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内田樹の研究室 辰巳孝太郎さんと対談した

2023年01月31日 | 社会・経済

1月25日に大阪府知事に立候補表明をしたたつみコータローさんが凱風館にいらした。私がTwitterで「辰巳孝太郎さんに大阪市長選に出て欲しい。出たら応援するのに」と書いたのを見て、対談のオファーをしてくれたのである。はじめてお会いするのだけれど、予想通りさわやかな好漢だった。こういう誠実で知的な人に大阪府政を任せたいとしみじみ思った。
対談は「大阪民主新報」に掲載されるが、字数制限があったので、以下にロングヴァージョンを掲げておく。

内田 大阪市長じゃなくて府知事だったんですね(笑)。
たつみ 年末に「明るい会」という政治団体から要請を受けて快諾しました。記者会見で、国政でやってきたが迷いはなかったかと聞かれましたが「ゼロです」と答えました。大阪の悪い政治の大本である維新政治をとにかく変えたいと。
内田 僕は学生時代は反代々木系の活動家だったので、共産党に対してはかなり批判的でした。でも、大学に勤めるようになって、同僚に党員が何人かいて、彼らを知って共産党に対する評価を変えました。組合活動や学務をしているうちに組織の中で一番信用できるのはクリスチャンとマルクス主義者だなと骨身にしみて思うようになったからです。思想の骨格が一本筋が通った人はやっぱり頼りになる。彼らは一度約束したことは守るし、ぶれない。世間の風向きがどうであれ、そういうことを気にしないで筋目を通る。そういう人たちと友人になってから共産党に対する評価を改めました。
たつみ そうなんですか。
内田 そうなんです。政党に対する評価を決めるのは綱領の「政治的正しさ」じゃないんです。そこにいる人間の質なんです。平松邦夫さんが大阪市長の時に特別顧問を委嘱されました。そのときに平松市長に諮問されて教育問題について哲学者の鷲田清一さん、宗教学者の釈徹宗さんたちといろいろ提言をしました。平松さんは2011年の大阪市長選で橋下徹さんに負けましたが、平松さんがもう一期やってくれていたら大阪はこんな悲惨なことにはなっていなかったと思います。大阪の教育現場だって、もっと穏やかで働きやすい環境になっていて、学力低下や教員不足で悩むことなんかなかったはずです。
たつみ 橋下さんが市長になって一番最初にやったのが大阪市職員への思想調査アンケートでした。政治活動への関与や誰に誘われたかまで書かせるもので、泣く泣く仲間の名前を書いた職員もいました。
内田 卒業式での「君が代」斉唱の口元チェックも橋下さんの時に起きましたね。僕はナショナリストですから国旗・国歌に対する敬意はあってしかるべきだと思っていますが、内発的なものでなければ意味がない。愛国心は政治的圧力で強要するものじゃありません。
たつみ 先生は以前、国旗の問題でアメリカの最高裁判決を引いておられましたね。
内田 アメリカ最高裁は1989年に「国旗損壊を罪とする州法は憲法違反である」という画期的な判決を出しました。国旗損壊は個人の政治的意見の表明であり、その権利は憲法修正第1条が認めているとしたのです。判決を支持した判事の1人は「痛恨の極みではあるが、国旗は、それを侮蔑する者をも保護する」という補足意見を記しました。僕はこの「痛恨の極みではあるが」という葛藤を公人として尊いものだと思いました。公人は個人的な心情と原理の間で葛藤するのがふつうなんです。自分と意見の違う人間を含めて市民を代表する仕事なんですから。自分と意見の違う市民を代表する気がない人間には公人の資格はありません。
たつみ なるほど。
内田 維新の政治で僕が最もきびしく批判しているのは、共同体が安定的に存続するために必須の「社会的共通資本」に手を突っ込んできたことです。
 大気や水質や森林や海洋のような自然環境、交通網や通信網、電気ガス水道のような社会的インフラ、そして行政、医療、教育などの制度は専門家によって安定的に管理運営されるべきで、決して政治や市場とリンクさせてはならない。これは宇沢弘文先生の説かれたことですけれども、その通りだと思います。社会的共通資本は政権交代しようと、天変地異が襲おうと、恐慌があろうと、何事もなかったかのように淡々と継続されることが最優先なんです。でも、維新はそれを意図的に政治と市場に巻き込んだ。医療や学校の存否を短期的な費用対効果だけを基準に決定した。新自由主義者が世界中でやってきたことですけれど、それによってどれほどの社会的混乱が起きたか、人が傷ついたか、彼らが知らないはずはない。
 維新は文化も敵視しました。ご記憶でしょうけれど、彼らが真っ先に助成を削ったのが文楽とオーケストラでした。有料公演で黒字が出せない芸能には存在する価値がないという病的な市場原理主義がそれ以後「大阪の常識」になってしまった。本来公共はそういう文化の存続を支援するためのものなのに。
 維新の政治手法は、人間の欲望や怨念や嫉妬といった本音を感情的基礎にしています。確かにそれもリアルなのですが、公共心や倫理のような「きれいごと」を手放したら世の中は持ちません。日本人の倫理的劣化に棹をさした維新の罪は深いと思います。
たつみ 彼らの政治手法は、公務労働者と民間労働者、高齢者と現役世代、困窮者とそうでない人を対立させて分断し、「既得権益」といって攻撃するというものです。そんな分断・対立から連帯・共同の政治への転換を、この選挙で訴えていきたいと思います。
内田 集団内部に「諸悪の根源」を探し出して、「既得権益を不当に享受しているやつらを排除すれば万事うまくゆく」というのは陰謀論の基本です。維新は公務員バッシングから始めて、医療者、教員...と次々標的を拡げました。その結果、大阪の医療も教育も全国最低レベルにまで低下した。
たつみ 行政的には「二重行政」といって市民病院をつぶしたり。
内田 府立大と市立大の統合も「無駄をなくす」ためのはずでしたが、統合のための不要なタスクのせいで、教育研究のための時間が失われました。この統合のための作業で失われた学術的アウトカムを考えると、信じられないほど費用対効果の悪いことをしたことになる。そもそも、校風も教育理念も教育方法も違う大学を統合することはナンセンスです。教育研究機関なんですから、多様なものが共生している方が生産的であるに決まっているのに。

