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「無添加」表示の規制強化 消費者庁、違反時には罰則 企業戸惑い、一部の消費者団体は反発

2022年03月31日 | 生活

 アップする前にレビューを見るのだが、昨日から表示されない。しかもレビューを閉じるとせっかく出来上がった記事が白紙になってしまう。仕方がない、レビューを確認せずに投稿する。

「東京新聞」2022年3月31日

 消費者庁は30日、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを策定し、商品包装に「無添加」や「不使用」と記載するルールを厳格化した。「何が不使用か不明確」などの理由で規制が強化され、違反時の罰則もあり、無添加などの表示は大幅に減る見通し。食品会社は「商品のセールスポイントが失われる」と困惑し、一部の消費者団体からも「商品を選ぶ際の大切な判断基準が失われる」と見直しを求める声が上がっている。(市川千晴、我那覇圭)

◆消費者庁、「無添加は健康で安全」の独り歩き懸念

 食品表示法は、パンやソーセージなど加工食品に保存料や着色料、香料といった添加物を使った場合、商品包装に明記するよう義務付けている。これまでは、加工時に添加物を使わなかった場合に「無添加」や「○○不使用」と書くかどうかのガイドラインはなく、虚偽でない限り、食品会社の判断に委ねられていた。

 だが、消費者庁は「無添加は健康で安全」というイメージが独り歩きすると、添加物が入った食品の安全性が逆に疑われかねないと問題視。原材料に添加物が使われていても、加工時に添加物を使わず「無添加」とした場合など「添加物を一切使用していない」と誤認する懸念もあるとして、規制に乗り出した。

 ガイドラインには食品表示法の禁止事項に該当する恐れがある表示を記載。「何を添加していないのか不明確な単なる『無添加』の表示」や「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」「無添加や不使用の文字などが過度に強調されている表示」など10類型を列挙した。

◆表示の抑制「消費者の選ぶ情報が著しく限定される」

 だが、「過度に」の範囲は明確ではなく、行政側の恣意しい的な解釈で罰金などの罰則が科される可能性もある。消費者庁は約2年間の経過期間を設けているが、別の表示へ切り替えを余儀なくされる食品会社には戸惑いが広がる。

 添加物を使わない辛子めんたいこを製造、販売している「海千」(福岡県宗像市)の担当者は「無添加を求める消費者の声があるからこそ、企業努力を重ねて現在の商品を作り上げた。新たなガイドラインには困惑している」と漏らす。

 商品包装に不使用の添加物をいくつも並べて「無添加」の表示を残す選択肢もあり得るが「他社の一般的なめんたいこは7〜8種類の添加物を使っているが、それらを一つ一つ表記するのは現実的ではない」と説明。「消費者にとっても『無添加』とストレートに書いてある方が分かりやすいはずだ」と訴える。

 パルシステム生活協同組合連合会の高橋宏通常務執行役員は「ガイドラインは行きすぎた表示の抑制で、消費者が商品を選ぶための情報が著しく限定される」と批判。消費者庁に修正を働き掛けていく考えを示した。


考え方が逆なのです。
わたしも無添加のミニトマトジュースを作っている。使っていないものを表示する義務はなかろうと思うのだが。
「添加物が入った食品の安全性が逆に疑われかねない」?
これが本音。大いに疑うべきでしょう。

日本は世界でも突出した「添加物」大国です。しかも他国では使用を禁止しているもの、制限しているものまで含まれています。


その「善意」は薬か毒か―有働アナがウクライナ中継に「やめましょう」、戦場記者らの評価は?

2022年03月30日 | 事件

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

日テレ newszero 公式ウェブサイトより

 ロシア軍の侵攻が続き、厳しい情勢が続くウクライナ。日本からも大手メディアやフリーランスの記者達が現地入りし取材を行っている。そんな中、日本テレビ系列のニュース番組で、ウクライナ首都キーウ(キエフ)からのジャーナリストの中継をスタジオのアナウンサーがやめさせるという一幕があった。さらに、同アナウンサーの言動について、SNS上での投稿を紹介する形で「称賛の声」と評価するネット記事も配信された。ただ、この件については、紛争地の現場で活動してきた記者や人道支援関係者からは、疑問の声も上がっている。

◯中継中断に「称賛の声」?

 3月21日放送の日テレ系列のニュース番組『news zero』では、キーウと中継をつなぎ、現地の取材中のジャーナリスト、佐藤和孝氏がリポートを行っていた。ところが、空襲警報が鳴り響く中での中継に、スタジオの有働由美子アナウンサーが「すぐに避難、逃げてください」と佐藤氏に呼びかけた。佐藤氏は「大丈夫です」と伝え、しばらく中継を続けたが、有働アナは「佐藤さん、中継終わりましょう」「まずは身の安全、なるべく安全なところへ移動しましょう」として、中継を切り上げた。この件について、ツイッター上では、「良い判断」「何より人命が大事」等と評価する意見が複数投稿され、ハフポスト日本版も、"有働由美子アナの「中継やめましょう!」に称賛の声。空襲警報が鳴る中、伝えるジャーナリストに呼びかける。あの対応に中継担当の経験者が思うこと"と題した記事で肯定的に評した。

 

◯紛争地での活動の経験者らの意見は?

 ただ、筆者の知る、紛争地での活動経験の豊富な記者や人道支援関係者らは、皆、首をかしげていた。「現地での判断より、遠く離れた東京のスタジオの方が正確な判断ができるのか」「遠隔からの現場軽視の指示はかえってリスクにつながることもある」「そもそも、中継の前に現地と番組側であらかじめ状況の確認はしていたはずではないか」等の意見だ。筆者も、イラク戦争やレバノン戦争、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの侵攻などを取材してきたが、情勢についての判断は現場に任せるべきだと思う。災害時での現地の一般市民への電話取材等ならいざしらず、佐藤氏は紛争地取材の大ベテランである。キーウ市内でも、軍事拠点や政府関連施設等から離れた場所など、比較的リスクの低い地域から中継を行っていたはずだ。また、空爆や砲撃の音、目視等の五感情報の他、現地の協力者や同業者等から常に最新の情報を得て危機管理を行っているはずである。さらには、長年の経験や研ぎ澄まされた神経による「勘」を信じることも重要だ。これらは、紛争地での活動を行っている者であれば、当たり前にやっていることで、まして、佐藤氏のような大ベテランの判断が、現場から遠く離れた東京のスタジオのそれより的確でないとは、筆者としても考えづらいのだ

筆者も紛争地取材を行ってきた。画像は2018年、パレスチナ自治区ガザにて。
筆者も紛争地取材を行ってきた。画像は2018年、パレスチナ自治区ガザにて。

◯日本と海外 メディアの姿勢に大きな差

 今回の件について、有働アナも良かれと思ってしたことなのだろうが、彼女に限らず、日本のメディアの「配慮」、あるいは事なかれ主義が、日本の紛争地報道のレベルを押し下げてしまっている面もある。先日、とあるイベントで筆者は、海外に拠点をおく研究者から「今回のウクライナ戦争の報道でジャーナリストがバッシングされていないか?」との質問を受けた。過去、中東各国やアフガニスタン、ミャンマー等での取材の最中、トラブルに巻き込まれた日本人記者達が、日本政府関係者達やネットユーザー、そしてメディアやその視聴者・読者からも激しいバッシングにさらされることは度々あったため、筆者に質問した研究者も、今回も似たようなことが起きているのかも、と聞いてきたのだ。

 今のところ、ウクライナでは、まだ日本人記者達は大きなトラブルに遭っておらず、日本では、現地で取材する記者達を叩くような雰囲気は無いように見える。だが、仮に何かトラブルが起きれば、日本の空気は一変するだろう。だから、大手メディアの記者達は極端にその行動を制限される。キーウなど最も取材すべき地域ではなく、そうした現場から遠く離れた西側の国境近くの都市リヴィウに留め置かれ、記者達の多くは「暇している」のだと聞く(もっとも、リヴィウでも軍関連施設など、時々空爆はされているが)。それは、結局のところ、報道というものを、いかに重視しているか否かの違いなのだ。例えば、警察官や消防士は危険も伴う仕事であるが、誰もこれらの仕事をすべきではないとは言わない。それが必要な仕事だからだ。だが、日本の記者達には「紛争地取材を行うべきか」という、海外メディアからすれば奇異な問いが常に突きつけられ、実際に手足を縛られる

 一方、BBCやCNNといった海外メディアの記者達は、ウクライナ軍に従軍するなどして最前線での取材を行っており、その質、量ともに日本のメディアとは比べものにならない*。それは当然だろう。報道というものに対する使命感や覚悟、社会的評価が、そもそも日本と異なるのである。

 

 

◯スタジオからの「配慮」より必要なもの

 日本の紛争地報道の場合、最前線に立つのはフリーランスの記者であるが、特に近年は多くの場合、十分なサポートもなく、孤立無援での取材を余儀なくされている。通訳やフィクサー、運転手、護衛等*の人件費等で1日あたり10万円以上かかることも珍しくない取材費も自腹、現地での猥雑な取材許可申請やそれに伴う交渉、必要な書類の提出も、全て一人でやらなくてはならず、万が一、取材中に負傷したり死亡したりしても「自己責任」。紛争地取材に特化したチーム体制を持つBBC等の海外メディアと比べると、日本の紛争地報道は、なんともブラックな環境での自己犠牲に依存している。もっとも、海外でもフリーランスの記者はいて、彼らも十分なサポート体制の中で取材しているとは言えないが、少なくともトラブルに巻き込まれたとしても、国家の敵のごとくバッシングされることはないし、記者達の取材費を支援するクラウドファンディングもある。

*筆者の場合、「記者が武器を持ち込むことは好ましくない」との信条から、護衛は極力伴わず、可能な限り護衛以外の安全策を講じることにしている。

 紛争地取材を行ってきた者としては、スタジオからの「配慮」、或いは(言い方が悪いかもしれないが)スタンドプレー的な「指示」などはいらない。そんなことよりも、取材経費の負担や通信機器等の機材等の貸し出し、取材許可申請での協力、万が一の際の家族等へのサポートといった支援の方がよほど必要なのである。それが高望みだとしても、せめてリスクと使命とのせめぎ合いの中で行う現場取材の価値を正当に評価してもらいたい。日本では、紛争地取材を行うフリーランスの記者は、「自ら危険なところに飛び込むバカ」として扱われがちだ。今回の佐藤氏の中継を有働アナが切り上げさせたことを「称賛」する傾向も、日本社会の中で、紛争地取材を重ねてきた記者の経験や実績が十分に評価されてないことと無関係ではなく、有働アナの判断への「称賛」は状況によってはフリーランスの記者の現場取材へのバッシングに変化するのかもしれない―筆者にはそう感じられてならない。日本のメディアには、この種のテーマを扱う際には、「ネット世論」だけではなく、実際に紛争地での活動経験のある人にも取材し、その意見を反映してもらいたいところである。


 私はTVを見ないもので、このようなことがあったことも知りませんでした。一般的な暴風の中で報道するようなことと、戦場で報道すること、「プロ」と「アマ」との違いほどにあるように思います。


理不尽な校則を前に「私たちの声を聞いて」高校生ら文科省に意見書 もの言わぬ大人にならないために

2022年03月29日 | 教育・学校

「東京新聞」2022年3月28日

 

 「理不尽な校則や制服制度が多い。私たちの意見を聞いてください」。1月7日、文部科学省の記者会見室。一般社団法人「Voice Up Japan」の高校生メンバーで、1年の日下部くさかべ美雪さん(16)=東京都、沢田初音さん(16)=長野県、3年の奈良岡千夏さん(18)=札幌市=の3人が記者会見に臨んだ。

