里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

子どもの栄養格差

2017年07月31日 | 健康・病気

子どもの栄養格差解消、給食頼み 食事調査で判明

           道新 07/30

   低所得層の子どもはそうでない子に比べ、成長に欠かせないタンパク質や鉄の摂取量が少ないなど栄養面の格差があることが、研究者による子どもの食事調査で30日までに分かった。差は主に給食のない週末に生まれ、栄養格差解消は給食頼みであることが示された。週末に「食事代わりにアイス1本」のケースもあった。

  子どもの食の支援では、民間団体が安く食事を出す「子ども食堂」も各地に増えているが、給食がない夏休みシーズンを迎え、支援の重要さを示す調査結果となった

  調査は新潟県立大の村山伸子教授らが、東日本の4県19校の小学5年生に実施し836世帯が回答。週末の2日を含む4日間の食事を文と写真で記録し、年収水準別に栄養摂取量を算出した。

  同調査中で年収が下位3分の1となったグループをみると週末「昼はアイス1本」「朝食に唐揚げ、昼はパン二つ、夕食抜き」の場合があり、平日も「朝食抜き、夜はインスタントラーメンだけ」のケースもみられた。めんやパンなど炭水化物に偏り、緑黄色野菜や魚介類は給食が担う食生活が目立ったという。

  同グループの子どもは週末、野菜の摂取量が1日平均166グラムと、年収中位3分の1の176グラムに比べ5・7%少なかったが、平日はこの差が1・2%に縮小。魚介類も、週末は下位層43グラム、中位層48グラムと摂取量に差が出たが、平日はともに50グラムで格差がなくなった。

  栄養素別では、タンパク質や鉄の摂取量に週末約5~6%の差がついたほか亜鉛、カルシウムも格差が出たが、給食のある日は解消するか、わずかな差に縮まった。

  タンパク質や鉄は、子どもの筋肉や内臓、骨の成長に不可欠で、村山教授は「免疫力が低下し風邪をひきやすい、貧血を起こしやすいなど、目には見えづらい不調が貧困層の子に出ている恐れがある」と指摘した。


今日も、ほぼ一日中雨。
野菜を送る。ミニトマト・大玉トマト・キューリ・なす・ピーマン3種・伏見甘長唐辛子・オカワカメ・ズッキーニ・ビーズ・チマサンチュ・コリンキー(生食用カボチャ)・コールラビ・バジル・食用ホーズキ


性教育 いま必要なこと

2017年07月30日 | 健康・病気

性教育 いま必要なこと

毎日新聞オピニオン 2017年5月22日 大阪朝刊

   スマートフォンや自室のパソコンで、性を巡る膨大な情報に容易に触れることができる時代。子どもに正確な知識や、他者との関係性、自分の体との付き合い方などを教える性教育の重要性は高まっている。教育、医療、宗教、それぞれの立場で取り組む専門家に「いま必要なこと」を聞いた。【聞き手・中本泰代】

 自粛ムード、ゆがみも 関口久志・京都教育大教授

  京都の府立高校で保健体育の教諭を25年務めた。最初に勤務した夜間定時制では、今でいうデートDVや予期せぬ妊娠も多かった。目の前にいる生徒の悩みに対応するために性教育に取り組み始めた。「教科書にないから教えられない」では話にならない。

  日本では1992年、小学5年の教科書で「生命の誕生」などが扱われたのを機に性教育ブームが起き、熱意のある学校や教員が取り組み始めた。当時の文部省も99年には「学校における性教育の考え方、進め方」という手引を出し、性教育に前向きだった。

  その巻き返しが2002~03年の性教育バッシングだ。保守右派を中心に「行き過ぎている」と批判の声が上がり、中でも東京都立七生養護学校(現七生特別支援学校)では、都教委が教材を没収し教員らを厳重注意とする事件が起きた。全国の学校現場は萎縮し、一気に性教育が停滞した。自粛ムードは今も続いている。

 世界的には人権に基づいた性教育がスタンダードとなっている。人間関係▽価値観・態度・スキル▽文化・社会・人権▽人間の発達▽性行動▽性と生殖の健康--の6領域を理解度に応じて教える。一方、日本の学校での性教育は非常に時間が少ないうえ、内容は多くの場合、体の変化、生命の誕生、避妊、性感染症予防にとどまる。性愛についての教育を「子どもに必要ないもの」と遠ざけているのが特徴で、現行の学習指導要領は「中学生には性交を教えない」という前提で成り立っている。

  こうした状況は若者にゆがみをもたらしている。日本性教育協会による青少年の性行動調査の最新データ(11年)では、全体的に性行動が不活発になり、性に対するイメージもネガティブになった。私自身、近年は高校で性について講演すると「自分には関係ない」「リアルな恋愛はいらない」といった感想を書く男子が目に付く。一方、女子は貧困(経済的▽人間関係▽知識の三つがある)を背景に、性の商品化や性暴力にさらされる子が増えているように思う。

  男子も女子も課題の根は一緒で、性的な存在として他者と安心できる関係を築けない。人間関係や性のポジティブな面を教える大人が育っていないことが問題だ。「教わっていないから教えられない」という再生産が続いている。

  ネットの影響も大きい。玉石混交の性情報をお手本のように受け取る子は、教員を目指す学生にもいる。付き合うことや理想のセックスにこだわり、それらが完璧にできないといけないように思ってしまう。「焦らず、自分のペースでいい」と言ってあげないとわからない。ただ、彼らは教えれば変わる。月経痛に苦しむ彼女をいたわるようになったり、彼氏に「嫌なことは嫌」と言えるようになったりする学生たちを見てきた。

  私は、性教育とは豊かで心地よい人間関係をつくるための教育だと考える。一人一人に「私はこの形が幸せだ」というものをつかんでもらいたい。いま、旧来の性別役割や結婚のあり方、セクシュアリティーが揺らいでいる。どんな社会であるべきか、どんな教育が必要かを考え直すことが重要だ。

 知識提供の場が重要 田口奈緒・産婦人科医

  2013年開設の「性暴力被害者支援センター・ひょうご」の代表を務めている。性暴力の被害者を医療、法律、心理面など総合的に支える窓口だ。活動を始めて、小学校高学年から中学生くらいの子どもの相談が多いことがわかった。出会い系サイトで知り合った相手や、部活の先輩などから被害に遭うケースが少なくない。

   センターの事業の一つに、学校への性教育の講師派遣がある。私は性教育とは、子どもを性暴力の被害者にも加害者にもしないために、自尊心を育み、人と関わり合うルールや正確な知識を教えるものと位置づけている。本来なら発達段階に応じて包括的に教えるべきだが、講演の依頼は中学3年生対象で1回だけという形式が多い。中には、生徒の3分の1が進学しない中学もあり、そうしたところでは先生から「社会に出る前に必要最低限の知識を伝えてほしい」と頼まれる。

  私が必要最低限と考えるのは、まず外性器の名称。センターに連れてこられた被害女児が「あそこに(何かが)入った」と表現することがある。自分の体のことを知らないと、異変が起きた時や、性暴力に遭った時に他人に伝えられない。

  月経と妊娠の仕組み、避妊法、性感染症の話も必須だ。子どもたちは雑誌やインターネットで断片的な情報を得ていても、体系的に理解したり自分と結びつけたりはしていない。学校側から「性交の話はしないで」「コンドームの付け方の実演もだめ。使ってみたくなるから」と言われることもあるが、大人になれば絶対に必要となる知識。性をタブー視せず、どこかの時点で誰かがきちんと話さなければならない。

  講演ではまた、「デートDVとはどういうことか」や、性暴力に遭わないために気をつけるべきことも話す。緊急避妊ピルの情報は必ず伝える。講演を聞いた後、彼氏と無防備なセックスをしてしまい、お年玉を握りしめて病院に来た中学生もいた。

  以前に勤務していた病院で、中絶手術を受けた50人にアンケートをとったところ、正しく避妊していた人は1人しかいなかった。診察室で予期せぬ妊娠を知り「コンドームを使っていたのに」と泣き崩れる人もいるが、コンドームは避妊法としては不確実だ。中絶自体はネガティブな体験ではないけれど、女性の心身を傷つけることは確か。中絶に至る前に、適切な避妊法を伝えなければならない。

  被害相談や診療に訪れる人たちの話を聞いていて感じるのは、あふれる情報に振り回されて、体と気持ちと考えがバラバラになっている人が多いということ。自立している女性でも、性に関する場面になると「自分がこうしたい」ではなく「付き合って3カ月たったらセックスする」「35歳までに出産しなければならない」などと「あるべき姿」に翻弄(ほんろう)されている。そういう意味では、大人にも性教育が必要ではないか。

  改めて、性について語る場、知識を提供する場の重要性を感じている。人間にとって性は、食べる、寝る、排せつすることと同じように大事なことだと伝えたい。

 相談相手の存在示せ 古川潤哉・浄土真宗本願寺派僧侶

  佐賀県の中学や高校で、性教育の一環として「生と性と死を考える」という授業を行っている。きっかけは、2001年ごろからホスピスでボランティアを始め、医師らの勧めでエイズの現状と課題を学び、患者と交流を持ったこと。医師や学生らと一緒に、若者が集まるクラブやライブハウスで性感染症防止の啓発活動を始めた。

  彼らは性に関する悩みをいっぱい抱えている。私がお坊さんの姿でカウンターにいると、「中絶したけど水子の霊ってあるの? どうしたらいいの?」などと次々に聞いてきた(ちなみに浄土真宗に水子霊の概念はない)。気付いたのは、彼らはこうした性の悩みや失敗談を誰に聞いてもらえばいいのかわからないということ。そして、クラブに来るような積極性のある子は意思疎通が上手で、本当の意味では性のハイリスク層ではなさそうだということ。こうしたところに来ない内向きの子の方が、悩みを誰にも打ち明けきれず苦しんでいる可能性がある。

  その頃、医療、行政、教育などの専門家が連携し、若者の性行動についてちゃんと教育しようというグループができた。佐賀県DV総合対策センターが始めた中学向けDV予防プログラムの「エイズを通していのちを考える」という性教育枠で、私も講師に加わるご縁を得た。

  伝えたいことは大きく3点。まず、性について。性はいやらしいことだけを指すのではない。性の話は生の話である。次に「いのち」について。いのちとは、ただ生まれてから死ぬまでのことではなく、過去から未来へのつながりや周囲との関係性の中に存在する。生と死は対義語ではなくワンセットである。そして最後に、いろんな人がいていいということ。

 若者と関わっていて、「自分はだめな人間だ」と思っている子が大勢いるのが気になっていた。学校やメディアによる「正しさ」の押しつけが問題のように思う。自分がその枠から外れてしまった場合、どうしたらいいのか。頑張ってもうまくいかないことはあり、しかし精いっぱい生きるしかない。「それはそれで大丈夫だ」と誰かが肯定しないといけない。

  浄土真宗で阿弥陀(あみだ)仏は「何があってもあなたを救う」とおっしゃっている。先の3点も、日本で長い間大切にされてきたこの考え方を、中学生にも伝わるように表現したものだ。

  授業では、例えば性自認について「世の中には男と女しかいないわけじゃない。自分をどう思おうが自由だし、選べるものでもない」と、わかっている人間がいることを強調する。また、思春期特有のモヤモヤについては「生命をつなぐために体が勝手に準備を始める。この違和感がいつまでも続くわけじゃない」と話す。苦しんでいる最中の中高生に「永遠に変わらないものなどない」と伝えるだけで、だいぶ楽になれる。

   性については、自分ではどうにもならないことや、後悔することもいっぱいある。まずは子どもに「何を話しても大丈夫な相手がいる」と示すことが大事だ。私たち宗教者をはじめ、できる立場の人が、できることをやればいい。

 性行動全国調査

  日本性教育協会が6年ごとに実施する「青少年の性行動全国調査」の2011年のデータによると、性交経験率は中学男子3.7%▽中学女子4.7%▽高校男子14.6%▽高校女子22.5%。性に関して「学校で教わった覚えがある」と高校生が回答した主な項目は、HIV・エイズ92%▽妊娠の仕組み90%▽避妊の方法81%▽性感染症68%--だった。一方、性交については57%、恋愛は32%、性的マイノリティーは18%にとどまった。

 せきぐち・ひさし
 1954年、兵庫県生まれ。専門は性教育、ジェンダー教育。2003年から千葉大、横浜国立大などで非常勤講師を歴任。全国の学校や自治体で講演を続ける。“人間と性”教育研究協議会幹事。

 たぐち・なお
 1969年、神戸市生まれ。信州大医学部卒業。2013年4月、神戸市内で性暴力被害者支援センターを設立し、現在は兵庫県立尼崎総合医療センターを拠点に活動する。

 ふるかわ・じゅんや
 1976年、佐賀県伊万里市生まれ。同市の浄誓寺僧侶。浄土真宗本願寺派が昨年度主催した、若者の悩みに寄り添う僧侶を育成する研修会の企画、運営に携わった。


 ご無沙汰してしまいました。札幌にいる2人の子どもが珍しく一緒に乗り合わせてやってきた。子どもの部活などで、なかなか時間が取れず、かろうじて空いた日ができたといって孫を連れてやってきた。下の子は、友人の結婚式で来たという。
 30日はわたしの兄弟4人が旭川のお墓に集まり、掃除とお参りをしてきた。兄弟で昼食をとり、夕食は子どもと孫と回転ずしを食べに行って、そこで別れて帰ってきた。10皿も食べられなかった孫が今日は15皿も食べていた。

 


香害

2017年07月28日 | 健康・病気

香害110番を開設―日本消費者連盟

   近年、芳香柔軟剤や制汗剤など、人工の強い香料によって体調を悪くする人が増えています。隣近所の洗濯物のにおいでベランダに出れない、電車に乗るのもつらいと感じる人が多発しています。

 2013年、国民生活センターによる「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」と題する記者発表がありました。

 日本消費者連盟は、「香害から身を守る」くらし・社会を模索しようと、電話相談を開設します。

▶開設日時
 第1回(終了)
   第2回 8月1日11時~15時 03(5291)2166

 

柔軟剤の「香害」問題 背景に匂いにワガママな人の増殖あり

                  NEWSポストセブン

 ブームの後には反動が訪れるのが常だが、ちょっと珍しい展開になっているのが「柔軟剤問題」である。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *

   NHKのニュースや新聞が大きくとりあげ、社会問題化した「香害」。今大人気の、衣類に香りが残る洗濯用柔軟剤についての相談が国民生活センターで増えているとか。

   人工的な香りが原因で気持ちが悪くなったり、頭痛や吐き気がする、というケース、「ああ、あるある」とうなずいた人も多いのでは。柔軟剤の使用方法については、4人に1人が規定の量の2倍を超えている、という業界団体の調査結果もあるようです。

  国民生活センターは、香り付きの柔軟剤を使いすぎないよう消費者へ呼びかけました。同時に、業界団体に対して、過度な使用を控えるよう商品に表示したり啓発活動を行ったりするように要望したそうです。

  職場で他の人の柔軟剤の香りに悩まされる。レストランで料理の風味やワインの香りをじっくり楽しみたいのに、衣服の香りが気になってしまう。近所に干してある洗濯ものから漂う強すぎる香りが苦痛、という訴えまであると聞きました。心理的な苦痛だけでなく、体調が悪くなったりする化学物質過敏症の訴えも切実だと新聞は伝えています。

  「強い芳香臭をかいだ。意識がなくなってその場にうずくまった。顔面が蒼白になり、言語機能の極端な低下、筋肉硬直などの症状が出た」(東京新聞2013年9月2日)。

  他人の体調にまで影響するとなると「たかが香り」ではすみません。ご存じのように、健康増進法はタバコの煙についてこう定めています。

 「人がたくさん集まるところでは、分煙する努力をしなければならない」
 そのうち「人がたくさん集まるところでは、『分香』する努力をしなければならない」となる日が来るのかも。

  今回の香害問題。その根底に「匂いワガママ」の増殖がありはしないでしょうか? 「匂いワガママ」とは、柔軟剤や香水は「良い」匂いとし、その他はすべて「クサイ」と決めつけること。自分が好きな匂いはOK、「芳香」はたっぷりと十分すぎるほど身につける。一方で、匂いのするものは「くさい」「悪臭」と嫌悪し、消臭に走る。

  そうした「匂いワガママ」の増殖現象。一粒で二度おいしい思いをしているのは、もしかしたらメーカー側かもしれません。なぜなら、香が残る柔軟剤と消臭剤、匂いワガママな人は両方を買ってくれるのですから。

 ふと、知り合いのお父さんの言葉を思い出しました。

 「小学生の息子に、動物園に行こうと誘ったら、クサイからいやだと断られた。その言葉がとてもショックでした」

  生命活動と匂いは切っても切り離せないはず。暮らしの中にあるさまざまな匂いを、一律に「クサイ」と毛嫌いする子どもたちが増えていくとしたらどこかおかしい、とお父さんは嘆いていました。

  他人のことを顧みずプンプンと人工的な「芳香」を発散する今回の問題と、動物園はクサイ、と嫌う子どもたち。その2つはどこか根底でつながってはいないでしょうか? 

