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紙ストローには危険な「永久化学物質」が含まれていることが判明

2024年02月03日 | 自然・農業・環境問題

TABI LABO編集部2024.02.01

紙ストローは、人々が期待していたほどの環境貢献を成し得なかった。

振り返ること2022年4月、深刻化する海洋プラスチック汚染などの対策として日本で施行された「プラスチック資源循環法」

環境のためという大義名分に反発する術をもたず、突然プラストローに別れを告げられた私たちは、紙ストローという得体の知れないモノになんとか慣れてやろうと、試行錯誤を重ねてきた。

もちろん、プラストロー禁止により混乱に陥ったのは日本だけではなく、世界各地で起きていた話。サンフランシスコでは罰金制度が発足したものの、紙が分厚すぎてリサイクルできずに一般ゴミとして処分されるという、本末転倒なケースも起きていたそうだ。

そんなこんなで、日本で新プラ法が施行されてから約1年半が経過。

もう、やめない?という動きが最近現れつつある。というのも、紙ストローの飲みづらさや味の変化、効果のなさという話ではない。

なんと、紙ストローに「低レベルの永久化学物質」が含まれていることが判明したのだ。

紙ストローには、ファストフードの包装紙などに用いられる熱や薬品に強い物質「ペルフルオロアルキル物質・ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)」が含まれているらしい。『Food Additives and Contaminants』に掲載された研究論文で明かされた。

環境中で分解するまでに何世紀もかかってしまうことから「生分解性」ではないとされ、私たちの健康への悪影響も懸念されている。

これを後押しするかのように、アントワープ大学の科学者らは、環境に優しいはずだった紙ストローがPFAS汚染に寄与している可能性を示唆。

研究に参加したポーリン・ボワサック氏は、「PFASはほぼ全種類のストローに含まれ、主に植物由来の材料から作られたものに含まれていたことが判明した」と述べており、植物由来のストローは必ずしも“持続可能な代替品”と言えないことを指摘している。

同氏は最も持続可能な代替案として、再利用が可能で尚且つPFASを含まない、ステンレス製ストローを挙げている。

たしかに説得力があり、今までのような苦い思いはせずに済みそうだ。しかし、私たちが「常時ステンレスストローを持ち歩く習慣」を身につけられるか……と考えると、あまり現実的ではない予感も。

目を背けてこのまま紙ストローを使い続けるか、他の案に切り替えるのか。はたまた、全くストローを使わないという意見さえある。

どちらにせよ、紙ストローが最適解だったか否かについては、十分検討する余地がありそうだ。

⁂     ⁂     ⁂

知らず知らずの間にプラスチックを食べている、米誌調査で判明

YAHOOニュース2024.01.12(金)

ロイター

 米消費者専門誌「コンシューマー・リポート」は4日、健康上のリスクがあるにもかかわらず、食品中にプラスチックが「幅広く」存在していると主張、規制当局に対し、製造過程で食品と接触するプラスチックの安全性を再点検するよう求めた。

 同誌はスーパーマーケットの食品とファーストフード85種類を検査。このうち84種類に「フタル酸エステル」が含まれていた。これはプラスチックの耐久性を高めるために使用される化学物質だ。

 また、食品サンプルの79%から、プラスチックに含まれる化学物質である「ビスフェノールA」などのビスフェノール類が検出された。

 フタル酸エステルとビスフェノール類は、ホルモンの生成と調節を乱し、多くの健康問題のリスクを高める可能性がある。

 フタル酸エステルは、いずれも米国と欧州の規制当局が定めた基準値を超えていなかった。ただ同誌によると、科学者が安全性を確認したフタル酸エステルの基準はない。

 同誌は、米規制当局による再評価はもっと早く行われるべきであり、必要不可欠であるだと指摘した。

米国でペットボトル水から推定値の10〜100倍のプラスチックが検出され衝撃走る

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024.01.30

ペットボトルの水から、これまでの推定値の10倍から100倍の微小なプラスチック粒子が検出され、衝撃を与えています。

投棄されたプラごみが細かく粉砕されてできるマイクロプラスチックは、これまでも海洋汚染の原因として問題になっていました。マイクロプラスチックを飲み込んだ魚を食べることで、人間の体内にも入っていることも知られ始めていました。

しかし今回世界を驚かせたのは、ペットボトルの水からこれまで推定されていた10倍から100倍のプラスチック粒子が検出されたことです。コロンビア大学とラトガース大学の研究によれば、ペットボトル入り飲料水1リットル中に含まれていたプラスチック粒子は、およそ24万個でした。

検出されたプラスチック粒子のうち、約10%はマイクロプラスチックで、残りの90%はもっと小さなナノプラスチックでした。マイクロプラスチックが5ミリから1マイクロメートルであるのに比べ、ナノプラスチックは1マイクロメートル以下で、人間の髪の毛の太さの70分の1という微小なものです。

検出された粒子の一部は、浄水器に使用されているプラスチックから流出している可能性もあると、研究者は推定しています。

こうしたマイクロプラスチックやナノプラスチックが人間の体内に入った場合、どんな影響があるのかはまだわかっていません。しかしマウスを使った実験では、微小なプラスチックはマウスの血液に入り、主要組織や臓器に沈着することがわかっています。その過程で、免疫系障害、臓器障害などを引き起こすという研究結果もあります。

アメリカでは古い水道管に鉛が使われているなど、水質に不安を持ちペットボトルの水に切り替えた人が少なくありません。いったい何をどう飲めば安全なのか、ますますわからない時代になってしまいました。

(シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)

 


いよいよ明日は京都市長選挙投票日。 
こちらのビデオも観てください。
立民の良識ある人たちも福山応援に立ち上がっています。

 2024/02/03 京都市長選挙 福山和人候補 今出川演説   


EUでグリホサート大訴訟がスタート!

2024年01月28日 | 自然・農業・環境問題

 米国の訴訟含めバイエルはより窮地に

 昨年、EUはモンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)の使用を10年再承認した。実際には加盟国の過半数の賛成を得られず、再承認も禁止も過半数にいかなかったため、欧州委員会の判断に任されて、10年の再使用が承認されたということになる。
 
 この決定に対して、農薬問題で活動する6つのヨーロッパのNGOが欧州食品安全機関(EFSA)と欧州化学機関(ECHA)を相手に訴訟を起こした。その名も「グリホサート大訴訟」(The Great Glyphosate Court Case)。その具体的な一歩を踏み出した。
 
 その訴訟を始める理由として農薬行動ネットワーク・ヨーロッパ(PAN Europe)は
1. 科学的見解の無視
2. 新たに発見された発がん性
3. 遺伝毒性
4. 神経毒性
5. マイクロバイオームへの影響
6. 昆虫、鳥、両生類の毒性
7. 添加剤を含む農薬製剤の試験なし

の7点を上げている。
 
 米国でグリホサートによって非ホジキンリンパ腫(血液のがん)になった被害者による5万件に上る訴訟に加えて、このEUでの裁判によって、このグリホサートとの闘いはいよいよグローバルな裁判闘争に入っていくことになる。
 
 もっとも欧米の流通業者では個人向けのラウンドアップ/グリホサートの販売はもうやめているところが少なからずある。ドイツでは鉄道会社が線路に撒くのが最大の使用ケースだったが、それも取りやめたりして、その使用は減少に向かっている。
 
 バイエルの旗色は悪く、その株価は低迷を続けている。
 
 今回の訴訟によって、グリホサートが持つ問題は世界ではさらに注目を浴び、その販売はさらに減少していくことは確実だが、問題なのが日本である。日本は米国で5回連続、グリホサート裁判でバイエルが敗北していることをマスメディアが伝えていないし、今回のEUでの裁判も報道しないだろう。残念なことに今もホームセンターではラウンドアップ/グリホサートは山積みのセールスになっている。その問題を伝える大手メディアは存在しない。日本だけ農薬天国になっているように思えてならない。


除草剤、農家だけでなく一般園芸愛好家にも手軽に使われている現状だ。

今日もいい天気だ。
予報は曇りだったがきれいな青空だ。


能登半島地震で原発は「警戒事態」だった…

2024年01月24日 | 自然・農業・環境問題

政府と自治体の対応を振り返る 指針に書かれた「避難の準備」は

「東京新聞」2024年1月24日 
 
 能登半島地震では北陸電力志賀原発を巡る危機も看過できない。実は今回、立地する石川県志賀町で震度6弱以上を記録したため、国の原子力災害対策指針が定める緊急事態区分の一つ「警戒事態」に当たると原子力規制庁は判断していた。関連情報の周知や避難の準備が求められたが、震災対応に追われた地元自治体は手が回ったのか。複合災害に対応できるのか。(曽田晋太郎、西田直晃)

◆自治体職員も多くが被災して登庁ができない大混乱

 「阪神大震災の経験が生きなかった。経験を生かす以前の話だった」
 
 そう話すのは神戸市危機管理室の課長、渡辺智明さん(58)。6日から11日にかけて能登半島先端にある石川県珠洲市役所に入り、避難所運営のニーズ調査を担った。都市部で起きた阪神大震災とは異なる混乱ぶりがあったという。
 珠洲市は地方の過疎地。人口は約1万2000人。職員数も神戸が2万人だったのに対して400人ほど。3〜4割は被災して市役所に来られない状況だった。
 渡辺さんが現地入りした段階でも被害の全体像がつかめておらず、避難所の数や避難者数も不明だった。情報発信もままならず、飲料水などの物資が必要量以上に届く事態に陥った。
 「珠洲市は人手不足で満身創痍(そうい)だった。体系的に動けておらず、機能不全の状態だった。初動の局面からなかなか先に進めない状況になっていた」

◆震度6弱以上で「警戒事態」 原子力災害対策指針

 震災対応で大混乱した今回の地震。原子力災害でも重要な局面が迫っていた。
 
 志賀原発は停止中だったものの、立地する志賀町では元日に震度7、6日に6弱を記録した。その一方、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策指針では「原発所在市町村で、震度6弱以上の地震が発生した場合」などを「警戒事態」と判断する基準の一つに定めている。
 警戒事態は事故対応の初期段階に当たる。住民対応を円滑に進める名目で規制庁や自治体は少なくない業務を強いられる。指針などによれば、職員の参集、関連情報の収集や周知のほか、環境モニタリングや避難の準備が必要になる。
 避難の準備で対象になるのが、原発の5キロ圏の高齢者や妊婦ら。搬送先や輸送手段の確保も求められる。

◆警戒本部を約5時間半で「廃止」 何を急いだのか

 
 規制庁によると、警戒事態に該当するかの判断は同庁が行う。今回のケースでは、志賀町で震度6弱以上を観測した2回とも警戒事態に認定し、原子力規制委員会・内閣府原子力事故合同警戒本部が設置された。
 ただ警戒本部は1日が約5時間半、6日が約40分で廃止された。この間、原子炉の「止める・冷やす・閉じ込める」の機能や使用済み核燃料の冷却状態を確認したという。
 富山大の林衛准教授(科学技術社会論)は「志賀原発に異常はないとしつつ、変圧器の油漏れや電源喪失などの情報がどんどん出てきた。規制庁は異常の把握を途中でやめ、『大丈夫でしょう』と決めたように見える。なぜ本部を急いで廃止したのか。信頼性を失う判断ではなかったか」と疑問を呈する。
 「情報が錯綜(さくそう)すれば自治体の混乱を招きかねない。不具合の原因が究明できていないので、いつ危険な状態になるか分からない。規制庁はきちんと地震の影響をチェックすべきだった」

◆石川県「国からの指示が特になかった」

大きく崩落した道路=石川県志賀町

大きく崩落した道路=石川県志賀町

 国もさることながら気になるのが、志賀原発を巡る地元自治体の動き、特に石川県の対応だ。
 志賀町出身で社民党県連代表の盛本芳久県議は「県は北陸電力の発表を追認するだけで、原発に関する独自の情報発信がほとんどない」と不信感を示した上で「タブー視されているかのようで、県の動きが見えないことに不安を感じている」と嘆く。
 実際のところ、県はどのように動いたか。
 県原子力安全対策室によると、元日の地震発生の約45分後、「事故現地警戒本部」の設置を国から文書で要請される直前、県独自の判断で拠点の志賀オフサイトセンターに職員2人を派遣した。地域防災計画では震度5以上なら全職員登庁と定め、担当者は「すぐに県庁の受け入れ態勢をとった」と説明する。
 その後、北電から安全性の情報提供を受けながら、周辺の空間放射線量を測る緊急時モニタリングの準備を整えたが、道路の陥没や隆起が相次ぐ中で様子見に徹した。担当者は「初動の迅速さ」を強調し、原子力災害対策指針が定めた通りの対応を説明。「規制庁と相談しながら対応を判断していた」とのことだった。
 ただ、5キロ圏の高齢者や妊婦らの避難準備は、立地町の志賀町に呼びかけていない。「国からの指示が特になかった」(県危機対策課の担当者)ためという。

◆地震に原子力災害が加わると「対処できるレベルをはるかに超える」

 志賀町によると、警戒事態で避難準備する対象者は少なくとも233人(2023年11月時点)が該当し、5キロ圏で生活する住民の約7%を占めている。実際に避難となると、震災対応と並行した動きが求められる。
地割れした道路=2日、石川県志賀町