記者会見する「Voice Up Japan高校生支部」の(左から)奈良岡千夏さん、沢田初音さん、日下部美雪さん
 学校生活を送るために児童生徒が守るべきだとされる校則だが、「自分たちが過ごす学校のルールを大人が一方的に決めるのではなく、自分たちの意見を反映させたい」。生徒同士、あるいは教員と生徒が活発に意見交換できる場などを求めて声を上げた。

 学校運営にどう児童生徒が関わっていくか。識者は「学校内民主主義」の実現を訴える。目の前の理不尽と思われる事柄に対し「おかしい」と言い、その声が学校の仕組みに反映される経験を積み重ねなければ、将来、社会に出ても、もの言わぬ大人になってしまうとの危機感からだ。

 東京都板橋区の板橋第五中学校では先月、生徒が議論して決めたスマートフォンを持ち込むためのルールを導入。現場の学校では、さまざまな変化が生まれている。

◆理不尽な校則、根拠は「伝統だから」

 「Voice Up Japan」の高校生メンバー、日下部さんは、中学時代にベトナム・ホーチミンのインターナショナルスクールへ通っていた。

 校則らしい校則はなく、自由に過ごした。「ありのままの自分を出せていたように思います」。帰国後、高校に進んだ時、教師から「髪を染めていると、大学の推薦入試に影響する」と繰り返し注意された。「すごく不合理だと疑問を持ちました」

 沢田さんが学んだ中学校は、地域で長い歴史を持つ「伝統校」。前髪が眉毛より下に出てはならず、髪形も編み込みや、いわゆる「お団子」は禁止という校則があった。

 教師に理由を尋ねても、「伝統だから」「中学生らしい生活をするため」といった漠然とした答えが返ってくるだけだった。

◆「当たり前」は本当なのか

 奈良岡さんが通った公立高校は制服がなく、校則の規制も比較的緩いという。ただ、「華美な服装をしない」との規定は気になった。何をもって華美とするのか、誰が判断するのか。「常識を私たちに押し付けていないか」と疑問を抱いた。

 今まで「当たり前」とされてきたことは、本当に当たり前なのだろうか。「校則とは、学校で勉強するために最低限必要なルールのはず。なぜ、こんなことまで縛ろうとするのだろう」

 3人は釈然としない思いを抱えて過ごすうちに、ジェンダー平等の実現を目的に活動する「Voice Up Japan」の存在を、会員制交流サイト(SNS)を通じて知る。昨年5月に「高校生支部」を結成し、活動を始めた。学業との関係などで出入りがあり、現在は全国に散らばる7人が主にオンラインで連絡を取り合う。

 身近な校則や制服は、高校生にとって最も身近な問題の1つ。なるべく幅広い意見を集めようと、昨年6月にインターネットを通じアンケートを実施し、311人から回答を得た。

◆声を上げたら「校則守るのは当然」と批判も

 その内容を意見書としてまとめ、記者会見に先立って文科省に提出。生徒が個性を発揮できるよう、校則について生徒同士や生徒と教員が活発に意見交換できる場を設置し、校則改正のプロセスを明文化するといった提案が柱だった。

 児童生徒の多様な自己表現を圧迫しているとの批判も根強い制服については、生徒の性自認や自己表現を尊重できるよう求めた。

 理解ある大人ばかりではなかった。「校則に生徒が従うのは当たり前」「大学に進んでから、社会に出てからにすればいい」という声も耳に入った。奈良岡さんの高校には、文科省での記者会見後、「社会のルールを守るのは当然だ」などと批判が書かれた手紙が送られてきたという。

 3人ともそうした声には口をそろえて反論した。

 「目の前にある理不尽に声を上げない人間が、大人になってから先も声を上げることができるのか」。校則の改善を求める活動は、民主主義の実践だった。

◆文科省、児童生徒の意見反映する校則に理解

 文科省の担当者は、校則について「作りっぱなしではいけない。子どもの成長につながる内容にする必要がある」と指摘。「自分たちで決めたルールならば守る」と、児童生徒の意見を取り入れた校則の「アップデート」にも理解を示す。だが、学校の現場では、一度決めた校則を変えることへの抵抗感が強いという。

 3人も、同省への働き掛けで一定の手応えは感じたが、すぐに成果へ結び付くとは思っていない。日下部さんは言う。「校則は学校に根付いた、いわば日本の『文化』。でも、前に進まないと変えられない」(小松田健一)


今年も白樺樹液の採取が始まった。


「性的同意」を中高生に伝えるハンドブックができた理由。傷つけず、傷つかないために今知ってほしいこと

2022年03月28日 | 教育・学校
性的同意や性暴力に関するハンドブックを、NPO法人「mimosas(ミモザ)」が作成。そこには、10代の子どもたちが「被害者にも加害者にもならないように」との願いが込められていました。
 

mimosasは若い世代に向け、性被害や性的同意に関する情報を発信している

「性的同意」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

ボディータッチやキス、性的な言葉かけ、性行為といったあらゆる性的な言動について、その行為を積極的にしたいと望む互いの意思を事前に確認することを指します。

相手の同意なく性的な行為をすることは、性暴力になります。

こうした性的同意について10代のうちに知る機会がないことで、性暴力の被害に遭っても被害と認識できないまま自分を責めたり、加害者になってしまったりする現状があるのではーー。

そんな問題意識から、性的同意や性暴力についてわかりやすく伝えるハンドブック『MIMOSAS BOOK-あなたが傷つかないための性の本』が作られました。

制作したNPO法人『mimosas(ミモザ)』のメンバーに、冊子に込めた思いを聞きました。

性的同意に必要な「3つの条件」

MIMOSAS BOOK

mimosasは「知ることで変えられる未来がある」をモットーに、性被害や性的同意に関する情報を若い世代の人たちに届けることを目指して活動するメディア。

ハンドブックは、性暴力の被害者支援に取り組む弁護士や公認心理師の監修のもと作られました。大きく分けて「性暴力とは」「性被害にあったらどうすればいいの?」「性的同意って何?」の3つの柱で構成しています。

「性暴力とは」の章では、レイプだけでなく電車内での痴漢や「ノリ」で胸を触るといった、同意のない性的な言動全てが性暴力であると説明。さらに、交際中のパートナーとの間でも性暴力は起きること、SNSを通した性被害もあることを伝えています。

冊子の構成や文章を担当した伊藤まりさんは、「痴漢を含め性被害があまりに社会にありふれていて、そもそも被害を被害と認識できないケースは多い。被害を受けた後、専門機関への相談やカウンセリングといった対処につなぐためにも、まずは性暴力とは何かを知ってもらえたら」と話します。

性的同意に必要な「3つの条件」として、冊子では次のように示しています。

1)NOと言える環境が整っている

2)「立場の差」がない対等な関係である

3)どのタイミングでもNOと言える

その上で、「デートに行く」「付き合っている」「相手の家に行く」といった行動・関係性自体は性的な同意を意味せず、その都度同意が必要であることを解説しています。

それではどんなとき、どのように性的同意を取れば良いのでしょうか?

ハンドブックでは、初めてのデートやパートナーの自宅にいるときなどのシチュエーションで、同意を確認する具体例を挙げています。

「いやだったらいつでもいやって言って大丈夫だからね」と、相手が安心して断れる声かけをしたり、「あなたのことは大好きだけど、今日はあんまり気分じゃないかな」と伝えたりすることを例示しました。

相手の意思を確認する習慣がなかなか根付かない背景について、メンバーの伊藤ミナさんは「性的同意に限らず、例えば『おい』という一言で父親が母親を呼び寄せるような、コミュニケーションを怠る文化があります」と指摘します。

「立場の強い人が弱い人に対し、『察して受け入れて、それに応える』ことを強いる文化が普段の生活からある。その結果が、性的同意のない性被害を生む土壌になっているように感じます」(伊藤ミナさん)

被害者にも加害者にもなってほしくない。その思いから、ハンドブックには「相手の気持ちや体調を気にしたことがない」「『NO』と言ったら、きらわれるかなと思う」など、誘う側や誘われる側の同意チェックリストも掲載しています。

性被害を受けたときの相談先リストや、受けられるケアなども収録しています。

中学から「性的対象」と見られるように

mimosasのメンバー。(右上から時計回りで)横井桃子さん、伊藤まりさん、額宮瑞希さん、伊藤ミナさん

ハンドブックは、主に中高生が手に取ることを想定して制作されました。

その理由を問うと、メンバーの横井桃子さんは自身の体験を振り返りました。

「中学生になった途端、痴漢など性被害を受けたと同級生たちから聞くことが多くなり、私自身も『性的対象』として見られるという経験が増えるようになりました」

一方で、学校の教員から言われたのは「女の子だから気をつけなさい」「4月は変な人が多いから気をつけてね」という、被害者にならないための注意喚起だったと明かします。

「『気をつけなさい』としか言われなかったので、当時は性被害に遭った自分を責めるようになりました」

その後大学で性的同意について学び、横井さんは「自分にはNOと言うパワーがあり、自分の体は自分のもの」と理解できたといいます。

「もっと早く知っていたら、自分を責めずに中高生時代を過ごせた気がします。だから今の10代の子どもたちには性的同意のことを絶対に知ってほしい。それは自分の権利について学ぶことであり、自分や相手のバウンダリー(境界線)を尊重することになるんです」

性暴力はどんな状況であっても「被害を受けたあなたが悪い」ということは絶対にないということ。「夜道を歩いていたから、派手な服を着ていたから、被害を受けても仕方ない」というような被害者を非難する言動は二次加害であることを、冊子では強調しています。

全ての中高生がアクセスできるように

図書館や保健室など、全ての中高生たちがアクセスしやすい場所にハンドブックを届けようと、mimosasはクラウドファンディングでサポートを募っています。集まった寄付は、ハンドブックの制作費や送付代、人件費などに充てられます。

すでに17の学校・団体からハンドブックの提供依頼が寄せられているといいます(3月11日時点)。

額宮瑞希さんは、「多くの中高生は学校というクローズドなコミュニティにいます。性的同意や性暴力について知らないことで、誤って被害者を責めてしまうような価値観が友達どうしで大きくなってしまう。その前にハンドブックでストップをかけられたら」と呼びかけています。

(取材・文=國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)


横なぐりの雪が吹き付けた今日、寒い寒い。それでも氷点下にはならなかった。


核軍縮がライフワークという岸田首相、掲げる理念と実際の行動に隔たり 意見交換した若者「唱えるだけでなく、行動を」

2022年03月27日 | 社会・経済

「東京新聞」2022年3月26日

 岸田首相は26日、広島でエマニュエル駐日米大使との原爆死没者慰霊碑への献花や、核軍縮を目指す活動に関わったことがある若者との車座集会に臨み、「核なき世界」を目指す姿勢をアピールした。核軍縮をライフワークと公言し、国際的な議論の枠組みづくりに意欲的なことで知られる首相だが、核兵器禁止条約の批准を一貫して否定するなど、掲げる理念と実際の行動に隔たりが大きい。ロシアのウクライナ侵攻を機に「核の脅威」が指摘され、取り組みが後退する懸念もある中、首相の本気度が問われる。(曽田晋太郎)

 「核の脅威は世界に伝わっていない。首相はもっと被爆の実相などを強く発信するべきだ」「核廃絶を唱えるだけでなく、もっと具体的な行動に移してほしい」

 車座集会に参加した「ユース非核特使」経験者の若者たちは本紙の取材に、30分余りの意見交換では語りきれなかった思いを訴えた。

 首相は昨年10月に就任した後、核軍縮の機運醸成を狙って、各国の政治リーダーらを集めた「国際賢人会議」の立ち上げ構想を打ち出し、バイデン米大統領と核拡散防止条約(NPT)の重要性を訴える共同声明も発表した。背景にあるのが、唯一の戦争被爆国・日本の責務は、核兵器の保有国と非保有国の橋渡しに努めることだという考えだ。

