりました。
あの時、水鳥の卵を元の場所に置いて来なさいと一言、言っていたら、正しく教えていたらと、後悔しました。
ですが、水鳥の卵も少年も元の場所に帰るには、すでにあまりにも遅かったのでした。
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幸福な世界

2015-02-23 06:30:52 | 韓で遊ぶ


母は受験生

受験生の息子を持つ母がいました。
息子は母親がとやかく言わなくても、いつも夜遅くまで勉強する模範生でした。
ですが、その息子が勉強をする時は、母親も勉強が終わるまで眠い目をこすりながら、息子と一緒に夜を明かしたりしました。息子が眠気に勝てずに眠ってしまうことを心配してのことでした。母はその都度、米をボールに1杯入れてその中から何かを熱心に選んでいました。
「母さん、毎日、米から何を選んでいるの。」
気になった息子は我慢しきれずに聞いたこともありましたが、母親はにっこり笑っているだけでした。
いつの間にか1年が過ぎて試験の日になった時、いつもよりも早く起きた母は受験生の息子を呼びました。そして息子の前で小さなつぼを一つ開けました。
つぼの中にはつやつやと光った米がこんもりと入っていました。
「これは、夜ごとにお前の後ろで選んだ米だよ。ボール1杯の中から一番粒が大きくて形が良くておいしそうなものを選んでおいたのだよ。日によっては2粒しかない日もあり、10粒の日もあった。」
母は米を一粒一粒選びながら、この米のようにしっかりと中身の充実した人間になれと祈りながら選んだと言いました。
「母さん。」
母親は、その米を1粒もこぼさないように丁寧にといでご飯を炊き、試験場に行く息子の朝ごはんを準備してあげたのでした。
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幸福な世界

2015-02-22 06:35:02 | 韓で遊ぶ


最後の旅

深い山奥の村に70歳の年老いた母と暮らす息子がいました。
息子は村中に知れた孝行者でした。息子は、ややもすると老い先短いと泣き言を言う母の面倒を良く見ていました。
母のしわの多い手をとって爪を切ってあげていたある日、母が遠慮がちに聞きました。
「ここからは遠いだろうね。」
「どこのことだい。母さん。」
「あの、ソウルとか言うところだよ。」
「何で、行きたいのかい。」
「いや、この有様で行くって、どこに行けるもんか。」
生まれてから、ただの一度も山を越えて村の外に出たことのない母でした。70歳の母は、死ぬ前にたったの一度でいいから広い世界を見たいというのが願いでした。
もう、何回目になるかわからないソウルの話でしたが、車に乗れば酔ってしまい、村の中の外出でさえままならない母が、この山の村からソウルまで行くと言うことは、ただ事ではありませんでした。
「かあさん、、、」
ある日、息子はリヤカーを改造して横になれるようにして、生涯ただ1回もしたことのない母のソウル見物を準備しました。
「母さん、ソウル見物させてあげるよ。」
「本当かい。今行くのかい。」
母は幼い子供のように喜びました。
「そうだよ、母さん。」
その姿を見ている息子の口元にも穏やかな笑みが浮かびました。
「ちょっと待ってよ。ならば荷物をまとめないと。」
母が荷作りしようとたんすの奥深くから取り出したのは、きれいに畳んで風呂敷に包んでしまっておいた死に衣装でした。
「いや、これを何で。」
息子は当惑しましたが、母の気持ちがわかるようで、どうしてもやめさせることができませんでした。もしかしたら、生涯最後の旅行になるかも知れないと言う思いがしたからです。
息子はリヤカーを引いて山を越えて川を渡りました。額の汗をぬぐって息子は母が喜ぶ姿を思ってがんばりました。ですが気持ちとは違って長い旅行に力が尽きた母はだんだん元気がなくなって行きました。
道で寝て、道で目を覚ます日が何日か続きました。
母と息子の特別な自家用車が丘を越えて、とうとうソウルの入り口に到着した時、息子はただ慟哭してしまいました。
あんなに恋しかった新転地がすぐ目の前なのに、母親は死に衣装の包みをしっかりと胸に抱きかかえたまま息を引き取っていたのです。
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幸福な世界