 

 化学物質過敏症について

    化学物質過敏症支援センター(2005年10月3日修正)  

化学物質過敏症とは‥

 さまざまな種類の微量化学物質に反応して苦しむ、化学物質過敏症(Chemical Sensitivity=CS)。重症になると、仕事や家事が出来ない、学校へ行けない…など、通常の生活さえ営めなくなる、極めて深刻な“環境病”です。

※化学物質過敏症は、日本ではCSとも呼ばれますが、欧米ではMCS(Multiple Chemical Sensitivity=多種類化学物質過敏症)の略称のほうが一般的です。

 増え続ける化学物質

   化学物質過敏症は、何かの化学物質に大量に曝露されたり、または、微量だけれども繰り返し曝露された後に、発症するとされています。化学物質への感受性は個人差が大きいため、同じ環境にいても発症する人としない人がいます。

「今日、推計で5万種以上の化学物質が流通し、また、わが国において工業用途として届け出られるものだけでも毎年300物質程度の新たな化学物質が市場に投入されています。化学物質の開発・普及は20世紀に入って急速に進んだものであることから、人類や生態系にとって、それらの化学物質に長期間暴露されるという状況は、歴史上、初めて生じているものです」(2003年版『環境白書』より)。

   その一方で、「今日、市場に出回っている化学物質のなかで、量として75%に当たるものについて、基本的な毒性テストの結果すら公開されていない」(米国NGOの環境防衛基金『Toxic Ignorance(毒性の無知)』1997)といった現状があります。

「便利な生活」のために、化学物質を開発、利用していくことが優先され、安全性の検証は後回しにされがちです。こうした背景のもと、「環境ホルモン」「化学物質過敏症」など、従来予想できなかった新たな問題が表面化してきたのです。

 だれにも発症の可能性

   戦後、急激に増えた花粉症も“環境病”の一つだと言えます。杉などが多い山村よりも、車の排気ガスなどで汚染された都市の方が、患者が多いと言われています。たとえば、ディーゼル排気粒子は、IgE抗体を増やす作用などがあります(国立環境研究所のホームページ)。昨年まではまったく異常がなかったのに、ある年を境に突然発症する花粉症。化学物質過敏症もこれと同じように、あなたが突然、発症者になるかもしれません。

多い潜在患者

   化学物質過敏症の発症者数について、日本ではまだ調査例が少ないのですが、内山巌雄・京都大学大学院教授らは、成人を対象に行った調査から全国で約70万人と推計しています。子どもも含めれば100万人程度になりそうです。

   しかし、多数の医師はこの病気に関心を持っておらず、診療できる医師は限られています。このため、「更年期障害」「精神疾患」など、別の疾患として診断されたり、「原因不明」として放置されている潜在患者が多数いるものとみられています。

周囲の無理解にも苦しむ

   実際、明らかな体調不良にもかかわらず、医師らに「異常なし」「気のせい」などと言われ続け、「CS」と診断されるまで、医療機関を何カ所も渡り歩いた経験を持つ方は、少なくありません。このため、「お医者様が『異常なし』とおっしゃっているのだから」と、家族からも理解してもらえない発症者が少なくありません。発症者は症状だけでなく、孤独にも苦しめられているのです。

発症者の反応を引き起こす主な化学物質など

▼発症者の90%以上に症状が出るもの

・家庭用殺虫・殺菌・防虫剤類

▼発症者の80%以上に症状が出るもの

・香水などの化粧関連用品類・衣料用洗剤類・防臭・消臭・芳香剤類・タバコの煙・シャンプーなどボディーケア用品類・灯油などの燃料類・ペンなど筆記用具類・印刷物類

 ほか、発症者が反応するもの

新建材・塗料から放散される化学物質、排気ガス、電磁波、においが強い天然のものなど(個人差あり)

シックハウスや農薬などで発症

   化学物質過敏症(CS)の発症原因の半数以上が、室内空気汚染です。

   室内空気汚染による健康影響は、「シックビル症候群」「シックハウス症候群」とも呼ばれています。自宅や職場、学校などの新築、改修、改装で使われる建材、塗料、接着剤から放散される、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)などが、室内空気を汚染するのです。建築物自体だけでなく、室内で使われる家具、殺虫剤、防虫剤や、喫煙なども室内汚染を引き起こし、CSの発症原因になります。

室内、屋外を問わず盛んに使われている有機リン系農薬(殺虫剤)は、さまざまな毒性(神経作用、アレルギー悪化、視力低下など)が指摘されています。

特に問題なのが、有人・無人ヘリコプターによる空中散布です。

   ガス化した農薬が、対象の田畑や森林だけでなく、周辺の住宅地などにも長期間留まり、有機リン中毒やCSなど、深刻な健康被害をもたらしています。また、農産物生産以外の目的で使われる農薬(シロアリ防除剤、庭・公園・街路樹の殺虫剤など)には、ごく一部を除いて規制がなく、発症原因となったり、発症者を苦しめています。

化学物質過敏症の原因

シックハウス 59%
農薬・殺虫剤 21%
有機溶剤 8% 
その他 12%

職場や大気の汚染でも

   職業上扱う有機溶剤なども、CSの発症原因になります。パーマ液や合成洗剤(シャンプー)を扱う美容関係、消毒液を扱う医療関係、化学関係、印刷関係などで働く方々が発症するケースが目立っています。そのほか、ごみ処理施設による大気汚染で、多くの周辺住民が発症したケースもあります(「杉並病」など)。

化学物質過敏症の主な症状

【目】かすみ/視力低下/物が二つに見える/目の前に光が走るように感じる/まぶしい/ちかちかする/乾き/涙が出やすい/ごろごろする/かゆみ/疲れ/目の前が暗く感じる

【鼻】鼻水/鼻詰まり/かゆみ/乾き/鼻の奥が重い/後鼻腔に何か流れる感じがする/鼻血

【耳】耳鳴り/痛み/耳のかゆみ/音が聞こえにくい/音に敏感になった/耳の中がぼうっとする感じがする/耳たぶが赤くなる/中耳炎/めまい

【口やのど】乾き/よだれが出る/口の中がただれる/食べ物の味が分かりにくい/金属のにおいがする/のどの痛み/のどが詰まる/ものが飲み込みにくい/声がかすれる/喉頭に浮腫ができる

【消化器】下痢や便秘/むかむかして吐き気がする/おなかが張る/おなかの圧迫感/おなかの痛みや痙攣/空腹感/胸焼け/げっぷやおならがよく出る/胃酸の分泌過多/小腸炎や大腸炎

【腎臓・泌尿器】トイレが近くなる/尿がうまく出ない/尿意を感じにくくなる/夜尿症/膀胱炎/腎臓障害/インポテンツ/性的な衝動の低下や過剰

【呼吸器・循環器】せきやくしゃみ/呼吸がしにくい/呼吸が短くなったり呼吸回数が多くなる/胸の痛み/息遣いが荒くなる/喘息/脈が速くなる/不整脈/血圧が変動しやすい/皮下出血/寒さに対して皮膚の血管が過敏になる/血管炎/にきびのような吹き出物が出やすい/むくみ

【皮膚】湿疹、蕁麻疹、赤い斑点が出やすい/かゆみ/引っ掻き傷ができやすい/汗の量が多い/皮膚が赤くなったり青白くなったりしやすい/光の刺激に対して過敏になる

【筋肉・関節】筋肉痛/肩や首がこる/関節痛/関節が腫れる

【産婦人科関連】のぼせたり、顔がほてったりする/汗が異常に多くなる/手足の冷え/おりものが増える/陰部のかゆみや痛み/生理不順/不妊症/生理が始まる前にいらいらしたり、頭痛、むくみなどがある/感染症にかかりやすくなる

【精神・神経】頭が痛くなったり、重くなったりする/手足のふるえや痙攣/うつ状態や躁状態/不眠/気分が動揺したり不安になったり精神的に不安定になる/記憶力や思考力の低下/食欲低下/いらだちやすく怒りっぽくなる

【その他】貧血を起こしやすくなる/甲状腺機能障害

※人によって現れる症状が異なり、広範囲の症状が現れる

自分の身の置き場がない患者たち

   化学物質過敏症の特徴の一つに、アレルギーなどと比べても、はるかに少ない量の化学物質に反応することがあります。ホルムアルデヒドの室内空気濃度指針値は0.08ppmですが、それより低い濃度で反応する発症者の方もいます。

   重症の方は、身の回りの多種類の微量化学物質に反応するため、起きている間じゅう、絶え間なく苦しみます(発症者によっては寝ている間でさえ、不眠や悪夢で苦しめられます)。着られる服がない、使える生活用品がない、食べられるものを探すのも一苦労(農薬や添加物が使われたものは食べられません)。そして何よりつらいのは、自分のこの体を安心して置ける場所がないことです。

今、苦しんでいる発症者への緊急対策を

 「シックハウス症候群」が多発して社会問題化したことから、厚生労働省は、室内空気の化学物質濃度に指針値を設けました。国立病院機構の一部の病院では、シックハウス症候群を診断できる態勢が整備されつつあります。2003年7月には改正建築基準法が施行され、シックハウス症候群予防のための法規制が始まりました。

 また、これまでの調査研究報告結果から厚生労働省は、カルテや診療報酬明細書(レセプト)に記載するための病名リストに、2009年10月1日から化学物質過敏症を登録しました。このことによって、これまで「シックハウス症候群」「自律神経失調症」「うつ病」など、他の病名で治療を受けたり、申請をせざるを得なかった障害年金においても、「化学物質過敏症」という正しい病名による認定が増加し、わずかではありますが生活保障されるケースが報告されています。

 しかしながら、 根本的な脱化学物質、脱電磁波など、目に見えない環境汚染物質の発生や使用に対する幅広い規制、対策は、ほぼ無策と言っても過言ではありません。

  また、化学物質過敏症が心療内科や精神科の範疇とする見解もあり、精神薬服用によってさらなる体調悪化を招いたり、依存症になるケースも報告され、環境病治療に対する医療全体の認識、専門医療機関と医師の確立などを広げる動きを、発症者自体から強く訴えていく必要があると考えます。

学校で家庭で地域で…子どもが危ない

 「シックスクール」という言葉が聞かれるようになりました。子どもにとって安全であるべき学校の環境が原因で、子どもや教職員が化学物質過敏症などを発症したり、または、すでに化学物質過敏症やアトピー、アレルギーになっている子どもや教職員の症状が悪化するケースです。

 化学物質過敏症を発症している子どもや教職員の多くは、床に塗るワックスや教材から揮発する化学物質、教職員のたばこや香水、校庭の樹木へ散布される殺虫剤などに反応して、症状が出てしまいます。

 また、校舎の新築や改修による集団的な健康被害の発生例も報道されています。

 学校側が協力して、教材を出来るだけ安全なものに替えたり、教室の換気を励行したり、教職員がたばこや化粧を控えるなどの対応を取れば、化学物質過敏症の子どもでも通学できる場合があります。しかし、化学物質の問題について知識がない関係者がまだ多いため、子どもや親からの訴えがなかなか理解されないケースも目立ちます。

 また、学校側が協力しても学校に通えないほどの重症の子どもの場合は、養護学校からの訪問教育などで対応するよう、文部科学省は指導しています。しかし、「人員が足りない」などの理由で、実施されないこともあります。

 化学物質に悩む子どもたちは、「私たちも勉強したいし、友だちと一緒に遊びたい」「ぼくたちも通える学校を造って」と訴えています。

化学物質が多動や学習障害の原因に

   シックスクールは、一部の「過敏な子」だけの問題ではありません。化学物質過敏症の典型的な症状の一つに、集中力・思考力が欠けて落ち着きがなくなる、感情を制御しづらくなり怒りやすくなる、というものがあります。化学物質に曝露されると「キレる」子どもが(大人も)現実にいます。一見すると元気で活発な子どもが、実は病気のせいで“多動”になっていた、という例も報告されています。粗暴だった化学物質過敏症の子どもが(大人も)回復すると、ウソのように優しくなったという症例は、珍しいものではありません。

また、有機リン化合物などの化学物質が、多動を引き起こすという動物実験結果も報道されています(『朝日新聞』2003年10月30日付)。

今日、落ち着きのない子ども、感情を制御できない子どもが、いかに多いかということは、皆さんもご承知の通りです。

   親も教職員も、そして子ども本人も気付かないうちに、化学物質の影響を受け、「多動児」「問題児」扱いされている子どもたちも、きっといるのではないかと思われます。子どもがなぜキレるのかを調べる際には、原因の候補に化学物質も含めるべきだと、研究者は指摘しています。

「健常者」のあなたへ

化学物質過敏症を発症していない皆様に、お願いがあります。

■ 予防してください

   化学物質過敏症を発症しないために、化学物質にできるだけ曝露されないよう、より安全な生活習慣を心がけてください。化学物質過敏症は多くの場合、特別なものによって発症するのではありません。「危険」だとして禁止される化学物質は、禁止される直前まで普通に使用されているのです(使用されていなければ、禁止する必要がありません)。あまり神経質になる必要はありませんが、化学物質の安全性・危険性については完全には解明されていないこと、また、単一の化学物質は安全でも、身の回りには数百種類かそれ以上の化学物質が常に存在し、その複合影響があり得ることにご留意ください。

【具体的な予防策】

・室内空気を汚さない(換気の励行。噴霧式・スプレー式殺虫剤、芳香剤、消臭剤は使用しない。蚊取り線香は使用しないか短時間に限って使用。衣類防虫剤は使用しないか密閉容器中で使用。あらゆるスプレー類は使用しないか戸外で使用)

・食品は安さだけでなく安全性にも注意を
・合成洗剤はやめて石けんに
・住宅の新築・改修・改装は特に注意
・「あれば便利」程度で、なくても良いものは使わない
・家庭だけでなく、職場、学校・幼稚園などでも同様に
・適度な運動で汗をかいてください

■ 発症者を助けてください

   あなたの近くに化学物質過敏症の発症者がいたら、ぜひ手をさしのべてください。地域や職場、学校内の化学物質をできるだけ減らすよう、協力してください。

■ 当センターをご支援ください

国は化学物質過敏症の発症者への支援策をほとんど講じていません。

化学物質過敏症支援センターは、発症者を支援するための活動や、これ以上発症者を増やさない社会の形成のための活動に、微力ながら取り組んでいます。


相模原事件から1年

2017年07月27日 | 社会・経済

相模原事件から1年————植松被告の思想と、安倍自民党の障害者切り捨て・差別排外主義との関係を改めて問う

                  リテラ 2017.07.26

  神奈川県相模原市の障がい者福祉施設「津久井やまゆり園」での入所者19人が殺害された事件から1年。殺人及び殺人未遂で起訴された元職員の植松聖被告だが、横浜地裁で始まるはずの裁判は、まだ公判前整理手続きすら始まっていない状態で、真相解明にはまだまだ時間がかかりうそうだ。