 「核兵器を持っている国を動かしてこそ現実は変わる」が持論の首相はNPT体制を重視し、保有国が背を向ける核兵器禁止条約を通じた核軍縮・廃絶のアプローチを「遠回り」と受け止めている。6月にオーストリアで開かれる締約国会議へのオブザーバー参加も「いきなり理想の部分に足を踏み出すと、バイデン政権との信頼関係を損ねてしまう」という理由で、後ろ向きな姿勢に終始する。著書に「核なき世界の実現のために政治人生をささげたい」と記すこだわりの強さに反して、動きは鈍い。

 ロシアが核の威嚇に及んだことで「核なき世界」とは対極の核抑止論への注目は高まっている。与野党からは米国の核兵器を国内に配備し共同運用する「核共有」導入や非核三原則の見直しを求める声が上がり、首相も議論は容認した。

 広島市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授は「NPTの枠組みで核軍縮が進まないため、核兵器禁止条約ができた経緯を考えれば、保有国の参加なしに核廃絶の道は開けないという首相の方法論は間違っている」と指摘。その上で「原爆投下を経験した日本の発言には説得力があり、(核なき世界の実現に向けて)他国にできない役割を果たせるはずだ」と話す。


 スッキリと晴れるかと期待したのだが午前中は雲が多かった。更に風が強く冷たい。昨夜から未明にかけての雨にも期待したのだが、積雪は50cm程で10cm程下がっただけだった。
 沼の氷もだいぶ融けてきた。


国会不召集判決 少数派を守る判断こそ

2022年03月26日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2022年3月25日 

 安倍晋三内閣が二〇一七年に臨時国会を約三カ月開かなかったことは違憲だとした訴訟で、福岡高裁那覇支部は「極めて重要な憲法上の要請だ」と認めた。少数派の意見を国会に反映させる憲法の意義を踏みにじってはならない。

 憲法五三条は、衆参いずれかの総議員の四分の一以上の求めがあれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと定める。

 一七年六月二十二日に野党は召集を要求したが、実際の召集は九月二十八日。かつ安倍内閣は冒頭で衆院を解散してしまった。

 当時、野党は森友・加計学園問題を追及する構えだったが、審議できなかった。そのため国会議員らが「違憲だ」として、国家賠償法に基づき提訴していた。

 那覇支部は五三条について「少数派の国民の意見を国会に反映させる趣旨に基づく」と述べた上、「合理的期間内に召集すべき憲法上の義務を定めたものだ」と指摘した。その上で「国民の意見を多数派・少数派を含めて国会に反映させる観点からも(臨時国会召集の)義務は極めて重要な憲法上の要請だ」と断言した。

 少数派を守る意義を、強い表現で述べた点は大いに評価したい。同種の訴訟は東京や岡山でもあるが、岡山訴訟でも違憲の余地があるとの判断が出ている。

 もっとも那覇支部は召集は国会と内閣という国家機関相互の義務だとして「議員個人に義務を負っているとは言えない」と述べた。それゆえ損害賠償は認めず、憲法判断にも立ち入らなかった。

 あたかも内閣が憲法を無視しても、裁判所はなすすべなし、との姿勢である。だが、それは国賠法という枠組み内での結論にすぎず議会制民主主義という枠組みで考えれば明らかに問題がある。

 英国では一九年、欧州連合(EU)離脱を巡り、ジョンソン首相が議会を長期にわたり閉会した措置を、英最高裁が「違法・無効」と判断したことがある。長期閉会は議会審議を封じるためで「民主主義の原理に深刻な影響がある」と考えたためだ。

 国会を開かないという議会制民主主義で越えてはならない一線を越えた場合、司法が下位にある法律の枠で対処し、上位にある憲法判断を回避しては民主主義原理が機能しない。最高裁は三権分立の観点からも内閣の行き過ぎに歯止めをかける判断をすべきである。


今日は曇りの天気。ハウス内に再度融雪剤(木灰)を撒く。

融雪剤を撒いていない所で、積雪60cm。今夜から大荒れの天氣らしい。雨と風が強くなり融雪が進むらしい。
沼の氷もゆるんで来た。


ウクライナ侵攻と日本の食料危機

2022年03月25日 | 自然・農業・環境問題

 東京大学教授 鈴木宣弘さん

「しんぶん赤旗」2022年3月23日24日

 国連憲章も国際法も踏みにじるロシアのウクライナ侵略は、食料や資源の安定供給にも影響を及ぼしています。農学国際専攻の鈴木宜弘東京大学大学院教授に寄稿してもらいました。

不測の事態が現実に

 ロシアのウクライナ侵攻を機に、ロシアとウクライナで輸出市場の3割を占める小麦をはじめ、穀物価格、原油価格、資源価格などの高騰が顕著になり、食料やその生産資材の調達への不安に拍車をかけています。

「買い負け」も

 近年、国際的な市場で日本の食料の「買い負け」が現実になってきていました。中国などの新興国の食料需要が伸びており、中国などの方が高い価格で大量に買う力があり、コンテナ船も相対的に取扱量の少ない日本経由が敬遠され、日本へ運んでもらうための海上運賃も高騰しているのです。

 日本は、小麦を米国、カナダ、オーストラリアから買っています。しかし、ロシアやウクライナの代替国として、これらの国にも需要が集中し、争奪戦は激化します。

 日本はまた、化学肥料原料のリンやカリウムを100%輸入に依存しています。ところが、中国の輸出抑制で調達が困難になりつつあったところへ、中国と並んで大生産国のロシアなどからの今後の調達の見通しも暗くなっています。ちなみに、リン鉱石の生産は世界1位が中国、4位がロシア、カリウムの生産は2位がベラルーシ、3位がロシア、4位が中国です。

 一方、「異常」気象が「通常」気象になり、世界的に小麦供給が不安定さを増しており、需給ひっ迫要因が高まって価格が上がりやすくなっています。その代替品となる穀物のバイオ燃料需要が原油高によって押し上げられ、暴騰を増幅します。

 国際紛争などの不測の事態は、一気に事態を悪化させます。ロシアのウクライナ侵攻で今、それが起きてしまったのです。3月8日、小麦のシカゴ先物相場はついに、2008年の「食料危機」の最高値を上回りました。食料危機は現実のものとなっています。

国内生産欠落

 岸田文雄首相の施政方針演説では、「経済安全保障」は語られましたが、そこには「食料安全保障」「食料自給率」への言及はありませんでした。農業政策の目玉は、農産物輸出の振興とデジタル化とされました。これだけ食料や生産資材の高騰と、中国などに対する「買い負け」が顕著になってきて、国民の食料確保や国内農業生産の継続に不安が高まっている今、まずやるべきことは輸出振興ではなく、国内生産の確保に全力を挙げることでしょう。

 さらに、ウクライナ侵攻を受けて、与党や農林水産省にも食料安全保障の検討会が立ち上げられました。しかし、当面の飼料や肥料原料を何とか調達するためにどうするかの議論が先に立っています。そこには、根本的な議論が抜けています。

 今、突き付けられた現実は、食料、種、肥料、飼料などを海外に過度に依存していては国民の命を守れないということです。それなのに、貿易自由化を進めて調達先を増やすのが「安全保障」であるかのような議論がまだ行われています。

 国内の食料生産を維持することは、短期的には輸入農産物より高コストであっても、飢餓を招きかねない不測の事態の計り知れないコストを考慮すれば、総合的コストは低いのです。その不測の事態がもう目の前にあるのです。

国内農業への期待

 食料危機が眼前に迫る中、国内農業への期待は高まっています。

「日本の宝」

 「ここまで頑張ってきた農家さんも、新たに就農する農家さんも、日本の宝。感謝しかないです。ありがとう!」

 こういった国内の農家への感謝と期待の声が筆者のツイッターにも多く寄せられています。

 今こそ、食料安全保障確立のための国家戦略として、国内資源を最大限に活用した循環農業の実現を一気に加速しなくてはなりません。コメや生乳や砂糖の減産要請をしている場合ではありません。余剰農産物については、農家の損失補填(ほてん)、政府買い上げによる人道支援、子どもたちを守る学校給食の公共調達などを、総合パッケージで実現したいものです。諸外国では当たり前なのに、日本では行われていません。

 世界一過保護だと誤解され、本当は世界一保護なしで踏ん張ってきたのが、日本の農家です。その頑張りで、今でも世界10位の農業生産額を達成している日本の農家のみなさんは、まさに「精鋭」です。誇りと自信を持ち、これからも家族と国民を守る決意を新たにしていただきたい。

 特に、輸入に依存せず、国内資源で安全・高品質な食料供給ができる循環農業を目指す方向性は、子どもたちの未来を守る最大の希望です。

現場から悲鳴

 肥料、飼料、燃料などの生産資材コストは急騰しているのに、国産の農産物価格は低いままで、現場の農家は悲鳴を上げています。輸入小麦がこんなにひっ迫する事態になっているのに、国産小麦は在庫の山だというのです。加工・流通・小売業界も消費者も、国産への思いを行動に移してほしい。

 「食料を自給できない人たちは奴隷である」。キューバの著作家・革命家のホセ・マルティ(1853~95年)はこう述べました。

 「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」。高村光太郎はこう言いました。

 2020年度の食料自給率(カロリーベース)が37・17%と、1965年の統計開始以降の最低を更新した日本は、はたして独立国といえるのかが、今こそ問われています。不測の事態に国民を守れるかどうかが、独立国の最低条件です。

 農林水産業は、国民の命、環境・資源、地域、国土・国境を守る安全保障の柱、国民国家存立の要、「農は国の本なり」なのです。


 今日は札幌の皮膚科へ行ってきました。それで更新が遅れてしまいました。道路上には雪はなく、天氣も良く、快適なドライブでした。お昼は友人と久しぶりに・・・。たくさん話しもあるのですがテーブルの上には「黙食」と書かれたチラシが置いてあります。


雨宮処凛がゆく! :戦争と障害者〜「戦えない人」は戦時にどう扱われてきたか。

2022年03月24日 | 社会・経済
 マガジン9 (maga9.jp)
 

 連日、ロシアによるウクライナ侵攻の報道を見ていると、ただただ心がえぐられる。

 増え続けていく死者。壊れてゆく街。突然破壊された日常のすべての取り返しのつかなさに、ため息をつくことしかできない自分がもどかしい。

 一方、3月15日には、ロシアのテレビ番組で反戦を訴えた女性が一時拘束される一幕もあった。14時間の尋問後に解放されたようだが、ロシア国内で反戦の声を上げ、拘束されている人は1万5000人にものぼるという。この人たちは一体、どんな状況に置かれているのだろう。

 ロシアによるウクライナ侵攻からあと少しで一ヶ月。今思うのは、「戦争は、終わらせるのが難しい」という事実だ。

 イラク戦争を思い出してほしい。

 2003年3月に始まり、5月には「戦闘終結」宣言。しかし、それからどうなったか。イラク国内は泥沼状態に突入し、死者は増え続け、そうしてそんな泥沼が長期化すればするほど、世界の人々の関心は薄れていった。

 例えばイラク戦争から10年後の13年末、イラクは「最悪」の状況にあったことをどれほどの人が知っているだろう。病院までもが空爆され、翌年には1日で30万人もがクルド自治区に逃げ、気温50度の炎天下、山に避難した人には人道支援も届かず山で次々と命を落とし、国連の発表では180万人もの避難民が生み出されていた。