内田 カジノは世界的にすでに斜陽産業になっています。いま黒字なのはシンガポールとラスヴェガスくらいで、米東海岸最大の賭博都市アトランティックシティでも次々カジノが閉鎖されているというのが現実です。コロナによる行動制限、富裕層の偏在、人口減、どのファクターもカジノ商売には先がないことを示しています。まったく歴史的なトレンドを読まずに無理押しするわけですから、大阪カジノは歴史的失敗となることは確実です。大阪はこの後カジノがもたらす巨額の赤字を抱え込んで、苦しむことになると思います。
たつみ カジノはギャンブルだから経済の成長にはなりません。吉村知事は依存症対策を進めていくと言いますが、ギャンブル依存症は1回なれば治癒しないんですよね。世論調査でカジノ反対の理由の一番は、依存症が増えることと治安が心配だということ。現に警察官を300人増やすと言っています。公務員は減らす一方で。
内田 治安悪化もギャンブル依存症も、深刻な社会問題として顕在化するのは何年も経ってからです。その頃には「カジノをつくろう」と言い出した人たちは姿を消していて、責任を取る人間は一人もいない。そして、垂れ流される赤字のツケを払い続けるのは未来の大阪府民市民です。
たつみ 「大阪都」構想の住民投票では、保守の方も含めて運動を繰り広げ、ぎりぎりのところで大阪市廃止を止めました。大阪は人情の街といわれてきましたが、分断をあおる政治ではなく、協調・共同して大阪の経済や文化、教育、医療を守って支えていく大阪にすることこそが私の一番の使命だと思っています。
記者会見でも言いましたが、とにかく討論会をやってほしい。吉村さんはコロナで自分の言いたいことだけ言ってますが、頑張っているのなら、なぜ大阪でこれだけ多くの人が亡くなっているのか。今の大阪がどうなっていて、どう変えるべきか、ぜひ可視化させたいと思います。
内田 討論会はぜひやってほしいですね。
たつみ 大阪の経済を支えている中小零細企業にも光を当てたいと思っています。この間、お会いした東大阪の工場の社長さんは、トヨタの車をつくるAIのアームのねじを作っておられました。そのねじがつぶれて車が造れないと、入院中の社長に電話が掛かってきたんですが、ねじを作れるのはその社長さんしかいないので、手術の翌日に工場に戻って作ったそうです。大阪の中小零細企業が日本の経済を支えているんだと思いました。
内田 僕たちが名前も知らない日本の中小企業が世界的なメーカーのサプライチェーンに繋がっているんです。
たつみ ところが後継者がなくてその代で終わりになると。国の政策として後継者継承支援策はありますが、府に独自施策がないんです。僕が知事になれば、まず東大阪、八尾などに視察に行きたいと思っています。
内田 ぜひ、地方の中小企業の支援をお願いします。このあと日本は急激な人口減を迎えますが、その中で資本主義の延命を図り、経済成長にこだわる人たちにできることは一つしかないんです。それは都市部に資源を集中させ、それ以外の地方は過疎化・無住地化することです。人為的に過密地と過疎地を作る「囲い込み」です。
たつみ 国交省もコンパクトシティとか言っています。スーパーメガシティ構想でも日本は関東、中部、近畿の3地域でいいという方向性です。平成の市町村合併で、合併したところとしなかったところを比較した方がおられるんですが、合併しなかったところのほうが人口が多いと。
内田 そうなんです。合併すると、逆に生活できない土地が増えてくるんです。合併すると、経済合理性を言い訳にして、行政機関も学校も病院も警察も消防も統廃合されて、そういう行政サービスが何も受けられない行政の空白地ができる。「人口の少ないところに行政コストはかけられない。文化的な生活がしたければ都市部に引っ越せ」というのは、「これから先、過疎地には住むな」という政府や自治体からのメッセージなんです。
たつみ 大阪でも人口減で悩んでいる自治体がありますが、そういうところで学校などがなくなると、さらに人が減るでしょうね。
内田 小さな地方都市であっても、行政機関と病院と学校があれば雇用を創出して、地域経済を回せるんです。アメリカの地方都市には、州政府機関と大きな病院と大学だけで雇用と消費を創出しているところがあるそうです。
たつみ なるほど。
内田 行政と医療と教育のための拠点が残っていれば、住民はそこで生業を営むことができる。でも、今日本で行われているのは、行政と医療と教育の拠点「つぶし」です。それが最優先されている。そうやって統廃合を続ければ、雇用が失われ、地域の経済活動が冷え込み、生活に必要な基本的な行政サービスさえ受けられない「居住不能地」がどんどん広がって来る。それより津々浦々に行政機関、病院、学校を維持し、そこを中心に地域経済を回す仕組みをつくるほうが、はるかに合理的な解だと思います。
たつみ 今こそ大々的に打ち出して、これでこそ地域活性化するということと、何でも統廃合、民営化の維新政治は町を衰退させるばかりだということを話していく必要がありますね。
内田 すべての国民資源を都市部に集中する「シンガポール化」を行えば、たしかに人口減社会でも、都市部だけは人口過密状態が維持できますから、それなりに活発な経済活動が営めます。でも、それ以外の土地は無住地化し、居住不能になる。無住地になれば、地価はほとんどゼロですし、生態系を破壊しても抗議する地域住民そのものがいなくなる。ですから、ある意味でビジネスにとってはビッグチャンスなんです。おそらくそうやって人為的に創り出された無住地には原発や太陽光発電や産業廃棄物処理場などが建設されることになると思います。日本の山河がそういうふうに破壊されることに僕は耐えられないんです。たつみさんにはぜひ府内どこでも文化的な生活ができ、生業が営め、伝統的な祭祀や文化を守っていけるような地域を守る政策を掲げてほしいです。
たつみ 街頭で訴えを聴いてくれている人の中には、僕と同世代で、就職氷河期世代で苦しんだ人たちが少なくありません。バブルの後、政策的に貧困がつくられる中で自己責任論を押し付けられてきた人たちに、今まで分断されてきたよね、でもそういう分断はやめよう、やめようと言ってもいいんだ、公務労働者をいじめるなと言っていいんだという言葉が共感されているのを感じます。
内田 たつみさんにはぜひとも知事になって、維新の新自由主義的な政治を止めていただきたいです。僕もできる限り応援します。