 しかし、ひとつだけ改めて指摘しておかなければいけないのは、この相模原事件がいまの安倍政権の障がい者切り捨て政策や排外主義と差別を丸出しにする社会状況とけっして無関係ではないということだ。

 植松被告は事件前、衆院議長公邸に「私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活および社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」といった手紙を届け、「(障がい者)ひとりにつき税金がこれだけ使われている」「何人殺せばいくら税金が浮く」などと語っていたことがわかっていた。

 また、逮捕後も「障害者なんていなくなればいい」と供述し、最近も、時事通信社の取材に手紙で応じ、「不幸がまん延している世界を変えることができればと考えた」と記したうえで、「意思疎通ができない重度障害者は不幸をばらまく存在で、安楽死させるべきだ」と主張していたという。

 しかし、こうした思想をもっているのは植松被告だけではない。そもそも、小泉政権と安倍政権は障がい者に税金を投入するのは無駄とばかりに、障がい者とその家族に負担増を強いる法改悪を行っているし、石原慎太郎や息子の石原伸晃、安倍政権の重鎮である麻生太郎、安倍政権のブレーンである曽野綾子は、「安楽死させたほうがいい」「いつまで生きているんだ」「税金を使っているのを申し訳なく思え」などと、障がい者や老人に対して信じられないような攻撃を、口にしてきた。

 植松被告のツイッターには、安倍晋三、百田尚樹、橋下徹、中山成彬、テキサス親父日本事務局、ケント・ギルバート、上念司、西村幸祐、つるの剛士、高須克弥、村西とおると、ネトウヨが好みそうな極右政治家、文化人がすらりと並んでいたが、こうした思想に大きな影響を受けたのは間違いないだろう。

 いや、植松被告だけではない。事件後、安倍政権を盲信するネトウヨたちの間では、〈そうやってみんなすぐ植松容疑者が異常だと言い張るけど行動がよくなかっただけで言ってることは正論だと思う〉〈植松の言ってることはこれからの日本を考えるとあながち間違ってはいない〉〈穀潰しして連中に使われる予定だった税金を節約して、国の役にたったよ彼は。弱いものって誰? 精神障害者はどんなに暴力や暴言はいても罪に問われない無敵の強者だよ?〉といった、植松被告の考え方に賛同する声があふれた。

 さらに、自民党のネット応援部隊であるJ-NSC会員(=ネトサポ)がブログで、「植松が言うように障害者はいなくなるべき」と全面的な賛同を示し、障がい者の子どもがいる野田聖子衆議院議員にまで「自民党の改憲案との矛盾をなくすために障害者の子ども殺せ」と迫っていたことも発覚した。

 本サイトは、相模原事件は、2000年代から始まった、弱肉強食の新自由主義政策と安倍政権下でエスカレートする排外差別主義が合体した結果であり、起こるべくして起きた事件だと考えている。

 そのことを確認するために、事件が発生したあと、本サイトが掲載した検証記事を再録するので、ぜひ読んでほしい。(編集部)

 

「障がい者を殺せば税金が浮く」植松容疑者の狂気は自民党政権の障がい者切り捨て、新自由主主義政策と地続きだ

障がい者大量殺害、相模原事件の容疑者はネトウヨ? 安倍首相、百田尚樹、橋下徹、Kギルバートらをフォロー

自民党のネット応援部隊が「植松容疑者の主張は間違ってない」「障がい者は死んだほうがいい」と障がい者ヘイト!

障がい者抹殺思想は相模原事件の容疑者だけじゃない! 石原慎太郎も「安楽死」発言、ネットでは「障がい者不要論」が跋扈

安倍首相の盟友・曽野綾子も野田聖子議員に障がい者ヘイト!「子どもの治療に税金を使っているのを申し訳なく思え」


昨日は一日陽が照り、夏らしさを感じたのだが、夜には気温がぐっと下がってきた。今朝温度計を見たら最低気温は12℃だった。寝苦しい夜を過ごす南の人にはうらやましい話であろう。


 サボテンの花が咲いた。いつも4月ころ、まだ雪のある時期に咲いていた。しかも真っ白な花だった。今年は4月には咲かず、今頃の開花となった。改めて調べてみたが、花のかたちは「月下美人」。でも昼間に咲いているし今日で2日目。色も黄色。教えてください。

もう一つ。教えて。

食前に飲むべき薬を飲み忘れ、食後に気が付いた。食後に飲む薬と一緒でもいいのか?
ある程度空腹になるまで待つべきか?


「法治」揺るがす「人治」

2017年07月26日 | 社会・経済

加計学園問題 首相は便宜を図った? 
  「法治」揺るがす「人治」

   毎日新聞2017年7月26日 東京夕刊

 集団的自衛権行使、解釈改憲に続く疑問

  足らざる点があった--。24、25日の衆参両院の予算委員会で、安倍晋三首相は学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画について、自らの説明不足をこう認めた。しかし、低姿勢な言葉とは対照的に、答弁からは民主主義の大原則である「法の支配」の軽視がうかがわれる。「足らざる点」は説明だけなのか。【小林祥晃、吉井理記】

 「時代のニーズに合わせて規制を改革していくことは、ゆがんだ行政をただすことであろうと思う」。24日に開かれた衆院予算委員会の閉会中審査で、安倍首相はこう訴えた。

  「腹心の友」である加計孝太郎氏が理事長を務める「加計学園」の獣医学部新設に便宜を図ったのではないか--。この疑念が追及される度に、首相ら政府側は「議論の本質は52年間、獣医学部新設を妨げてきた規制の是非だ」「岩盤規制にドリルで穴を開けることが必要だ」などと政策の正当性を強調してきた。

  これに対し、参考人として閉会中審査に出席した前川喜平・前文部科学事務次官は、決定過程で「内閣府からの圧力があった」と主張し、これまでと同様の対決姿勢を見せた。ただし、前川氏が問題視するのは、規制改革の是非ではない。今月10日の閉会中審査では「問題は、獣医学部新設という結論に至るまでのプロセス。どの主体に事業を行わせるかという決定に至る過程だ」と述べた。規制に穴を開けるかどうかではなく、穴の開け方が不公平、不透明と訴えているのだ。

  政策の正しさを力説する首相の姿勢を批判するのは、自民党の憲法改正草案に反対する「明日の自由を守る若手弁護士の会」メンバーの武井由起子弁護士だ。

 「結論の正しさと手続きの正しさは、法治国家にとって車の両輪です。『政策が正しければ手続きはどうでもいい』という姿勢では、『法の支配』の根本が揺らいでしまいます」

  「法の支配」は「三権分立」などと同じく、近代社会を支える基本原則の一つ。個人の自由や権利が保障されるためには、法に基づいて政治が行われなければならず、権力者も法に従わなければならないという考え方だ。憲法の下で政治が行われなければならないとする「立憲主義」の考えにも通底している。

  正しい手続きが重要な理由について、武井さんは「民主的な手続きを経た政策決定でなければ、私たちの声が政策に反映されたことにはならないからです。きちんとした手続き、プロセスを踏むことが、法治国家の大前提なのです」と説明する。

  政治は、結果がよければ全てよし--というわけにはいかないのだ。

  安倍首相ら関係者が「結論に至るプロセス」に触れていないわけではない。これまでも「決定のプロセスには一点の曇りもない」「(特区選定を議論する国家戦略特区諮問会議などは)議事録を全て公開している」と繰り返してきた。

  だが、行政学の専門家は納得していない。千葉大名誉教授の新藤宗幸さんは「曇りがあるから、これだけ疑念が広がっている」と一蹴し、こう疑問を投げ掛ける。「議事録を公開していると言いますが、諮問会議に諮られる前段階は密室の議論です。だからこそ『言った』『言わない』が問題になっているのではないでしょうか」

  閉会中審査でも、焦点の「首相の関与」について、首相自身や官邸の意向を文科省側に伝えたとされる和泉洋人首相補佐官らの答弁で疑惑が払拭(ふっしょく)されたとは言い難い。

  それどころか「2015年4月に愛媛県今治市の特区担当課長が首相官邸を訪問した際、誰と会ったのか」や「開学時期が18年4月に決まった経緯」も解明されていない。「既存の獣医師養成でない構想であること」「(教育内容が)既存の大学・学部では対応困難なこと」といった獣医学部新設の4条件を満たしているかどうかに至っては「満たしている」と言うだけで、十分な説明はされなかった。

  「あれでは大半の人が納得しないでしょう」と閉会中審査の感想を語る新藤さんは、特区制度にも疑問を向ける。

  「国家戦略特区は首相指導、政権主導の色彩が極めて強く、事業者と政権の癒着の温床になりやすいのです」。どこを特区認定するかは、首相指名の民間人らでつくる諮問会議の議論を経て首相が決める。認定された事業者には手厚い金融支援や減税措置がある。

  小泉純一郎政権も似た名前の「構造改革特区」を制度化した。しかし、自治体の提案を受けて地域と事業を認定する制度で、酒税法の規制を緩和した「どぶろく特区」や、道路運送法を改正し、過疎地域で特別な免許がなくても高齢者を移送できる事業を認めるなど、町おこしを主眼とするものが多かった。

  新藤さんは語る。「安倍政権は省庁の幹部人事を掌握する内閣人事局を設置したり、政権に忠実な官僚を一本釣りして『側用人(そばようにん)』のように官邸や内閣府に配置したりして、官邸主導を強めてきた。政治主導を全て否定するわけではありませんが、政治と官僚機構に緊張関係がなければ『独善的な政治主導』に陥る。政権主導の国家戦略特区は法の支配や社会的公正を危うくする恐れがあるのです」

  これも「法の支配」の問題になるが、安倍政権は14年、多くの憲法学者が反対する中、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を行い、翌年に安全保障関連法を成立させた。この時、思想家の内田樹さんはブログで「法や憲法に従う『法治』を旨としてきたこの国の統治原理は、人が法律や憲法を自由に判断できる『人治』に移行している」と警鐘を鳴らした。

  政策決定のプロセスが明らかにされず、権力者のやりたいように物事を進める--。このような動きが垣間見える安倍政権では、まさに「人治」が一層濃くなっていないか。

  今、内田さんはどう思っているのか。「人治どころか、法治国家が歴史を逆戻りしているかのようです。権力者に近いか遠いかの関係で資源分配や権力分配が決まってくるとしたら、それは中世の社会です」と、強い口調で語り始めた。

  近代と中世の違いは「公」と「私」が区別されているかどうかだと言う。政治主導、官邸主導の名の下で、首相に権力が集中し、政策決定にも大きな影響力を持つようになる。その力を「私」のために使う。このような政治の果てにあるこの国の形とは。「強者や権力者による総取り社会に逆戻りです。私たちは長い歴史の中で、人権や公共の福祉をどうやって獲得してきたか、どのように近代市民社会に移行してきたか、歴史に学ぶべきです」

  弁護士になる前、商社員として中国に駐在した経験がある武井さんはこう話す。「中国の憲法では、国家権力が党の指導を受けるとされている。それが『中国は人治国家』と評されるゆえんです。中国ビジネスでは、困った時に中国共産党とのパイプを頼ることがありました。当時は『ビジネスで困ったら政権党を頼るなんて、日本では考えられない』と思っていましたが、日本もそんな人治国家になりつつあるのではないか」

  「加計学園」問題は「日本は法治国家であり続けられるのか」という重い問い掛けを突き付けているのかもしれない。


10年で自殺率3割減目指す

2017年07月25日 | 社会・経済
10年で自殺率3割減目指す 政府対策大綱「非常事態続く」
自殺死亡率の推移
自殺死亡率の推移

 政府は25日、国の自殺対策の指針となる新たな自殺総合対策大綱を閣議決定した。自殺者は減少傾向にあるものの「非常事態はまだ続いている」と指摘し、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を今後10年で30%以上減らすとの数値目標を掲げた。

 大綱の見直しは5年ぶり。2007年の初の大綱では「10年で20%減」という目標を掲げ、達成しているが、新大綱ではさらにハードルを上げた。自殺対策を、生きることの阻害要因を取り除いていくことと定義し、長時間労働の解消や産後うつのケア、性的マイノリティーに対する周囲の理解促進など、多様な対策を打ち出した。

 年間の自殺者は、16年は2万1897人と7年連続で減少。03年の3万4427人と比べると減っているが、自殺死亡率は他の先進国と比べて依然として高い。新大綱は、自殺死亡率を15年の18・5人から25年には13・0人とするとしており、自殺者数にすると1万6千人以下となる計算だ。

 電通の新入社員による過労自殺問題を受け、長時間労働解消に向け、問題を抱えた企業への監督指導を強化。職場でのメンタルヘルス対策やパワハラ対策をさらに進めていくとした。

 また、産後うつの問題では、健康診断などを通じて、出産間もない女性の心身の状態や生活環境の把握に努め、育児をサポートする体制を確保。性的マイノリティーに関しては、周囲の理解不足がハラスメントにつながる恐れがあるとして、24時間365日無料の電話相談窓口を設置するほか、教育や雇用現場で理解が広がることに努める。

 若者の自殺がなかなか減らない現状を課題として挙げ、学校現場での「SOSの出し方教育」をさらに推進するとした。

 改正自殺対策基本法で、自治体ごとに自殺防止計画の策定が義務付けられたことを踏まえ、自治体などを支援する国の役割を明確化。互いに協力しながら取り組みを検証、改善していく努力を続ける。


 安倍流、その場しのぎの発案としか読み取れません。現実にやってることは真逆のことばかり。会社ではパワハラが横行し、長時間労働が常態化している。学校現場での「SOSの出し方教育」じゃないと思うのだが。教員の「SOS受け止め教育」だよ。「先生」がいじめに回るご時世だ。何とかせよ!
 大体10年もかけて30%目標なんて、まったくやる気を感じない。
さらに「向精神薬」の問題等には全く触れていないのです。
楽しい夏休みです。夏休み明けの始業日の自殺が一番多いのです。早急な対策が必要です。10年も待てません。

 


「連合は勝手に労働者を代表するな」

2017年07月24日 | 社会・経済

「連合は勝手に労働者を代表するな」労働者が異例のデモ "残業代ゼロ法案"条件付き容認に

朝日新聞デジタル 2017年7月15日

  専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を条件付きで容認する方針に転じた連合への抗議デモが19日夜、東京都千代田区の連合本部前であった。日本最大の労働組合の中央組織として「労働者の代表」を自任してきた連合が、働き手のデモに見舞われる異例の事態だ。

 「一般の働く人々の権利と生活を守るために動くのが労働組合の役割のはず。連合執行部は今回の一方的な賛成表明を撤回し、存在意義を見せてほしい」

 午後7時に始まったデモの冒頭。マイクを手にした男性はこう訴えた。参加者たちはプラカードやのぼりを掲げ、「残業を勝手に売るな」などとコールを繰り返した。参加者は午後9時までに100人ほどに膨れあがった。

 今回のデモのきっかけは、高プロを「残業代ゼロ法案」と批判してきた連合が一転、執行部の一部メンバーの主導で条件付き容認の方針を決めたことだった。連合傘下でない労組の関係者や市民らがツイッターなどで呼びかけたメッセージは「連合は勝手に労働者を代表するな」などのキーワードとともに拡散。参加者の多くはツイッターでデモの開催を知り、仕事帰りに集まったとみられる。