 が、日本でそのことを知る人はほとんどいなかった。報道も、まったくといっていいほどされなかった。そんな中、人々がイラク戦争のことを10年以上ぶりに思い出したのは、ISの台頭によってではないだろうか。そのことによって、かの地の混乱がずっと続いていたことを初めて知った人も多かったかもしれない。

 さて、ウクライナへの攻撃が続く中、3月13日に「深掘床屋政談」というイベントに出演した。『人新世の「資本論」』の斎藤幸平さんや宮台真司さん、白井聡さん、ジョー横溝さんやダースレイダーさんとご一緒したのだが、そこでロシアに対する経済制裁の話になった。経済制裁以外の方法はないのかという話題だ。前々回も書いたが、私が経済制裁下のイラクで見たのは、制裁によって病院に薬がなく、次々と命を落としていく子どもたちの姿だった。

 経済制裁について、詳しいことは私にはわからない。ただ、ロシアに対する制裁の必要性が叫ばれる中、「経済制裁」という言葉を聞いて真っ先に私の頭に浮かぶのはやはりイラクの子どもたちで、もっとも無力な存在が犠牲になる構図にずっとやるせなさを感じてきた。だからこそ「経済制裁」が声高に叫ばれる今、「それしか道はないのだろうか」という疑問を抱いている。

 いつの時代も戦争は、立場の弱い者を犠牲にする。

 報道を見れば、多くの人が犬や猫を抱いて避難している。しかし、取り残されたペットもいる。物言えぬ者たちも犠牲になるのが戦争だ。

 そんなふうに世界が戦争に注目する中、「ウクライナの愛国心」をことさらに賛美する空気もある。祖国を守る、国土を守るために勇敢に戦う人々の姿に感動する、という情緒的な声だ。

 だけど、そんな言葉を見聞きするたびにモヤモヤする。そのモヤモヤは、3月18日に配信されたニューズウィーク日本版の記事によってさらに大きくなった。

 記事によると、多くの避難民が押し寄せる国境地帯では、ウクライナ軍の兵士たちが、若い男性が出国しないようチェックしているのだという。記事には、その様子を見たアメリカ人のフリー・ジャーナリストの言葉が紹介されている。

 「ある男性が、妻と一緒にいたいと主張する場面に遭遇した。すると兵士は群衆のほうを向いて『この臆病者を見ろ。彼はウクライナのために戦おうとしていない』と叫んだ。群衆の間からは男性に対して非難のブーイングが起き、男性は結局、兵士に付いていった」

 ウクライナが侵攻されてすぐ、ゼレンスキー大統領は総動員令に署名し、18〜60歳までの男性の出国が禁止された。その報道を目にした時、まず感じたのは恐怖だ。「ウクライナのために戦う」以外の選択肢が認められない成人男性たち。

 同時に頭に浮かんだのは、成人男性でありながら、病気や障害がある人はどうするのかということだった。例えばALSの舩後議員みたいに、24時間介助が必要な人はどうするのか? 出国が許されるとして、安全に避難できるのだろうか? ウクライナの人々が、川に板切れを渡しただけのような橋を通って避難している映像を見た時、「これじゃ電動車椅子は無理だな」と思った。

 戦争という非常時、「戦えない人」は、そして戦えないだけでなく、人手を必要とする人は、いったいどういう扱いを受けるのだろう?

 そんなことを書いたのは、荒井裕樹さんの『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)に書いてあったことを思い出したからだ。

 戦争と障害者についてのエピソードが多く出てくる本書には、アジア太平洋戦争時、ただでさえ肩身の狭い障害者たちが、兵力や労働力になれないという理由から「人間」として扱われなくなっていく様子が詳しく書かれている。

 例えば当時、障害児教育に人生を掲げた教育者(障害児のために開設された光明学校の松本校長)は、「非国民」となじられるようになったそうだ。以下、本書からの引用だ。

 「学校の先生が障害時に誠心誠意向き合う。そのこと自体が『非国民』扱いされる。そうした空気の中、当の障害児はどんな目で見られていたか。まさに推して知るべしという感じだろう。

 光明学校の子どもたちは戦争末期、長野県の上山田温泉に疎開している。この疎開先では、軍部から青酸カリが渡されたという話が伝わっている。もちろん、何か起きたときのための『処置用』だ」

 「『鬼畜米英』『撃ちてし止まん』といった荒々しい掛け声に混じって、障害者たちは『米食い虫』『非国民』と罵られていた。敵を罵る社会は、身内に対しても残酷になる。松本校長をなじった教育者たちのように『役に立たない人』を吊るし上げることが『愛国表現』だと勘違いするような人たちが出てくるのだ。
 このエピソードを思い返すたびに、最も安易でたちの悪い『愛国表現』は、その場の空気に乗じて反撃できない弱者を罵ることだと痛感する」

 本書で、荒井さんは自身が見聞きしたエピソードとして、戦時中、「こんな情けない病気になって申し訳ない」と割腹自殺をしたハンセン病患者についても書いている。

 そうして、別のハンセン病患者の書いた詩を紹介する。詩が書かれたのは戦争真っ只中の1943年。私はこれを読んで、「戦争」の別の側面を見た気がした。

 「鉄砲 鉄砲! /機関銃 機関銃! /ひとつみんなで血書の/嘆願書をださうぢやないか! /とんできた米鬼には/支那のヘロヘロ飛行機さんには/日本のどこへきても/日本人のゐるところなら/たとへ癩病院の上空までが/かたく守られてゐるといふことを/思ひ知らせてやるために一一一/ダ ダダ ダツ ダダダ/鉄砲を下さい! /機関銃をおさげねがひたい! /鉄砲と機関銃をおねがひします! /どうか どうか/おねがひします鉄砲を!」(三井平吉『おねがひします鉄砲を』)

 この詩について、荒井さんは以下のように書いている。

 「迫害されている人は、これ以上迫害されないように、世間の空気を必死に感じ取ろうとする。どういった言動をとればいじめられずに済むか、自分をムチ打つ手をゆるめてもらえるかを必死になって考える。
 だから、戦時中の障害者の文学作品には、実は熱烈に戦争を賛美するものが多い。『戦争の役に立たない』からこそ、逆に『私はこんなにも戦争のことを考えています』といった表現をしなければ、ますますいじめられてしまうからだ」

 翻って、現在。

 常に「自分は役に立つ」「利益を生み出す」ということを360度に向かってプレゼンし続けなければ生きることが許されないような状況がこの国では数十年続いている。そんなふうに生産性で命が序列づけられるような時代に、戦争が始まった。

 しかも、コロナ禍3年目。誰に優先して呼吸器をつけ、誰に呼吸器をつけないかという命の序列付けが「喫緊の課題」として語られる時代でもある。実際、コロナ禍が始まってすぐの20年4月には、アメリカ・アラバマ州で「重度の認知症や知的障害者には呼吸器をつけない可能性がある」というガイドラインが発表されている。幸い、抗議を受けてすぐに撤回されたのだが。

 そんな中、ロシアによるウクライナ侵攻2日前には、大阪地裁で画期的な判決が下された。

 旧優生保護法のもと、強制不妊手術をされた3人が国を訴えた裁判で、国に対して初めて賠償命令が出されたのだ。

 「優生上の見地から、不良な子孫の出生を防止する」

 そう明記された旧優生保護法のもと、障害者が子どもを持てぬように行われてきた不妊手術。厚労省によると、不妊手術を受けたのは約2万5000人に上るという。

 3月には、東京高裁でも国に賠償を求める判決が出た。ふたつの逆転勝訴は嬉しいものだが、不妊手術を進めてきた旧優生保護法が、96年までこの国に存在した事実は重い。わずか26年前までだ。そんな国に住む人間の一人として、戦争や戦う人が賛美される時、戦えない、戦わない人の目線から世界を見たいと改めて思っている。

 最後に。

 戦争は障害者を抑圧するだけでなく、障害者を多く生み出すものでもある。身体の障害はもちろん、メンタルにも大きなダメージを与える。

 『帰還兵はなぜ自殺するのか』(デイヴィッド・フィンケル著/古屋美登里翻訳)の帯には、「イラク・アフガン戦争から生還した兵士200万人のうち、50万人が精神的な傷害を負い、毎年250人が自殺する」とある。

 この事実を、今こそ心に刻みたい。


「万国の労働者団結せよ!」

「万国の虐げられた者たちよ団結せよ!」


指をくわえていたら虎の子は半分になるだろう 見るも無惨な円安の国で庶民が生き残る道

2022年03月23日 | 生活

日刊ゲンダイ  2022/03/20

 資源大国ロシアに対する経済制裁の影響で、原油や天然ガスは高止まり。加えて穀倉地帯で起きたウクライナ戦争の長期化懸念から小麦価格も高騰。日本もその影響は避けられず、あらゆる商品の値が上がっていく。

 追い打ちをかけるのが、輸入物価高の打撃を増幅させる「悪い円安」だ。米国の利上げ見通しから、円相場はみるみる下落。市場は2016年2月以来、6年1カ月ぶりの120円台を意識しているが、円の実質価値はもっと低い。

 購買力平価という統計がある。モノやサービスの値段を基準にした為替レートのことで、有名なのが「ビッグマック指数」だ。マクドナルドのビッグマックは、米国の価格が今や日本より7割も高い。海外で同じ商品を買うのに日本以上のお金がかかり、それだけ円の実力は激減してしまったのだ。

 貿易量や物価状況を反映して円の総合的な価値を測る「実質実効為替レート」も1972年以来、実に50年ぶりの低水準。円の実質的な価値は、為替の固定相場で1ドル=300円台だった時代に逆戻りということだ。

 第2次安倍政権以降、黒田日銀は異次元緩和による円安政策を実に9年も推し進めてきた。製造業の輸出を後押しする狙いのはずが、モノづくり大国ニッポンはもう過去の話だ。この間、日本の輸出を支えた家電メーカーは相次いで外資に取り込まれ、残った輸出の柱は辛うじて自動車産業くらいだ。

 円安の恩恵でバンバン輸出して経済を潤す時代はとうに終わり、もはや円安は輸入物価高などのデメリットしかない。

■5000円バラマキの前に小麦価格を下げろ

 それでも日銀は無策で、異次元緩和から延々と抜け出せない。岸田政権も無責任だ。経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。

「輸入小麦の価格を決定しているのは政府です。この1年半で価格は1.5倍となり、ウクライナ戦争の影響で10月の価格改定時は、さらに跳ね上がるのが確実。岸田政権に国民の暮らしを守る気持ちがあれば、参院選の票欲しさに一律5000円を年金受給者にバラまく前に、その税金を小麦価格の抑制に投入すべきでしょう。よっぽど年金生活者も喜びますよ。燃油価格の高騰に庶民が苦しむ中、ガソリン税を一時的に引き下げるトリガー条項の凍結解除も、岸田首相は『検討する』を繰り返すだけ。“検討使”の庶民切り捨て政治は許されません」

 このまま、インフレが過熱し、円の価値激減が続けば年金生活者の預貯金は今後、どんどん減っていく。指をくわえていたら、半分になりかねない。どうしたら虎の子の資産を守れるのか。経済評論家で独協大教授の森永卓郎氏はこうアドバイスする。