2015-02-21 06:22:23 | 韓で遊ぶ


母が待っているもの

貧しい家の事情で入学金が免除される実業系の高校に通っている息子がいました。その息子は、いつも月曜日の朝に寄宿舎に行くために荷物をまとめました。母親はその度に垢にまみれた手で交通費をいくらか握らせてあげては背を向けて心を痛めるのです。
ところが、ある日の夕方、母が寄宿舎に息子を訪ねてきました。母は、あまりにも意外で、なぜ来たのかと言葉も出せず立っている息子に、何回折りたたんだかわからないぐらいしわくちゃの1万ウォン札を1枚差し出しました。
「すまないねぇ。あげられるのがこれしかなくて、、」
息子は母親のその手が恥ずかしくて、すぐに部屋のドアを閉めてしまいました。
何年か後、その息子が交通事故を起こし刑務所に収監されました。
手錠をはめられた息子の前で、とめどなく涙を流す母を見て、息子は決心しました。
「ごめんなさい、母さん、、、少しだけ待っていてくれたら、わたしが贅沢をさせてやるから。」
「そ、そうか、、、待っているよ。待てないことがあるか。」
出所した後、息子は母親との約束を守るために一生懸命働きました。お金が貯まるまでは母の前に行かないと言う決心で、盆、正月にも訪ねていかないで我慢しました。
そうやって3年が過ぎ、正月を前にしたある日、息子が母に上げるプレゼントを準備しました。やっと訪ねて行ける時が来たと思ったのです。
ですが、その日の晩、弟から電話がかかって来ました。
兄さんがお金を稼いで贅沢させてくれると、ずっと待っていた母が交通事故で亡くなったということでした。その日、母親に上げようと思っていたプレゼントを胸に抱いたまま息子は、とめどなく涙を流しました。
「母さん、何で1日待てなかったんだ。一日、、」
母の胸に刺さった釘を最後まで抜いてやることのできなかった息子は、涙を流すばかりでした。
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幸福な世界

2015-02-20 04:47:26 | 韓で遊ぶ


5分だけでも

田舎の家に一人の軍人が訪ねて来ました。
「ごめんください。ここが、、、」
「どなた。」
洗濯物を干していた母親は、見覚えのない軍人が渡してくれた1通の手紙を受け取りました。それは息子の戦死通知でした。
戦地で、苦しみの中で死んでいった息子の姿を思い浮かべる母の胸は、張り裂けるように痛みました。
「ううう、、、ううう、、、」
とても大事に育てた息子、支えであり、希望であった息子なのに、、、
肩を震わせて泣く母の胸には、息子の姿が鮮明に浮かびました。
母親は懇切に祈りました。
「あぁ、一度だけでも息子に会うことができたら、ほんの5分だけでも、、、」
そばで母親の祈りを聞いた軍人が訊きました。
「息子さんに5分間だけでも会うことができたら、お母さんが会いたい息子さんの姿はどんな姿ですか。」
母親は息子と供に過ごした日々を思い浮かべました。母親の記憶の中には、本当にいろいろの姿の息子がいました。
よちよち歩きを覚えた幼い頃の天真な姿も、学校の壇上に上がって優等賞を受けた誇らしげな姿も、いい事をして家族を喜ばせた姿もありました。ですが、母親がもう一度会いたい息子は、その時の息子ではありませんでした。
話を聞いていた軍人は気使いながら訊きました。
「軍人として勇敢に戦った姿ですか。」
「違います。それは、、私が会いたいのは、、、」
母親は、すごくゆっくり記憶を探るように言いました。
「いつだったか、とっても大きな間違いをしでかして、どうしていいかわからなくて泣いた、その時の息子と5分だけでも会うことができたら、、、」
母親は涙をこらえながら話を続けました。
「あの子は、その時、あまりにも幼くてとても怖がっていたのよ。」
母親は涙で汚れた息子の顔を拭いてやりたいと言いました。苦しくて大変だった時の息子にもう一度会って胸に抱いて傷をなでてやりたいと言いました。
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幸福な世界

2015-02-19 06:23:08 | 韓で遊ぶ


1本のバラ

ある紳士が花屋の前に車を止めました。
遠い故郷にいる母に花束を送ってくれと注文するつもりでした。紳士は店に入ろうとした時、一人の少女が道端に座って泣いているのを見つけました。
紳士は少女に近づいて尋ねました。
「おや、君はどうしてここで泣いているの。」
少女は泣きながら言いました。
「お母さんにあげるバラの花を1本買いたいのですが、お金が足りなくて。」
紳士は胸が痛みました。
「そうか。」
紳士は少女の手をとって花屋に入って行き、母に送る花束を注文した後に少女にバラの花を1本買ってあげました。
少女の表情は明るく変りました。
店を出ると紳士は少女を家まで送ってあげるといいました。
「本当に送ってくれるの。」
「もちろん。」
「ならば、お母さんのところに連れて行って下さい。あの、、でも、おじさん、お母さんのいるところは少し遠いのよ、、、」
「はは、、これは、君を乗せなければよかったな。」
紳士は少女が案内するとおりに車を運転しました。
しばらく走って市内の大通りを抜け、くねくねした山道に沿って行ったところは、意外にも共同墓地でした。
少女は、できてからいくらもたっていない墓に花を置きました。
一ヶ月前になくなったお母さんのお墓にバラの花を一本ささげようと長い道のりを走ってきたのでした。
紳士はその子を家まで送ってあげた後、花屋に引き返し、母親に送ることにした花を取り消しました。
そして花を一束買って5時間もかかる母の家に走ったのでした。
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