「本人が希望したならば、リスキリング(学び直し)に取り組める環境整備を強化していくことが大事という趣旨で申し上げた」

「私自身も3人の子どもの親です」

   …誰の親?「どんな子育てをしたんだ!」

 現状をよく知っておられる。
妊娠したら仕事を辞めざるを得ない女性がたくさんいるという現状である。


オーガニック給食へ 変わる、子も親も経済も!

2023年01月30日 | 自然・農業・環境問題

「東京新聞」2023年1月30日

 日本各地でオーガニック給食への動きが盛んだ。ここ千葉県匝瑳市でも有志で市長や議員や役所に働きかけている。給食を変えると子どもが変わる。長野県の旧・真田町(現・上田市)ではパン給食から無農薬か低農薬の米・野菜などの和食に変えると、アトピーやアレルギーもキレる子も激減。勉学の意欲が高まり学力向上。多くの親も家で手作り料理が増え、加工食品が減る。四十名いた不登校はほぼいなくなり、のちに成人の犯罪件数は半減したという。

 理由がある。加工食品は製造過程でミネラルが抜け落ちる。ミネラル不足では神経伝達物質を作る酵素が働かず、やる気や集中力が低下、イライラし、キレやすくなる。精神障害やうつ症状にもつながる。給食でミネラル豊富な食を得るから良い変化が起こるのだ。オーガニックの玄米和食を給食にする保育園では、感染症が極めて少なく、子どもがおおらかで活発だと他の施設関係者が驚く。

 千葉県では、いすみ市と木更津市がオーガニック米の給食に歩み出している。世界で高騰する農薬や化学肥料を使用しないし、広範囲の田んぼでも除草剤なしで雑草を抑制できる技術もひろがり、土壌汚染が減り、コストが減る上、通常の米価より高く給食で引き取るので、農家さんのやりがいも収入も増える。すると他の農家さんもオーガニックにチャレンジが増える。