「資産を増やそうと、下手に価格変動のある投資に手を出すのは危険です。原油や小麦など、あらゆる市況が高騰する現状は2008年のリーマン・ショック直前とウリ二つ。米国もEUもインフレに対抗し、金融引き締めに動き、早晩、ジャブジャブと金融市場にあふれた緩和マネーがスーッと引くタイミングが来ます。都心の不動産もピークアウトを迎え、今、動くのはお勧めできません。残る手段は、円資産をリスクの低い米国債に切り替えるくらい。それも、よほど資金に余裕のある人に限った話です。年金生活者は輸入物価高の影響を比較的受けにくい国産の日用品に頼り、パンや麺類を避け、ご飯にお新香と和食中心の食事を心がけ、耐え忍ぶしかないのです」

 前出の荻原博子氏も、「金銭面や金融知識にかなり自信のある人以外、年金生活者は投資に手を出さない方がいい」とし、こう続けた。

「日々スーパーのチラシを確認し、なるべく安売りの時に日用品を買いそろえておく。返せるうちに借金はなるべく返済し、家計を健全化する。それしか術はありません。特に40~50代で住宅ローンを抱えている世帯は、余剰資金を投資ではなく、繰り上げ返済に回すべきです。本来なら利息が付いて140万円を返す必要があったローンが、うまくいけば100万円で済むかもしれない。差し引き40万円の儲けです。今の時代、投資額100万円で140万円に増えるケースはまずありませんから、よっぽど賢明な選択ですよ」

 見るも無残な円安の国で、庶民の生き残る道は限られる。「日本経済は長期にわたり、さらに転落する」と、前出の森永卓郎氏は今後の最悪シナリオを指摘する。

「怖いのは岸田首相が、すごい勢いで財政と金融を同時に引き締めそうなことです。その兆しは見える。コロナ禍に大型補正予算を組み続けた結果、財政健全化の目安となる基礎的財政収支は、今年度に約41兆円の赤字となる。岸田政権はその赤字幅を来年度予算案の編成で約13兆円にすると閣議決定しました。実に30兆円近い財政の縮小です。さらに来年4月に任期が満了する日銀の黒田総裁を交代させ、金融の引き締めも図るつもりでしょう。日銀の次期審議委員の人事案で超リフレ派の片岡剛士氏の後任に、非リフレ派の高田創氏を起用したのが、その布石です。しかし、不況下で財政・金融の緊縮に転じれば、恐慌を招くのが歴史の教訓。日経平均が暴落に向かうタイミングで、相場の下落に応じて価格が上昇する『日経ダブルインバース上場投信』を購入し、一発逆転を狙うのが最も賢い選択かもしれません」

 たった5000円ぽっちの支給では、この難局はとても乗り切れない。年金生活者は今夏の参院選で「1票一揆」を起こすしか生き残る道はないと覚悟すべきだ。

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【3月25日(金)までの限定公開】速報)
堤未果の緊急解説講座の一部を公開!「ウクライナ危機」の裏側〜メディアが報じない"ロシアvsアメリカ・ウォール街"の代理戦争

 今夜、ウクライナのゼレンスキー大統領が6時から、国会でリモート演説をする。私は、あまり前のめりに期待しないほうがいいと思う。両国の兵隊や国民が闘うべきことであろうか?今求められていることは、直ちに武装を解除して「首脳」たちが話し合えばいいことであり、国民や兵隊たちは武器を捨てることだ。アメリカの影もしっかり見極めなければなるまい。


香山リカ 常識を疑え! 戦争動画を見て眠れなくなっているあなたへ

2022年03月22日 | 健康・病気

(精神科医・立教大学現代心理学部教授)

imidas 連載コラム 2022/03/22

 最近、診察室で定期診察のあと、ため息をつく人が目立つ。ある人が言った。

「先生、ウクライナはどうなるのでしょう。恐ろしいです。向こうで結婚した日本人男性のブログを読んでいるのですが、幸せだった生活があっという間に破壊されていくのが手に取るようにわかって。それから毎晩、悪夢を見るんです」

 また別の人はこう語って涙ぐんだ。

「子育て中のママたちでSNSグループを作ってるんです。ふだんは楽しい話をしているのですが、そこにもウクライナで地下シェルターに避難している子どもたちのニュース映像が流れてきて。病気の子、親とはぐれた子もいるのだそうです。もしわが子だったら、と思うと涙が止まらなくなりました」

 何らかのメンタル不調で診察室に通っているわけではなくても、似たような状況に陥っている人は少なくないのではないか。友人や知人からも「よく眠れない」「食欲が落ちている」と訴える声が聞こえてくる。

 ウクライナは、日本から決して「近い国」ではない。距離にして8000キロ以上も離れており、首都キエフはじめ、日本から飛行機の直行便はなく、トルコやUAE、あるいはポーランドなどで乗り継がなければならない。移動はほぼ1日がかりとなるだろう。コロナウイルス感染症のパンデミック前、2018年の統計では、日本からウクライナへの旅行者は年間1万人強だ。日本からアメリカへの年間旅行者約350万人、韓国への約300万人と比較するとその少なさがわかるはずだ(※1:日本政府観光局〈JNTO〉「各国・地域別 日本人訪問者数[日本から各国・地域への到着者数](2015年~2019年)」)。ちなみに同年、ウクライナからは8500人弱が日本を訪れていた(※2:JNTOウェブサイト「日本の観光統計データ」より)。

 このように、ウクライナはこれまで日本人にとっては「なじみのある国」ではなかったはずだ。それにもかかわらず、いま多くの人がそこでの状況に胸を痛め、中には心やからだの不調にまで陥っている人さえいる。この人たちに起きていることは何なのだろうか。ここで整理してみたい。

①PTSD(心的トラウマ後ストレス後遺症)なのか

 心的トラウマの問題、とくに災害や事件に巻き込まれた人の心のケアに取り組む「日本トラウマティック・ストレス学会」は、2022年3月4日、会長名で「ウクライナへの軍事侵攻についての日本トラウマティック・ストレス学会からの声明」を出した(https://www.jstss.org/docs/2022030400016/)。それに付随する資料「惨事報道の視聴とメンタルヘルス」にはこうある。

「人為災害時における惨事報道については、視聴者のメンタルヘルスに悪影響を与えうることが指摘されています。2001 年のアメリカ同時多発テロ、2011 年のノルウェー連続テロ事件、2013 年のボストンマラソン爆破事件などの人為災害では、被害者・子ども・一般人を対象とした研究結果が多数報告されています」

 そして、「惨事報道の刺激は必要最小限にしましょう」「同じ内容の惨事報道を繰り返し見ないようにしましょう」「衝撃的な映像の視聴を避けましょう」といった具体的な留意点も示されている。

 では、ロシアによるウクライナ侵攻の報道やSNSの情報を目にして起きる不調は、トラウマによるPTSDなのだろうか。実はそうとは断言できない。

「心的トラウマ後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder:PTSD)」は、①再体験症状(フラッシュバック、悪夢)、②回避・精神麻痺症状(思い出すのを避ける、自然な感情が麻痺する)、③過覚醒症状(不眠、イライラ、過剰な警戒心)の3つの症状の持続を特徴とするメンタル不全である。

 現在、世界で最も多く使用されている診断基準であるDSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)によれば、このPTSDの大前提になっているのは「実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への曝露」だ。これには誰も異論がないと思うが、問題となるのはその「曝露の形(仕方)」である。DSM-5では、それは「直接の体験」「他人に起こった出来事の直接の目撃」「近親者または親しい友人に起こった出来事の伝聞」、そして「その出来事の強い不快感をいだく細部への繰り返しまたは極端な曝露」の4つのどれかと定められている。

 そう聞くと、「そうか、ウクライナ侵攻の報道はこれの4つめの形にあたるのだな」と思う人が多いだろう。ところが、DSM-5のこの項目には「仕事に関連するものでない限り、電子媒体、テレビ、映像、または写真による曝露には適用されない」というただし書きがあるのだ。6歳以下の子どもに関する基準は別にもうけられているが、そこでも「出来事の目撃」がPTSDをひき起こすのは、「親または養育者」に起こった心的外傷的出来事の場合のみであって、ただし書きに「電子媒体、テレビ、映像、または写真のみで見た出来事は目撃に含めない」と記されているのである。

 では、ウクライナ侵攻に限らず、災害、犯罪、戦争などの報道や情報に繰り返し触れることで起きる「メンタルヘルスへの悪影響」は、持続的なPTSDにまで至るとは言えないのだろうか。

 実はこれじたいについても精神医学の中で議論がある。とくに子どもの場合、テレビやモニターの中で目撃した映像が目の前のことか遠い場所でのことか、近親者に起きたことか他人に起きたことか、しっかり識別することができない。そのため、おとな以上に深刻なトラウマ被害が起きやすいのではないか、と主張する研究者もいるのだ。

 その医学的な議論はさておき、ここでひとつ忘れてはならないことがある。冒頭で紹介した診察室での声を思い出してほしい。私の前で「ウクライナのことを思うとつらい」などと言って涙ぐんだ人たちは、定時のテレビニュースだけを見ているのではない。「ウクライナ在住の日本人男性」や「地下シェルターの子どもたち」についてブログや動画でくわしく知り、友人や親戚を心配するかのように心を痛めているのだ。

 DSM-5がアメリカで正式に刊行されたのは2013年だが、そのドラフト(叩き台)は2010年に公表され、「電子媒体、テレビ、映像、または写真による曝露には適用されない」というただし書きも当時から入っていた。しかし、当時つまり2010年頃と現在では、「メディアによる曝露」の量や質はまったく違う。とくにSNSの普及により、誰もがスマホでいつでもどこでも、また大手メディアからの発信だけではなくて、現地のローカルメディア、ジャーナリスト、さらには個人の投稿によりありとあらゆる情報に触れることができるようになった。ツイッターなどのSNSには翻訳機能もついているので、外国語で投稿されたものでもすぐに日本語に変換して読むことができる。

 そうなると、もはや「遠い国ウクライナの出来事」ではなくなる。すぐ目の前で起きた出来事、自分の身内が経験した出来事との境界は限りなく不鮮明になる。いや、その人が日々の様子や自分の心境を写真や動画つきで報告するのを読んでいるうちに、友人や家族以上の親しみを感じてしまうこともあるかもしれない。その人がある日、「家を爆撃で失いました」「国を出るので親に別れを告げました」などと投稿したら、それがPTSDを引き起こすほどの心理的ショックになったとしても不思議ではないのではないか。

「メディアでの曝露ではPTSDは起きない」というこの約10年前の診断基準は、いま見直しが迫られているのである。

②「共感疲労」という問題

 さて、フラッシュバックが起きるようなPTSDにまでは至らなくても、「つらくてしんどい」と訴える人はさらに大勢いると思う。

 この人たちに起きているのは、「共感疲労」つまり「つらい状況にある他者に対して感情移入し、心を強く動かす状況が長く続くことによる心身のエネルギーの枯渇」と考えられる。これは精神医学的な診断名ではないのだが、福祉系や心理系などいわゆる支援職、援助職の領域でかねてから問題になっていた現象だ。

 この領域の職業に携わる人は、病人、被虐待児童、障害のある人、認知症の高齢者などさまざまな立場の当事者たちに寄り添い、その話を聞き、援助の手を差しのべるのが日常となっている。多くはそういう仕事に就くことで、弱い立場にある人のために自分の力を使いたいという志を持つ人であるために、知らずしらずのうちに「相手の立場に立つ」姿勢で仕事にのぞむ。ときには児童を虐待した親に怒りを感じたり、病の床にある人の苦しみを追体験したりもする。