地割れした道路=2日、石川県志賀町

 今回の地震でこうした原発対応に追われた県と志賀町に対し、盛本氏は「災害対応は本当に大変だった」とねぎらいつつ「原発の様子が気になる県民は多い。余震の際には『原発は大丈夫か』と不安が募る。もっと情報を集約してほしかった」と注文する。
 警戒事態からさらに状況が悪化すると、自治体などの負担がはるかに増す。
 避難を強いられた住民の誘導、避難者の体に付着した汚染の程度を調べるスクリーニング、甲状腺被ばくを軽減する安定ヨウ素剤の配布なども必要に。目の前の災害対応の中、対処しきれない事態が待ち受けている可能性が高い。
 新潟国際情報大の佐々木寛教授(政治学)は「能登半島地震では、水道破裂や道路陥没、電気不通が相次いだが、そこに原子力災害が加わると、単一の自治体が対処できるレベルをはるかに超える」と指摘する。
県道23号の片側一車線をふさぐ土砂崩れ=3日、石川県志賀町

県道23号の片側一車線をふさぐ土砂崩れ=3日、石川県志賀町

 「原発事故は十中八九、地震や津波と併発する複合災害。どの自治体も人員、物資ともに不足する」

◆国民を守るための方策が「簡略化」される懸念

 さらに佐々木氏は「原発事故の対応に手が回らないという理由を付け、防護策の簡略化に向かうのが怖い」とも警戒する。
 5キロ圏を例に取れば、今の指針では警戒事態よりも深刻な「施設敷地緊急事態」や「全面緊急事態」で避難の開始を想定するが、労力の問題から「5キロ圏でも屋内退避になってしまうかもしれない」と見通す。
 5キロ圏外でも「頑丈な建物に退避」が原発対応の基本とされかねない一方、今回の地震で建物の損壊リスクが明らかになっている。そんな中、屋内退避で難を免れるのに限界があるのは明白だ。飛散した放射性物質にさらされたり、体内に取り込んだりすることで、被ばくを強いられる可能性が高くなってしまう。
 佐々木氏は「原発が重大な事態に至らなくとも近くに住む人は不安を抱え、外に逃げてもいいか、屋内にとどまるべきか、迷いを生じさせる。それほど原発は厄介な存在だ」と訴える。

◆デスクメモ

 地震や津波の対応に奔走する自治体には頭が下がる。自身や身内が被災した例もあるだろう。彼らに原発対応まで求めるのは申し訳ない。災害時に負担を強い、疲弊を加速させるのが原発という存在。佐々木さんの言うように厄介であり、罪深くもある。そんな原発は本当に必要なのか。 (榊)

明日は札幌の孫の合格祝いの予定だが、今夜から大荒れの天気になるらしい。
延期したほうがよさそうだ。


石川県「能登でM8.1」試算を知りながら防災計画は「M7.0」想定 知事は「震災少ない」と企業誘致に熱

2024年01月18日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」こちら特報部 2024年1月18日 

 気象庁がマグニチュード(M)7.6と発表した能登半島地震。過去をたどると不可解な点が浮かぶ。地元の石川県は2012年、今回の震源地の能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると試算したが、家屋倒壊などの被害想定を示さず、地震対策の議論を先送りした。当時から住宅の耐震化などを進めていれば「救えた命」がなかったか。「地震リスクが周知されず」で済ませていいか。(西田直晃、木原育子)

◆多数の家屋が倒壊して被害が拡大

 「住まいを追われたお年寄りたちは、農業用テントで身を寄せ合いながら暮らしていた。孤立した集落に行き場はどこにもない」

 そう声を落としたのは、地震発生翌日の2日夜に被災地入りしたジャーナリストの堀潤氏だ。

 今回の地震で目を見張るのが、倒壊家屋の多さだ。

 石川県によると、17日午後2時現在の判明分(全半壊、一部破損)で2万2000余の住宅に被害が出た。能登半島の先端にある珠洲市、西隣の輪島市は集計困難として除かれており、実際の数はさらに多くなる。県が17日までに氏名を公表した犠牲者59人のうち、9割が家屋倒壊で亡くなった。

 堀氏は「畜産用の牛舎の倒壊も激しく、生業を維持できない。古い木造家屋は壊滅的だ」と語る。

 耐震化の遅れは、被害の拡大を招いたとみられる。現在の耐震基準を満たす住宅の割合(耐震化率)は、全国平均の87%(2018年度)に対し、珠洲市は51%(同)、輪島市は46.1%(22年度)にとどまる。

◆「多分連動するような断層の配置」「考慮して当然」

 これらの甚大な被害は想定外と言えるのか。

 震源地は能登半島の北側辺りとされる。政府の地震調査委員会は、能登半島沖の北東から南西にある複数の活断層が連動し、大きな揺れを引き起こした可能性に言及している。

 能登半島の北方沖では、かねて複数の活断層の存在が指摘されていた。国の研究機関「産業技術総合研究所」の岡村行信氏らは10年の「能登半島北部周辺20万分の1海域地質図説明書」で四つの活断層を記載した。産総研によると、半島北岸の5〜10キロ沖で海岸と平行に逆断層が分布し、一つ当たり20キロ前後の長さで四つに区分される。

 12年3月にあった経済産業省原子力安全・保安院の「地震・津波に関する意見聴取会(活断層関係)」では、北陸電力志賀原発(志賀町)の審査に際し、岡村氏が委員として出席。四つの活断層が連動する可能性に触れた。議事録には「多分連動するような断層の配置」「考慮して当然」といった岡村氏の発言が残る。

◆石川県の資料に確かに「M8.1」と

 これを受け、北電は「約95キロ区間の連動を考慮すると、マグニチュード8.1相当になる」という試算を報告した。岡村氏は取材に「原発の安全性審査のためには、最大クラスの地震規模を想定することが必要だった」と当時を回想した。

 北電の試算と同じ月には、県が「平成23年度石川県津波浸水想定調査」の報告書をまとめ、能登半島の北方沖で活断層が95キロにわたって動く場合の地震規模を見積もった。

 翌月の12年4月の説明資料には、M8.1という試算結果が記されている。地震波の最大振れ幅を踏まえる気象庁の算出方式に基づいた値で、震源断層のずれの大きさから計算する「モーメントマグニチュード(Mw)」は7.66。同月にあった県防災会議の震災対策部会で県の試算が報告され、北陸中日新聞などで報じられた。

◆その後、地域防災計画は見直しに

 地域に合った対策を定めるのが県の役目だ。災害対策基本法によれば、住民の命や財産を災害から保護するために都道府県が取る対策は、地域防災計画に盛り込むことになっている。

 県は「能登半島北方沖でM8.1」の試算後、地域防災計画の津波災害対策編に反映させた。12年5月のことだ。各地の津波高や到達時間を出し、津波ハザードマップの作成や避難路の整備などの対策も示した。

 14年9月に政府の有識者会議「日本海における大規模地震に関する調査検討会」が報告書をまとめ、「能登半島北方沖でMw7.6」の地震を見立てると、県はこの報告書を考慮し、地域防災計画の津波災害対策編を見直した。

◆なぜか地震想定を小さく据え置いていた 

 不可解なのが、県の地震対応だ。地域防災計画の地震災害対策編では「能登半島北方沖でM8.1」を盛り込まず、1997年度公表の想定を据え置いた。記載した地震の規模は「北方沖でM7.0」。地震による被害も「ごく局地的な災害で、災害度は低い」とし、死者は7人、建物全壊は120棟、避難者数は約2780人と見積もった。

 こうした想定は備えを鈍らせなかったか。本来は多数の家屋倒壊や道路の損壊といった地震の被害を念頭に置き、耐震化の予算を付け、孤立対策などを準備すべきだったのではないか。

 科学ジャーナリストの添田孝史氏は「これだけ何もしてこなかったのは理解を超えるレベルだ。被害想定ができていなかったために初動も遅れ、正確な情報も集まらず、自衛隊の救援も含めて人手確保ができないまま全てが後手に回ったのではないか」と話す。

 金沢大の平松良浩教授(地震学)も「あんなに更新されていない地域防災計画は実効性がない。自治体は住民の命と財産を守るのが根本。喫緊の課題だったが、県の動きは鈍かったと言わざるを得ない」と語る。

◆7期28年の谷本県政 当時は北陸新幹線開通を控えた時期

 M8.1の試算は、1994年から7期28年にわたって知事を務めた谷本正憲氏の在任中に行われた。しかし谷本県政では、地域防災計画の地震災害対策編に反映されなかった。

 試算が出た2012年は東日本大震災の翌年。県議会の会議録によれば、谷本氏は「震災が少ない地域」とアピールしながら企業誘致に力を入れ、北陸新幹線の金沢開業を控えて誘客に躍起になっていた。

 そんな中、県が地震の被害想定を据え置いたのはなぜか。県危機対策課の南良一課長によれば、政府の方針が関係しているという。

 政府の地震調査委が発表する主要な活断層の「長期評価」は17年から海底活断層も加えて調査しているが、能登半島沖は検討が始まったばかり。南課長は「本県から働きかけて国に調査をしてもらった手前、それを待たずして先行するのはどうか。県としては国の調査結果をずっと待っていた」と述べる。

 現知事の馳浩氏が就任した2カ月後の22年5月、地域防災計画の地震災害対策編を見直すと決めた。ただ、早ければ25年度の公表という作業工程で、今回の地震には間に合わなかった。

◆「災害は政治的な現象がよく現れる」

 「国を待つ」姿勢だけで本当に良かったのか。

 東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「国の支援に頼りきるのではなく、ある程度、県や市が幾分か自力でできる力を付け、地域にその力を持たせていく必要があった。ところが今回、状況も全容もつかめず、国の激甚災害に指定されたのも10日後だった」と述べ、こう訴える。

 「災害は政治的な現象がよく現れる。地域防災計画を早く見直し、それに合わせて被害予想を得ていれば、被害を最小限にできた。改めて地方の防災力がないことを浮き彫りにした。災害は想定外で起きることを絶対に忘れてはならない

◆デスクメモ

 文中の岡村氏は福島原発事故の2年前、869年の貞観地震を踏まえ、大津波襲来の危険性を訴えた。だが備えに至らず事故に。その同氏が問題視した能登半島北方沖の活断層群。至らぬ備えがまたあらわに。何とかしたかった。M8.1試算を12年前に報じた身として自責の念が募る。(榊)


「地方の防災力がない」のはなぜなのか?
が問われなければならない。
国の原発推進県においては顕著であろう。

雪かきのない朝を迎えた。
しかし、夕方からまたもや吹雪模様。


古賀茂明 能登半島地震でマスコミが映さない原発の「不都合な真実」 ずさんな避難計画を隠そうとする政府と電力会社

2024年01月16日 | 自然・農業・環境問題

AERA dot. 2024.01.16

 先週に続いて、あまり知られていない原発の「不都合な真実」をもう一つ紹介しよう。

 それは、原発周辺住民などのために作られている原発災害避難計画は原子力規制委員会の「審査」を受けていないということだ。

 普通の人は、国が再稼働を認めるからには、ちゃんとした避難計画があり、その計画は、政府が言うところの「世界最高水準の」基準に従って規制委が審査していると思うだろう。だが、実際には全く違う。規制委は、避難計画にはノータッチなのである。

 したがって、ほぼ全ての計画が全くいい加減な「なんちゃって避難計画」になっている。信じられないかもしれないが、それが真実だ。

 今回の能登半島地震では、地震と津波、火災による家屋の被害とともに、広範囲に及ぶ道路が、土砂崩れ、亀裂、陥没、隆起などで寸断された。津波で港が被害を受け、海岸が隆起した地域もあった。

 そのため、人や物の移動が陸路でも海路でも困難になったり、長時間孤立したりする地域も出た。

 先週のコラムでも書いたとおり、北陸電力志賀原発では大事故は起きなかったが、想定を超えた揺れが確認されたり、そのほかにもいくつかの重大なトラブルが起きたりして、また、敷地内の道路などで亀裂や段差が生じたという報告もなされた。

 原発事故につながるような大きな地震があれば、こうした事態になることは誰でも予想できる。

 当然のことながら、それに対応するための対策がとられているはずだ。

 では、具体的には、どのような対策があるのだろうか。

 原発災害の際の避難計画は、各自治体が策定することになっている。そこで、志賀原発が立地している「志賀町原子力災害避難計画」をネットで検索してみた。平成29(2017)年11月付の資料だ。

 読んでみて呆れたのだが、避難手段を記載した箇所の冒頭に、

「避難にあたっては、災害の状況に応じ、自家用車をはじめ、自衛隊車両や国、県、町の保有する車両、民間車両、海上交通手段などあらゆる手段を活用する」

 と書いてある。要するに、主たる移動手段は「自動車」としているのだ。ご丁寧に自家用車で避難できない人はバスで運ぶとまで書いてある。避難ルートは国道・県道などとし、警察・消防が避難誘導を行うそうだ。

 今回の地震を見れば、この計画が全く役に立たないことがよくわかるだろう。ほとんど笑い話のようだが、笑い事ではすまない。ことは多数の人命に関わる問題なのだ。

 こんな杜撰な計画を真面目な顔をして住民に提示している志賀町はとんでもない自治体だと思う人もいるかもしれない。志賀町の町長も町会議員も町役場の職員も本気でこの計画で大丈夫だと考えていたのだろうかということが疑問に思えるだろう。

 しかし、全国の原発立地地域の自治体が作った避難計画は概ねこの程度のものだ。実は、彼らもこんな計画は絵に描いた餅であることはよく知っている。しかし、原発を動かさないと地域にお金が入ってこないので、やむなく作っているということだ。

 彼らから見れば、それも住民のために仕方なくやっていることなのだろう。

 逆にいうと、住民のためにやむなくやっていることで後から責任を問われるのは割に合わないと思う自治体の長も多い。

 そこで、国が助け舟を用意した。

 内閣総理大臣が議長を務め、全閣僚などからなる「原子力防災会議」という、閣議とほとんど同じメンバーの政治的な集まりでお墨付きを与える仕組みを整えたのだ。これにより、避難計画はおかしいと言われても、「いえいえ、これは総理大臣のお墨付きを受けたものです」と反論できる。責任逃れにはうってつけだ。

 そういう仕組みになったのは、民主党政権下で原発規制を作る時に、あえて、避難計画を規制委の審査の対象外としたことによる。

 だが、そんなおかしなことをしたのはなぜか?