 田んぼ体験や生物多様性の課外授業も加わり、愛郷心が育まれ、農家になりたい子どもがおのずと出てくる。安全安心の給食を求めて移住してくるファミリーが増え、お米がブランド化し、市民も地元米を買うようになり、地産地消の度合いが高まる。よってシビックプライド(市民の誇り)は高まる。低所得やひとり親の子どもも学校で安全でおいしい食事にありつける。残飯も劇的に減った。

 アレルギーやうつや発達障がいで苦しむ子や親に健康と笑顔が戻るだけでも意義がある。好循環がこんなに生まれるのにオーガニック給食をやらない理由がある? 各地ローカルからの突き上げで国も「みどりの食料システム戦略」にて推し始めた。遅れるなかれ!

高坂勝(こうさかまさる) 脱「経済成長」、環境、幸せの融合をローカルから実践。52歳>


朝から良い天気だ。その分気温も下がって-20℃を下回った。
昼過ぎから曇ってきて、今は⛄になった。




差別・排外主義に抗う市民たちが見せる希望~共生は国を救う

2023年01月29日 | 社会・経済

家なき人のとなりで見る社会 第25回:

小林美穂子

マガジン9 2023年1月25日
   第25回:差別・排外主義に抗う市民たちが見せる希望~共生は国を救う~(小林美穂子) | マガジン9 (maga9.jp)

 年末も押し迫った昨年12月26日、ホームレス化した難民・仮放免者4世帯の住まいとなる「りんじんハウス」を、つくろいスタッフやボランティアの皆さん総出で掃除した。

 労働を許されず、健康保険の加入もできず、あらゆる社会保障からも除外された仮放免者たちの困窮は留まるところを知らない。

 外国人の医療をサポートする「北関東医療相談会」と「つくろい東京ファンド」を掛け持ちで働く大澤優真さんの携帯電話には、緊急性の高いSOSが連日舞い込む。お金がなくて病院にかかれず、治療が遅れて重篤な状態になる人、ホームレス化してしまう人、自殺を試みたが死にきれず、運ばれた先の病院で応急手当だけされ、生々しい傷のまま家に戻された挙句にホームレス化した人……。

 去年までに部屋を提供した7世帯分だけでも、家賃、光熱費の全額を団体が援助するため、小さな民間の支援団体の能力はとうに越えていた。しかし、緊急性の高いSOSは連日届く。なんとかしなくては、しかし、どうしたらいい……大澤さんは東奔西走しながら頭を抱えていた。

 そんな時に「良かったら自分の物件を使って」と申し出てくれた人がいた。それが「りんじんハウス」である。天の助けのようなこの物件には、今年から4世帯が入居することになる。

 そこでクラウドファンディングでご寄付を募ったところ、ありがたいことにあっという間に目標金額を達成することができた(※2月28日まで募集中)。

 が、しかし、彼らは事情があって国に帰れない人達だ。難民認定や在留許可が出ない限り、この苦境はエンドレスに続くことになる。私達民間団体は、いつまで彼らを支えることができるだろう。

 労働さえ許してくれれば、健康保険に加入できれば、自力で生活できる人が殆どであるのに、なぜこの国は兵糧攻めのような、拷問のようなことを平気でし続けるのだろう。

ネットでは「国に帰れ!」の大バッシングだが……

 日本の入管の収容施設では2007年以降17人の方が亡くなっていて、うち5人は自殺である。2021年3月にはスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが入管施設内で亡くなった。そのことを機に、ブラックボックスだった入管に耳目が集まり、この国が難民条約に加盟していながら、実際は難民認定率が1%に満たないこと、「帰れない」人達に帰国を促すこと以外しないことを疑問視する人も増えた。

 多くの人が関心を持ってくれたきっかけが、誰かの死であることが悲しい。せめて、これ以上、犠牲者を出してはならない。そう願っていた昨年11月18日、仮放免から再収容されたイタリア人男性が、港区の入管施設で死亡した。自殺と見られるとニュースは伝えている。2007年以降の入管施設内での死亡数は18人になってしまった。

 こうした事態を重く見る市民の輪は今、どんどん広がりを見せている。

 個人で難民・仮放免者たちを支援する人、入管施設の人権侵害や暴力を発信する人、デモに参加する人、外国人と市民が交流するイベントを開催する有志、そして部屋を貸してくださる大家さんなど、市民レベルの助け合いの輪は広がっている。

 しかし、SNS上には外国人に対するむき出しの憎悪も溢れている。相手の事情を知ろうともせず、難民認定率の低さに疑問も持たず、「国へ帰れ」と叫ぶ。最も弱い立場に置かれ、抵抗することもできない人達を、匿名性に安全を担保された自称愛国者たちが攻撃する。