 ところが、そういう共感的な態度を長期間続けると、心身は次第にエネルギーを削り取られ、ダメージを受ける場合があることが知られるようになったのだ。具体的にはそれは、不安感や落ち込み、イライラや怒り、集中力の低下、慢性疲労や頭痛、吐き気などの身体的不調として現れる。もちろん仕事の効率は下がり、ミスも目立つようになるので、それが「共感疲労」だと気づくことができなければ、本人は「私のがんばりが足りないのだ。これでは相手に申し訳ない」とさらに自分をむち打とうとするという悪循環に陥る。当然、疲労はさらに蓄積して、仕事の効率や成果も下がる。そのうち何をやってもうまくいかなくなり、「私はこの仕事に向いていないんだ」と退職したり、ついに“燃えつき状態”になって起き上がれなくなったり、悲劇的なケースでは自責の念から自ら命を絶つ人もいる。

 もちろん、今回のウクライナ侵攻では、日本の人たちのほとんどは職業上、この問題にかかわっているわけではない。しかし、前述したようにおびただしい量の情報に触れ、あたかも目の前にいる人にするように現地の人たちに感情移入しているうちに、程度の差こそあれ、この共感疲労の状態にまで至っている人が少なくないことは十分、考えられる。

 さらに、「共感」はウクライナの人たちに対してのみ起きるわけではない。侵攻が長引き、世界からロシアへの種々の経済的制裁が加えられることによって、ロシアの一般国民の生活も苦しくなりつつある。ネットやクレジットカードが使えなくなり、外資系の店の多くは閉店。外国企業の引き揚げで職を失った人もいる。そういう状況が伝えられ、「ロシア国民が戦争を起こしたわけではないのに」と気の毒に思うのも「共感」であり、その結果、「共感疲労」が起きることも当然ありうる。

③「サバイバーズ・ギルト」という問題

 いくらSNSでウクライナ侵攻や被害を受ける人を身近に感じるといっても、スマホから目を上げればそこには“いつもの日常”が広がっている。日本はとりあえず平和で、春風も吹き始めた。子どもが受験に合格したとか友人が昇進したといった、この時期ならではのうれしいニュースもある。多くの人は、心の中で「私のまわりは、いまのところ平和でよかった」とホッとするのではないか。

 ところが、そこで「ここだけ平和でよいのか」と苦しむ人もいる。災害や事故などで生き残った人たちや、被害が少なかった人たちを襲うこういった感情は、心理学で「サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)」と呼ばれている。アウシュビッツ収容所から生還したユダヤ人が戦後、抱いて苦しんだ感情として知られたものだ。

 東日本大震災のあと、津波や原発事故の被災地から離れた東京の診察室でも、「ここは無事で水も電気も食べものもあります。ふつうの生活を送っているのが申し訳ない。温かい食事を私だけ食べてよいのか」と「サバイバーズ・ギルト」を訴える人が大勢いた。今回も一部の人たちは、「日本が平和でよい季節であればあるほど、ウクライナと比較して申し訳なさを感じる。素直に喜んだり楽しんだりできない」と感じているのではないだろうか。

 繰り返すが、今回の戦禍ではSNSにより、私たちはウクライナ、さらにはロシアで生きている“個人”とつながり、その人たちの苦しみや嘆き、あるいは受けている被害をリアルタイムでダイレクトに知ることができる。職場の同僚がこんな話をしてくれた。

「インスタグラムでウクライナからポーランドに避難中の人のアカウントをフォローしている。避難する直前から見ていたので、無事に国境を越えられるか、ハラハラしながら見守っていた。いろいろ困難はあったが、なんとか向こうに着いたときは思わず涙がこぼれた。

 そのアカウントの投稿をさかのぼって見ると、わずか1カ月前まではふつうに洋服やヘアスタイルの写真をアップしているおしゃれな女性だったんだよね。それが、いまはほとんど着の身着のままで知らない場所に逃げている。本当にやるせないよ」

 こんなふうに、戦地にいる個人の現実や心情に没入しながら戦争のゆくえを見守った経験を、私たち人間はこれまでしたことがなかったはずだ。「遠い国の戦争」を身近な問題として感じるには、少ない報道から精いっぱいの想像力を働かせたり、現地でのジャーナリストのルポを読んだりするしかなかった。しかし、現代は違う。手の中のスマホをちょっとだけ操作すれば、そこにはいま空爆を受けている町からのリアルタイムの映像配信があり、住み慣れた家を離れて逃げようとしている人たちの悲痛な姿がある。場合によっては、その人たちとメッセージのやり取りをすることさえできる。

 それによって私たちの心がどんなダメージを受けるのか、わかっている人は誰もいない。今回はPTSD、共感疲労、サバイバーズ・ギルトといった従来から知られている概念を用いて説明を試みたが、その枠には収まらない“何か”が、戦地にいるわけではない私たちの心身に起きる可能性もあるのだ。

「それを避けるためにも情報には触れすぎないでください」と言うのは簡単だ。しかし、それははっきり言って無理だろう。また、ウクライナやロシアでいま「何が起きているのか」を知るのは、好むと好まざるとにかかわらず、グローバル社会を生きる私たちの責務だとも言える。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ただ、それでもやはり知っておくべきだ。SNSによって世界の個々人に届けられるこの戦争は、これまでとは次元の違う没入感をもたらしている。戦地にいない人の心にもたらされるショックや恐怖、同情や怒り、悲しみなどの強い感情、罪悪感などの大きさは計り知れない。そしてその結果、想定外の心理的ダメージを受け、そのままメンタル不調に陥る人が出てきても不思議ではない。

 根本的な対策はただひとつ、戦乱が早く収まることなのであるが、それまでの間、それぞれがなんとか自分や家族の心を守ることも考えるべきだ。そうなるとやはり、スマホやメディアとの接触時間を減らす、自分を休ませ楽しいことに集中する時間も持つ、運動なども取り入れてからだに注意を向ける、といった常識的な対策しかないということになるだろうか。そして、不眠や落ち込みが続くようになったら、早めにメンタル専門医のもとを訪ねて相談する。現時点で思いつくのはこれくらいだ。

 とはいえ、これまでにはないことが起きているのだから、対策もこれまでにはなかったものが必要になるはずなのだ。この問題は、これからも引き続き考えたい。


 ようやく雪がやんでくれた。今朝も除雪車が来ていった。明日からは日も指すようだが、週間天氣予報を見てもまだ数日雪マークがある。これでは大幅に雪融けが遅れそうだ。


年金生活者にも思いやりを!

2022年03月21日 | 社会・経済

思いやり予算に追加狙う アラスカ訓練まで日本負担

燃料・食事…底なしの対米従属

「しんぶん赤旗」2022年3月21日

 

 米軍思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)の新たな特別協定が参院で審議入りし、岸田政権は月内の承認を狙っています。新協定では、「沖縄の負担軽減」を口実とした米軍機の訓練移転先として新たにアラスカを追加。米軍が米本土で実施する訓練経費まで、なぜ日本側が負担しなければならないのか。その不当性が問われます。

拡大する領域

 日本政府は特別協定に基づき、1996年度から訓練移転費を負担しました。当初、移転先は国内に限られていましたが、2011年に発効した新たな協定では、在日米軍再編の一部としての米軍機の訓練移転先に「米国の施政の下における領域」を追加。米領グアムや北マリアナ諸島での訓練経費を負担するようになりました。今回、「…又は同国の領域」という文言が加わり、アラスカが明記されました。

 在日米空軍は毎年、アラスカで行われている多国間共同演習「レッドフラッグ・アラスカ」に参加。これには航空自衛隊も参加しており、一部が日米共同訓練となっています。米軍再編に伴う訓練移転は日米共同訓練も兼ねており、レッドフラッグ・アラスカが「訓練移転」とみなされれば、米軍が自前で支出していた費用を日本が肩代わりすることになります。

他国に例なし

 防衛省の資料によれば、負担内容は「米軍航空機の飛行経費、人員・物資の輸送費、給食・宿舎の管理サービス等」となっています。つまり、日本から飛行する際の燃料費や機材の輸送費に加え、米領内の基地で訓練を行うにもかかわらず、食費や宿泊費まで負担するというもの。対米従属極まるものです。

 訓練移転費の負担については、政府自身「他国で同様の費用を負担している例は見当たらない」(08年3月26日、衆院外務委員会、西宮伸一外務省北米局長)と認めているように、米国の同盟国の中でも例のない異常なものです。しかも「米国の領域」に地理的な限定はなく、米領内でのすべての共同訓練経費を負担させられる可能性も排除されません。

 特別協定に基づく訓練移転費の負担額はこれまでに600億円を超えていますが、沖縄ではむしろ米軍機の訓練は激化し、爆音被害や事故の危険はいっそう拡大しています。さらに、沖縄から本土に移転された訓練は質量ともに強化され、「本土の沖縄化」をもたらしています。

 日米地位協定上も負担根拠のない思いやり予算は直ちに廃止すべきです。


 今日も雪の日でした。吹雪ではないのですが、濃密な雪の量で、運転をしていても視界が悪い、ライトを点けての運転でした。

これは今朝の様子。その後も降り続け10cmを超えています。春はまた遠のく。


ウクライナとミャンマー、避難民受け入れ、なぜ差があるの? 

2022年03月20日 | 社会・経済

入管、政治や経済に目配せ「同じように助けて」

「東京新聞」2022年3月20日

 ロシアの侵攻を受けたウクライナからの避難民について、日本政府が受け入れに積極姿勢を示している。支援に手を挙げる地方自治体も相次ぐ。難民認定者数が極めて少なく、「冷たい」と言われてきた日本。人道主義に覚醒し、困窮する外国人に分け隔てなく門戸を広げる国に変身した? いや、ウクライナ以外の国への対応に目をやると、答えは「イエス」ではなさそうだ。(北川成史)

◆就労可能な1年間の「特定活動」認める

 ロシアのウクライナ侵攻から6日後の2日、岸田文雄首相は記者団に「ウクライナの人々との連帯を示す」と強調し、避難民の受け入れを表明した。

 1日5000人というコロナ禍対応の入国者数制限からも除外。「日本に親族や知人がいる人の受け入れを想定しているが、それにとどまらず人道的な観点から対応する」と語った。

 この方針のもと、出入国在留管理庁(入管庁)によると、2日以降15日までにウクライナの避難民57人が入国した。

 避難民らの入国時の在留資格は基本的に、旅行者と同様、90日間の「短期滞在」の在留資格になる。古川禎久法相は15日の記者会見で、短期滞在から就労可能な1年間の「特定活動」への変更を認めると、追加のサポートを発表した。

 国の動きを受け、全国の自治体が次々、協力姿勢を見せた。首都圏では神奈川や茨城が県営住宅、横浜が市営住宅を提供する方針を表した。水戸市は市長自ら庁舎にウクライナ国旗を掲揚。人道支援の募金も始めた。神奈川や横浜はウクライナの州や市と友好関係を持つが、同国と特段の縁がない自治体も名を連ねた。

◆ミャンマー人には制約も

 ただ、海外で紛争や弾圧がある度に、国や自治体が今回のウクライナ侵攻と同じ素早さと手厚さで対応しているわけではない。

 例えば、昨年2月1日に軍事クーデターが起きたミャンマー。政府は約4カ月たった5月末、母国の情勢不安のため日本に残りたい在日ミャンマー人に「特定活動」の在留資格を与える緊急避難措置を導入した。

 入管庁によると、今年2月末までに約4500件の申請があり、約4300件が措置の対象になった。

 表面上の数字は、ミャンマー人の滞在に寛容にも見えるが「1年間でフルタイムの就労可」のウクライナ人と比べ、制約が多い。

 まず、在留期間は、特例的に1年のケースもあるが、6カ月が基本だ。就労時間に週28時間の上限が設けられる人もいる。

 入管庁の担当者は「両国を比較して検討したわけではない」としつつも、ミャンマー人の中に、技能実習や留学の資格で入国後、就労制限なく長期滞在できる「難民」の認定を受けようとする人たちがいる点を制約の理由に挙げる。