 それは、避難計画を規制委の審査対象とすれば、専門家のチェックが入り、その結果、承認される避難計画は皆無となる。なぜなら、大きな地震で原発災害が起きた時、道路などが寸断されるリスクがない地域などなく、その場合、住民を短時間のうちに避難させることが不可能だからだ。つまり、まともな避難計画は作れないということを意味している。

 仮に、規制委が避難計画を審査することになれば、どう考えても、承認されるとは考えられない。つまり、日本の原発は全て止まり、廃炉にするしかなくなる。

 しかし、当時原発規制について協議していた与党民主党と野党自民党には共通の利益があった。自民党は原発利権を守りたい。民主党は最大の支持基盤である連合(電力総連など原発関連の有力な組合を傘下に有する)の支持を失いたくない。両者の思惑が一致して、原発を動かすために避難計画を規制委の審査対象外としてしまった。

 避難計画を規制委の安全審査の対象外とすることは、極めて不合理である。

 第一に、住民の避難ができない可能性があるのであれば、原発から放射能が漏れることは絶対に許さないという安全基準にしなければならない(それは原発を禁止するのと同義である)。

 第二に、避難はできても時間がかかるということであれば、その時間が経過するまでの間は事故があっても放射能が漏洩しないような設計にしなければならない。メルトダウンは稼働中なら2時間で起きる。フィルターベント(事故の際、原子炉格納容器内の圧力が高まって破損する恐れが生じた場合に、フィルターを通すことで放射能の濃度を下げたうえで蒸気を外部に逃がす装置)で放射能を外に放出するまでの時間を長くするためには、格納容器や原子炉建屋の容積を大きくする必要がある。避難にどれくらい時間がかかるかがわからなければ、設計基準が決められないはずだ。

 いずれにしても避難計画と設計基準は論理的に切り離せないのだ。

 米国では、住民の避難ができないケースが想定されれば、原発の稼働は許されないという規制になっている。

 現に、ニューヨーク州のロングアイランドに新設されたショアハム原発が、1984年に完成したものの、稼働直前になって避難計画に難ありという理由で稼働が許されず、一度も動かないまま廃炉にされた。東京電力柏崎刈羽原発や志賀原発と同じ沸騰水型の出力約80万キロワットで、建設コストは60億ドルにも上ったが、住民の安全の方が優先された。これが正しい原発規制のあり方だ。

 日本の原発規制は極めて歪んでいる。原発再稼働が全ての前提になっており、再稼働の妨げになるものは、考慮しないということが平気で行われているのだ規制委は、住民の安全を守るためではなく、原発を動かすことを第一目的とした機関となっている。これは、規制委ができた時からわかっていたことだ。

 2012年当時、最大の課題は、福島事故の完全な収束であった。具体的には汚染水の処理問題が喫緊の課題だった。しかし、規制委は、規制基準の策定を最優先し、最低2年は必要と言われる中で約半年という短期間で規制基準を作った。これは、規制基準がないと審査ができず、原発再稼働ができないからだ。その結果、汚染水問題は放置された。

 今回、志賀原発で大事故が起きなかったのは本当に幸いだった。だが、それで喜んでいるわけにはいかない。

 現にさまざまなトラブルが原発内で生じ、また周辺道路も一時通行ができなくなった。震源が少しずれていれば、もしかすると大惨事になっていたかもしれない。

 住民の反対で頓挫した珠洲原発の建設計画も、当時は地震でも大丈夫だという話だった。もし、計画が実現して珠洲で原発が稼働していたら、壊滅的な被害が生じ、周辺住民は避難できず大惨事となっていたことだろう。

 今回の地震に際し、マスコミには当初、原発周辺の現場に足を運んで取材する様子が見られず、1月5日ごろになるとようやく写真などが報じられるようになったが、報道としては極めて小さな扱いでしかなかった。

 忖度しているのかなと思ってテレビ局の複数のディレクターなどに聞くと、驚くべきことに、スタッフで原発のことを気にかけていた人はほとんどいなかったという話だった。原発にカメラを出そうと提案をしても、人手もカメラも足りない中で、原発にカメラを出してどうするのだと言われるだけだと最初から諦めたという人もいた。忖度でもなんでもない。ことの重大性の理解がないのだ。報道の劣化が如実に表れた場面である。その結果、原発関連のニュースは今も極端に少ないという状況が続いている。

 これは、政府や電力会社にとっては嬉しい話だ。

 今頃、志賀原発では、敷地内で亀裂や段差の修復や故障した機器の復旧が進んでいるだろう。周辺道路の修復も優先して行われるはずだ。

 その結果、1カ月も経たないうちに、志賀原発は、一見何事もなかったかのような外見に戻る。2月になれば、北陸電力の方から、現地を撮影してくださいという案内があるかもしれない。大被害を出した能登半島地震でも、ほとんど無傷だった志賀原発という絵が流れれば、原発再稼働に追い風が吹く。

 1月26日から通常国会が始まる。そこで、野党には、この原発の問題を重点的に取り上げてもらいたい。その際、避難計画を規制委の審査対象に含めることを提案し、法律の改正案を提出するところまで踏み込むことが必要だ

 政府の側にそれを拒否する理屈はない。今までは、国民が知らなかっただけだが、今回はこの問題に関心を集めることができる。千載一遇のチャンスである。

 そして、避難計画が規制委の審査対象になれば、現在稼働中の原発を含めて、おそらくほとんどの原発を動かすことが認められなくなるはずだ。

 ただ、心配なことがある。それは、電力労組や原発メーカー関連の組合などを傘下に置く連合が立憲民主党に圧力をかけることである。今のところ、同党は、今回の地震を受けて、避難計画を規制委の審査対象に加えよという話はしていない。

 先週指摘した原発の耐震性の問題よりも、はるかにわかりやすく、反対する理屈がほとんど考えられないこの問題を取り上げた方が勝算がある。

 脱原発には反対でも、まともな避難計画を作れということに反対する人は少ないだろう。

 私は、この問題を真正面から取り上げれば、必ず原発を止めることにつながると確信している。


「原発再稼働」ありきが前提になっている。
それならそれなりにしっかり「耐震性問題」や「避難計画」をしっかりとしてもらいたいものだ。
それを求めるだけの「政権」ではないことは明白。

政権交代しかない。


どうなってる?国の「防災予算」

2024年01月12日 | 自然・農業・環境問題

 災害大国の日本、この使い方で本当にいいのか 防衛費は過去最高だけど…

「東京新聞こちら特報部2024年1月12日

 能登半島地震は発生から10日以上たってもなお、被害の全容がはっきりせず、孤立地域が存在する状態だ。災害大国の日本で、改めて防災の重要性が浮かび上がる。防衛費は2024年度当初予算で約7兆9000億円と過去最高を記録したが、防災関係の予算はどの程度なのか。災害を巡る予算運用は適切になされているのだろうか。(西田直晃、岸本拓也)

◆今のトレンドは「下り坂」

 内閣府は各省庁の毎年度の防災関係予算を積算し、防災白書で発表している。

 最新の23年版の同白書によると、23年度は約1兆6000億円で、22年度の約3兆円の半分程度。ただ、23年度分については当初予算段階の速報値で、国土交通省の担当者は「防災関係予算は、災害発生時に事後の補正予算などで対応するのが一般的」と説明する。今後、補正予算や予備費からの支出が上積みされ、確定値となる見通しだ。

 グラフにしてみると、過去に二つの山があり、現在は下り斜面にいるようにみえる。

 最大のピークは阪神大震災直後の1995年度。前年度から急増し、過去最多となる約7兆5000億円に上った。その後は減少傾向にあったが、東日本大震災直後の2011年度には再び増加に転じ、約4兆7000億円に達した。能登半島地震により24年度は再び増加する可能性が高い。

◆「研究予算」は一貫して2%以下

 内閣府は防災関係予算を4項目に分類している。各種災害や防災・減災の調査研究を指す「科学技術の研究」、防災施設の整備や建物の耐震化、訓練や教育といった「災害予防」、地盤沈下対策や治水・治山事業などの「国土保全」、被災者の生活再建支援や災害復旧事業を含む「災害復旧等」だ。

 年度を追って防災関係予算の使途の内訳を4項目別にみると、「災害復旧等」が自然災害の動向次第で1~7割と上下する一方、「科学技術の研究」は一貫して2%以下で推移する。「災害予防」の比率が増加傾向にあるとともに、かつては関係予算の4~6割を占めていた「国土保全」は1~2割程度にとどまる。

 「昭和期に自然災害を防ぐための土木工事が求められたが、公共事業が右肩下がりになってきた1990年代後半以降は防災関係の工事も相対的に減っている」と国交省の担当者。東日本大震災以降、災害予防の重要性が増したのは、発生を前提に被害軽減を図る「減災」の考え方が広まったことも大きいという。

 一般会計予算に占める防災関係予算の割合をみてみると、災害対策基本法が成立した60年代に比べて低下している。集計が始まった62年度には8.1%だったが、22年度は2.2%にとどまった。

◆予算を集約した資料は「この白書しかない」

 内閣府の担当者は「大きな災害が発生すると、防災関係予算が増やされ、全体の予算に占める割合も大きくなる」と話すが、長期的な割合の低下傾向の説明としてはすっきりしない。

 

 さらに「防災関係予算と一口に言っても、年度ごとにどの範囲を含んでいるかの違いもある。国立機関の独立行政法人化で集計から除外された事業などもある」(担当者)とも。

 なお、防災関係予算を集約した資料は「この防災白書しかない」という。災害大国・日本の防災関係予算の全体像はつかみづらい印象だ。

◆減災、復興、強靱化…本当に適切に使われていたのか

 過去の災害を振り返ると、防災や減災、震災復興などの名目で多額の予算が使われてきた。ニーズに沿って適切に使われてきたのかというと実態は怪しい。

 例えば、西日本豪雨などを受け、2018〜20年度の計画で実施された国土強靱(きょうじん)化緊急対策事業を巡り、会計検査院が昨年5月、緊急輸送道路でない道を無電柱化するなど、目的外の支出が計672億円あったと指摘した。東日本大震災のときも、各省庁が復興との関係が疑わしい事業を復興予算に潜り込ませ、「便乗」と批判された。

 能登半島地震では、政府は23年度の一般予備費から、被災者支援のために約47億円を支出することを決めた。自然災害などに備え、使途を決めずに毎年、予算計上されている予備費は約4666億円残っており、必要に応じてここから追加支出していくという。さらに政府は24年度予算案を変更して予備費を現状の5000億円から1兆円に倍増させる方向で検討している。

◆また「予備費」 ずさんな運用で多額の繰り越しも

 予備費は国会審議を経ないで政府の裁量で支出できるが、たびたびその使途が問題視されてきた。新型コロナ禍の20年度にそれまで数千億円程度だった予備費を10兆円超に拡大。その後、物価高対策やウクライナ問題にも使途を広げた。会計検査院も昨年9月、多額の予備費が繰り越されるなど、ずさんな予算運用があったと指摘した。

 今回の予備費支出について、白鷗大の藤井亮二教授(財政政策)は「震災の復旧にどれだけ費用がかかるか見通せない状況で予備費を使うのはやむを得ない」と理解を示しつつ、野放図に拡大しないように歯止めが必要と指摘する。

 「政府は新年度予算で、『一般予備費』を倍増すると報道されているが、一般予備費の増額は政府への白紙委任を広げるだけ。能登半島地震の対応に使途を制限する『特定予備費』とするべきだ。予備費の使用はやむを得ない場合に限定し、傷んだ地域経済の立て直しなど必要な予算は、補正予算を編成して国会の審議を経た上で執行することが求められる」

◆住宅の耐震化が急務 何が必要なのか

 一方、能登半島地震を巡っては、石川県の地震被害想定が1998年から更新されず、県が2022年9月から想定の見直しを進めていたさなかに地震に見舞われた。古い木造住宅を中心に大きな被害が生じたことを踏まえると、適切な現状分析に基づいて予算を効果的に使い、住宅の耐震化などの対策を推進する重要性が高まっている。

 名古屋大の福和伸夫名誉教授(建築耐震工学)は、能登半島で住宅耐震化が進んでいなかった理由を「耐震化は住宅の建て替えが中心。だが、高齢者が多い過疎地では『次住む人がいないから』となかなか進まない。国も自治体も私有財産である民間の建物に対して強く言えず、結果的に過疎地ほど耐震化は遅れている」と指摘し、「まず実情を知り、国民の間で耐震化を進めようと意識を高めていくことが大事だ」と説く。