 排外主義丸出しの醜い罵詈雑言を見ていると、私はいつも情けなくなる。そして思い出す。日本人が海外で困った時、その国の人々がどうしたかを。

アメリカでホームレスになった高齢男性のケース

 2016年6月、アメリカから一人の高齢男性Mさんが帰国した。1970年代初めに渡米したものの、派遣先の会社が倒産をしたところから職を転々、最後には家賃を払えなくなり、90歳近い老いた体で6年もの長い間、路上生活をしていた。

 洋服や毛布など、生活に必要なものすべてをカートにギッシリと詰めこんで、決まったルートを押して歩く。そんなMさんを家から見ていたアメリカ人青年がいた。

 青年は、高齢で小柄なアジア人男性が巨岩でも押すようにカートを押して歩く姿を見て、とても心を痛めた。痛めたが、行動に移すことはなかった。

 しかし、青年は2度目にMさんを見た時に、「また見て見ないふりをするのか」と自問し、ついにMさんに歩み寄った。それがMさんの帰国につながる出会いの瞬間だった。

 青年はその後、日本人コミュニティとネットワークを作り、Mさんの帰国のための費用をクラウドファンディングで集めることになる。在米日本人の協力者が部屋を提供し、青年が広く協力を呼び掛けた結果、250人から1万2400ドル(約140万円)の寄付が集まった。

 同時に、帰国後のサポートをする日本国内の支援団体を探し、つくろい東京ファンドに白羽の矢が立つ。当団体は高齢者であるMさんが入居できる部屋を借り上げ、そして、6月、Mさんは青年に伴われ、帰国したのである。日米の個人、民間の支援者が連携して実現させた帰国劇だったが、異国の地で何度も死ぬことを考えたMさんを支えたのは、所持金がないMさんにそっとコーヒーを出してくれる有名コーヒー店だったり、彼に声を掛け、帰国プロジェクトを立ち上げた青年や、日本人を含む現地の人達だった。

日本人が異国でホームレス状態に、その時市民は……

 Mさんが帰国してから2カ月後の8月、私のフェイスブックアカウントに、東南アジアの友人や知人からほぼ同時にメッセージが届いた。内容はみんな一緒で「この人を助けてあげて」であり、地元紙が添付されていた。

 記事には、現地で働いていた日本人男性A氏が事業に失敗し、その後、火事や盗難でパスポートや身分証明書、家財道具の一切を失いホームレス状態になっていること、健康状態が著しく悪いこと、在留許可が切れていることが書かれており、見出しには大きな文字で「日本に帰りたい」と書かれていた。

 Aさんを支援していたのは、小さなその町の有志たちだった。持ち回りでAさんを家に泊め、病院に連れて行き、食事を提供していたが、Aさんの体調不良は日に日に深刻さを増していった。

 日本人が海外で困窮しても、日本政府(大使館や領事館)は動かない。

 私は8月に男性のことが新聞に掲載されてから、個人の支援者たちである町の住人たちと粘り強く連絡を取り合っていた。

 支援者たちはAさんを助けない領事館を訴えようとしていた。しかし、ことは全くうまく運ばない。そうこうしている間にも、Aさんの病状は悪化し、このままだと生きて故郷の土を踏めなくなると判断した翌年3月、私は国際電話をかけまくり、領事館の尻を叩きまくって、ようやく膠着状態にあったAさんの帰国が実現することとなった。

 3月半ば、早朝の空港で、私は何十年ぶりかに帰国したAさんとようやくお会いすることができた。その後、Aさんはつくろい東京ファンドのシェルターに入所し、大手術も経験し、今はMさんと同様、生活保護制度や介護サービスを利用しながら地域で一人暮らしをしている。

 在留資格を切らし、家も所持金も失い、重い病気を患った彼の命をつないでくれたのは、東南アジアの小さな町の人達だった。

私達は共存共生できる

 MさんもAさんも帰国を希望していた。地元の人々は、MさんとAさんの意思を尊重し、希望が叶えられるよう、それぞれができる限りの支援をした。

 しかし、日本にいる仮放免者や難民の方々は、帰りたくても帰れない人達だ。この国で明日が見えなくても、収容されて酷い人権侵害を味わっても、それでも自分の国には帰れない。

 「帰れない」。そういう人達を国や市民が非難し、攻撃し、心理的に追い詰め、破壊する意味はなにか? そこから何か得るものはあるのか? そんなことより、彼らが日本で暮らせるようサポートする方がよほど双方の利益にならないか。損得の問題ではないが、より多様で寛容、今風に言えばサステイナブルな社会になると思うのだが違うのだろうか。