 都内の清掃作業員、藤永大一郎さん(50)は「労働者に囲まれ、デモまでされる労働組合とは一体何なのか。恥だと思ってほしい」。別の会社員男性(53)も「連合の一部の幹部だけが勝手に政府と交渉し、話を進めているように見える。一般の組合員は納得していないのではないか」と首をかしげた。「年収1075万円以上」などが条件となる高プロの適用対象となる働き手はごくわずかだが、デモの呼びかけ人の一人は「年収要件などはすぐに緩和されて対象が広がる」と心配した。

 

   高プロを含む労働基準法改正案は、野党や連合が「残業代ゼロ法案」などと猛反発し、2年以上にわたって一度も審議されずにたなざらしにされていたものだ。加計(かけ)学園問題などで安倍内閣の支持率が下がり、都議選で自民党は大敗。政治情勢が変化する中で、秋の臨時国会で政府・与党が改正案の審議入りを決めれば、批判が再燃する可能性もあった。主要産別出身のある連合幹部は「要請内容はどれも根本的な修正ではない。政権が弱っている中、わざわざ塩を送るようなまねをするなんて、政治的センスを疑う」と突き放す。

 今回の要請は、逢見(おうみ)直人事務局長や村上陽子・総合労働局長ら執行部の一部が主導し、3月末から水面下で政府と交渉を進めてきた。直前まで主要産別の幹部にも根回しをしていなかったことから、組織内には逢見氏らの「独走」への不満がくすぶる。

 逢見氏は連合傘下で最大の産別「UAゼンセン」の出身。事務局採用で、産別の会長まで歴任した後、2015年10月から現職。村上氏は、連合の事務局採用の職員から幹部に昇進してきた。

 逢見氏は事務局長に就任する直前の15年6月、安倍首相と極秘に会談し、批判を浴びたこともある。労働者派遣法や労基法の改正案に連合が反対し、政権との対立が深まるなかでの「密会」だった。当時も、組織内から「政権の揺さぶりに乗った」と厳しい指摘が出ていた。


椎間板ヘルニアは腰痛と無関係

2017年07月23日 | 健康・病気

今日は本のご紹介です。

『人生を変える幸せの腰痛学校』(プレジデント社)

 ある小さな整形外科クリニックの休診日に行われる「慢性腰痛治療プログラム」。そこにたまたま集まった、年齢・性別・職業・家庭環境・腰痛歴が異なる6人の慢性腰痛患者さんたち。「腰痛を治したければ、腰痛を治そうとしたらアカンのですわ」。8週間の認知行動療法プログラムは、大阪弁を話すちょっと不思議な整形外科医の一言からはじまった。物語を読み進めるうちにあなたの脳に刻まれてしまった間違った常識がくつがえされる。世界で初めて腰痛改善を目的に書かれた真実のストーリー。

ほとんどの椎間板ヘルニアは腰痛と無関係

PRESIDENT Online /PRESIDENT BOOKS

   厚生労働省の調査によると、腰痛に苦しむ日本人は、実に人口の4人に1人に当たる2800万人と推定され、年々増加傾向にある。一方、街を歩けば、整形外科や整体に鍼灸院、書店では『○○で腰痛が治る』のような健康書が山ほど目につく。それでも腰痛患者が減らないのはなぜなのか? 腰痛改善のための世界初の小説を著した著者が、その謎と大いなる誤解を解く。短期連載、第1回は「椎間板ヘルニア」のお話です――。

 痛みの場所が、日によって違う?

 むかしむかし、医学がまだ発達していなかったころのお話。
「頭痛の原因は、なんだろう?」
「頭が痛い」のだから、きっと原因は「頭」にあるにちがいない──そう考えたある集落のお医者さんは、「頭が痛い人」の頭をていねいにしらべてみた。
すると! ──なんと「頭の痛い人」全員に「白髪」があることがわかった。

 「原因がわかったぞ! 頭痛の原因は白髪だ!」

さて、この話を聞いてどう思っただろうか? 「まあ、昔だったらあり得るね」と鼻で笑ったそこのあなた、この先を読んでも本当に笑えるだろうか?

   ある国の整形外科医が「腰痛の原因は、なんだろう?」と考えた。「腰が痛い」のだから、きっと原因は「腰」にあるに違いない。そこで、1980年台に普及したMRIという機器を使って、「腰が痛い人」の腰をていねいにしらべてみた。
すると! ──多くの人の腰の「椎間板」がすり減り、その一部分がうしろに飛びだしていた。そして大事な神経を圧迫しているように見えたのだ。

 「見つけた! これが腰痛の原因だ!」

  「椎間板ヘルニア」という名前を、誰もが一度は聞いたことがあるだろう。椎間板とは、背骨の骨と骨の間にあるクッションの役目をしている軟骨のこと。この軟骨の一部が脊髄神経を圧迫して、首や腰が痛くなると言われている。

 ──神経を圧迫?

   いかにも痛そうな話。だが、中には少数ながら疑問に思う医師もいた。なぜなら、「椎間板ヘルニア」患者さんの経過を観察すると、どうやら痛みの程度は、日によって、時間によって変化しているようだ。痛みを訴える場所も、一定ではない。ヘルニアは、右や左に動いたりはしない。もちろん、出たり、引っ込んだりもするはずがない。どう考えてもへんだ……。

痛くない人」の76%がヘルニアだった

   それに、これは誰にでも経験があると思うが、神経が圧迫されたらどうなるのか? たとえば、正座。たとえば、腕まくら。共通するのは、シビレ。そう、神経は圧迫されると「痛くなる」のではなく、「シビレ」るはず。疑問を持った医師はこんな実験を思いついた。

 「よし、腰が痛くない人の検査をしてみよう!」

   そして、腰が痛くないボランティアを集め、MRI検査をした。すると……なんと76%の人に「椎間板ヘルニア」が見つかった! 「腰が痛くない人」の76%。しつこいようだがもう一度言っておく。「痛くない人」の76%にだ。

 ──これってどういうことなのだろう?

  「椎間板ヘルニア」があっても「腰は痛くない」。ということは、「椎間板ヘルニア」と「腰痛」とは関係がない……ということではないだろうか?

   実はこの研究、1995年に開かれた国際腰椎学会で“腰痛界のノーベル賞”とも評される「ボルボ賞」を受賞した権威あるものなのだ。その後も続々と研究は進み、今や「椎間板ヘルニアが腰痛の原因」とされるのは、全体の3%程度にしかすぎないということがわかっている。

「椎間板ヘルニアが原因」は全体の3%程度

 ──えっ? 3%……!? いやいや、私のまわりにもたくさんいますけど、「ヘルニア」で腰が痛いって言っている人。

   そう思う人も多いに違いない。うーん、これは非常に言いにくいのだけれど、整形外科医の中には、2017年の今でも「椎間板ヘルニア」が「腰痛」の原因だと信じている医師が存在するようだ。一般人の私たちでさえ、世界最新の科学的根拠が手に入るこの時代において、なぜそのような医師が存在するのか、私は不思議でしかたがない。「学校で習ったことが正しい」「昔から言われていることが正しい」という思考停止に陥っているからなのか、それとも朝から晩まで患者さんがひっきりなしで、新たな知識を勉強する時間や余裕がないからなのか。石頭、ならぬ、医師頭だからなのか。

   もしかしたら自分が信じていることが「頭痛の原因は白髪」と同じレベルであるとは想像さえしていないのかもしれない。なぜなら、古くて間違った知識を患者さんに説明し、本に書き、中にはテレビでしゃべる医師もいるのだから。患者さんがその医師の言葉を信じてしまうのは無理もない。そうして、本当の原因ではない「ヘルニア」を腰痛の原因だと思い込まされた患者さんが、今日もまた増え続けているというわけ。

“センセイ”である医師から「椎間板ヘルニア」と診断された患者さんは、当然つねに腰に注意をむけ、四六時中腰のことを心配しながら生活することになる。すると、ますます「痛み」に敏感になり、負のスパイラルが永遠に繰り返されることになる。

 「顔色、悪いよ」

   人は、だれか3人からこう言われただけで、具合が悪くなるといわれている。これはノーシーボとよばれる「マイナスの暗示」効果だ。わかりやすくいえば、現代の「呪い」である。

 「腰が悪いという思い込みが、腰痛をつくる」

   日本の腰痛治療の現場では、患者さんだけではなく、医師も治療者も「呪い」にかかっていることが驚くほど多い。私も今から25年前、「椎間板ヘルニア」の「呪い」にかかっていた一人だ。私の「呪い」は強力で、3度の入院と手術をするほどだった。その後、鍼灸師になった私は、患者さんにこう説明する。

 「ほとんどの椎間板ヘルニアは腰痛とは関係がない」

 「腰が悪いという思い込みが、腰痛をつくる」

   「思い込み」を捨てられた患者さんは、その瞬間に「腰痛」から解放される。「腰痛」がなくなるというよりは、「腰痛」にまつわる不安と心配から解放されることで痛みが遠のくというとわかりやすいだろうか。

   子どもの頃に読んだお伽話。呪いにかかったお姫様を救ったのは、王子様のキスだった。「椎間板ヘルニア」の患者にとっての「王子様のキス」とは、科学的根拠といわれる「正しい知識」である。
   25年前、私にキスをしてくれる"王子様"はいなかった。だから、私は「腰痛」から解放されるまでに時間がかかってしまった。

 「呪い」を解く方法は確かに存在する

 でも、安心してほしい。まだまだ少数派ではあるけれど、ようやくこの国でも「王子様のキス」を施してくれる治療者は確実に増えつつある。

 「椎間板ヘルニア」の痛みに苦しんでいる人に真っ先に伝えたいこと。それは、1日でも早く自分が「呪われている」かもしれないという事実に気づくこと。その自覚がなければ、「呪い」を解こうとする発想自体が生まれないと思うから。

   そのことに気づくことさえできれば、あなたは腰痛から覚醒するための大きな一歩を踏み出せたといっても過言ではない。なぜなら、「呪い」を解く方法は確かに存在し、それは高額な治療費もかからず、リスクも伴わず、誰にでもすぐに始められるものだから。

「そうか、悪いのは腰だったんだ」

 「あの、おしりが……おしりの奥のほうが痛いんです」

 私は少し恥じらいながらそう切り出した。

   あれは24歳の時、会社員になって2年目の冬だった。私は、求人広告出版社の営業をしていて、毎日自転車で担当地域を回っていた。私の担当地域には坂道が多く、ときどき足や腰が筋肉痛になる。そのおしりの痛みもただの筋肉痛だと思っていた。しかし、1カ月、2カ月とその痛みは消えず、さすがに私も「これはただの筋肉痛ではないのではないか?」と思いはじめた。

「歩き方がヘンだよ」

   会社の同僚に指摘されたのもこの頃だ。私は会社の昼休みに、会社近くの整形外科クリニックを受診した。

 「椎間板ヘルニアですね」

   その医師の言葉は予想外だった。「椎間板ヘルニア」が腰の病気であることはなんとなく知っていた。だけど、私が痛いのはおしりであって、腰ではない。そう訴えてみたが、それは腰からきているとの一点張りだった。疑問はあったものの、医師がそういうのだから受けいらざるを得なかった。

 ──そうだったのか、悪いのは腰だったんだ。これは大変なことになったぞ……。

   まだインターネットのない時代。私は、書店で腰痛関連の本を立ち読みした。軟骨が出っ張って神経を圧迫しているのなら、治すのは手術しかないではないか。手術なんて絶対にいやだ。とにかくこれ以上悪化させてはならない。その日から、私の頭の中は「腰のこと」で占拠された。
   目が覚めて、最初に思うのは「腰」のこと。朝はいきなり起き上がってはいけない。一度横を向いて、手をついてから起き上がること。それが腰への負担を減らす方法だ。顔を洗う時、モノを拾う時、靴をはく時、姿勢に気をつけ、布団のかたさに気をつけ、腹筋、背筋、腰にいいイス、カバンを持つときは左右均等に、それから、それから……。

   そのうち、おしりだけではなく、本当に腰が痛くなってきた。私はなんとか自分の腰下肢痛を治そうと、よいと勧められる治療法を片っ端から試した。整形外科だけでも数か所、鍼灸、整体、接骨院、気功……。もがけばもがくほど溺れるように、私の腰下肢痛は悪化し、会社は退職、3度の入院、最後には手術もした。でも……治らなかった。やれることは全部やったのに。

私の腰痛を改善させた「大恋愛」

   これだけやって治らないのだから、私の腰下肢痛はもう一生治らないに違いない。最初に痛みを感じてから2年の月日が経ち、私は26歳になっていた。私は布団をかぶって泣くことくらいしかできなかった。しかし、人は一旦ドン底に落ちるとあとは上がるしかないのだ。まだ20代、恋愛も結婚も仕事もしたい。やっぱりいやだ。このまま治らないなんていやだ。こんな風に布団の中で泣いていてはダメだ。まずは外に出よう。なにか行動を起こそう。
   運よく、家の近くに短時間のパートを見つけ、私は働きはじめた。痛みはあった、でも痛いままでも働くことにした。仕事をしていると気がまぎれる。痛みは薄皮をはがすように薄れていった。
   働きはじめて3カ月、私には好きな人ができた。それはここに書くのも恥ずかしくなるほどの大恋愛だった。私の頭の中は、寝ても覚めても彼のことでいっぱいになっていった。それはまるで、腰のことばかり考えていたあの頃のようだ。私の頭の中は、腰一色から彼一色に塗りかえられたのだ

  そうしていつの間にか、私の腰とおしりと足の痛みは消えていた。あれだけなにをしても治らなかった腰痛が、なぜ治ったのか、当時の私にはまったく見当もつかなかった。

  その後、私は鍼灸師になり、心と身体に関する専門知識を得た。その中でも最新の脳科学を学ぶうちに、どうやら、なにをやっても治らなかった私の腰痛が改善したひとつの要因はあの大恋愛だったらしい、ということがわかりはじめた。

 20世紀初頭まで、痛みを認識する場所は「視床」という脳の一部だとされていた。しかしその後の研究により、「痛み」は視床だけではなく、「ペインマトリックス(痛み関連脳領域)」といわれる脳内の様々な場所で認識されていることがわかった。この「痛み関連脳領域」は、痛みに関する「言葉」「イメージ」「記憶」「予想」によっても興奮する。いつも「腰」や「腰痛」のことを気にしているということは、常に「痛み関連脳領域」を興奮させ続けているということでもある。

 モルヒネの6.5倍の鎮痛作用

 「気にする」だけで「痛み」がでるの?──いや、「気にする」だけでは「痛み」はでない。それは、脳内には、過剰な興奮を鎮めるシステムが備わっているからだ。たとえば、「痛み」には、痛みを鎮めてくれる脳幹下行性抑制系というシステムが働いている。ただし、このシステムは、不安・恐怖などの感情やストレスで働きが悪くなってしまう。「腰痛」への不安が強いほど、「腰痛」を気にするほど、痛みは鎮まりにくくなってしまう。

  逆に、「痛み関連脳領域」の活動を低下させる方法もわかっている。それは、報酬系といわれる部分を活性化させること。例えば、モルヒネの6.5倍の鎮痛作用があるとされているβエンドルフィンは、特に脳内の「報酬系」に多く分布する。ということは、「快感」をたくさん感じて報酬系を活性化すれば「痛み」は鎮まる。“心をワクワクさせると身体の痛みは消える”ということは科学的に説明できることなのである。

 「腰痛を治す」ということが「痛みが消える」ということであるならば、私のおすすめは“恋”をすること。なにも相手は人間じゃなくてもいい。ペットでも、植物でも、趣味でも……。あなたにとって考えているだけで心がウキウキ弾むような、好きで好きでたまらないなにか──そんなワクワクで頭の中をいっぱいにしてみてほしい。

 ギックリ腰の予防になぜ読書が効くのか?