 第一歩として、耐震基準を改定した国の責任で全国の住宅や建物を耐震診断して、その結果を公表するよう提案する。「自分の家や普段利用する建物が安全なのか、国民には知る権利がある。安全への意識が高まれば、行政は耐震化への予算を支出しやすくなる。耐震補強だけでなく、耐震シェルターの設置など、できる範囲で対策を進めるきっかけにもなる」とした上で、こう呼びかける。

 「南海トラフ地震の想定被災地域は、能登半島地震の25倍、揺れの震度は一つ上がる。住んでいる人は100倍以上だ。いま本気で耐震化をやらないと取り返しが付かなくなる」

◆デスクメモ

 厳しい冷え込みの中、避難生活を強いられる被災者が多数いる。支援のための迅速な財政措置を望む。だが、野放図であってはならない。被害の甚大さを鑑みると、備えの大切さも痛感する。防災の予算が効果的に使われているか。誰もがわが事として目を光らせることが重要だ。(北)

⁂     ⁂     ⁂

岸田首相、地震の被災者に「最大20万円貸します」であふれる憤激「こんなひどい政府聞いたことない」

SmartFLASH 2024.01.11

永田町にいるのに防災服(写真・時事通信)

能登半島地震が発生してから10日が過ぎた。石川県によると、1月10日午後2時の時点で、県内で206人の死亡が確認されたという。また、安否がわからない37人の氏名や年齢などを公表、情報の提供を求めている。

余震は続き、ライフラインの復旧も数カ月かかると言われるなかで、心配されるのが被災者の生活再建だ。そのためには生活資金の確保が欠かせない。

厚生労働省は10日までに、低所得者世帯などに生活費を貸し付ける「緊急小口資金」の対象に、特例として能登半島地震の被災世帯を加えることを決定した。

厚労省のホームページによると、貸付金額は原則10万円以内だが、「世帯員の中に死亡者がいる」「世帯員に要介護者がいる」「世帯員が4人以上」「重傷者、妊産婦、学齢児童がいる」などの場合は20万円以内になるという。所得要件などはない。

「返済は、据え置き期間1年の経過後2年以内なので最長3年となりますが、厚労省によると『猶予などにも柔軟に対応しますのでご相談ください。利子はつきません』とのことです。

当面の生活費として助かるのは間違いありませんが、被災して避難する状況では手続きもままならないはずです。申込書を直接、市区町村社会福祉協議会に出すのですが、役所も混乱しているでしょうから、使い勝手がいいとも思えません」(経済担当記者)

「X」には

《住むところも失い家族も失い20万貸付って岸田政権と厚生労働省は鬼か》

《被災地では仕事も無いし働く事も不可能 借金だなんて悪魔の所業だ》

《こんな酷い政府聞いたことないぞ》

などのコメントが寄せられている。ニュースサイトのコメント欄にも、

《返済しなければいけない貸し付けだから、生活の目途が立たない中で、安易には借りられないと躊躇する人もいるはず。この緊急小口資金は、大半の被災者に利用されない気がする》

《海外にあんなに義援金配ってるのに 国内にはたった20万のしかも貸付? この物価高に何を考えたらこの金額が出るのですか? もう少し検討してあげてください》

など、その少なすぎる金額に批判が集まっていた。

「被災地の現状や課題などを把握することが重要だ」と意気込んでいた岸田首相の姿勢のあらわれが「20万貸付」だとしたら、被災者にあまりにも冷たすぎる。


20万円といえば?

そ~!パー券
パー券買ったやつはみんな出せよ!
といいたくなる。

今日は一日中吹雪。
ヤマトが車を200mほど離れたUターンできるところから歩いてきた。
この調子で降ると2018年の大雪を超えそうだ。
夕食終えたらまた雪かきだ。


「原発は本当に大丈夫か?」地元に広がる不安の声

2024年01月11日 | 自然・農業・環境問題

「柏崎刈羽」周辺道路にも無数の亀裂…

「東京新聞」こちら特報部 2024年1月11日 

 犠牲者が200人を超えた能登半島地震。阪神大震災を上回るマグニチュード(M)7.6を記録し、日本海側でも巨大地震が起きると改めて浮き彫りになった。やはり心配なのが原発だ。東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県刈羽村では、安全面を危ぶむ声が強まっている。原発があっても本当に大丈夫か。検証は尽くされているのか。(山田祐一郎、西田直晃)

 

◆震源地から百数十km離れてても震度5強の揺れ

 10日午前、「こちら特報部」は雪がちらつく刈羽村に入った。前日夕には、佐渡付近を震源とするM6.0の地震があったばかり。村では震度3を観測した。

 JR刈羽駅から南に1キロ離れた村役場に徒歩で向かう。道路には真新しいひび割れが無数に見られた。役場近くの国道116号は片側3車線から歩道までひびが斜めに伸び、中央分離帯部分が盛り上がっていた。

 「元日の地震でできたひびですね」。説明してくれたのは歩道橋工事の交通誘導員をしていた男性。1日の能登半島地震では、震源地から東に百数十キロ離れた刈羽村は震度5強の揺れに襲われた。ひびは既に応急処置されたというが「交差点の脇に立っていると、大型車両が通るたびに歩道が揺れる」と男性は話す。

◆もし原発で事故が起きたら、避難できる?

 「海岸部を中心に液状化の被害が多数報告されている」。村議の武本和幸さん(74)は、数日前に村内で撮影した写真を見せながら説明する。「昨年、整備したばかりの村道も地盤が液状化してアスファルトの路面がひび割れている」

 1日は外出先から帰宅したところに地震が起きた。「2007年の中越沖地震を思い起こさせる揺れ。原発は大丈夫なのかというのが最初に脳裏によぎった」。中越沖地震はM6.8で、最大震度6強。柏崎刈羽原発の屋外変圧器で火災が起き、微量の放射性物質を含む水が海に流出した。

 今回は燃料プールの水があふれたが、大きな異常は確認されていない。それでも武本さんが問題視するのは、大地震により柏崎刈羽原発で事故が起きた際の対応、特に避難のあり方だ。懸念を強めるのは1日の経験から。地震直後、国道や高速道路は通行止めとなった。「避難しようとした住民が渋滞に巻き込まれたという話が多く寄せられた」

◆道路は見渡す限り車、高台への避難を断念

 原発の南西約3キロに住む無職宮崎孝司さん(79)は1日に避難を試みた一人。「防災無線で津波警報が出たことを知り、家族3人で車で高台へ避難しようとしたが、道路は見渡す限り車で埋まっていた。Uターンして当初とは別の場所に避難した」と振り返る。

 付近の国道では2022年12月に記録的な大雪で多くの車が立ち往生した。大雪の際に原子力災害が発生した場合、政府は原発の5キロ圏について「避難経路の除雪が完了するまで屋内退避を継続」との方針案を示している。宮崎さんは「津波も起き、避難が必要な場合はどうすればいいのか」と危惧し、避難するにしても「道路は地震で寸断され、雪で立ち往生する複合災害もあり得る」と訴える。

◆想定外の揺れ、海底隆起…もし原発が稼働中だったら?

 刈羽村と同様、柏崎刈羽原発が立地する柏崎市在住で医師の本間保さん(73)は「能登半島の北陸電力志賀原発も柏崎刈羽原発も運転停止中のため、これだけの被害で済んだのでは」とみる。「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」共同代表でもある本間さんは「原発を動かすのは無理だともう一度、声を上げる時期に来ている」と続ける。

 今回の地震では、能登半島の海底が隆起し、従来は海だった場所が陸になったことが確認された。先の武本さんは柏崎刈羽原発周辺でこうした地盤の隆起が生じることを危ぶむ。「外部から冷却水を取ることが困難になる可能性もある」

 さらに「中越沖地震では想定外の揺れが、東日本大震災では津波が問題となった。今回、原発周辺の地盤が変動するリスクも明らかになった。再稼働の議論の前にリスクについて改めて評価すべきだ」と訴える。

◆日本海側でも巨大地震が起きると実証

 日本で大地震といえば太平洋側を思い浮かべがちだが、過去には日本海側でも起きた。ともに津波で多数の死者が出た1983年の日本海中部地震(M7.7)、93年の北海道南西沖地震(M7.8)などがある。

 政府の地震調査研究推進本部は、日本海側の一部の海域活断層について、地震発生の確率の評価を公表してきたが、能登半島沖を含む大部分は未公表だ。金沢大の平松良浩教授(地震学)は「太平洋側に比べ、日本海側の評価は後回しになっている」と説明する。

 再来周期が数十年〜数百年のプレート境界型地震を想定する太平洋側に比べ、日本海側で起きる活断層型地震の再来周期は数千年〜数万年程度とされる。「予算や人員が限られる中、活動性の違いから日本海側は二の次にされている」

 そう語る平松さんは「個々の再来周期は長くても、多数の活断層があるため、平均的に考えればどこかしらで地震は起きてしまう。津波を伴う大地震もあり、日本海側でも調査を進めるべきだ」と指摘する。

◆原発設計時の想定上回る揺れも

 地震の被害は丁寧な検証が不可欠だ。想定を上回る場合があるからだ。能登半島地震では、石川県地域防災計画で想定されたM7.0を超えた。先に触れた中越沖地震では、柏崎刈羽原発の設計時に想定した最大の揺れを上回ったほか、建屋地下にある鉄筋コンクリート製のくいの損傷が、地震発生から14年を経て発覚する事態も起きた。

 そんな不安があっても政府は原発再稼働に躍起になる。柏崎刈羽原発も例に漏れず、2017年末に6号機、7号機が原子力規制委員会の適合性審査を通り、テロ対策の不備で21年に出された事実上の運転禁止命令も23年末に解除された。

 再稼働の判断に関わる新潟県が安全面の砦(とりで)になるはずだが、厳しい視線を向ける研究者が近年、「排除」を思わせる扱いを受けた。

 11年の東電福島第1原発事故を受け、県は柏崎刈羽原発の再稼働判断のため、三つの検証委で議論を深めたが、技術面を扱う委員会に名を連ねた新潟大の立石雅昭名誉教授は21年、高齢を理由に再任が見送られた。三つの検証を総括する委員会のトップ、名古屋大の池内了名誉教授も23年、任期が更新されなかった。

◆「今回の地震を機に議論深めるべき」

 厳しい検証が遠のく中、改めて浮かび上がったのが日本海側の巨大地震リスクだ。地質学者の立石さんは「県は再稼働に前のめりにならず、従来の考え方を改める必要がある」と語る。

 能登半島地震は、複数の断層が連動して大きな揺れを起こしたと立石さんはみる一方、柏崎刈羽原発の周辺で断層が連動する事態が十分に検証できていないとし、こう唱える。「現状ではどれほどの揺れや津波が原発を襲うのかは分からない。能登半島地震を機にさらに議論すべきだ」

◆デスクメモ

 「想定外」に抵抗感を抱く。厳しい想定を検証しないまま、深刻な事態が生じると「想定外」と言い逃れる。そんな印象を持つからだ。甚大な汚染をもたらしうる原発。地震に耐えられるか。住民は逃げられるか。必要なのは懸念に向き合う姿勢。責任逃れの言い訳は救いにならない。(榊)


そして不安なのが大阪万博である。

大阪万博のずさんすぎる「防災計画」、地震・津波・台風など災害発生で来場者は孤立必至|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)

「厳しい想定を検証しないまま」の発進は許されない。
金よりも命だ。


古賀茂明 能登半島地震で露呈した原発の「不都合な真実」 政府が志賀原発を“異常なし”と強弁した理由

2024年01月09日 | 自然・農業・環境問題

 AERA dot. 2024.01.09

 

 やはり原発はやめるべきだ。

能登半島地震を見てそう思った方はどれくらいいるのだろうか。

「あの大地震でも志賀原発は事故を起こさなかった!」「やはり日本の原発は安全だ!」という原発推進論者の声も聞こえてきそうだが、そんな声に騙されてはいけない。

 2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きるまで、日本では、「原発は安くて安全でクリーン」だという原発神話が存在した。事故でその神話が一旦崩壊した後、急速に発展する再生可能エネルギーとの比較からも、今では「原発は高い」「原発は汚い」という事実はかなり広く理解されるようになった。

 しかし、「原発は危ない」という点については、少し状況が異なる。

 福島第一原発の事故で原発の危険性を思い知らされ、「原発はいらない!」と強く思った多くの国民は、事故から12年を経て、あの想像を絶する原発事故の痛みと恐怖を忘れてしまったかのようだ。

 原発推進論者が、「原発が動かないから電気料金が上がる」とか、(夏や冬のほんの一時期だけなのだが)「需給が逼迫して停電のリスクがある」とか叫ぶと、いとも簡単に、「それなら原発を動かしてもいいか」という反応を示すようになったのだ。

 実は、今回の地震の結果を見るまでもなく、日本の原発は「危ないから」止めるべきだと考える十分な根拠がある。

 私は、これを「原発の不都合な真実」と呼んでいる。意外と知らない人が多いのだが、今回の地震と併せて考えていただけば、理解が深まると思うので、この機会に一つだけその話を紹介したい。