 日本人が海外で困窮し、途方に暮れた時、町の人々は彼らを精一杯、助けた。

 日本人も外国籍の人達に対して、そう振る舞う国民でありたい。

 りんじんハウスの掃除には、建物を提供してくださった大家さんも加わった。スタッフのお義母さまの家具や家電が運び込まれ、4世帯の入居が徐々に始まっている。

衰退し、滅びゆく国に必要な変化とは

 日本に10年滞在したBBCの記者が帰任前に書いた“Japan was the future but it’s stuck in the past”と題された記事を目にした。(日本語版の記事はこちら)(mooruより、是非ご一読をお勧めします)

 過去の栄光はとっくに過ぎ去り、30年間市民の生活の質が向上せず、衰退し、破滅に向かう日本を書いた記事だった。衰退の一途から起死回生をはかるには「変わる」ことしかないのだが、残念ながらその見込みはないであろうと記者は書いている。

 この記事の中でとりわけ印象的だったのは、記者が房総半島の限界集落を訪ねた時のエピソードだ。若者はみな都市に移り住み、60人いる村人のうち10代はたった一人。子どもはいない。老人ばかりのこの村で、彼らは「自分たちの死後、誰が墓を守るのか」と心配している。

 記者は東京への利便性や絵葉書のような村の美しさに触れ、「私が家族を連れて移住するといったら?」と聞くと、老人たちはみな顔を見合わせ、気まずそうにする。そして「それには、私たちの暮らし方を学んでもらわないと。簡単なことじゃない」と答える場面だ。

 「村は消滅寸前だというのに、よそ者に侵入されることの方がもっと悪い事態だと思っているのだ」と記者は呆れている。

 記事では移民受け入れの少なさにも触れ、「出生率が低下しているのに移民受け入れを拒否する国がどうなるか知りたいなら、まずは日本を見てみるといい」と辛辣だ。

 過去にポツンと取り残され、それでも変わることを拒む国や社会は、記事にあった房総半島の村のように消滅する運命にあるのだろう。そんな運命に抗うように、市民たちの助け合いは始まっている。国籍や背景を乗り越えて、多様な人達との共存の道を探り、手を差し伸べ始めている。市民一人ひとりの意志に希望を感じる。あなたも是非、参加してほしい。

小林美穂子

1968年生まれ。一般社団法人「つくろい東京ファンド」メンバー。支援を受けた人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネーター(女将)。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで就労。ホテル業(NZ、マレーシア)→事務機器営業(マレーシア)→工業系通訳(栃木)→学生(上海)を経て、生活困窮者支援という、ちょっと変わった経歴の持ち主。空気は読まない。共著に『コロナ禍の東京を駆ける 緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(岩波書店)。

    ⁂     ⁂     ⁂

 

銀行勤めから、芸能活動から…ミャンマー国軍に銃を向ける若者が後を絶たないわけとは

「東京新聞」2023年1月29日 

 昨年10月、東京都内の斎場にミャンマーから駆けつけたコーコー(31)=仮名=は、脳出血で急死した父(59)と20年以上を経て再会した。1990年代、公務員だった父は当時の軍事政権に不満分子と見なされ、日本に逃れて難民認定を受けた。「親子とも国軍に人生を狂わされた」。葬儀後、一人号泣した。

 コーコーは最大都市ヤンゴンで大学を卒業し、銀行で働いていた。クーデター後は他の多くの市民とともに抗議デモに加わった。

◆平和的に抗議しても死ぬだけ

 転機となったのは2021年3月。一緒にデモに参加した17歳の医学生が目の前2メートルほどで治安当局の銃弾に倒れ、命を落とした。市民への武器使用を繰り返す国軍や警察。「平和的に抗議しても死ぬだけだ」と決意を固め、民主派の武装組織「国民防衛隊(PDF)」になる道を選んだ。

 同年5月、訓練を受けるため、少数民族武装勢力「カレン民族解放軍(KNLA)」の支配する東部カイン州に入った。初めて銃を手にし、爆弾の製造法を教わった。学生や農民、教師、医師、画家、格闘家もいた。

 5カ月後、上官の命令でヤンゴンに戻った。ひそかに武器を運び、国軍の動きを観察する役目だった。安全のため住居を転々としたが、22年に入って仲間が次々逮捕された。「拷問され、自分の話もしているかもしれない」。眠れぬ夜を過ごした。

 「ヤンゴンを離れよう」と悩んでいた昨年9月末、父が急死したという知らせを受けた。ブローカーを通じてパスポートを取得し、日本に渡った。

 「何人もの命が奪われた」とコーコー。同じ部隊だった10代と20代の若者も国軍に殺された。父の葬儀後も、拘束の恐れがある母国へは帰れない。日本で難民認定を申請し、街頭で民主派への支援を訴える。

 コーコーが銃を持ったカイン州は都市で活動するゲリラの訓練拠点であり、戦闘の最前線でもある。今年の元日も、同州チャインセイジー郡区では銃声が鳴り響いていた。PDFやKNLAの合同部隊が年末に国軍部隊の拠点を攻撃し、数日間続いた戦闘で双方に大きな犠牲が出た。