イチかバチか、腰を後ろに反らしてみる

 「すっごい痛いし、すっごい勇気いるけど──」

 ある日テレビをつけると、明石家さんまさんがご自身のギックリ腰を、一瞬で治したというお話をされていた。

 「ギックリ腰、治してん。なった瞬間、治してん!」

 本を入れた重い段ボールを持ち上げようとしたとき、「ギクッ!」と腰にきてしまったというさんまさん。次の瞬間、イチかバチか、「わああああー」叫びながら腰を後ろに反らしたらしい。
「ほんだら、あれ……?」
なんと痛みは消えてしまったという。「すごい! さんまさん天才!」。私はテレビの前で思わず叫んだ。だって、それは最新の腰痛研究からすると「正解!」といってもいい方法だから。おそらくそんなことはご存知のないさんまさんが、直観で判断し、行動に移し、自分で解決したところがすごいではないか。

 安静にすれば再発する可能性が高くなる

  ギックリ腰になったことのある人ならわかると思う。アレが、どれほど痛くて、どれほど動けないか。腰を後ろに反らすなんて、とんでもない。そんなことができるギックリ腰など、もともとたいしたことがなかったのではないか? そう思った人がいたとしても無理はない。

 この25年、世界では腰痛に関する研究が飛躍的に進んでいる。長い間、腰痛といえば、骨や関節、椎間板や靭帯、筋肉など、腰の部分的な「損傷」だと思われてきた。ところがさまざまな研究により、「慢性の腰痛」は、「腰の問題」というよりは、「脳」そして、その「脳」と「心理社会的要因」との関連が強いということがわかりはじめている。

 「急性腰痛」、つまりギックリ腰に関しては、「安静にすれば痛みが長引き、再発する可能性が高くなる」ことがわかっている。

 2011年に行われた調査によると、ギックリ腰の発症後、3カ月以上の痛みが続いたのは、安静にしていた人では3割、できるだけ動いた人ではゼロ。2回以上再発した人は、安静にしていた人で約5割、できるだけ動いた人は2割程度という結果が報告されている。(出典:Matsudaira K et, al . Ind Health 49.2011)

 「腰痛には安静」ではなく、「安静にしてはいけない」のだ。

 「ドキドキ」から「ワクワク」へ

  鍼灸師になって17年、たくさんの腰痛患者さんをみてきた。私のつたない臨床経験からも、急性の腰痛は筋肉を緩めることであっさり治ることを何度も経験している。呼吸もできないほどの激痛が、その場で改善することだってある。

  激痛なのに、簡単に治る……この治し方、アレに似ている。そう、「足がツったとき」とおんなじではないか。ふくらはぎがぎゅーっとツったとき、足首をもって反対側に曲げれば一瞬で痛みは消える。ではもし、ギックリ腰も筋肉の一過性の過緊張だとしたら……。

──腰を後ろに反らせば治るのでは?

  実は私もずっとそう考えていた。だから、次にギックリ腰になったときには腰を反らしてみようとひそかに思っていたのだ。
 ギックリ腰になった時に腰を反らしてみる。こんなことで本当にあの激痛がおさまるのかどうか、今度ギックリ腰になったら試してみよう──もしあなたが、そんな気持ちになったとしたらもう大丈夫だ。

 「ギックリ腰になったら嫌だなあ」という気持ちから、「ちょっと楽しみだなあ」という気持ちへ。「ドキドキ」から「ワクワク」へ。それは、ギックリ腰への「思いや考え」が変わったということだ。

 治したければ、「腰痛」について考えなければいい

 世界の腰痛診療ガイドラインの勧告によると、現時点でもっとも信頼度の高い腰痛の治療法は「認知行動療法」と「運動」だ。

 ──運動ならまだわかるが、「認知」がどう関係するのか?

 ここで、よく考えてみよう。

 ──まず、「痛み」はどこで感じているのか? 

  そう、それは「脳」だ。どれだけの大けがをしたとしても、神経がその信号を脳に届けなければ「痛み」は発生しない。脳の「痛み関連領域」の興奮の強さが痛みの強さだとすれば、脳が興奮すればするほど痛みが強いといえる。

  脳は「考えたり」「イメージしたり」「予想したり」することでも興奮する。だから、「腰痛」を治したければ、「腰痛」について考えなければいいのだ。

 そうはいっても、私たちは恐いと思うことには警戒する。たとえば、隣に空き巣が入ったことを知ると、戸締りに対して神経質になり、よりいっそう警戒してしまうのは当然のことだろう。

 

同じように、腰痛についての心配や不安、恐怖心がある限り、朝から晩まで腰痛のことを警戒してしまうことになり、痛み関連脳領域を興奮させ続けてしまう。また、「脳」には過剰な興奮を鎮めるシステムが備わっているのだが、このブレーキの役目をはたす細胞は、不安や恐怖で委縮してしまうこともわかっている。

 本を読むだけで腰痛が改善する

 ──では、警戒心をもたないためにはどうすればいいのか?

 それは難しいことではない。「恐い」と思う代わりに、「安心」できればいいだけの話。

 しかし、「安心」するためには、正しい知識が必要となる。そのための最適な方法が「読書療法」といわれている。これは実際にアメリカ内科学会とアメリカ疼痛学会の最新の腰痛診療ガイドラインでも強く推奨されている。

 ──なぜ、本を読むだけで腰痛が改善するのか?

  それは、本を読むことで最新の正しい知識を得ることができれば、腰痛への恐怖心が消え、結果的に安心を得ることにつながるからだ。

  腰痛は恐くない。たとえものすごく痛くても、ほとんどの場合、腰ではそうたいしたことは起きていない。そもそも、急性の腰痛は放っておけば自然治癒するもの──そんな正しい知識があるかないかの差が、その後の経過に大きな影響を及ぼしているのだ。

 腰痛は「安全」だと考え方を変える

  本気で腰痛とさよならしたい人は、まず科学的根拠に基づいて書かれた本を読むことをおすすめする。腰痛が恐くなくなることこそが、腰痛改善への近道だからだ。

  今日現在、腰痛に対して、なにをすればいいかはもうわかっている。腰痛は「安全」だと考え方を変え、「勇気」を持って身体を動かすこと。これが現時点で、世界最高の腰痛改善法であり、もはやそこに腰の「治療」は必要ない。

  ギックリ腰を一瞬で治してしまったさんまさんの話をテレビで観ていたほとんどの人は、おもわず「ホンマでっか!?」とツッコミをいれたに違いない。しかし、最新の腰痛研究について学んだ人なら、「ホンマですよ!」とおもわず身を乗り出したはずである。

 伊藤かよこ(いとう・かよこ)

1967年大阪府出身。東京都在住。鍼灸師。会社員時代に「椎間板ヘルニアによる腰下肢痛」の診断を受け、その後2年にわたり3度の入院と手術を経験。2000年はり師・きゅう師免許取得後、神奈川県で鍼灸カウンセリング治療院を開業。腰痛をはじめさまざまな心身面での不調に悩む多くの患者さんと対話を重ねる。2016年11月、世界初の腰痛改善小説『人生を変える幸せの腰痛学校』を上梓。現在は心と身体に関する講演や勉強会などを中心に活動。


多様性の認識は未来社会を創る。

2017年07月22日 | 社会・経済

「ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み」

 

   ダイヤモンド書籍オンライン 2017年7月22日

  7度の崖っぷちに立ちながらも、人を大切にしながら利益を上げる改革で、全国から講演依頼が絶えない日本レーザー社長の初の経営書! 「黒字化は社員のモチベーションが10割!」と断言する著者が、どうしたら社員のモチベーションが高まり、維持され続けるのか?

    日本レーザーの女性たちが、出産後も会社を辞めず、めざましい活躍を続けることができる理由は、社員の事情に合わせて「個別管理」をしていることです。

 人の力を活用するには、社員の事情に合わせた個別管理が必要です。

 日本レーザーでは、雇用契約も個別対応です。

●パート社員(1日4時間までの勤務)
●嘱託契約社員(1日6~8時間までの勤務)
●正社員(1日8時間勤務)

 など多くの雇用形態があります。

「週3日は在宅勤務で7時間働き、週2日は出社して4時間働く」という特殊勤務形態の社員もいます。成果を出してもらえば、働き方が他者と違ってもかまわないのです。

 正社員は、育児や介護、病気療養時に「短時間勤務制度」を利用することができます。

 勤務時間を「6時間」まで短縮できる制度ですが、この制度を希望する女性社員はそれほど多くありません。

 なぜなら、日本レーザーは、もともと残業が少ない会社であり、残業代は15分単位で支払っていますが、月平均残業時間は「10時間未満」をメドにしているからです。

 個別管理をしている理由は、

「定められた時間内できちんと成果を出してもらえれば、始業時間や就業時間が他者と異なってもかまわない」 と考えているからです。

 就業時間が人によって異なっていても、管理上は問題ありません。

 子どものお迎えの関係で、就業時間を17時15分(通常は17時30分)に前倒しすることを認め、その代わり、15分早く出勤することで対応したこともありました。

 しかし、異なる時間に出勤、退社する社員がいることを全社員が知っていないとトラブルになりかねないため、社員に繰り返し周知しています。

派遣社員から正社員も

 ライフスタイルの変化に合わせて、雇用形態を変えることもできます。

 パート社員として勤務していた女性が、子育てがひと段落したあとで、嘱託契約社員へ切り替えるケースもめずらしくありません。

 前に紹介した野中美由紀は、銀行でSEとして働くも、出産を機に退職。その後、日本レーザーでパート採用しました。

 当初は1日4時間勤務でしたが、子どもの手がかからなくなったため、1日8時間の嘱託雇用契約に変わっています。

 TOEICを500点取れれば正社員になれますが、これは本人の選択です。

 しかし、役職は総務課長・社長秘書です。

 また、経理課長の長野麻由美は、派遣社員から正社員になっています。

 「勤務時間や休暇の融通がきく」という理由で派遣社員を9年間続けていましたが、10年目を境に正社員・課長格に雇用変更しています。

 子育てを理由に一度離職すると、再就職するにしても、時間的な制約で、正社員での復職が難しい場合があります。

 しかし、パート社員で入社して、その後、契約社員や正社員へ移行する道をつくっておけば、ライフスタイルに合わせたキャリア形成が可能になるのです。

1業務に2人を配置して23年連続黒字になった秘密

「ダブルアサインメント」と「マルチタスク」を導入

 当社では、「ダブルアサインメント」と「マルチタスク」を導入して、「子育てと仕事の両立」を支援しています。

●ダブルアサインメント/2人担当制。取引先1社に対して担当者を2人配置する

マルチタスク/ひとりが複数業務や取引先を担当する

 「ダブルアサインメント」は、ひとつの業務を2人で担当する仕組みで、特定の人しかできない「属人的な仕事」をなくす試みです。

 出産や急病で担当のどちらかが不在になっても、残っているもうひとりが対応できるので、取引先にも同僚にも迷惑をかけません。

 ダブルアサインメントの導入は、2007年からです。

 そのきっかけは、当時の営業職、方(故人)の夫の海外転勤です。
 方は、中国出身です。

 中国の大学を卒業後、日本へ留学。日本の国立大大学院に入学し、修士号を取得。

 日本での就職活動中に日本レーザーの面接を受ける機会を得て(レーザー業界誌を発行する会社の社長の紹介)、入社しました。

 最初は営業アシスタントとして社内業務の流れを学び、その後、営業職へ転身します。

 仕事にも積極的で、順調にキャリアを積んでいきましたが、結婚を機に、ひとつの決断を迫られることになりました。

結婚してほどなく、夫に、1年間の上海勤務の辞令が出たのです。「退社しなければならない」と悩んでいた方に、私は退社しなくてすむよう海外での在宅勤務を認めました。

 メールや電話で東京本社や取引先などに連絡をする仕事です(1年後、東京本社に戻ってきました)。

 ところが、方が上海にいる間は、彼女が担当していたドイツのメーカーの製品がなかなか受注できませんでした。

 方が専属で担当しており、彼女以外に、十分なフォローができなかったことが原因でした。

「この人でなければ、この仕事はわからない」という属人的な状態になっていたのです。

 ひとり体制では、社員に何かあったときに、取引先や仕事を失いかねない。そう思った私は、ダブルアサインメントを導入することにしました。

 現在、営業の場合は、男性と女性がパートナーを組み、どちらかが休んでも業務が進むようにしています。

 経理や人事などの専門職は、ダブルアサインメントが難しい部門ですが、男性上司との共有をしています。

 管理部長の別府雅道は、私がボストンの米国支配人をしていたときの部下で駐在員の人事管理と経理の決算業務を行う管理部門担当でした。

 それだけに、2人の女性の課長が不在になっても業務は滞らないのです。

 ダブルアサインメントは、女性活躍の条件だけではなく、会社としてのリスク対策でも有効です。

 業務部・販売促進グループ課長の橋本和世は、ダブルアサインメントや女性社員の活躍の裏側には、「女性社員に対する男性社員の公平性がある」と感じています。

 子育て中の女性とダブルアサインメントをする場合、男性側に負担がかかることがあります。 それでも売上は2人でシェアするわけですから、普通なら男性側から不満が出ても仕方がありません。

 けれど、当社の男性社員には、抵抗感がなく、不満や不公平感を口にすることがありません。

 日本レーザーの社員が他人を妬まないのは、自己効力感が育っているからかもしれません。

 社員の多くは、他人と比較すること自体に興味がないようです。

 彼らにとって大事なのは、自分のやりたいことをやり、自分のやるべきことをきちんと遂行することで、それをやるだけの自信も持っている。

 だから、他人の足を引っ張る必要がないのです。

 

「マルチタスク」は社員のためにある

 1社に担当を2人置くと、人件費が2倍になります。
得られる利益が同じなら、人が増えた分、赤字になります。

 そうならないように、ダブルアサインメントと同時に導入したのが、「マルチタスク」です。ひとりの社員が、複数の仕事(取引先)を受け持ちます。

 営業職で最も多くマルチタスク化している社員は、「5社」程度担当しています。

 複数のメーカーの製品やアプリケーション、市場についての知識を持つことは簡単ではありません。

 たとえば、当社の扱うドイツ製品と米国製品では、技術も市場もまったく異なります。品目が違えば、それぞれゼロからの勉強が必要です。

 この仕組みには、社員本人の成長意欲や「他人のために働く」という献身性が大切なので、その姿勢を評価項目の中に組み入れています。

 マルチタスク化は、新しい分野の勉強をしなければならないため、社員にとっては苦労をともないます。

 しかし、結果的に自分の売上実績が伸びれば、賞与に反映されます。

 また、1社しか担当していないと、その1社が倒産したり、当社との取引を切られたら、自分の仕事がなくなってしまいます。

 つまり、マルチタスクは、社員のジョブセキュリティ(自分の仕事の確保)にもなっているわけです。

著者からのメッセージ

 大変ありがたいことに、発売早々に第8刷が決まり、海外からも翻訳オファーをいただきました。

 日本レーザーは、第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」を皮切りに、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」「『おもてなし経営企業選』50社」「がんばる中小企業・小規模事業者300社」、厚生労働省の「キャリア支援企業表彰2015」厚生労働大臣表彰、東京商工会議所の第10回「勇気ある経営大賞」、第3回「ホワイト企業大賞」など、たくさんの賞をいただきました。

ですが、組織も、私自身も、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。まさに山あり谷あり。紆余曲折……。

 専門商社というビジネスゆえ、どんなに自分たちが努力しても円高円安という為替変動に日々翻弄されますし、海外有力メーカーからある日突然、一方的な取引停止通告がきたりします。