 つまり、在留の根拠が微妙な人たちが、緊急措置に乗っかり、格段に条件のよい在留資格を得ないようにする対策というわけだ。

 人道的配慮をアピールしつつ、腹の底ではミャンマー人に疑いの目を向けるいやらしさが漂う。

◆ウクライナ支援は一種の「ブーム」か

 クーデター後、自治体レベルでミャンマー人支援の広がりはない。先述のウクライナ支援をする首都圏の自治体も、ミャンマー人向けの施策は講じていない。

 水戸市の担当者はウクライナ支援について「市長が音頭を取り、市を挙げて活動すべきだという方向性になった」と「トップダウン」をにおわせる。

 確固たる人道上の信念に基づく支援というより、全体の流れに合わせた一種のブームなのではないか。

◆「ミャンマーの国民も苦しんでいる」

 ミャンマー現地の人権団体「政治犯支援協会」によると、クーデターから18日までに1700人近くが国軍に殺害された。国連難民高等弁務官事務所によると、1日現在で50万人超が国内避難民となり、約5万人が隣国に逃げている。国連人権理事会が設置した独立調査機関は2月1日、国軍の市民への弾圧が「人道に対する罪や戦争犯罪に相当する可能性がある」とする声明を発表した。

 隣国に侵攻されたウクライナと違いはあるが、深刻な人権侵害が起きている。だが、クーデター後の避難民を受け入れる特別な仕組みは日本にない。

 「ミャンマーの国民も苦しんでいる。ウクライナの人と同じように受け入れてほしい」。関東地方の40代のミャンマー人女性は、切実な胸中を吐露する。

 ミャンマーには高齢の親を含む家族がいる。家族はクーデターへの抗議活動に加わったため、転居しながら、国軍の弾圧を避けている。安全な日本に来たがっているが、在留資格を得られないため、叶わない。

 女性は在日ミャンマー人の仲間と日本で抗議活動をしている。「自分の活動で母国の家族が逮捕や拷問をされないか、私たちはぎりぎりの思いで闘っている」

 緊急避難措置では、在日ミャンマー人の難民認定申請者について、迅速に審査し、難民と認められなくても、特定活動の在留資格を与えるとの規定もある。

◆「緊急避難措置」でも8割が難民認定されず

 入管庁によるとクーデター後、11月末までにミャンマー人16人が難民認定された。だが、措置導入後約10カ月たっても、中ぶらりんの人が多くいる。

 「緊急とは名ばかりで、遅々としている」。全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は批判する。渡辺氏が関わるミャンマー人の難民認定申請者165人のうち、約8割の129人に結論が出ていない。結果が出た36人も、難民認定は1家族5人のみ。残りは特定活動だった。

 結論が出ていない東京都内の女性(38)は14年間にわたり、入管施設収容を一時的に免れる「仮放免」の扱いだ。就労はできず、生活費は友人らに頼る。

 女性は国軍との内戦が続く少数民族カチン人。2006年以降、4回の難民認定申請をしている。認定を求めて提訴し、20年に地裁で勝ったが、高裁で覆り、不安定な立場のままだ。

 「緊急避難措置で在留資格を得られると思ったが、入管から連絡がなく、がっかりする毎日」と漏らす。

◆背景に入管の政治的思惑が

 渡辺氏は「入管が政治や経済に目を向けている」と根本的な問題を指摘する。

 冷戦時代の仮想敵で、北方領土を争うロシアに対しては、日本はウクライナ人保護を含め、欧米と共同歩調で対峙しやすい。

 一方、ミャンマーには日本は累計117億ドル(約1兆4000億円)の政府開発援助(ODA)を支出。11年の民政移管後は「アジア最後のフロンティア」と官民こぞって進出を図った。関係が悪化し、権益をライバル中国に譲りたくないという思惑が政財界にある。

 さらに日本はクーデター後、ミャンマーには、対ロシアのような制裁を科していない。軍政にも配慮する姿勢がミャンマー人の処遇に跳ね返るという構図だ。

 1990年代まで使われた入管職員の教材には、非友好国と比べ、友好国出身者の難民認定は、相手国との関係から慎重になり得るとの記述があった。差別的な意識は「変わっていない」と渡辺氏は厳しくみる。

 実際、日本国内の難民支援団体によると、日本が「友好国」のトルコ出身のクルド人を難民認定した例はない。2020年の認定総数は47人。年1万人以上の欧米の国々と格段の開きがある。

 助けを求める人々に対して、格差のある扱い。渡辺氏は「ミャンマーやウクライナの問題を機に見直すべきだ」と訴える。


「人道」「人道」というが、戦争がその極みにあるのは言うに及ばずであるが、その前の小さな「人道」を大切にすることが戦争を回避させるのではないだろうか?


グレタさん達「ロシアのガス買うな」、ウクライナの若者達と声をあげる-日本の環境団体も岸田首相らに要求

2022年03月19日 | 自然・農業・環境問題

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

 スウェーデンの著名な環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが立ち上げた、温暖化防止を求める若者達のネットワーク「Fridays For Future」(フライデーズ・フォー・フューチャー/未来のための金曜日)が、ウクライナ侵攻への抗議活動を各国で開始。「ロシアのガスを買わないで!」等と訴えている。同様の動きは日本でもあり、複数の環境団体が連名でロシアのガスを買わないことや、再生可能エネルギーを推進すること等を、日本の政府や企業に求めている。

◯グレタさん達がウクライナの若者達と連帯

「今、ドイツはロシアのエネルギー禁輸を妨げています。ヨーロッパは(天然ガスや石油等の)化石燃料のために6億ユーロ(約790億円)以上を、毎日、プーチンに支払っているのです」「このお金は人命を犠牲にしています。ウクライナの人々に対する戦争の資金源になっているのです。平和のための禁輸措置を強く求めます」-そう、ツイッター上で訴えるのは、フライデーズ・フォー・フューチャーのウクライナ支部。そして、それをグレタ・トゥーンベリさんも自身のツイッターで引用し拡散している。

 天然ガスや石油は、ロシアにとって最大の輸出品であり、同国政府歳入の4~5割を占めている。だが、欧州は天然ガス需要の4割をロシアからの輸入に頼っており、とりわけロシア依存の割合が大きいドイツは「天然ガス禁輸に後ろ向き」と批判されているのだ。その様な経緯もあり、今月8日、EUの行政執行機関である欧州委員会は、ロシア産天然ガスの輸入を6割減らし、「2030年までの早い段階で」ゼロにまで減らすことを決定。また、先月ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が演説で語ったように(関連情報)、短期的には、世界の他の地域から天然ガスを確保するが、中長期的には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを増やしていくとしている。

 各国のフライデーズ・フォー・フューチャーの支部は、今月3日、世界40以上の都市でロシア軍によるウクライナ侵攻に抗議するデモを行ったのだという。フライデーズ・フォー・フューチャーのロシア支部も、「ウクライナと共に立つ」と書かれたグレタさんのツイートを引用。同支部のツイートによると、13日、二人のメンバーがデモ中に逮捕されたとして、その解放を呼びかけている。

 

https://twitter.com/GretaThunberg/status/1499765584761962496
https://twitter.com/GretaThunberg/status/1499765584761962496

◯日本の環境団体も脱炭素と平和の両立求める

 ロシアの戦費を断つべく、日本の環境NGOも複数の団体が連名で「ロシアの化石燃料プロジェクト及び投融資からの撤退」等を求めている。今月17日、350.org Japan、FoE Japan、気候ネットワーク等の環境NGOは、欧米やアジアの環境NGOと共に声明を発表。同声明は、ロシア産のガスや石炭火力発電が、環境にも平和にも悪影響だと指摘。

 と求めている。さらに伊藤忠や丸紅、三井物産、三菱商事などがサハリンでの石油及びガス開発事業に関わっていると指摘、「ロシアの石油及びガス事業から撤退しない場合、これらの企業の評判は回復不能なまでに損なわれるでしょう」と呼びかけている。確かに、それでなくても化石燃料への投資が多い日本の公的機関や金融機関などは「脱炭素の流れに逆行している」と国内外の環境NGOから非常に評判が悪い。その上ウクライナに侵攻し病院や非戦闘員の避難所まで攻撃しているロシアとのビジネスを続けるというのであれば、さらなる批判が日本に向けられることになるだろう。

現在のウクライナ情勢を超えて、化石燃料の採掘は全世界で紛争を助長しており、また、気候危機を進行させています(中略)日本政府及び日本企業には、日本の将来のエネルギー安全保障を確保し、より平和的で持続可能な未来の実現を支援するため、全世界の化石燃料に関して、事業拡大や出資を停止し、政府主導の化石燃料の管理された衰退を早急に進め、再生可能エネルギーに対する投資を行うことを求めます。

として日本の政府や企業に対し、今月23日までにこれらの要求への回答を示すよう促している。ウクライナ情勢は、今後の日本や欧州での脱炭素の流れにも大きく影響しそうだ。

*     *     *

中高生「侵略止めよう」

名古屋 繁華街 200人パレード

「しんぶん赤旗」2022年3月19日

 ロシアのウクライナ侵略を止めよう。あらゆる戦争・紛争に反対し、誰もが安心して生きることができる平和な未来をつくろう―。18日、愛知県の中高生200人余が雨の中、名古屋市中区栄の繁華街をパレードし、「NO WAR!」の声を響かせました。

 愛知県高校生フェスティバル実行委員会が「平和は願っているだけではかないません。だからこそ、私たち中高生が立ち上がって行動をしていきましょう」と呼びかけ、開催。

 久屋大通公園・光の広場での緊急集会では、各校の取り組みが報告されました。桜丘高校(豊橋市)は教育機関で唯一の「原爆の火」をともす学校で、学校ホームページ上に「平和宣言文」を掲載。「同世代の若者が傷つけあうのはもう見たくない。平和を願うムーブメントを広げよう」と呼びかけました。声明文を決議した安城学園高校(安城市)は、震災と原発事故に遭った福島にヒマワリとともにたくさんの笑顔を増やそうと「福島ひまわり里親プロジェクト」に取り組んできたと紹介。「福島と同じように、ヒマワリが一面に咲くウクライナで、たくさんの人々の笑顔があふれるように」とヒマワリを持って参加しました。(ここに掲載された写真が良かったのだがアップできなかった。)

 高フェス実行委は、「私たちは過去の戦争を通して戦争は絶対にしてはならないことだと学んできた。この戦争を止め、今後再び起こさないために学び、考え、行動していこう。世界に向けて声を上げよう」とする高校生緊急アピールを発表しました。

 パレードでは、「NO WAR」と書かれた傘や大きな手作りの看板も目立ち、買い物客や通行人に注目されました。


 あちらこちらで若者たちの声が上がってきています。「正義」を貫く若い声に期待が持てます。核を共有せよとか、軍備を拡充せよとか、原発推進などという古い「おじさん」的思考を捨て、新しい未来志向の「地球」、「人類」を確立しよう。「愛国」ではなく「愛球」のために。


内田樹 ウクライナ危機と「反抗」

2022年03月18日 | 社会・経済

内田樹の研究室

2022-03-17 jeudi

 ある農業系の新聞から寄稿依頼があった。ウクライナ危機と食料安全保障について書いて欲しいということだったけれど、ぜんぜん違うことを書いてしまった。

 ウクライナへのロシア軍の軍事侵攻が始まってから、いろいろな媒体から意見を求められた。こうして農業の新聞からも寄稿依頼がある。これは尋常なことではない。私はもちろんロシアやウクライナの専門家でもなんでもない(むろん農業の専門家でもない)。