◆突然、何かが頰を貫いた

 クーデター前まで芸能活動をし、昨年3月にPDFへ加わったタウンナガー(31)=仮名=は取材に応じたとき、頰ほおから首筋にガーゼが張られ、左手の中指には包帯が巻かれていた。

 「私たちは国軍側の三つの拠点に攻撃を仕掛けた。一つの拠点を押さえて陣取り、残り二つを攻撃しようとした」。そのとき国軍の空爆が始まり、「突然、何かが頰ほおを貫いた」。左手の中指は血まみれになり、ちぎれかけていた。

 今は近くの村の診療所で治療を受けたが、前線に戻れるかは分からない。

 クーデター後、ミャンマー各地でPDFが誕生し、若者を中心に6万人超が入隊したといわれる。入隊希望者はなおも絶えない。コーコーやタウンナガーは、特別な体験をした若者ではない。(文中敬称略)


 非暴力を貫いてほしいと思うが、最大の経済的支援国家日本との関係を断ち切らなければならない。それが一番早い解決方法だ。

 今朝の雪も半端ない。


「非暴力抵抗」という武器

2023年01月28日 | 社会・経済
 
 NHK Eテレ「100分de名著」という番組で、ジーン・シャープの著書『独裁体制から民主主義へ』(ちくま学芸文庫)が特集されている。シャープは、非暴力抵抗運動の理論と方法を説いた米国の政治学者である。1回25分の番組を、4週にわたって放送しているのだが、これが実にタイムリーでずっしりと中身の詰まった好番組である。

 強大な武力を持つ独裁政権や侵略者に対抗するには、より大きな武力を使うしかない。残念ながら、そう、世の中の大半の人は考えている。

 しかしそれは、別に率先して武力を使いたいからではなく、それ以外にオプションがないと信じているからであろう。日本の世論が軍事費倍増に対して容認的なのも、同様の理由によるのだと思う。

 だが、独裁政権や侵略者に対して、武力を使うよりも非暴力の抵抗運動の方がより効果的であるとしたら、どうであろうか?

 『独裁体制から民主主義へ』の魅力は、「非暴力という武器」がなぜ軍事力よりも効果的であり得るのか、そしてなぜ非武装の市民が圧倒的に軍事的に優位な相手を倒し得るのか、歴史的な事例を徹底的に分析した上で、理論化した点にある。同時に、世界各地で起きた独立運動や抵抗運動に指針を与えて、実際に運動を成功させた実績にある。

本欄でも ジーン・シャープについて書いたことがあるが、「100分de名著」という番組は、僕の何倍も上手にわかりやすくまとめてくれている。指南役の中見真理氏(清泉女子大名誉教授)の手際が素晴らしい。

 すでに第3回が放映済みだが、再放送やオンデマンドでも視聴可能である。視聴が難しい人には、番組テキストだけでも読むことを強くお薦めしたい。シャープ入門に最適な教材となるであろう。できるだけ多くの人に観たり読んだりしていただきたいし、平和を希求する市民団体や政党は、勉強会等で積極的に活用してほしいと願う。暴力が支配するこの世の中を変えていくには、私たちはどうしてもシャープの理論と方法を研究する必要があると信じる。

 ちなみに、「100分de名著」第3回で取り上げられたリトアニア独立運動については、現在セルゲイ・ロズニツァ監督による248分に及ぶ大長編ドキュメンタリー映画『ミスター・ランズベルギス』(2021年)も公開中である。

 僕は本作のパンフレット用の原稿に、「ランズベルギスたちはまるでジーン・シャープの非暴力闘争理論を忠実に実行しているかのようだ」という趣旨のことを書いたのだが、彼らが実際にシャープから指導を受けたり著書を活用していたとは知らなかった。そういう意味では、この映画はシャープの理論の成功例を壮大なスケールで描いた作品だとも言えるだろう。独立運動を率いたランズベルギス氏が魅力に溢れ、映画としても非常に見応えがあるので、ぜひ映画館に足を運んでほしい。2月25日(土)には、僕も岡山シネマ・クレールで上映後にトークする予定である。

 また、昨年暮れには待望のエリカ・チェノウェス著『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』(白水社、小林綾子訳)も出版された。ハーバード大で教鞭を取るチェノウェスは、1900年から2006年までに起きたあらゆる革命運動の事例を分析。非暴力抵抗の成功率が5割を超えたのに対して、暴力抵抗の成功率は25%にすぎない結果にショックを受けたという。彼女自身、非暴力抵抗の効果には懐疑的だったからである。彼女は「人口の3.5%が市民的抵抗運動に参加すれば、成功する」とも唱えている。

 ロシアによるウクライナ侵略以降、世界はますます「目には目を」「暴力にはより強大な暴力を」という方向へ傾いている。そして岸田政権はこの機に便乗して、危険な軍拡を強行しようとしている。