「原発の不都合な真実」の中で、もっとも重要なのは、原発の耐震性に関する事実だ。

 当たり前の話だが、原発の事故が起きても良いと考える人はほとんどいない。多くの人は、政府が、「世界最高水準の規制基準を満たしています」と言うのを聞いて、「福島の事故を経験しているのだから、さすがに動かして良いという原発は安全なものに決まっている」と信じているようだ。

 日本の国土は世界のわずか0.25%しかないのに、2011年~2020年でみると全世界のマグニチュード6.0以上の地震の17.9%が日本周辺で発生するという、世界で最も危険な地震大国だと言って良いだろう。その日本で世界最高水準の規制に適合していると聞けば、「原発は、ちょっとやそっとの地震ではびくともしない」と誰もが思っているだろう。

 しかし、真実は全く違う。日本の原発は地震に極めて弱い。それをわかりやすく説明したのが、関西電力大飯原発を止めたことで有名な樋口英明元福井地裁裁判長だ。

 私も樋口氏から直接話を聞いて知ったのだが、日本の原発は、民間のハウスメーカーが販売する耐震住宅よりもはるかに耐震性が低い。たとえば、三井ホーム、住友林業の耐震性は、各々最大約5100ガル(ガルは加速度の単位、大きいほど強い揺れを示す)、約3400ガルに耐える設計になっている。

 一方、たとえば、四国電力の伊方原発の耐震基準は650ガル、高浜原発は700ガルと、日本の原発の耐震性は民間住宅の数分の1しかない。北陸電力志賀原発も建設当時は490ガル、その後600ガルに引き上げられ、現在は1000ガルということで安全審査を申請している。なぜ、耐震性が上がっているかというと、さすがに3桁では信用されないということで、いくつかのマイナーな耐震対策を施して耐震性がすごく上がったと説明しているのだ。

 日本では2000年から20年までの間に、1000ガル以上の地震が17回、700ガル以上は30回起きていた。つまり、原発の耐震基準を超える地震はごく普通に起きるのである。ちなみに、日本で記録された最大加速度は2008年の岩手・宮城内陸地震の4022ガルである。2番目が2011年の東日本大震災の時の2933ガル。

 この事実を知れば、原発の耐震性はこれらよりも強くして欲しいと思う。しかし、日本の原発の耐震基準の大半は1000ガル以下である(詳しくは、樋口氏の著書『私が原発を止めた理由』『南海トラフ巨大地震でも原発は大丈夫と言う人々』〈いずれも旬報社〉を参照のこと)。

 このような事実を知る人が増えれば、そんなに危ない原発が動いていたのかと驚き、今すぐ止めてくれということになるだろう。

 今回の能登半島地震の最大加速度は、原発のある石川県志賀町の観測点で、東日本大震災に匹敵する2828ガルだったことがわかった。1000ガル以上も計7地点で確認されている。

 だが、たまたま運が良かったのかどうか、あるいは計測に異常があったのかもしれないが、北陸電力の発表を鵜呑みにすると、志賀原発1号機原子炉建屋地下2階で399.3ガルだったということだ(それ以外の観測点でどうだったのかはわからない)。近隣に比べて何故かずいぶん小さな揺れだったということになる。

 1000ガルの基準地震動から見れば余裕というところなのだろうが、その割には、かなり深刻な被害が出たのが驚きだ。使用済み燃料プールの水が大量に溢れる、冷却ポンプが一時停止する、複数の変圧器付近で配管の破損による大量の油漏れがあり、その影響で外部電源の一部系統が使用不能になるなどかなりの異常が発生した。これらの結果、放射能が外部に漏れたかどうかが気になるところだが、当初、モニタリングポストでは放射能漏れは観測されていないと発表されて胸を撫で下ろした。だが、なぜか4日になって、原発の北15キロ以上離れたところにあるモニタリングポスト14カ所でデータが確認できていないことが発表された。他のモニターの値が信用できるのか、また、より近くのモニタリングポストで計測不能になっていたらどうなったのかということも不安材料となった。

 これらの異常の他に何があったかはまだ明らかにされていない。特に、敷地内で建物や道路に亀裂が入ったり、隆起や陥没があったりしたかなどはすぐにわかりそうなものだが、発表があったのは5日になってから。それも、1号機の原子炉建屋付近や海側エリアなどで最大35センチの段差やコンクリートの沈下などがあったという程度の簡単な情報提供だけだった。道路に段差があれば、消防隊などの活動に支障が生じたりするので実は深刻は事態だが、そのようなことを連想させたくないのだろう。

 そして、何よりも気になるのが、北陸電力や政府の情報の出し方である。地震の発生後最初に伝えられた「志賀町で最大震度7」という情報を聞いた私は、真っ先に、これは大変だと思った。志賀町といえば原発だ。それがどうなっているのか、住民はすぐに避難しなくて良いのかということが気になった。しかし、テレビを見ていても、出てくる話は、津波のことばかり。もちろん、それが最も重要な情報であることはわかる。それを繰り返し流すことは必要だ。

 しかし、原発の状況についても、万一のことを考えれば、決して後回しで良いという話ではない。ところが、原発の状況について政府が具体的に触れたのは事故から2時間以上経過した後だった。林芳正官房長官が会見で、「現時点で異常なし」と木で鼻を括ったような発言をしたのだ。だが、記者の質問が飛ぶと、突然、変圧器で火災が発生と驚くような話をして、すでに消火と言い添えた。変圧器で火災なら重大事故なのではないかと心配になる。現に、外部電源が一部断たれたわけだから、「異常事態」であるのは疑いようがない(火災については、のちに北陸電力が否定したが、官房長官は訂正せずに放置した。この官房長官発言が原因で、原発で火災という情報が拡散して混乱を生じさせた。ちなみに、北陸電力は、爆発音と焦げ臭いにおいがしたことやスプリンクラーが作動して水浸しになったことは認めたが、それでも火災はなかったと主張している)。

 では、原発で火災があったという前提で、「異常なし」と涼しげに語った林氏の意図はどこにあったのか。何か特別の意図があったのではないかとどうしても勘ぐりたくなる。

 志賀原発については、元々その敷地内に活断層があるのではないかということがずっと疑われてきた。もし、今回の地震で「異常」があったということになれば、あらためて活断層への疑念が深まる。それがなくても、基準地震動の見直しとそれに基づく対策の実施が求められる可能性も出てくる。コストの問題もありまた再稼働までの時間が延びることも必至なので、それは北陸電力としてはどうしても避けたい。だから、「異常」はなかったと言いたくなる。

 むしろ、今回の地震を奇貨として、これほど大きな地震でも「何の問題もなかった」と言えれば、いかに志賀原発が安全かを示していると言えるとさえ計算していたのではないか。そんな疑いをかけたくなる林氏の対応だった。

 疑念はこれだけにとどまらない。政府にとって、実はもっと大事なことがある。それは東電柏崎刈羽原発の再稼働だ。

 東電は事故後倒産寸前に陥り、福島事故の後始末も自力ではできなかった。このため、政府は巨額の出資で資金を注入し、東電を政府の「子会社」とした。その資金を回収するためには、政府保有の東電株を高く売らなければならない。だが、東電は経営が苦しく株価が低迷している。柏崎刈羽原発が動けば、発電コストが下がり、利益が大幅に増える。その結果株価が上がり、政府も資金回収できるというシナリオを実現するために、何としても原発を動かしたい。

 しかし、志賀原発で、耐震性に問題があったとなれば、同じ日本海側の近県に立地する柏崎刈羽にも影響が及ぶ可能性がある。それだけは何としても避けたいというのが東電のみならず、政府の強い願いだ。特に、嶋田隆首相秘書官は、次期東電会長とまで言われた経済産業省の元事務次官でもある。柏崎刈羽再稼働は、官邸にとっても最優先課題となっていた。それに水を差すことなどありえないのだ。

 こうした裏の理由により、志賀原発は、何が起きても「異常なし」で通すしかないのである

 能登半島地震で、深刻な原発事故が起きなかったことは不幸中の幸いだった。

 しかし、今回の原発での異常事態や周辺地域の壮絶な被害状況を見れば、日本のような地震大国で原発を動かす、いや、保有するだけでもいかに大きなリスクになるのかがはっきりわかる。

 3.11から12年経って、事故の記憶が風化し、脱原発どころか、原発新増設にまで踏み込む原発推進策に舵を切ろうとしていた日本にとって、これは天啓ではないのか。これだけのわかりやすい材料を与えられて、なお、金に目が眩んで原発推進の方針を撤回できないことなどありえないと信じたいところだ。

 しかし、それは楽観的すぎるのかもしれない。

 原発事故の被害を想像する能力を失い、驕りと強欲の塊となった日本が過ちに気づくには、原発事故を待つしかない――それこそが「不都合な真実」ということなのだろうか。

 国民は、与えられたこの機会に真剣に考え直して、政府に対して「原発をやめろ」と迫るべきである。


自公政権はもうすっかり国民の信頼を失っている。
こんな政府に「核」を預ける危険性は計り知れない。
能登の被災者への救援もまたしかり。
総理自ら被災地に赴きもせず・・・・・

「支援待っていたら全員飢えていた」被災者あふれ住民独自に避難所開設も多く 能登半島地震発生から1週間

「東京新聞」2024年1月8日 

 石川県で最大震度7を観測した能登半島地震では、被害が甚大な輪島市や珠洲市など奥能登地方を中心に道路の損壊が激しく、通信状況も悪化したため、行政や自衛隊が避難所に支援物資を届ける作業がスムーズに進まなかった。また、行政の指定避難所に入れなかった被災者らは自主的に避難所を開設し、自力で物資を調達ししのいでいた。発生から8日で1週間。避難所の課題を探った。(高橋雅人、武藤周吉、郷司駿成、加藤壮一郎)

◆輪島市160カ所のうち8割近くが自主・臨時

 「市の支給だけなら、全員飢えていたかもしれない」。輪島市内で、30人が身を寄せる自主避難所の集会所を運営する主婦道畠裕子さん(66)は、そうこぼす。食料は、住民が親類などを通じかき集めて不足はない。ただ、「自助努力だけで長期間運営するわけにもいかず、先も見通せない」とため息をついた。

 被災住民が、行政指定の避難所に入らず自主避難所を設置するのは、指定避難所に人が多く集まり、収容しきれなかったことが要因の一つとして挙げられる。

 輪島市では、開設された避難所160カ所(7日午後3時時点)のうち、市の指定避難所は35カ所にとどまり、8割近くが自主避難所や市が臨時開設した避難所などとなっている。市の想定を上回る被害が市内全域で発生したためで、郵便局や農協などのほか、ビニールハウスが避難所となっている例も。

◆市の担当者「対応が追いつかない」

 56人が避難するJAの支店は、指定避難所の中学校などにいったん逃げたが、収容しきれなかった被災者が滞在できるよう、市が急きょ避難所として開設。運営にあたる市職員の泉俊弘さん(32)は「水がなく手が洗えない状況で、清掃作業をする手袋がなく困っている」と話した。

 避難所での生活をあきらめ、車中泊を選ぶ被災者も。軽自動車で寝泊まりする男性(75)は「ガソリンがいつ切れるか分からず、節約しながら使っている。夜が本当に寒い」と漏らした。

 市の担当者は「できる限り(避難所の)環境を整えたいが、道路が寸断され通信環境も十分でない中、対応が追いつかない」と話した。インフラの復旧を急ぐとともに、長期の避難が想定され、仮設住宅を早期に設置することなどが求められそうだ。

◆珠洲市も道路寸断で物資輸送阻まれ

 珠洲市役所から南西約5キロにあり、約20人が避難する林業研修センターに支援物資が到着したのは、被災から4日目のことだった。しかも、届いたのはペットボトルの水2本のみ。男性は「市の指定避難所にしてもらうように昨年から要望していたが…」とつぶやいた。

 指定避難所ではないため、センターには備蓄はなかった。発生直後から身を寄せる70代男性は「みんなでおせち料理などを持ち寄っていた」と明かす。市が避難所として把握していなかったことが支援の遅れにもつながったとみられる。

 物資の輸送を担当する陸上自衛隊金沢駐屯地の白倉海里さんは「珠洲市は広域で各地の集落に通じる道が寸断されていた」と指摘。倒木をどかしたり、段差に砂利を敷いたりして道路を補修し、市内に70ある避難所全てに届けられるようになったのは5日だった。

◆携帯電話通じず、ニーズ把握に時間

 総務省から派遣され、市長を補佐する水谷健一郎さんは「通信状況が悪いのも痛い」。山間部では携帯電話が通じず、避難者のニーズを把握するには直接行くしかない。民生委員が自衛隊車両に同乗して回っているが、往復には丸1日かかり、迅速な対応は難しい。

 それでも水や食料は行き渡り、7日からはガソリンも携行缶に入れて山間部に運び始めた。避難所は必要なもののリストを作成し、自衛隊に要望。男性は「今は特に困っていない」とした上で、こう付け加えた。「何と言ってもみんな風呂に入りたい。心身ともに疲れてきているから」