 また、右腕の部下が独立し、今まで築いた商権を一度に持ち去られてしまうことも多々ありました。

 そのほかにも、私の人生は、「どうして自分ばかりこんな目に遭うのか」という逆風の連続でした。

 崖っぷちに立たされて、立ちすくんだ回数は、一度や二度ではすみません。 「7度」です。

<1度目の崖っぷち>

 28歳で労組執行委員長に推され、29~30歳で社員1000人のリストラに直面

<2度目の崖っぷち>

 28歳のとき、生後3日の双子が病死

<3度目の崖っぷち>

 米国法人リストラ中に「二度の胃潰瘍」と「大腸ガン」に

<4度目の崖っぷち>

 帰国後、本社の国内営業担当として幹部のリストラに直面

<5度目の崖っぷち>

 瀕死の子会社「日本レーザー」への出向・再建指令

<6度目の崖っぷち>

 社長就任直後に右腕の常務が部下と独立! 人材と商権を同時喪失

<7度目の崖っぷち>

 親会社から独立する際、銀行が「6億円」の個人保証を要求

「業績がよくなれば、社員を大切にする経営ができる」と考えている社長もいますが、私は、「順番が逆」だと思います。

会社を再建するのも、発展させるのも、新規事業に取り組むのも、需要を拡大するのも、すべて、社員のやる気、モチベーションが10割です。

社員の中に「会社に大切にされている」という実感があれば、会社が苦境に直面しても、当事者意識を持ち、一丸となって乗り越えることができます。

「人を大切にした経営を実践し、社員のモチベーション」を上げることができれば、どんな会社でも、必ず再建、成長できると確信しています。

近藤 宣之(Nobuyuki Kondo

株式会社日本レーザー代表取締役社長。1944年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、日本電子株式会社入社。28歳のとき異例の若さで労働組合執行委員長に推され11年務める。そこで1000名のリストラに直面した後、取締役米国法人支配人、取締役国内営業担当などを歴任。1994年、その手腕が評価され、債務超過に陥り、主力銀行からも見放された子会社の株式会社日本レーザー代表取締役社長に就任。人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。社員数55名、年商約40億円の会社ながら、女性管理職が3割。2007年、社員のモチベーションをさらに高める狙いから、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」(Management and Employee Buyout)を実施。親会社から完全独立する。現役社長でありながら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールなどでも講師を務め、年間50回ほど講演。その笑顔を絶やさない人柄と、質問に対する真摯な姿勢が口コミを呼び、全国から講演依頼が絶えない。東京商工会議所1号議員。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」を皮切りに、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」「『おもてなし経営企業選』50社」「がんばる中小企業・小規模事業者300社」、厚生労働省の「キャリア支援企業表彰2015」厚生労働大臣表彰、東京商工会議所の第10回「勇気ある経営大賞」、第3回「ホワイト企業大賞」など受賞多数。

【日本レーザーHP】 http://www.japanlaser.co.jp/ 【夢と志の経営】 http://info.japanlaser.co.jp/


まず民進党を潰さないと!

2017年07月21日 | 社会・経済

室井佑月の「嗚呼、仰ってますが。」

本当なら…山口氏の準強姦疑惑国会追及を止めた野党議員

    日刊ゲンダイ 2017年7月20日

 「山口敬之氏の準強姦疑惑の国会追及を止めたのは、中村格氏(事件当時警視庁の刑事部長)と親しい、民進党代表代行の安住淳氏」(ジャーナリスト・藤本順一)

  藤本さんのこの話は、7月5日放送のネット報道番組「ニューズオプエド」の中で出た。

  これって、ほんとなら大大スクープだ。なのに、ぜんぜん後追いがないのはなぜ?

  前出の発言の後、藤本さんはこうも言った。「文句をいう民進党議員は『公認しないぞ』と安住が脅した。岡田氏にそのことを言ったが、『ああいう性格だから……』で済まされた」

  はぁ? ああいう性格って、なんじゃそれ?

  安倍首相と仲が良い山口敬之さんの準強姦事件が不自然な感じで逮捕寸前で止められ、その逮捕を止めたのは当時の刑事部長の中村格という人で、その彼と仲が良い民進党の安住淳議員が、この件の国会追及を止めたって?

民進党は安倍自民の暴走を止めたい最大野党ではなかったんかい?

  これじゃ、安倍自民と変わらない。

  これから衆議院選もあるし、本気の野党共闘を願っているあたしは、騙されたくない。ほんとのことが知りたいよ。

  そもそも、山口敬之氏の一件は、安倍政権の権力の私物化を示すいい材料だろうに、なんで国会で追及されないの?

   とにかく、被害者の詩織さんが勇気を持って顔出しで会見に臨んだことを、あたしは忘れない。彼女の勇気を、むげにしてはならない。不条理な世を変える、一歩にしなければ。

  それにしても、政治家ってなに? 世の中の弱者を救うため、政治家になったという高尚な人は、稀か? 自分とその仲良しの人間の、利益追従のために生きてるみたいな人ばっかりで厭になる。
 そんな人たちの愉快な生活を支えるため、なんであたしが税金を払わなきゃいけないの? すっごく脱力する話だわい。

 

 

 

 

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第6回ゲスト 小林節(後編)

小林節が「安倍政権を倒すためには、まず民進党を潰さないと!」と衝撃発言! はたして室井佑月の反応は…

          リテラ 2017.07.15

  憲法学者・小林節氏を迎えてお送りしている室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」。前編では、安倍首相の改憲案の危険性、さらには「安倍政治は王制の再現」という鋭い分析まで飛び出した。

 後編ではいよいよ安倍政権をどう倒すかというところに話題の焦点がうつったのだが、小林氏から「安倍政権を倒すためには、まず民進党を潰さないと…」と驚きの発言が! その真意とは……。

●日本国憲法と安倍政権が復活を狙う明治憲法の最大の違いは、個人主義か全体主義か

室井 いまの日本は安倍さんによる貴族制、王制だという先生の話はすごく納得がいきました。だから、あんな横暴が平気でできるし、国民の自由や人権をさらに制限しようとする。ようするに、俺たち特権階級のやることにさからうな、という話ですよね。憲法だって、最初に先生がおっしゃったように、本来、権力者を縛るためにある憲法を、国民から自由を剥奪するものに変えようとしているわけだし。

小林 彼らの発想は、「大日本帝国は良かった」なんです。私は、安倍さんのお祖父さんの岸信介さんが生きているとき、一度会っているんだけど、まさに「明治憲法が正しい」という考えの持ち主でした。岸さんは、大日本帝国のスーパーエリートで東大を出て内務省に入った後、満州国設立の際に総務部司長に就任。日本の中国進出の中心的役割を担った。太平洋戦争が始まると、商工大臣として戦争の物資調達を担った。ところが、岸さんが敗戦で何を思ったかというと、すべての責任者は東條英機である、と。自分は正しかったが、軍部のせいで負けた、というもの。そして、自分はアメリカと裏取引をして生き延び、戦後、公職追放解除されると、自主憲法期成議員同盟を作って、総理をやめた途端にその会長になった。その主張は一貫して「明治憲法は正しい」です。日本国憲法と明治憲法の決定的な違いは、個人主義か全体主義かです。今の憲法は、「この世の中で一番尊いのは、個性の違う私たちひとりひとりなんですよ」ということ。たとえば、女性が3人いると、「全員天皇陛下好みにならなきゃいかんよ」というのが全体主義。北朝鮮の「美人」軍団がいい例です。殿様好みの容姿になれ。これが全体主義。ところが個人主義は女性が3人いたら「3種類の美しさがある」ということになるんです。

室井 そのたとえは、女性にはなかなかぐっときますね(笑)。でも、安倍政権の考える改憲が全体主義だという怖さがあまり国民には伝わっていない。私なんかでも“権利と義務はセットだから”なんて言われると、一瞬そうなのかなって思っちゃいます。でも、それはおかしいってことですか。

小林 そう、おかしいんです。たとえば、僕が室井さんにお金を貸したとしますよね。あなたは債務者で、私は債権者でしょう。この場合、権利は僕にしかなくて、義務は室井さんにしかない。僕にとって“権利と義務はセット”なんかじゃないでしょう。憲法もそれと同じで、もともと国民の権利と国家の義務を規定するものなんだから、セットになるはずがない。でも、安倍さんや櫻井よしこさんみたいな安倍さん周りの改憲論者はそういう基本的なことがわかってないんです。

室井 そういえば、先生は櫻井よしこさんを憲法問題でやりこめちゃったことがあるんですよね。

櫻井よしこら改憲勢力が語る“権利と義務はセット”論のデタラメ

 小林 櫻井さんがデタラメばかり言うからです。以前日本青年会議所のパネルディスカッションで一緒になった際、櫻井さんはこんなことを言い出したんです。「憲法は“権利”が19箇所、“自由”が6箇所も出てくるのに“責任”は3つしかない」と。つまり義務と権利のバランスが悪いから日本は個人主義的になってしまった。だから義務を増やすべきだと言うんです。たとえば「国を愛する義務」や「国防の義務」「国旗に敬礼する義務」などを義務化すべきだと。それに対しもちろん反論しました。法律には総論と各論があり、総論はすべての各論に適用される。憲法12条と13条に総論として「公共の福祉」があり、各条が認める権利に制限を加えている。しかし納税、勤労、教育は国家存続に不可欠なので、国の責任として例外的に3つの義務を課しているのだと。数だけで権利と義務のバランスを語るのはナンセンスです。私は彼女にこうも言いました。「憲法というのは、国家権力から国民の権利や命を守るためのものなんだ」と。私たちの国では国民が王様だから、国を支える3つの義務以上を課すと、憲法じゃなくなるんです。

室井 なるほど。国民の権利は最大限に、義務は最低限に、というのが憲法のありようなんですね。櫻井さんは先生の話にどう反応したんですか?

小林 顔を真っ青にして、目も合わせないで、私を無視して帰りましたよ。しかも、その後も櫻井さんは、間違った憲法論をいろんなところで話している。

私の弟子で、安倍さんに愛されて止まない長島昭久(衆議院議員)くんの政治資金パーティーで、櫻井さんが挨拶していたんですが、以前と同じ3つの義務について話しているんです。「みなさん、憲法はおかしいじゃないですか。権利と義務はともなわなきゃいけませんよね」と。僕は、長島くんに恥をかかせちゃいけないと思ったし、そこでは質問も反論もしないでおこうと黙って聞いていた。すると、演説が終わったとたん、彼女、階段も使わずに演壇からポーンと飛び降りて、一番前の真ん中の僕が座っている前まで来て、「先生、お久しぶり! 私、次があるから失礼します」と言って、パっといなくなったんです。僕に何かを言わせる機会を与えず、逃げたんですよ。昨年も『週刊朝日』で僕と櫻井さんの対談企画があったんですけど、前日に編集長の元に電話があって、「小林さんの書いたものを色々と読んだけど、とうていご一緒できませんわ」と断ってきたそうです。

室井 敵前逃亡か。でも、そういう無知で、戦前の日本を復活させたいと思っている人たちが安倍さんの最大のブレーンで、日本会議の改憲運動を担っているわけだから、彼らの改憲が、自衛隊の追加条項や教育の無償化で終わるわけがないですよね。最近、言わなくなっていますけど、直前になると、緊急事態条項を憲法に盛り込むとか言いだしそうな気がしてるんです。

小林 緊急事態条項については、ふざけんな、ですね。緊急事態条項は災害時に政府に大幅な権限を与えて、人権保障を停止するというものですが、その必要がないことは、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大地震の体験で、はっきりと結論が出ています。消防も不要だと言っていますし、日弁連で報告書も出ています。本末転倒です。震災時に問題なのはまったく逆で、国に権限が集中しているから、中央集権だから、地方も、役人というのは法律と予算の範囲内でしか動けない、ということなんです。いちいち国にお伺いをたてているうちに、どんどん被害が広がっていく。だから、災害対策を本当に真面目に考えるなら、災害対策基本法等を改正して、国の権限を制限して、それぞれの基礎自治体、市区町村に全権を与えることなんです。自治体が首長に全権を集中するスイッチを作っておくことと、国は何かを求められたら人的物的バックアップをする。そうした法律の整備で済むのです。

室井 熊本大地震のときも、余震が怖くて屋外に避難していたのに、現場を知らない政府が、避難者を屋内に退避させろと言って大ひんしゅくを買ったり、県が支援要請しても最初は政府はそれを拒否したり。ちぐはぐで、馬鹿みたいな命令をしていました。緊急時だからこそ、政府という大きなくくりでなく、自治体に権限を集め、国はそれを支援する。それでいいということですよね。

小林 しかも、緊急事態条項は、災害が起きた際に、総理大臣が行政権に加えて、法律を内閣の権限で変えられる、つまり立法権を持つというものです。そうなれば、次には、その法律を執行する裁判所にも影響をするから司法権も持つことになる。それから国会の持っている財政権も持ってしまう。そして一般国民や地方自治体はその命令に従う。まさに独裁体制です。

育児も介護も家族だけに押し付ける家族条項は、福祉国家の否定

 室井 あの条項を普通に読んだら「災害が起こったら、お前らの貯金没収な! ひゃっほう!」って言われている気がしました。大地震や戦争など有事があったら、いろいろな権利や人権まで制限されたり、貯金だけでなく家とかも取られちゃうんですよね? 

小林 僕はそこまで考えていなかったけど、言われてみればそうですね。そういう発想が大事ですね。

室井 あと気になるのは、家族条項です。“家族は助け合え”なんて国に言われたくないし、それぞれ事情があるもの。育児放棄やDV、性的虐待をする親だっているでしょ。それなのに親が歳とったからって子どもが養えって、ありえない。介護も家族にだけ押し付けて、自己責任だと言ってるってことですよね。国が国民に金を使いたくないんだな。

小林 福祉国家の否定ですね。それと、やっぱりさっき言ったように、彼らの目的は「大日本帝國憲法の復活」だから、戦前のような家族に戻したいんでしょう。

室井 狂ってますよ。でも、共謀罪のやり方を見ていると、このままいったら、本当に改憲ってことになってしまう。そんなおかしな安倍政権を倒すには、先生、どうしたらいいんでしょう?

 小林 現在の政権下で起こっている根本的な問題は、今の選挙制度のせいで、たかだか4割の得票率で7割の議席を取っているということです。でも、これは、逆に、こちらも4割の得票率で、政権を倒す可能性があるということ。絶対に超えられない壁ではない。ただ、そのためには、野党がまとまらなければならない。そして、野党がまとまるためにはまず、民進党を潰さなきゃいけない。潰れたらどこかに寄っていくしかなくなりますから、政策での再編も可能です。

室井 私、選挙の度に毎回、民進党とかイヤだけど、鼻つまんで投票してますよ。でもだんだん、もう無理じゃね? と思ってきて。最近は分裂させた方がいいんじゃないかと。まさか先生も民進党を潰したほうがいいと思っているとは……。

小林 前回の参議院選挙で、民進党を潰さないと野党をまとめることはできないと痛感しましたね。

室井 そういえば、先生、前の参院選で出馬したんですよね。出馬の前には民進党や共産党に野党統一候補の擁立を働きかけていたのに、結局、民進党に野党の比例代表の統一名簿を作ることを拒否されて。

小林 そう。こっちは野党をまとめようとしているのに、それぞれの党が私に「自分のところの候補者になれ」と言ってきた。それは違うでしょう。まとめようとしたのだから、まとまってくれよ、と。でも無理でした。しかも選挙中には全国で野党に罵倒されましたが、選挙が終わると、今度は全野党から「ごめんなさい。よろしく」と言われて。態度がコロッと変わった。

室井 そんなの、絶対に許しちゃダメですよ。

小林 本当に身の毛もよだつ汚わしい世界でした。ですから、選挙には二度と関わりません。ただ、憲法学者ですから、一番知識を持っているし論争もしてきた。憲法問題について聞かれれば語ります。そして室井さんの言うことは正しいんです。どこかから、風穴を開けなきゃいけない。野党もこのままいくとジリ貧だという自覚もあって。地殻変動は起きているんです。

室井 本当ですか? 野党共闘は口だけなんじゃないかって思っちゃいます。

小林 だから、内心で一番傲慢な民進党を潰すんです。選挙にチャレンジして落選した僕が言うのもなんですが、その疑いは持っていてください。それで、彼らを罵倒しながら、安倍政権を倒す方法を探る。

民進党は、“市民に寄り添う派”と“寄り添わない派”にとっとと分かれろ!