 だから、2014年のクリミア併合の時も、それ以後の親露・分離派との東部での紛争の時も、誰も私に意見を求めにこなかった。クリミア併合も東部の分離活動もいずれもプーチンが行った「特殊な軍事的作戦」であり、ウクライナにとっては国難的な危機であったけれども、その当時、私の周りで「ウクライナはこれからどうなるのだろう」ということが話題になるということはなかったし、むろん寄稿依頼もなかった。それが今回はまったく様相が違う。これまでとは違うことが起きているということを誰もが感じ取っているのである。

「これまでウクライナのことに何の関心もなかった連中が急に騒ぎ出した」というふうに冷笑的にこの事態を眺めている人もいる。シリアやアフガニスタンでロシアが軍事行動をした時には、何もせず手をつかねていた人間が、今回に限ってウクライナ大使館宛てに寄附をしたりするのは嗤うべきダブル・スタンダードだと指摘する人もいる。その通りかも知れない。でも、そのような指摘は半分は当たっているけれど、半分は違っている。というのは、同じような構図の中で、同じようなプレイヤーが演じる、同じような政治的出来事であっても、そこに「これまでと違う何か」を感知すると、人はそれまでとは違うリアクションをするものだからだ。

 アルベール・カミュは『反抗的人間』という長大な哲学書の冒頭に、同じような出来事が続いても、ある時に「何かがこれまでと違う」と直感すると人間はそれまでにしたことのない行動をすることがあるという話を記している。主人の命令につねに唯々諾々と従ってきた奴隷が、ある日突然「この命令には従えない」と言い出すことがある。「今までは黙って従っていたが、さすがにこれには従えない」と言い出すのだ。この時に奴隷が抗命の根拠にした「踏み越えてはいけない一線」なるものは事前に開示されていたものではない。それを踏み越えようとする時にはじめてそこに「越えてはいけない一線」が存在していたことがわかる。そういうものなのだ。

 この独特の感じをアルベール・カミュはrévolteというフランス語で表そうとした。日本語では「反抗」と訳されるけれども、「反抗」では一義的に過ぎていて、この語の独特な、曖昧な感じを汲み尽くせない。カミュの言葉をそのまま採録しよう。

「誰かが『勝手なふるまい』をして、境界線を越えてその権利を拡張しようとする時、人がそれに抵抗するのは、『ものには限度がある』と感じるからである。その境界線をはさんで一つの権利と別の権利が向き合っており、互いを制限している。反抗の運動はそこでなされた許し難い侵犯行為に対する決然たる『否』と、反抗する人間の側の『自分はそうする権利がある』という曖昧な確信というよりは気分にもとづいている。」(Albert Camus, L'homme révolté, in Essais, Gallimard, 1965,p.423)

 これは今のウクライナとロシアの関係を言っているようにも読める。でも、ここでカミュが書いているのは、領域侵犯行為に対して、人が反抗を選ぶのは、単に「もう我慢ならない」という感情に衝き動かされているだけではないということである。これを受け入れてしまうと、自分ひとりでは弁済し切れないほどのものを失うと感じた時に人は反抗を選ぶ。それがカミュの考えであった。

 自分ひとりが屈辱に耐え、苦痛を甘受すれば済むことについてなら人は必ずしも「反抗」を選ばない。「私一人が苦しめばそれで済む」と思えるのなら、権利侵害を受け入れることは心理的にはそれほど難しくない。私ならそうするかも知れない。だから、人が死を賭しても「反抗」を選ぶのは、ここで権利侵害を受け入れたら、それによって失われるのはその人ひとりの権利や自由ではなくなると感じるからである。

 カミュはこう続けている。

「人が死ぬことを受け入れ、時に反抗のうちで死ぬのは、それが自分個人の運命を超える『善きもの』のためだと信じているからである。人が自分が護っている権利を否定するくらいならむしろ死ぬ方を選ぶのは、その権利を自分自身より上に位置づけているからである。人がある価値の名において行動するのは、漠然とではあっても、その価値を万人と共有していると感じているからである。」(Ibid., p.425)

 そうだと私も思う。だから反抗的人間は孤独ではない。その反抗の戦いを通じて、潜在的には万人と結びついているからである。

 ウクライナ市民たちの勇敢な戦いの動機を多くの人は「愛国心」によるものだと説明している。そして、「愛国心は有益だ(どの国の国民もこれくらい愛国心を持つべきだ)」と考えている人たちが一方におり、「愛国心は有害だ(現に、そのせいでたくさんの人が死んだり傷ついたりしている)」と考えている人たちが他方にいる。ここには対話の余地がない。

 でも、もしいまカミュが生きていたら、ウクライナで戦っている人たちやあるいはロシア国内で投獄のリスクを冒しながら「反戦」を叫んでいる人たちは必ずしも「愛国心」からそうしているのではないと言うだろうと思う。彼らはそれよりもっと上位の価値のために戦っているのだ、と。

 愛国心のための行動と、それよりもっと上位の価値のための行動は、外見的にはよく似ている。ほとんど見分けがつかないほど似ることもある。

 戦っている人たち自身も「あなたが『反抗』を選んだ動機はなんですか?」と訊かれたら「愛国心ゆえです」と答えるかも知れない。でも、それでは、いま世界中の人たちがこの出来事をわが身に切迫したものとして感じていることの説明がつかない。私たちは他国の人の愛国心については、それがどれほど本人にとってはシリアスで必至のものであっても、それほど感動することはないからだ。

 例えば2021年の1月6日に米連邦議会に雪崩れ込んだトランプ支持者たちは主観的には「命がけでアメリカの理想を守ろうとした」愛国者だったと思う。今でも「彼らは愛国者だ」と擁護し顕彰する人たちはいるし、あるいはほんとうにそうなのかも知れない。けれども、ひとつだけ確かなのは、彼らはアメリカのためには多少の犠牲を払う気はあったが、「万人の権利」のために自己を犠牲にするつもりはなかったということである。

 私たちは他国の人が愛国心を発露しているのを見せられても、ふつうは特段の感動を覚えない。「ああ、そうですか。そんなにお国がお好きなんですか。よかったですね」とにこやかにスルーするか「愚かな。空疎な幻想に取り憑かれてしまって」と冷ややかにスルーするか、どちらかである。

 だから、いまウクライナやロシアで「反抗」の戦いをしている人たちの動機を「愛国心」だと私は解さない。それより「上位の価値」のために彼らは戦っているのだと思う。

 私たちが反抗の戦いをしている人たちから目が離せないのは、彼らがその戦いを通じて、遠く離れた、顔も知らず名前も知らない私たちの権利をも同時に守ってくれていると感じるからである。だから、彼らを孤立させてはならないと思うのである。

 たしかに不合理な話である。

 でも、この反抗者たちが敗れたときに私たちが失うのは小麦やトウモロコシの輸入量とか天然ガスの供給量とかいうレベルのものではない。もっと本質的な何かが失われる。そのことを私たちはたぶん直感的にはわかっているのだと思う。


 今日も不安定な天氣。昼前は曇りだが時折日が指す。こんな日は温度管理が大変だ。昼からは雪が降り出した。明日の予報、マジ☃マークだ。今年の雪融け、大幅に遅れるのではないかと氣にかかる。

 プーチンの説得に山下 泰裕(やました やすひろ)氏 、日本オリンピック委員会(JOC)会長 を派遣して「柔」の心を説いて「指導」してきてはどうか?安倍よりはいいとおもうのだが・・・

 


公的支援見つかるサイト 

2022年03月17日 | 生活

   昨夜の地震、こちらは揺れもなく氣がつかなかったのですが、携帯にどんどんニュースが飛び込んできました。          

 亡くなられた方、負傷された方、その他多くの被害を受けられた皆様にお悔やみとお見舞いを申し上げます。                  

 今回は津波が大きくならなかったこと、原発の事故につながらなかったことで前の大震災ほど被害が大きくならなかったと思います。しかし今回の揺れは前のときより大きかったと証言する人もいます。そして、いつも氣になるのが原発事故です。今回も火災報知器の誤作動と発表がありました。このようなものが身近にあることの危険性を再確認しましょう。

 それにしても11年前を振り返ったばかりのこの時期でしたので、被災された方には、恐怖が蘇ったのではないでしょうか。まだ安心できるような状況ではありません。どうぞご自愛ください。

こちらは今日も雪が降っています。


 

公的支援見つかるサイト 苦労重ねた女性が開発 回答結果を印刷→窓口に持参説明楽に

「東京新聞」2022年3月17日 

「お悩みハンドブック 全国版」のトップページ

「お悩みハンドブック 全国版」のトップページ

 このサイトは「お悩みハンドブック 全国版」=サイトページ。行政手続きのデジタル化を手掛けるIT企業「グラファー」(東京)が運営する。個人情報の登録は必要なく、すべて無料で使える。

 案内する解決手段は、お金や仕事、住まいなどに関する公的な支援制度や相談窓口など二百二十八種類の情報を用意。利用者が年代を選んだ後、十前後の質問に選択式で答えていくと、それらの情報の中から、悩みに応じた支援制度などをピックアップして提示する仕組みだ。

 例えば、成人で精神的な健康を損ない、食事もままならず、死にたい気分になるが精神科にはかかっていない、という設定で回答すると、障害年金、精神科救急情報センター、摂食障害情報ポータルサイトなど、三十八件の情報が示された。各制度の概要から手続きに必要な物、注意点なども解説されている。

 サイトを開発した同社社員の佐藤まみさん(28)は「不登校や虐待、いじめ、精神疾患などの困難は大抵、連鎖していて、幅広い支援が必要な人が多くいる。でも、複雑な支援が必要な人ほど、制度を使いこなすのは難しい」と話す。情報が役所や部署ごとに散在していて、どこに自分が頼れる仕組みがあるのか分かりにくいからだ。

 佐藤さん自身、母親の精神疾患などで子どもの頃から苦労したが、支援の仕組みが多くあるのを知ったのは大学進学後。窓口にたどり着いても、同じことを何度も聞かれて精神的に疲れてしまう。そんな人を減らしたいと、二年前、同社の最高経営責任者(CEO)の石井大地さんにサイト作りを提案して入社。支援制度などの情報を集め、専門家の監修を受けながら説明文や質問も考えた。

 質問では、「ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者ですか?」といった抽象的な表現をしないようにした。「本当に困っている人は、その状況が当たり前になっていて、自分がその分類に入っていることに気付かないことも多いから」と佐藤さん。「不安や身の危険を感じる相手がいるか」と尋ねた上で相手を聞き、虐待か配偶者暴力か、いじめかを判断する。

 また、回答結果を紙に印刷し、役所などの窓口の担当者に示すことで、何度も説明する手間が省け、担当者も理解が進む。「一緒に考えてほしい」「事実確認は最小限にしてほしい」など、希望する関わり方も選択して示せる。担当者との感覚のズレで、不快に感じたり失望したりすることも防げそうだ。

 サイトは、開設約二カ月で利用者数が延べ十六万人を超え、大きな反響を呼んでいる。佐藤さんは「多くの人たちが必要なときに適切な支援につながりやすくなるよう、利用者の意見を聞きながら、より使いやすくて役立つサイトにしていきたい」と話す。

 困っているけれど、どんな支援があるか分からない−。そんな人のために、スマートフォンやパソコンから質問に答えていくだけで、自分に合った公的な支援を見つけられるサイトが一月末に公開された。開発したのは、家族で多くの悩みを抱えながら、必要な支援を受けられずに十代を過ごした女性。「自分と同じような思いをしないように」と二年がかりで完成させた。 (佐橋大)