朝鮮日報日本語版1/9(火) より一部抜粋

自民党所属の岡田ゆうじ・神戸市議は「不要不急な用では被災地に入るべきでない」とした上で「それにもかかわらず山本代表は被災者用の炊き出しを食べた」と非難した。

 非常災害対策本部長の岸田文雄首相は、ヘリコプターに乗ればすぐに被災地に入れるにもかかわらず、現時点で一度も現地を訪れていない。4日にBSフジの番組に出演した岸田首相は「現場にはいつ行くのか」との質問に「可能な限り早いタイミングで訪問したい」として「現地は大変な状況にあるため、しっかり確認した上で適切な時期を考えたい」と述べた。岸田首相は5日には経済団体とメディアが主催する三つの新年会に相次いで出席した。経団連など経済3団体日本労働組合総連合会時事通信がそれぞれ主催した新年会だ。少なくとも、時間がなくて被災地に行かないわけではないようだ。

 さらに、防災担当機関である内閣府の神田潤一政務官は、地震翌日の2日、SNSに「今日は完全オフ。箱根駅伝をラジオで聞きながら、2日前に降った雪を踏みしめて10.8キロ走った」と書き込んだ。災害が発生したにもかかわらず、平和な日常生活を送ったことを報告したわけだ。日本のネットユーザーの間では「凍りそうな体育館や自動車の中で、死と隣り合わせの状態でこの瞬間に夜を過ごす被災者の気持ちを少しでも考えるなら、こんな行動はできない」「崩壊した家屋に生き埋めになった国民が多数いるのに、岸田首相はテレビで笑いながら話していていいのか」などと批判が起きている。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

何もかも経験が生かされていない。
しっかりとした食事が提供されていたら山本代表のカレーもそんな問題にはならなかっただろう。政府がしっかり対応していないから「緊急に被災地に入る」のだ。
「子ども食堂」が炊き出しをしている。
地震時は「空を使う」のが鉄則だ。
金をつぎ込むところよりくれるところ。


志賀原発の周辺15カ所で放射線量を測定不能 モニタリングポストが「壊れているのか、埋まっているのか…」

2024年01月06日 | 自然・農業・環境問題

 わたしの『資本論』研究⑥

 二段階論

 

 経済的社会形態を区分するのは剰余労働の在り方による。

剰余労働があるのかないのかの違い、所有関係があるのかないのかという違い、生産過程に支配される社会なのか支配する社会なのかの違い、労働の変化発展の違い(疎外された労働か生命欲求となった労働か)、という根本的な生産基盤の違いがある。

 史的唯物論の立場に立つと、そのように二段階を経ることは明らかである。

 


「東京新聞」2024年1月4日 

 1日に起きた最大震度7の能登半島地震で、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)周辺の空間放射線量を測定するモニタリングポストが、15カ所で測定できなくなっている。地震による道路寸断などで現地を確認できず、復旧の見通しは立っていない。原発事故時に住民避難の判断根拠となる実測値を迅速に得られない状況で、原子力災害への備えの難しさを露呈した。 
 

◆東日本大震災では多くの避難者が被ばく

 原子力規制委員会事務局の原子力規制庁によると、原発の約30キロ圏内に約120カ所あるモニタリングポストのうち、輪島市や穴水町など原発の北側20~30キロ付近で地震発生以降、測定できていない。担当者は「壊れているのか、土砂などで埋まっているのかなどの状況は分からない」と話す。
 国の原子力災害対策指針では、原発事故が起きた際、モニタリングポストの実測値で住民の屋内退避や避難開始などを決めると規定する。測定できない場合、代わりに自動車やヘリコプターを使って測定するが、道路の寸断や事故時の高い放射線量下でヘリが近づけるのかなど課題が残る。
 2011年3月の東京電力福島第1原発事故では、福島県が設置していた24台のモニタリングポストのうち23台が測定できなくなり、放射線量の把握が難航。結果的に、多くの避難者が放射線量が高い地域に逃げ、被ばくを強いられた。

◆道路寸断…石川県は「代替手段が取れない」

大きな地震に見舞われた北陸電力志賀原発(1月2日午前撮影)

大きな地震に見舞われた北陸電力志賀原発(1月2日午前撮影)

 志賀原発は運転停止中で、地震による過酷事故は起きなかった。ただ、測定できないモニタリングポストの早期復旧は難しい状況だ。代替措置として、可搬型の測定器を置けたのは、原発から南東に20キロ以上離れた富山県氷見市の1カ所だけにとどまっている。原子力規制庁は、航空機による測定の準備は整えている。
 石川県原子力安全対策室の担当者は「道路が寸断され近づけず、県としては代替手段が取れない」と困惑気味に話した。(小野沢健太、渡辺聖子)

 日本の陸地には約2000の活断層があるとされている。しかし、そのほかにもまだ発見されていないものが数倍の数で存在するだろうという。
 こうした中で原子力発電所の運営はいかがなものだろうか。
今のうちに手を打っておかなければならない課題だ。
 

志賀原発「異常なし」から考えた 運転中だったら?「珠洲原発」だったら? 震度7の地震は想定内なのか

2024年01月05日 | 自然・農業・環境問題

わたしの『資本論』研究⑤

④ 「必要におうじて」の社会

歴史的に存在した「社会関係」

 生産力のきわめて低い原子共同体の中でも、また素朴な家長的な農民家族の中でも、また孤島のロビンソンも「必要におうじて」働き、受け取っていたのである。それは高度な生産力を意味しない。必要ならば何でも受け取るということではなく、社会的に規定された生産力の範囲内での消費であることは自明のことである。

 この社会は生産者たちが直接に結合した社会であり、所有関係は存在しない。他人の労働を搾取するということがなかったのである。だから「価値」あるいは貨幣という回り道をするのではなく、直接に必要におうじて、その社会の生産力の範囲内で、彼らの社会の再生産のために必要な分を除いたなかからその「使用価値」を受け取っていたのである。

   直接に結合した社会、価値法則のない社会、「交換」のない非商品社会、所有関係のない社会(搾取のない社会)、を意味する生産基盤を示す言葉である。


「東京新聞」2024年1月5日

 元日の北陸を襲った能登半島地震。震度7という激震と津波が大きな被害をもたらしたが、地震直後から大いに気になったのは、震源に近い北陸電力志賀原発(石川県志賀町)だ。外部電源の一部を喪失し、変圧器からの油漏れや核燃料プールの水漏れなどはあったが、原子力規制委員会は「大きな異常はなし」とする。しかし、志賀原発は1度、原子炉建屋直下に活断層ありと判定されるなど、いろいろといわくのある原発。今回耐えたから大丈夫と言えるのか。(曽田晋太郎、宮畑譲)

◆不安を抱え続ける周辺住民、避難先の高台で「ひと安心」

 「地震が起きた直後は何の情報もなく、東日本大震災の時のように急に事故が起こるかもしれないと思い、とても不安だった」

 能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある志賀原発から約10キロの同県七尾市に暮らす友禅染絵作家、志田弘子さん(71)は地震発生時の心境をこう吐露する。当時は自宅におり、倒壊の危険を感じて外に出たが立っていられず、近くの切り株につかまって家族と震えながら揺れが収まるのを待ったという。

 志賀原発は運転停止中といえ、近くに暮らす住民は常に不安と隣り合わせだ。志賀町に住む70代の男性は「大津波警報が出て、すぐに高台に避難した。1日の夜9時ごろにニュースで原発に異常がないことを知り一安心したが、道路が寸断され、すぐには逃げられない状況。放射能は目に見えないので、影響が本当にないのか不安がゼロになることはない」と語る。

 規制委事務局の原子力規制庁は今回の地震で志賀原発に「大きな異常はない」と発表した。ただ、地震による影響は多々あった。

◆「火災」は勘違い、変圧器の油漏れ

 同庁や北陸電力の発表などによると、原発内の変圧器で当初、点検した作業員が「爆発音がして焦げ臭い」と報告し、林芳正官房長官も1日午後の会見で「変圧器の火災が発生し、消火した」と説明したが、実際は勘違いで火災は起きていなかった。ただ、地震で同原発の1、2号機の変圧器の配管が壊れ、計約7100リットルの油が漏出。外部から受電する系統の一部が使えなくなり、別の系統に切り替えて電源を確保した。

 また、地震の揺れで1、2号機の使用済み核燃料プールの水が計約420リットルあふれたが、外部への流出はなかった。一方、北陸電は2日午前の段階で1、2号機の敷地内にある取水槽の水位について「有意な変動はない」としていたが、同日夜に「約3メートル変動していた」と訂正した。プラントへの影響はないという。

◆「大事故」は起きなかったものの本当に「大丈夫」か

 確かに東京電力福島第1原発事故のような事態には至っていない。だが、それで「大丈夫」となるのか。

 金沢市在住で「北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会」の中垣たか子さん(72)は「取水槽の水位の訂正もあり、ちゃんと原発を管理できているのか、きちんとした情報が公表されているのか心配だ。安全上問題はないと言っているが、外部に放射能が漏れていないからいいみたいな態度が問題で、原発が潜在的に危険という認識が欠けているのでは。小さな異常の積み重ねが大きな事故の引き金になりかねない。大事故が起こる前に立ち止まってもらわないとあまりに危険だ」と訴える。

 前出の志田さんも「のんきに大丈夫と構えていられない」とし、切実な思いを語る。「福島の原発事故が特別ではないと、改めてその怖さを強く感じた。住民はこんなに不安を抱えながら生きている。これだけの地震大国でも原発を推進する国の方針は正しいのか。もう誰もが不安を感じることがないように、原発政策を見直してほしい」

◆住民の反対運動で中止になった幻の原発計画

 地元住民に不安をもたらす志賀原発。その来歴はいわく付きだ。

 そもそも、石川県能登地方では、志賀原発の建設以前に、より北の珠洲市で関西電力、中部電力、北陸電による「珠洲原発」の建設計画があった。候補地の一つだった同市高屋町は、今回の震源となった地区と隣接する。志賀原発の廃炉を求める活動をしている金沢大の五十嵐正博名誉教授は「珠洲原発は住民による根強い反対運動で計画が中止となったが、もし高屋町に建設していたら、大変なことになっていたと思う」と想像する。

 志賀原発はできてからも、トラブルが続いた。

 1993年に稼働した1号機は99年に制御棒3本が脱落し、臨界事故を起こしたが、北陸電が事故を公表したのは2007年になってからで、「事故隠し」と批判された。06年に稼働した2号機は11年3月、東日本大震災が起きた日に定期検査入りして運転を停止した。その後、1、2号機とも動いていない。

 16年には、原子力規制委員会の専門家チームが、1号機の原子炉建屋直下にある「S-1断層」などを「活断層の可能性は否定できない」と評価。事実上、再稼働は不可能とされた。

◆覆った活断層の評価 再稼働を目指していたところで…

 ところが23年3月、隣接する2号機の再稼働の前提となる新規制基準への適合審査会合で、規制委は「敷地内に活断層はない」とする北陸電の主張が妥当だとし、16年の判断を覆した。23年11月には、経団連の十倉雅和会長が志賀原発を視察。「一刻も早く再稼働できるよう心から願っている」と訴えていた。

 まさに今年、再起を図っていた志賀原発だったわけだが、今回の地震は大きな影を落とす。

 日本原子力発電敦賀原発(福井県)の断層調査を行った経験がある、名古屋大減災連携研究センターの鈴木康弘教授は「これほど大きな地震を起こす断層が志賀原発の近くにあるという想定はなかった。この地域でどういう地震が起きるのか、抜本的に見直さなくてはいけない。前提条件が相当変わった」と指摘する。

 さらに、能登地方の断層は複雑で、一見、大きな断層と関係がないように見えても、連動する可能性は否定できないという。鈴木氏は「今回の地震を機にもう一度、点検をさせるのか、新たな規制基準を示すのか。これは原子力規制庁の責任問題だ」と強調する。

◆過小評価はできない「外部電力の喪失」

 一方、原発のハード面の安全対策としては、北陸電や政府が「大きな異常ではない」とした外部電力の一部喪失も見逃せない。東京電力福島第1原発事故は、外部電源が喪失、非常用電源も水没したことが原因となったからだ。

 原子力資料情報室の上沢千尋氏は「運転中であれば、原子炉を止めるアクションが必要になる。多くの機器を動かさなくてはならず、対応の負荷が全く違う。助かった面はあるだろう」と言う。原発内の使用済み核燃料が十分冷やされていたことも含め、長期にわたって運転停止中だったことが幸いしたとみる。

 北陸電は、1、2号機とも不具合が発生したのとは別の系統から外部電力を受け、非常用ディーゼル発電機もあるため、安全上の問題はないとしている。しかし、上沢氏は「今後の余震や別の地震が起きた時のことを考えると、非常に脆弱(ぜいじゃく)な状態になっている」と不安視する。

 その上で、上沢氏もやはり根本的な断層の問題を指摘する。「原発直下の断層が動かなくても、周辺には多くの断層がある。どれかが動けば、影響を受ける可能性は高い。北陸電力は不適切な場所に建ててしまったことを認めて廃炉にするべきだ。今回の地震はその好機と捉えてほしい」

◆デスクメモ

 今回の地震の震源となった断層は、あらかじめ知られていた断層ではないという。となるとその影響は、今までの志賀原発の断層議論では想定されていなかっただろう。原子炉建屋直下の活断層あるなしといったミクロな話ではなく、トータルで原発の適地かどうかを議論すべきでは。(歩)


 昨日の記事にもあったが、地震は「連動」して様々な変化をもたらす可能性が大きい。さらに放射能漏れがあったら救助作業や救援作業に大きな支障をきたすということだ。電力を利用する大都市の住民たちの理解が必要だ。共に声を上げてほしい。

東スポWEB 2024.01.05

来年に迫った大阪・関西万博に逆風が吹いている。1日に能登半島地震が起き、4日に生存率が大幅に下がるとされる発生72時間が経過。石川県内では80人以上の死亡が確認されている。道路が寸断され孤立している人たちもいるとみられ、被災者支援と復興への対応が求められている。

そんな状況でSNSを中心に巻き起こっているのが万博延期論だ。万博は日に日に費用が増大。会場建設費はもともとの予定から倍増し2350億円と指摘されており、今後増えていくかもしれない。

被災者支援や復興にはお金がかかると見込まれる。それだけに「X」(旧ツイッター)では「もはや万博なぞやっている場合じゃない」「万博やめて地震の復興に予算をあてるって事はしないの」「万博には何百億ってぽんぽん出すのに能登半島地震には40億ですか」「赤字万博なんぞに、資材やマンパワーを割くなどもってのほか」など言われたい放題となっている。

まさに・・・・・

今日は雪。


一瞬で多くの命を奪う…自然災害大国ニッポンをこれから襲う「一番深刻な災害」本当の恐怖

2024年01月04日 | 自然・農業・環境問題

わたしの『資本論』研究④

「社会主義社会」をどう実現させるか?