 室井 そう考えても今のこのふわふわ浮ついた感じで、そのときだけ風の流れで、「この政策は反対にしてみよう」「こういうふうに動いてみよう」という民進党をバラけさせる必要がありますね。この連載でも何度か言ってるんですが、都知事選のときの小池百合子のように、民進党の中で市民に寄り添う派とそうでない派に別れ、大げんかする演出をしろと。そのほうが、テレビで扱ってもらえるじゃないですか。

小林 それ、いいと思います。

室井 本当ですか! 最初は内輪の揉め事でも、テレビの人って民進党にあたりがキツイから、揉めてるとなると絶対に撮りにくるはずなんですよ。

小林 民進党はまとまるフリをするからね。自民党系の民進党Aと、社会党系の民進党Bにとっとと分かれるべきです。自民党系さえでていけば、反安倍軍国主義政権という点では一致できる。

室井 でも、早く別れてくれないと、来年いざ選挙の時期になったら、また前回の都知事選のようにグダグダになる。だからどんどん批判して追い詰めましょう(笑)。

小林 室井さん、話をしていてすごいなと思う。使っている言葉も間違っていないし。室井さんと話して、「もっと教養があればいいのに」なんて一度も感じなかったですよ。ちゃんと勉強してる。勉強した人間とそうでない人の差は、安倍さんなんか見ているとよくわかるんです。

室井 ありがとうございます! そんなこと初めて言われました。わたし高卒だけど、でも大人になってから勉強するのは好きになって。じゃあ、褒められたついでに、ひとつお願いしていいですか? 先生の教え子や、お弟子さんとかって、英語が出来る人が多いでしょ? そういう人を紹介してくれませんか。というのも、最近、国内で声を上げても無理じゃないかと思い始めて。それを報道する人もいないですし。この前、日本の共謀罪に対して国連の特別報告者が懸念を示したじゃないですか。だから、国連や、海外メディアに「日本はこんなひどい状態だ」ってことを、ガンガン英語にして手紙を書いて送る。それって、ひとつの手だと思うんです。しかも、先生のような著名人や高名な学者が代表で送る。それを海外メディアから逆輸入して、指摘、報道してもらう。そうなれば日本のマスコミは無視できない気がします。

小林 外国に発信するのは、ひとつの方法としてありだと思います。なぜかというと、日本の権力側も非権力側も、外圧に弱い。たとえば「ジャパン・ハンドラーズ」という日本を食い物にしているアメリカ人に、与党も野党もさからえない。その点、私はアメリカで仕事をしてきたから、「それは間違っている」と、別のチャンネルでアプローチできる。

室井 今、国連は影響力が低下したなんて言われていますが、報道の自由に関して国連報告者のデービッド・ケイさんが調査するため来日した際、政府の妨害にもかかわらずフリーのジャーナリストなど言論の関係者が協力しました。それで古賀茂明さんへの圧力や、高市早苗総務相の「電波を止める」発言が海外でもクローズアップされて。海外から日本のメディアにプレッシャーがかった。そういうことをどんどん増やしていく、もうそれしか方法はないんじゃないかと思っているんです。でも、あたし、英語がまったくできないから。グーグル翻訳ソフトで日本語から英語に翻訳しても意味不明だろうし(笑)。そういう活動をしてくれそうなお弟子さん、いないですか? 暇こいてて、それでいて英語ベラベラみたいな。

小林 確かに私の教え子は、企業、政界、官界、メディアにも沢山います。でも私が政治批判をしたり、日米問題や沖縄問題をメディアで発言すると、「こういうこと言わないでくださいよ」と電話で苦言を呈してくる官僚もいる。悪魔の手先のようなやつもいっぱいいるんです。あっ、でも、いるいる! 誤解されて会社辞めて暇こいている元教え子。英語の達人ですよ。今度ぜひ紹介しましょう。

室井 やった、英語の達人! この作戦でいっしょに安倍王政を倒しましょう!

(了)

 

小林 節 憲法学者、慶應義塾大学名誉教授、弁護士、1949年生まれ。元ハーバード大学研究員、元北京大学招聘教授であり、テレビ論客としても知られる。2016年には安倍政権の安全保障関連法廃止や言論の自由確保、憲法改正阻止などを掲げ「国民怒りの声」から出馬するも落選。その後も「小林節が斬る!」(日刊ゲンダイ)連載などで安倍首相を批判し続ける。『小林節の憲法改正試案』(宝島新書)、『白熱講義! 集団的自衛権』(ベスト新書)、『憲法改正の覚悟はあるか――主権者のための「日本国憲法」改正特別講座』(ベストセラーズ)など著書多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。


春菊

2017年07月20日 | 野菜・花・植物

 これは大葉の春菊。主に生食用です。数株植えておけば、次から次と脇芽が育ちます。春に菊に似た花を咲かせるという事で春菊と呼ばれるようになったそうです。
関西では一般的に菊菜とも呼ばれています。
 旬は、11~3月頃です。北海道でもそろそろ終わりが近づいています。 

 栄養成分は、カロテン、ビタミンC、カルシウム、カリウム、鉄分、食物繊維を含みます。

 特徴は、カルシウムが豊富で、ほうれん草の約2.5倍あります。

 ●シュンギクは緑黄色野菜で非常にたくさんのカロテンを含みます。

  β-タカロテンは抗発ガン作用や免疫賦活作用で知られていますが、その他にも体内でビタミンAに変換され、髪の健康維持や、視力維持、粘膜や皮膚の健康維持、そして、喉や肺など呼吸器系統を守る働きがあるといわれています。

 カロテンとビタミンCは、抗酸化物質ですので、風邪やがんの予防、美肌をつくる効果があります。

●シュンギクには骨を丈夫にするミネラルが豊富

  カルシウムをはじめ、マグネシウム、リン、鉄分などのミネラルが豊富どれも骨を生成する上で欠かせない成分です。骨を丈夫にし、精神を安定させます。また、鉄分が貧血を予防します健康を維持します。

 ●高血圧の予防に効果

  カリウムはナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、高血圧に効果があります。また、長時間の運動による筋肉の痙攣などを防ぐ働きもあります。

 ●シュンギクの独特の香り

 独特の香りはピネン、ぺリルアルデヒドなどで、自律神経に作用し、胃腸の働きを高めます。 痰を切り咳を鎮める効果を持っているそうです。


くらし下流化ニッポンの処方箋-「非正規率47%」どうする母子123万世帯の未来

2017年07月19日 | 社会・経済

くらし下流化ニッポンの処方箋

 「非正規率47%」どうする母子123万世帯の未来

        藤田孝典 / NPO法人ほっとプラス代表理事

             毎日新聞経済プレミア 2017年7月19日

再び、女性の貧困(3)

  日本でシングルマザーの貧困率が高い背景には、育児の制約から長時間労働を伴う正社員の仕事に就きにくく、賃金水準が低いパート・アルバイトなどの非正規雇用への就業が多いこと▽出産に伴って退職した後の職歴空白が、離婚・死別後の再就職を難しくしていること--などの理由があります。

 子供がいて就労収入は1カ月約15万円

  厚生労働省が5年に1度実施している「全国ひとり親世帯等調査」(旧名は全国母子世帯等調査)の最新2011年版によると、全国の母子世帯数は推計で123万8000世帯。このうち仕事に就いている母親は80.6%で、就業形態は正社員39.4%▽パート・アルバイト47.4%▽派遣社員4.7%--でした。

厚労省の2011年全国母子世帯等調査から

 前回調査時(06年)と比べて正社員は3.1ポイント減り、パート・アルバイトは3.8ポイント増えています。年間世帯総収入は約291万円、母親自身の就労収入(仕事で得た収入)はわずか181万円、1カ月あたり15万円です。母子3人世帯なら生活保護基準すれすれです。

  離婚後、男性が養育費を払っていないケースも数多くあり、母子世帯の家計を苦しくしています。日本社会では男性の方が経済的に圧倒的に有利なので、月数千円でも数万円でも、母子世帯への養育費支払いを義務化すべきです。私たちも弁護士を間に立てて、養育費支払いを求めることがあります。

  このように、生活保護を受給してもおかしくないのに申請せず、低い賃金の仕事を掛け持ちまでしてやりくりしている母子世帯が少なくありません。生活保護申請の壁が高く、本人の生活保護制度への忌避感も強いからです。

  私たちは、一時的に生活保護を活用して生活再建を図ることにまったく問題はないと考えています。「精いっぱいやってきたんだから、ここで生活保護を使っていろいろ仕切り直しましょう」と説得するのですが、そこで母親が生活保護申請を怖がる理由が二つあります。

 生活保護をためらわせる行政と、忌避する母親

  一つは、「生活保護受給がばれたら子供がいじめられるのでは?」という心配です。小田原のジャンパー事件では、生活保護関連部署の職員が、威圧的な文字を印刷したジャンパーを着て、受給者の自宅を訪問していました。示威的な訪問で近所に受給がばれるかも、という恐怖は、申請をためらわせる大きな理由です。

   二つ目は、就労指導の名を借りた「余計なひと言」です。本人が一生懸命がんばってきて、限界を感じ、申請しているのに、窓口職員が「いや、それじゃダメでしょ。働きなさい」とか、「収入を上げる道は本当にそれしかなかったの?」と気軽に聞いてしまうパターンです。スキルが低い役所職員が心折れる言葉を発し、本人を傷つけるのです。

  別居はしているものの、離婚が成立していない女性に必要以上に厳しい福祉事務所もあります。

   DV(家庭内暴力)から夜逃げ同然で逃れ、強く離婚を望んでいるのに、新生活のため生活保護を申請しても「夫に扶養してもらえないの?」と無神経に聞く職員がいます。役所は離婚しないかぎり、同一世帯の親族間扶養義務を持ち出します。

  さらに、不正受給対策名目で、男性が家庭に出入りしている形跡があると、その男性に保護してもらうことを勧めたりします。こうして働くこともままならず、生活保護にも頼れず、精神的に病む人が生まれます。

  仕事と暮らしを継続するために、きちんと生活保護を活用しないと、結果的に社会保障に頼る人を増やします。

 「貧困か生活保護か」の二者択一ではない世界を

  困窮する母子世帯を社会保障が救い切れない現実がある一方で、近年は民間による地域共助の動きが少しずつ広がっています。各地に広がる子ども食堂や無料の学習支援塾です。

   2015年に困窮者自立支援制度が始まって以降、母子世帯とその子供への支援が広がり、母親にとっては相談先が増えました。それまでは、役所に相談するか、自分1人で悩むかどちらかしかありませんでした。インフォーマルな支援ですが、このような取り組みにかすかな希望を感じています。母子世帯は低い収入でカラカラに渇いていますから、こうしたサービスなどの現物支給は必要です。

 シングルマザーを対象にしたシェアハウスも各地にできています。

  神奈川県には、ビル3階の住居フロアを活用したシェアハウスがあります。6畳の居室8部屋と約30畳の居間兼食堂、風呂、トイレ、台所、ルーフバルコニーを設けた、母子世帯専用のシェアハウスです。入居の際には面接があります。

  母親同士で保育園のお迎えや家事を助け合い、時にチャイルドケアワーカーに手伝ってもらって仕事と育児の両立を目指します。母親に肉体的、精神的余裕が生まれ、資格取得のための勉強時間も確保できるなどの効果があったそうです。

  大切なのは、このような取り組みが民間やNPO任せだけではいけない、という考え方でしょう。民間がアイデアを示し、そこに自治体のお金が流れる仕組みが必要です。貧困か生活保護かの二者択一的世界でなく、それぞれのニーズに合わせた民間の知恵と、公的制度による共助の仕組みが、さらに広がってほしいと思います。

  藤田孝典さんの連載「下流化ニッポンの処方箋」をまとめた「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(藤田孝典著、毎日新聞出版、972円)が好評発売中です。ニッポンの貧困化、格差拡大の現状を細かな事例とデータで検証しています。


今日も25℃に届かず。昨日に比べるといい方。夕方になると足元からヒンヤリとした空気。

ミニトマト1段目。

幻のトマトと言われているルネッサンストマト。

コールラビ。

ズッキーニ。なりだしたらどんどん大きくなる。


キューリ&寒いです。

2017年07月18日 | 野菜・花・植物

キュウリに含まれる栄養素

  キュウリは95%以上が水分です。みずみずしい食感を楽しむ野菜といっても良いでしょう。キュウリに含まれる特徴的な栄養素を挙げてみましょう。

・カリウム:身体の水分調整をするので、むくみ予防や改善に効果的。

・ビタミンA:ベータカロテンという形で存在します。皮膚や粘膜の健康を保つのに働きます。

・ククルビタシン:唾液や胃液の分泌を促進し、食欲増進に働きます。

・ピラジン:キュウリ独特の青臭さの成分。血液をきれいにする抗酸化物質で、生活習慣病の予防に働きます。

・ホスホリパーゼ:脂肪を分解するのに働く酵素。従来型より分解力が強い新型の酵素と言われています。

このように、身体にいい働きをする成分が含まれているのです。しかし、残念なことにその量は多くありません。そのため、「ほかの野菜と比較して」栄養のない野菜と言われてしまっているのでしょう。

キュウリを食べる時の注意点

  キュウリに含まれているアスコルビナーゼという成分には、ビタミンCを破壊する酵素が含まれています。つまり、ビタミンCを含んだ野菜や果物と一緒に摂っても、その効果を得られないのです。ただし、その酵素は酸や熱に弱いので、酢やレモンなどと一緒に使い、加熱して食べるのがオススメです。

栄養素をしっかり摂るコツは「ほかの野菜と一緒に摂る」

  先にも述べたように、キュウリに含まれる栄養素は限られているため、他の野菜と一緒に摂り栄養素を補いましょう。その際には、酢やレモンを使ったドレッシングを使って野菜サラダにすると、他の野菜のビタミンCを壊すことなく摂ることが出来ます。また、あまり馴染みがないようですが、中華料理では炒め物や煮込みなど加熱して使われることも多くあります。

 味噌をつけてそのまま頂くのはもちろん、サラダ、漬物、煮物、炒め物など様々な料理で使われるキュウリ。その手軽さは老若男女問わず人気です。「栄養がない」と言わず、他の野菜と一緒に「名脇役」として活用してください。

<執筆者プロフィール>

山本ともよ(やまもと・ともよ)

管理栄養士、サプリメントアドバイザー、食生活アドバイザー
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中


 これからの熱い時期、冷やしたキューリの食感は格別です。そうめんや冷や麦、冷やし中華などの具には欠かせません。またサラダにもいいものです。
 また、今なすの収穫中です。湯がいたり炒めてから冷やして食べる手もあります。
暑いときに熱いマーボなすもまたいいかな。この時ピーマンなどの野菜といっしょに大きくなりすぎたキューリをぶつ切りにして入れてみてください。なすとは正反対のシャキシャキとした食感がとてもいいです。

 天候不順が続きます。週間天気を見ても晴れマークがほとんどありません。最低気温も今朝は15℃でした。短時間ですがストーブつけました。


生活保護-大学生に給付金&ビーツ

2017年07月17日 | 社会・経済

生活保護

大学生に給付金 「貧困の連鎖」対策 
                                    厚労省検討

       毎日新聞2017年7月16日 東京朝刊

  厚生労働省は、生活保護受給世帯から大学に進学した子どもに対する給付金創設の検討を始めた。併せて、子どもが大学生になると家賃相当の保護費が減額される仕組みも廃止する。経済的負担が進学を妨げ、親から子への貧困の連鎖を招いていると指摘されてきた。来年度からの実施に向け、年末の予算編成段階で制度設計し、使途や金額などを決定する。【熊谷豪】