 

 世界には少なくない国が「資本主義」から脱出し、「社会主義」を目指している。

せっかく政治的な権力を握っても、その後の社会主義革命を実現させる経済的施策が伴っていない。「社会主義」とは何か、何をどうすれば社会主義へとたどり着けるのか、それが理解されていない。

 

労働に応じた報酬

 資本主義を脱した次の社会での労働とは、「価値」を想像する労働ではなく、すべての社会的労働が等しいものと認められた社会の個々の具体的労働である。

 交換が前提されれば、労働は「価値」を形成する。まだ資本主義から生まれたばかりの交換を前提にしない社会でも生産過程が人間を支配し人間がまだ生産過程を支配していない社会では人と人の関係は、直接的にではなく、労働を通じて、つまり抽象的労働によるのではなく具体的労働、さまざまな使用価値を創る労働として互いに認め合う。

 労働者であること「それ以外の点には目は向けられず、他のことは一切無視される」(『ゴータ綱領批判』)労働の質を見てはならない。労働者であることだけが問題なのだ。だから報酬は労働の質によらず、時間で測られる。

 社会に貢献する個々の異なった個人の労働を「平等」とみなす社会である。個々の個性を持った人々が平等な関係になる。設計図を描く人も、それを創り出す人も、障がいを持つ人も持たない人も。自分に合った好きな仕事する中で、さまざまなものへと挑戦できる社会である。

 

「労働におうじて」ー個人的、具体的労働である。単に分配を表すだけでなく、格差、階級が消滅する生産基盤を表す極めて重要なフレーズだ。

 

 

「共同社会」とは

 個人的労働力が共同体の共同的労働力となっている社会。

マルクス『資本論』ー農民家族の家長性的な労働形態。

 「個人的労働の支出は、ここでははじめから労働そのものの社会的規定として現れる。というのは、個人的労働力が初めからただ家族の共同的労働力の諸器官として作用するだけだからである。

 

 不平等な労働が平等なものとみなされたとき、労働力は商品であることをやめ、また労働生産物は商品であることをやめる。交換を前提にする資本主義社会は崩壊する。労賃形態も新たな分配方法へと変わる。

 それぞれの労働者の持つ能力におうじて働き、その能力をさらに発展させていくことができる。高度な労働だから単純な労働より多くをもらう、ということの必要のない、高度な生産力に裏打ちされた「競争」のない「結合した社会」である。こうした認識は、高度な生産力に裏打ちされた経済的基盤の上に成り立つ。


2024.01.04 現代新書編集部

首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火……過去にも起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか。

発売即6刷が決まった話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」がありありと描かれている。

ここでは、過去の大災害から得られた教訓を考えたい。災害時にトラブルはつきものだが、何が奏功し、どのような課題があったのだろうか。

(※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)

前代未聞の大災害

今から320年ほど前、前代未聞の大災害は起きたことをご存知だろうか。

〈1703年の真冬、激しい揺れが深夜の東京都、千葉県、神奈川県(いずれも現在)を襲う。江戸時代、現在の関東地方を急襲した「元禄地震」だ。

被害の詳細はいまだ確定されていないものの、最大震度7に相当する強い揺れが起き、死者は1万人を超えたと伝えられる。10メートル超の津波は沿岸に住む人々に襲いかかり、一瞬にして多くの命を奪った。

2008年3月に千葉県が発行した防災誌には、古文書や供養碑などをもとに当時の被害がこのように記されている。

「房総半島南部では4メートル以上も土地が隆起、また沈降したために、農業や漁業を営んでいた当時の人々の生活に大きな影響をおよぼしました。大きな地震動と同時に、目の前にあった山が沈み、または今までなかった浜が出現したのです。これらの現象がどれだけ当時の人たちを驚かせたことでしょう」

巨大地震は強い揺れや津波とともに、大きな地殻変動も生じさせている。〉(『首都防衛』より)

過去に日本を何度も襲った巨大地震。本当に怖いのは、地震だけではない……。

「恐怖の大連動」にどう備えるか

元禄地震から始まり、いくつかの自然災害が「連動」したことがある。

〈4年後の1707年10月、今度は駿河湾から四国沖の広い範囲で大きな揺れが発生した。マグニチュード(M)8.6と推定される「宝永地震」は南海トラフの巨大地震で、最大震度7に達したとみられる。海岸部では最大で津波高約15メートルの大津波が発生し、現在の大阪を中心に死者は2万人以上と伝えられている。

内閣府の「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書」(2014年3月)によれば、宝永地震のような南海トラフの大規模地震が発生した後には周辺の地殻に加わる力に大きな変化をもたらす。

発生後に地震や火山活動が活発になる場所が現れ、宝永地震発生の翌日早朝にはM6.5程度の地震が富士山の東麓で発生。そして、49日後には富士山の噴火活動が始まる。〉(『首都防衛』より)

首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火という、過去にも一度起きた「恐怖の大連動」にどう備えるか。

最新データや数々の専門家の知見から明らかになった、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」とは――。

つづく『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。


それに現代では「原子力発電所」が加わるのだ。
放射能は見えない。
すべての行動にstopがかかる。
今から危険なものは取り除いておかなければならない。

元旦に次ぐ晴れの日だ。

 


年のはじめに考える 贈り物でなく預かり物 

2024年01月02日 | 自然・農業・環境問題

わたしの『資本論』研究②

「社会主義」「共産主義

 

 マルクスは資本主義の後に来る社会を「共産主義社会」と言い、その初期的段階を「社会主義社会」と呼んだ。しかしマルクス・エンゲルス以降、「社会主義」・「共産主義」を規定するものは何なのかがあやふやになっている。いま、もっとも一般的に採用されてきたのがマルクスの『ゴータ綱領批判』に書かれた「労働におうじて受け取る社会」、「必要におうじて受け取る社会」という規定である。この文章は一見「分配」を論じているように見える。しかしこの文書は「分配論」ではなく、「生産関係」を表すものとしてとらえなければならない。

 マルクスは『資本論』において「剰余労働が直接生産者から、労働者から取り上げる形態だけが、いろいろな経済的社会を、区分する」と述べている。

つまり、経済的社会区分は、剰余労働の形態によるということである。

 その視点から考えると「社会主義社会」とは剰余労働を「社会」が取得する社会である。一握りの資本家から一般大衆の大多数による社会的「取得」である。

 そしてさらに労働時間の短縮が進むと剰余労働は消滅する。これが高度な段階の共産主義社会である。

 「経済的社会区分は、剰余労働の形態によ」って考察されなければならないということであり、「分配」による「区分」を否定している。つまり、『ゴータ綱領批判』で述べられた一見分配論らしき記述は、それぞれの生産基盤を明らかにした、極めて重要なフレーズなのだ。

 結論-「社会主義社会」とは、剰余労働を社会的に取得社会である。

    「共産主義社会」の高度な段階とは、剰余労働が消滅した社会である。


 「東京新聞」社説 2024年1月1日 

 2024年が明けました。今、地球上にいる人で、100年後、つまりは2124年の地球をその目で見られる人というのは、ほんの一握りでしょう。でも、それ以外の人も何となくこうは思っている。100年後も自分たちの子孫は基本的には今の自分たちと同じように暮らしているだろう、と。当然ですね。もし、そういう漠然とした認識がなかったら、今を生きているということが、途端に覚束(おぼつか)なくなる気がします。

◆享受は今、支払いは未来

 しかし、では地球が100年後も今と同じような地球でいられるかとなると、正直、疑問符がちらつきます。人類がこの惑星の異変に気づき始めたのは20世紀後半。以降、気候や生態系など環境に関するデータ、研究が積み重ねられて危機は次第に輪郭をはっきりさせてきました。それに対応する代表的な条約が、国連生物多様性条約や国連気候変動枠組み条約であり、30年ほど前の発効後、何度も何度も締約国会議(COP)を開いて対策を議論してきました。

 もっとも、それだけの時間をかけ、それだけの会議を重ねてもなお、人類は、例えば、地球温暖化に歯止めをかけるところまでいっていない。すべてそのせいだとは言えないにしても、尋常でない高温や低温、洪水や干ばつ、山火事の多発など、「地球異変」を印象づける事象が世界中で相次いでいるのにもかかわらず、です。

 <地球は先祖からの贈り物ではない。子孫からの預かり物だ>とは、アメリカ先住民の言い伝えだとか。何とも耳に痛い言葉です。本来は<預かり物>なのに、まるで貰(もら)った物のように雑に扱ってきた結果の異変顕現。できるだけ預かった時の状態で子孫に手渡すのが筋ですが、今のままでは、そうできるか、かなりあやしい。

 「今」の世代が欲望を満たし、便利さを享受するために、病んだ地球を押しつけられることになるのは「未来」の世代で、「今」の世代がコストを最小化、利益を最大化できる代わりに、「未来」の世代が損害や賠償に苦しむ-。子孫の視点に立って考えるなら、こんな理不尽な話はありません。

◆「政治屋」か「政治家」か

 さて今、自民党は派閥パーティー券の売り上げにからむ裏金問題で大揺れです。司直の手も入り、捜査が進みますが、裏金の使途の一つは次の選挙に向けた資金だったと考えられています。思い出したのは、米国の有名な警句。

 <政治屋(ポリティシャン)は次の選挙を考え、政治家(ステーツマン)は次の世代を考える>

 岸田政権もガタガタ、その行く末さえ不透明ですが、裏金問題発覚前に首相が表明した「減税」にも<次の選挙>の臭いがします。

 税収増の還元といっても、財務相が「(増収分は)もう使ってしまった」と言う以上、原資は借金するしかない理屈。でも、既に国債発行残高1千兆円超、主要7カ国でも断トツ最悪の財政状態にあるのが日本です。この状況で減税を言い出すのですから、もう有権者の歓心を買おうとする策、とでも考えるほかないでしょう。

 まあ、そういう傾向は現政権だけの話ではありませんね。<次の選挙>を意識して、有権者受けを狙う派手な予算編成を優先し、簡単に借金頼み。掛け声だけで一向に本気で財政健全化に取り組もうとしない姿勢は、代々の自民党政権に共通しています。こう言っては言い過ぎでしょうか。もし、こんなに<政治屋>だらけでなかったら、ここまで借金も膨らまなかっただろう、と。

 <政治家>であれば、国もまた<次の世代>、子孫からの<預かり物>だと考えるはず。身勝手な理屈で借金まみれにした国を、素知らぬ顔で将来世代に手渡すようなことはできないでしょう。

 連想したのは、こんな掌編。

 -ある村に突如、出現した穴。ある男が「おーい、でてこーい」と叫んだが声は吸い込まれるばかりで、石ころを投げても反響音もしない。どうも底なしのようだ、となって、やっかいなものが次々そこに捨てられるようになる。原子炉のカス、都会のゴミ、機密書類、身元不明死体…(星新一『おーい でてこーい』)。

◆穴に捨てたゴミの行方

 未来は目に見えず、茫洋(ぼうよう)としています。だからこそ、地球環境のことにせよ国の借金にせよ、やっかいごとは未来に押しつけてしまえ、となりがちなのかもしれません。まるで、底が見えないからと何でもかんでも放り込まれた、この掌編の<穴>みたいに。

 でも、実は、<穴>に捨てたからってゴミやら何やらが消えてなくなったわけではなかった、というのが、このお話の結末。未来の世代につけを回す問題だって同じです。子孫が生きる未来をゴミだらけにしたくはありません。


この度の地震により被害を受けた皆様にお見舞いを申し上げます。
また現時点で50人近くの死亡が確認されました。
お悔やみ申し上げます。

火災が報じられ、みるみる広がってゆくのが確認されました。
暗闇の中でむやみに消防車両も出動できないであろうし、消火栓などのインフラも使えるかどうかわかりません。
しかし、黙って火の広がるようすを見ているのもつらいものです。
こういう時に山林火災に使うようなヘリによる消火などができないものかと考えてしまいます。
これからも、このような災害は発生するでしょう。
火災に対する対策が必要と思われます。
そして、厄介な原子力発電所、こんなものを置いておくとより被害が大きくなるのは目に見えています。

若者は声を上げてほしい。
われわれの地球を壊すなと。


東電の原発管理 安全安心にはほど遠い

2023年12月27日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」社説 2023年12月27日 

 原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発の事実上の「運転禁止命令」を解除する。「お墨付きを与えたわけではない」と規制委自身が言うように、安全上の不備が今も相次ぐ東電の「再生」は道半ば。東電に「安全文化」が定着したとは言い難い。このまま原発の運転を認めてもいいのだろうか。

 柏崎刈羽原発では2021年の1月から3月にかけて、運転員が同僚のIDカードを使って中央制御室に入る規則違反や、外部からの侵入者を検知する機器の不具合が長期間にわたって放置されていたことが発覚した。

 このため規制委は同年4月、柏崎刈羽原発での核燃料の移動を禁止した。燃料の装塡(そうてん)ができなくなれば、原発は動かせない。すでに新規制基準への適合審査を終えていた6、7号機を含め、事実上の運転禁止命令だった。

 規制委は東電に是正を求め、原子力規制庁が追加検査を実施。その結果、「自律的な改善ができる状態にある」として、命令の解除を決めた。ところが、禁止命令が出た後も、柏崎刈羽では、東電のずさんさが浮き彫りになるようなトラブルが続いている。

 今年6月、不審者の侵入を感知する照明の電源が、半年以上も入っていなかったことが明るみに出た。10月には、違法薬物の陽性反応が出た職員が核燃料を扱う「防護区域」に入るのを見逃した。係員が陰性と見誤ったためという。

 未曽有の事故を起こした東電福島第1原発内でも同じ10月、放射能汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)の配管を洗浄中の作業員が、誤って高濃度の汚染廃液を浴び、病院へ運ばれるという事故が起きている。

 「評定は『優』や『良』ではなく『可』だ」と規制委の伴信彦委員。山中伸介委員長も「どのような判断になろうとも、規制委が東電にお墨付きを与えたわけではない」という。こうした逃げ口上ともとれる発言と運転禁止解除の判断に整合性があるとは思えない。改善の余地は多く残り、安心にはほど遠い。規制委は厳正な監視役としての責任を果たすべきだ。


「規制委員会」もアベによる強硬な「改変」が行われている。
「政権交代」により、原点に戻るべきである。

今日もほぼ一日雪。
50㎝を超える積雪。
時たまブリザード状態に。


COP28:「10年ですべての化石燃料から脱却」で合意、温室効果ガスは35年に6割減へ

2023年12月15日 | 自然・農業・環境問題

SBニュース 2023.12.15

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれていたCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が13日、会期を1日延長して終了した。世界全体での温室効果ガス排出量削減の進捗状況を科学的に評価する、初の「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake:GST)」の結果を踏まえ、約200の国々の間で、2050年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すため、「およそ10年間で化石燃料からの脱却を加速する」と明記した成果文書を採択した。14日間の協議のたまものは、果たして今後の気候変動対策の基盤としてどの程度の実効力を持つのだろうか――。(廣末智子)

グローバル・ストックテイクとは、パリ協定が定める「地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える」という目標達成に向けた進捗状況を、世界全体で把握するための仕組み。今回の初実施に当たっては事前に約1年をかけて、パリ協定の長期目標が世界全体でどの程度達成されているかを科学的見地から検証するプロセスを踏み、その結果、1.5度目標の達成には世界全体の温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要があり、各国が目標強化に向けて早急に議論を開始すべきことが打ち出されていた。

化石燃料の「段階的廃止」の文言を入れるかどうかで駆け引き

これを受けて始まったCOP28の交渉は、「化石燃料の段階的廃止(phase-out of fossil fuels)」という文言を入れるかどうかを焦点に、各国の駆け引きが難航。結果的に、産油国のサウジアラビアなどの反対で、段階的廃止という言葉は使わないものの、成果文書には「化石燃料から脱却する(transition away from fossil fuels)」の表現を盛り込み、「科学的知見に基づき、2050年までにネット・ゼロを達成するために、公正で秩序だった公平な方法で、エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を図り、この重要な10年間でその行動を加速させる」と明記した。

 

化石燃料を巡っては、2021年のCOP26で、最も多くの二酸化炭素を出す石炭火力に限定した「段階的な削減」に初めて合意。続くCOP27では、その対象を石油・ガスも含めた化石燃料全体に広げるよう、島しょ国やEUなどが主張したが、成果文書はCOP26の表現を踏襲した。その点において、COP28が「すべての化石燃料」に言及したことの意味は大きい。しかしながら、「脱却」という言葉は明らかに「廃止」を意味しておらず、2035年までに温室効果ガス6割減という大枠は示したものの、結果としてどう削減していくのか表現に曖昧さが残り、今回の成果文書を「玉虫色の決着」と評するメディアもある。

2030年までに太陽光や風力など再エネを3倍に

今回の成果文書でもう一つの大きな柱は、再生可能エネルギー拡大の必要性を明記したことだ。2030年までに太陽光や風力といった再生エネの設備容量を3倍、省エネ改善率を2倍に▷CO2の回収や利用、貯留(CCUS)といった削減策の講じられていない(unabated)石炭火力の削減へ努力加速――などの項目も盛り込まれた。また化石燃料を代替する手段の一つとして、初めて「原子力」が挙げられたことも注意すべきことだろう。

「損失と損害」基金始動も 暫定的に世界銀行が4年間運営

このほか、大きなアジェンダの一つとなっていた、温暖化の影響を受ける途上国の「損失と損害(ロス&ダメージ)」に対する資金支援のファンド設立については、初日の全体会合で、暫定的に4年間、世界銀行の下で運営し、先進国に対して基金への拠出は義務付けず、新興国にも自発的な拠出を促すことなどが決定した。

基金への拠出は決定直後に開始され、議長国であるUAEが1億ドル(約150億円)、欧州連合(EU)が計2億5000万ユーロ(約360億円)、米国は1750万ドル(約25億円) 、日本は1000万ドル(約15億円)など、13日までに総額7億米ドル以上が拠出されたという。

さらにCOP28では、後発開発途上国基金(Least Developed Countries Fund)や特別気候変動基金(Special Climate Change Fund)などに対しても、先進国から新たな資金拠出が発表された。しかし、これらの資金拠出誓約について、グローバル・ストックテイクは、「途上国のクリーンエネルギー移行や、気候変動への適応努力を支援するために最終的に必要とされる数兆ドルにはほど遠い」と指摘。依然として「多国間金融アーキテクチャーを改革し、革新的な資金源の確立を加速させること」が求められている。

1.5度目標達成に向け、各国が実効性のあるプロセスをどう築くか

国連気候変動枠組み条約のサイモン・スティール事務局長は閉会スピーチで、「ドバイで化石燃料の時代に終止符を打つことはできなかったが、この結果は終わりの始まりだ。今、すべての政府と企業は、これらの誓約を遅滞なく現実の経済的成果に変える必要がある」と述べた。

来年2024年には各国が2035年の削減目標を提出しなくてはならない期限が迫る中、COP28の成果を各国が自国の気候変動対策にどう反映させていくのか――。成果文書には、各国の次回の削減目標の提出時に、「どのようにグローバル・ストックテイクからの結果を考慮したかの説明が必要」という文言も入った。「すべての化石燃料からの脱却」といった曖昧な言葉に惑わされず、1.5度目標に向け、各国が実効性のあるプロセスをどう築いていくかが注視される。

次回以降のCOP日程については、COP29(2024年11月11-22日)がアゼルバイジャン、COP30(2025年11月10-21日)がブラジルで開かれることが決まった。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年10月からSustainable Brands Japan編集局デスク兼記者に。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。


今日は急遽札幌へ。
明日からしばらく荒れ模様の天気予報が・・・
載せる写真もありませんが。


COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状ーどこまで落ちる日本

2023年12月11日 | 自然・農業・環境問題
ニューズウィーク日本版 2023.12.11
 
どこまで落ちる日本...COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状
どこまで落ちる日本...COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状© ニューズウィーク日本版

「気候変動パフォーマンス指数(CCPI)」2024年版。赤くなるほど評価が低い

<ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している>

[ドバイ発]アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で8日、恒例の「気候変動パフォーマンス指数(CCPI)」2024年版が発表された。COP28で2度にわたって不名誉な「今日の化石賞」に選ばれた日本は63カ国と欧州連合(EU)の中で前年の50位からさらにランクを8つ下げ、58位に沈んだ。

環境や気候変動問題のシンクタンク「ジャーマンウォッチ」と「ニュークライメート・インスティチュート」、国際環境団体のネットワーク「CANインターナショナル」が05年から19年連続で発表している。昨年のロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している。

2大排出国の中国は前回と同じ51位で、米国は前回より5つ順位を下げて57位。日本、台湾(61位)、韓国(64位)は、石炭を消費しながらも急ピッチで気候変動対策を進める中国より評価が低かった。COP28議長国のアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、サウジアラビアが最下位の65位から67位までを占めた。

日本は良い目標が設定されていない

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どこまで落ちる日本...COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状
どこまで落ちる日本...COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状© ニューズウィーク日本版

右がニュークライメート・インスティチュートのヘーネ教授。左がジャーマンウォッチのヤン・ブルク氏(筆者撮影)

共同執筆者の一人、ニュークライメート・インスティチュートのニクラス・ヘーネ教授は「自然エネルギーがブームとなり、各国政府は継続的に自然エネルギー目標を更新している。一方で気候変動政策の策定は全般的に鈍化した。比較的野心的な気候政策を行っている国のデンマークでさえ昨年10月の総選挙以降、気候変動対策がほぼ停止している」と指摘する。

ジャーマンウォッチのヤン・ブルク氏は「各国は既存の対策や目標を土台に努力を積み重ねる必要がある。再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率を倍増させ、30年まで化石燃料の石炭、石油、ガスの使用を大幅に削減する拘束力のある決定がなされればパリ協定に沿った道筋を開くことができる」と語る。

日本がランクを落としていることについて、ブルク氏は筆者の質問に「日本の評価が低いのはすべてのセクターで非常に低い目標を設定していることや、1人当たり排出量に大きく関係している。温室効果ガスや再エネ、エネルギー消費に関して良い目標が設定されていない。ただ、新しい再エネ発電の建設を始めているのは良いトレンドだ」と答えた。

世界の統計サイト「ワールドメーター」によると、日本の1人当たり二酸化炭素排出量は9.76トンで世界26位。ブルク氏は「日本が石炭や他のエネルギー源に対して自然エネルギーを増強する傾向を続けるならランキングが上昇するチャンスはある。しかし過去に比べてはるかに速いスピードでなければならない」と警鐘を鳴らす。

日本の「取り残され感」はCOP28でもはや決定的となった。

経済を犠牲にしてまで対策を進める気はない中国

中国を抜いて世界で最も人口の多い国になったインド(14億人)は7位にランクされた。評価が高い理由は1人当たりの排出量やエネルギー消費量が少ないことだ。自然エネルギーを積極的に拡大しているが、石炭への依存度は依然として高い。インドは再エネの割合を増やし、化石燃料への依存を減らす必要があるが、30年の再エネ目標は低すぎる。

インドは相対的な排出量目標を設定し、他国よりも自然エネルギーの開発を進めている。非常に低い水準にある排出量は増加しているとはいえ、奇跡的な高度成長を遂げた中国ほど高い軌跡をたどっていない。自然エネルギーの拡大により排出量を減らすことができなければインドは目標を達成できないという。

中国に次いで世界第2の排出国、米国の専門家は気候変動に関連したインフレ抑制法が再エネへの大規模な投資につながったことを歓迎している。しかしあらゆる分野でより具体的な政策の実施が求められている。パリ協定から離脱したドナルド・トランプ前米大統領が来年の大統領選で返り咲いた場合、状況をさらに悪化させる恐れがある。

11位から20位に転落した英国

世界の排出量の8割を占めるG20で高い評価を受けたのはインド、ドイツ(14位)、EU(16位)だけ。最下位サウジアラビアの1人当たりの排出量は着実に増加している。その一方で悪名高きジャイル・ボルソナロ前大統領からルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領に交代したブラジルは15も順位を上げ、23位になった。

ルラ氏は前大統領の問題のあるいくつかの政策を撤回。植林計画や再エネの加速は肯定的に受け止められた。しかし化石燃料の生産を拡大しており、パリ協定目標を達成できない恐れがある。ブルク氏は「ブラジルの動向に期待は持てるが、G20全体として自然エネルギー拡大を大幅に加速し、化石燃料をできるだけ早く段階的に廃止しなければならない」という。

英国は11位から20位に転落。リシ・スナク首相はガソリン車、ディーゼル車の新車販売禁止を30年から5年間先送りするなど、気候変動対策を進めるいくつかの法案を撤回した。「英国で起きていることは私たちが必要としていることとは正反対だ。政府は新たな炭鉱を承認し、北海で何百もの新たな石油・ガス採掘許可を与えた」(ジャーマンウォッチ)

CANインターナショナルのシニアオフィサー、ジャネット・ミロンゴ氏は「化石燃料の最大生産国および輸出国が最悪のパフォーマンスを見せていることを改めて示している。すべての国家は公正、公平かつ迅速な方法で、100%再エネシステムへのスケールアップに向け、すべての努力と資金を集中させるべきだ」と指摘している。


地球を守るためにも早い政権交代が望まれる。