  生活保護を受けながら大学に通うことは認められていない。大学に進学すると、子どもは同居していても別世帯として扱う「世帯分離」が行われ、親の保護費が減額される。東京23区内の母子3人家族の場合、生活費に相当する「生活扶助」と母子家庭への加算が計約4万4000円、家賃に当たる「住宅扶助」が約6000円それぞれカットされ、月額約22万円になる。

  一方、生活保護世帯から独立した大学生は国民健康保険料を払わなければならず、新生活のためのお金もかかる。だが、アルバイト代など高校生の時の蓄えは受験料や入学金など使途が制限され、「卒業後への備え」は認められていない。

   このため、進学意欲があっても経済的負担を考えて進学を諦めるケースがある。保護世帯の大学進学率は19%と全世帯の52%を大きく下回る。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」によると、大卒・大学院卒と高卒の生涯賃金の差は男性が約6000万円、女性は約7000万円に上り、進学が将来の生活にも影響を与える可能性がある。

  支援団体などからは世帯分離の廃止を求める声が出ているが、厚労省は、保護を受けない貧困層との公平性などを考慮し世帯分離は継続する考えだ。ただし、同居を続ける場合、住宅扶助のカットをやめ、進学前と同額支給する。その上で、大学生が新生活を始めるための給付金を検討している。使途については学費は奨学金で賄うこととし、生活にかかる費用を想定している。

  政府は6月に閣議決定した経済財政の基本方針「骨太の方針」で、保護世帯の子どもの大学進学支援に財源を確保することを明記している。


ミニトマト、収穫は始まっているのですがまだ少なく、出荷できる量にありませんので、もうしばらくお待ちください。栽培面積が半分になってしまったので、その影響もあります。

「ビーツ」が密かなブーム

  ビーツという野菜をご存知でしょうか?健康意識の高い女性の間では大人気の食材です。真っ赤な色素を持つ大きな「赤かぶ」のような野菜で、氷いちごの赤色色素にも使われています。ロシア料理のボルシチに使われているこのビーツ、いま奇跡の野菜として世界中が注目しているのです。

 ■ ビーツ?ビート?同じ野菜じゃないの?

  ビーツと似た名前の野菜に「ビート」がありますが、実は同じ「ヒユ科フダンソウ属」の野菜。日本では砂糖大根とも呼ばれ、その名の通り砂糖の材料になっています。砂糖に使われる甘さを持つものをビート、料理に使われるものをビーツと区別がつけられています。ビーツは砂糖大根のような甘さはなく、さっぱりとした味わいが特徴です。

 ■ 別名「食べる輸血」ってすごい!

   ビーツはオランダやニュージーランドなどが代表的な産地で、日本では長野県や茨城県、北海道でも生産されています。見た目は「赤かぶ」に似ていますが、どちらかというとほうれん草に近い種類です。とても硬いので生ではなく加熱して食べます。このビーツは「食べる輸血」と言われるほど吸収されやすい鉄分やミネラル成分を豊富に含んでいるのです。他にも葉酸やビオチンが含まれており、なかでも近年特に注目されているのが「NO(エヌオー)」という一酸化窒素。NOは血液の流れを良くし、血管自体をしなやかに、拡張させる効果があるため、脳卒中や心臓病の原因ともなる血栓を予防する働きがあります。もちろん女性の気になるむくみにも効果的。さらに、血流量を増やして体内の酸素が効率よく使われる手助けをするので、筋肉増強効果や疲労回復効果もあり。

 ■ ビーツはまさに奇跡の野菜

  先に挙げた効能以外にも、ビタミンや食物繊維が豊富なこと、ベタインという成分には肝機能を高める効果、赤い色素のベタシアニンには強い抗酸化作用でがん予防にも効果があるといわれることから「奇跡の野菜」と呼ばれます。主な食べ方はボルシチのように煮る、茹でてからサラダにする、酢漬けにしたり酵素ジュースにも。日本人には赤い色素ベタシアニンを分解する酵素を持っていない人が多いため、ビーツを食べた後に尿や便が赤くなることもあるそうですが、健康には何も影響はないとのこと。世界が注目する野菜ビーツ。オーガニック系のお店ではだいたい取り扱いがありますが、一般的なスーパーでも見かけるようになっています。是非試してみてくださいね。

 (著:nanapiユーザー・カラダにキク「サプリ」 編集:nanapi編集部)


抗菌薬・殺菌剤

2017年07月16日 | 健康・病気

 妊娠中も使える抗菌薬」の前提が崩れたら

    毎日新聞「医療プレミア」2017年7月16日
       谷口恭 / 太融寺町谷口医院院長

 抗菌薬の過剰使用を考える【16】

   当連載はこれまで15回に及ぶ「抗菌薬の過剰使用を考える」シリーズなどで、抗菌薬の「使いすぎ」に警鐘を鳴らしてきました。その重大性に気付いてくれる人が一人でも増えてくれればうれしいのですが、実際はどうなのでしょう。最近開催されたある学会で、私は薬剤耐性菌に関する講演を行いました。その時、余談として「今日はフロモックス3日分でお願いします」とか「家にあったクラリスを2錠飲んできたから残りを処方してほしい」と平気で言う患者さんがいる、という話をすると、会場から苦笑いが……(フロモックスもクラリスも抗菌薬の商品名です)。多くの医師が同じような体験をしているのです。

  抗菌薬は自分の判断で飲んだり止めたりしてはいけない、抗菌薬が家にあること自体がおかしい、抗菌薬は患者さんが求めるものではない、ネットでの購入はNG……といったことをこれまで繰り返し述べてきました。それは、あまりにも気軽に抗菌薬を求める人が多いからです。

 普段は平気でも「妊娠中の抗菌薬使用は不安」

  しかし、妊娠中の女性の行動はまるで異なります。妊娠中に抗菌薬を気軽に飲む人はまずいません。それどころか「前の病院で妊娠の可能性があると言ったんだけど、この抗生剤(患者さんは「抗菌薬」ではなく「抗生剤」「抗生物質」と呼ぶことが多い)が処方されました。飲んでもいいですか」と、わざわざ私の診療所を受診したり、メールを送ってきたりして尋ねる人がいます。

   前医が処方したものを私が撤回するわけにはいきませんし、今のところ妊婦さんにあきらかな不適切処方が行われたと思われるケースには遭遇していませんから、そのような相談には「前医の指示に従ってください」と答えています。「難敵耐性菌を制圧した英国の“王道”政策」の回で紹介したように、「毎回風邪にクラビット」という安易に抗菌薬を処方する医師がいるのも事実なのですが、妊婦さんが相手の場合はそのような医師も慎重になるのかもしれません。

 基本は感染症にかからないこと

  妊娠中の抗菌薬使用については、どのように考えればいいのでしょうか。もちろん、最も大切なのは「(細菌)感染症に罹患(りかん)しない」ということです。妊娠中に高熱が出るようなことがあれば、胎児に影響が及ぶ可能性もあります。ですから、細菌感染に限らず感染症全般への十分な対策が必要です。まずうがい、手洗いは確実に行うべきです。私は「奥さん(や娘さん)が妊娠している(かもしれない)」という患者さんを診察した時、場合によっては「今日は家に帰らずに実家やホテルに泊まった方がいいのでは?」と助言することもあります。

  しかし風邪を含む飛沫(ひまつ)感染や空気感染をする感染症に対しては、うがい、手洗いだけで十分とは言えません。一般に、保育園、幼稚園のような幼児が集まる場所は「感染症の貯蔵庫」のようなものです。妊娠した時、終日自宅で過ごすことができればいいのですが、上の子供の保育園や幼稚園の送り迎えをしなければならないことがあります。この時に感染症をもらうのです。あるいは、上の子供が保育園などで感染し、その子供から自宅でお母さんが感染するケースもよく見られます。

  ですから、感染予防のことだけを考えるなら「妊娠すれば上の子と隔離」が最善となるのですが、これは非現実的です。ですが、子供から感染するリスクが高いことは知っておかねばなりません。その知識があると、妊娠前に、お母さんは少なくとも麻疹(はしか)、風疹、水痘(水ぼうそう)、おたふく風邪の抗体があるかどうかを調べなければならない、そして抗体価が低ければワクチンを接種しなければならない、ということがおのずから理解できます。「理解してから接種する--『ワクチン』の本当の意味と効果」シリーズで紹介してきたように、現在の日本では妊婦さんが風疹にかかると赤ちゃんに先天性障害が起きる可能性があることは周知されていますが、妊娠中に麻疹、水痘、おたくふく風邪に感染、罹患したときのリスクは、軽視されているように私には思えてなりません。

 それでもかかってしまったら…

  話題を、妊娠中の抗菌薬使用の是非に戻します。うがい、手洗いをしっかりする、カンピロバクターなどの食中毒に注意する、けがを防ぐ、といった注意をしていても、細菌感染を完全に防ぐことは困難です。では、運悪く妊娠中に細菌感染を起こした場合はどうすればいいのでしょうか。

  まず、大前提としてウイルス感染の可能性を排除すべきです。太融寺町谷口医院の例でいえば、季節にもよりますが、風邪症状で受診する人の8~9割はウイルス感染です。また、細菌感染であったとしても必ず抗菌薬が必要というわけではありません。グラム染色での炎症所見が軽度で、全身状態が良好であれば抗菌薬を処方しないケースがあります。食中毒の場合も、たとえカンピロバクターなどの細菌が検出されても軽症であれば抗菌薬は不要です。けが(外傷)の場合は、初期にしっかりと洗浄(水道水でOK)していれば抗菌薬を使わなくて済むことが多々あります。

  とは言っても、重症化している(しそうな)場合は抗菌薬を用いなければなりません。そんなときは「妊娠中でも使える抗菌薬」を選択することになります。それはペニシリン系、セフェム系、マクロライド系の3種の抗菌薬です。クラビットという商品名で有名なニューキノロン系や、商品名・ミノマイシンなどのテトラサイクリン系は、生まれてくる赤ちゃんに奇形のリスクが生じることなどから原則妊娠中の使用は「禁忌」です。他の種類のものも「禁忌」もしくは「禁忌に近い」と考えなければなりません。しかし、このような説明を聞くと「なーんだ。妊娠していても使える抗菌薬が3種類もあるなら、そんなに心配しなくてもいいんじゃないの」と思った人もいるでしょう。ですが、この「妊娠中も使える」という前提が崩れたとすればどうでしょう。実は、最近、そのような内容の研究が報告されたのです。

「安全」と言われた抗菌剤でも流産リスクが上昇?

  その研究は、医学誌「Canadian Medical Association Journal」2017年5月1日号(オンライン版)に掲載されました(注)。カナダ・ケベック州在住で1998年から2009年に自然流産した15~45歳の妊婦8702人を対象に調べたところ、マクロライド系抗菌薬のアジスロマイシン(先発品の商品名は「ジスロマック」)を妊娠中に服用した人の流産のリスクは服用していない人の1.65倍、クラリスロマイシン(同じく「クラリス」「クラリシッド」)なら2.35倍にもなる、という結果が出たというのです。

  これらのマクロライド系抗菌薬は、日本の使用量が他国より多いことが指摘されています。そして実際、妊娠中にもよく使われています。「マクロライド系が流産のリスクになるなら、ペニシリン系かセフェム系を使えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、問題はペニシリンやセフェムがまったく効かない感染症に対処せねばならないケースです。特に、それが多くの妊婦さんが感染する感染症だった場合、どうすればいいのでしょうか。次回、考えてみたいと思います。

 

 

制汗デオドラント商品 危険な殺菌成分使うマンダム『ギャツビー』・ロート製薬 『リフレア』―― お勧めは『レセナ』『デオナチュレ』

 MyNewsJapan Tinyreportsimg_j20170701062454

 薬用化粧品や消臭剤に使用される殺菌成分。欧米では「トリクロサン」など使用が禁止される成分が増えるなか、代替成分として注目を浴びる「塩化ベンザルコニウム」の有害性を示す新しい研究が、この6月に発表された。皮膚や呼吸からの吸収で胎児の脳や脊髄の欠損が150倍も増える、というショッキングな内容だ。そこで市販の制汗デオドラント商品の成分を比較したところ、メーカーによって、こうした有害成分使用の有無に大きな差があることが判明した。海外で使用禁止されたトリクロサンをいまだに使い続けている最悪有害商品が、マンダムの『ギャツビー』。ロート製薬 『リフレア』をはじめ、代替成分として危険性の指摘される塩化ベンザルコニウムを使用する商品も多い。そんな中、そもそも殺菌成分を使わず制汗成分だけを使用するユニリーバ・ジャパン『レセナ』はお勧めできる。女性用と男性用のメーカー別主要商品について3段階評価を一覧にまとめたので、夏に向け購入の参考にされたい。(07/01 2017)

 制汗デオドラント商品に使われる殺菌剤(殺菌効果のある成分)は、直接ワキや足の指などに塗りこみ、皮膚の上で永く留まることで作用する。 薬用石けんなど、すぐ洗い流すものとは違い、殺菌剤が皮膚から浸透するリスクは高くなる。

  現在、制汗商品など薬用化粧品に使われる殺菌剤には、海外で禁止されているもの、禁止はされていないが動物実験で有害性が指摘されているもの、有害性が不明なもの、に分けられる。

 制汗商品に使用される主な殺菌剤を、この3種類に分けると、以下のようになる。

 海外で使用禁止となっているもの:トリクロサン
有害性を示すデータがあるもの:塩化ベンザルコニウム
有害性が不明なもの:イソプロピルメチルフェノール・βグリチルレチン酸

  殺菌剤などそもそも要らない、という立場の人から見たら、有害性が不明だから安全、とは素直には認めにくいだろう。 しかし、「制汗デオドラントは必須だが、より安全性の高いものを選びたい」という人にとっては、避けるべき順序からいえば、上から下の順番になる。

  今回、国内で市販されている大手メーカーの制汗剤商品の殺菌剤成分を調べたところ、メーカーによって対応が分かれていることが判明した。

 ◇欧米禁止殺菌成分トリクロサンを使うGATSBY

 トリクロサンは、薬用化粧品などに使用される殺菌剤の中で、長年有害性が指摘され続けてきた。皮膚から体内へ吸収されることがわかっており、一度体内に入ると分解されにくく蓄積する。

  アメリカやスウェーデンの調査では、75%の人の尿から検出、妊婦の血液や母乳からも検出されている。

  また毒性としては、体内のホルモンをかく乱するいわゆる環境ホルモン作用が問題にされている。妊娠中に胎児の発達の過程で、男性ホルモン・女性ホルモンがかく乱されることでの生殖毒性や、甲状腺ホルモンがかく乱されることでの神経発達毒性が懸念されている。

  海外の大手トイレタリーメーカーのP&G、ジョンソンアンドジョンソン、AVONなどは2014年の段階から自社商品への使用中止を発表した。

  日本でもMyNewsJapanの記事などを受け、花王をはじめ大企業は密かに薬用石けんの成分をトリクロサンからイソプロピルメチルフェノールへと変更するなど、代替化を進めてきた。

  そうした中で、行政側の規制措置として、EUでは2015年6月に衛生用品へのトリクロサンの使用を禁止する決定を下し、アメリカでは2016年9月に、家庭用抗菌石けんやボディウォッシュに限定ではあるがトリクロサンをはじめとする19の殺菌成分の使用禁止を決定した。

  アメリカの決定を受け、日本では.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。

なのです。