 こうした流れに対抗するためには、「戦争反対」「9条を変えるな」と唱えるだけでは不十分だ。武力に代わる「非暴力抵抗」という“武器”と“戦略”を研究し、できるだけ多くの人と認識を共有することが必要不可欠であろう。

 

  想田和弘(そうだ かずひろ): 映画作家。1970年、栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒業。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業。93年からニューヨーク在住。BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。監督作品に『選挙』『精神』『Peace』『演劇1』『演劇2』『選挙2』『牡蠣工場』『港町』『ザ・ビッグハウス』などがあり、海外映画祭などで受賞多数。最新作『精神0』はベルリン国際映画祭でエキュメニカル賞受賞。著書に『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』『観察する男』『熱狂なきファシズム』など多数。


ジーン・シャープの非暴力抵抗理論

2022年04月24日 | 社会・経済

昨年の記事ですが、参考のために。

 
 朝起きると晴れていました。ラッキーと思ったのですがお昼前から視界が悪くなるような雪に・・・。出かける予定もあったのですがやめました。

最期までその人らしい生活を…そのためにいる私たちかな 「介護百首」を目黒の特養が出版

2023年01月27日 | 生活

「東京新聞」2023年1月26日

駒場苑提供

 より良い介護をするための理念や技術を込めた短歌を、東京都目黒区の特別養護老人ホーム(特養)「駒場苑」の坂野悠己ゆうき施設長(42)らが創作し、百人一首のような「介護百首」として今月出版した。端的で分かりやすく、ケアの要点をリズミカルに理解できるのが特長。坂野さんは「介護業界全体に伝えるツールにしたい」と意気込む。(五十住和樹、写真も)

◆実践的な内容ばかり

 「最期まで その人らしい 生活を そのためにいる 私たちかな」

 坂野さんが「介護百首」の最初に掲げた1首。介護とは、お年寄りが人生の最期まで気持ち良く主体的に、自分らしい生活を送るのを支えること。そんなケアを実践する決意がこもる。

 認知症や寝たきりの人が大半を占める特養だが、駒場苑は重度の人でも寝かせきりにせず、食堂で食事をし、できるだけおむつをしないで過ごせる介護を掲げてきた。100首はこうした理念に加えて食事や排せつ、入浴介助のこつ、認知症の人への対応などすぐに役立つ実践的な内容ばかりだ。

◆「五七五七七」なら頭に入りやすい

駒場苑提供

 短歌を創作したのは7年前。介護職全員に効果的にケアの基礎を伝える方法を考えていて、「五七五七七なら頭に入りやすい」と思いついた。ベテラン介護職3人と協力して作った。解説文やイラストを付けたA4判のポスターにして施設の目立つ場所に掲示。面白がって勤務中に読む職員が増えたという。

 2019年から毎月2首ずつ収録したカレンダーを作製。坂野さんがSNSで紹介すると、全国の特養やデイサービスの事業所から「送って」と希望が殺到した。運営法人に1000円以上寄付した人への返礼品として、今年は約500部を印刷するまでになった。今回、「100首まとめて読みたい」との要望に応え、持ち歩いて参照できるようにポケットサイズの本にした。

◆「最期がこれでいいのか」

 坂野さんは大学時代、アルバイトした特養で全員おむつをつけベッドに寝かされ、身体拘束もいとわない介護に疑問を抱いた。「人生の最期がこれでいいのか」という怒りを原動力に、卒業後は資格を取って介護の世界へ。横浜市の特養で「おむつは極力しない」「食事は座って食べる」などと介助方法を工夫し、移籍した駒場苑でも実践した。

 駒場苑が掲げる「寝かせきりゼロ」などに向け、利用者の状況や希望に応じて個別のケアを行うことは、職員から「人手が足りない」「忙しすぎて無理」と反発を受けやすい。坂野さんは、午前のお茶など定例の日課をなくして時間の余裕を生むなど工夫を重ねたという。

 介護職の山本秀樹さん(49)は「介護百首を見ると『確かにそうだな』と納得できる」。職場に来て2年目の川添桃子さん(30)は「読んで自分の介護が変わったと思う」と話す。坂野さんは「カレンダーを発送した500の施設がこうした介護を目指していると思うと、希望を感じます」と笑顔を見せた。本は「駒場苑がつくった介護百首」(ブリコラージュ発行)。新書判、1760円


人間らしく生きたい。
人間らしく死にたい。

久々の青空。
明日からは、また大きな雪ダルマのマークです。



メディア幹部 大軍拡後押し

2023年01月26日 | 社会・経済

「有識者会議」議事録公開 “軍事力強化で世論誘導を”

「しんぶん赤旗」2023年1月26日

 政府は24日、安保3文書改定に向けた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の議事録を公開しました。委員に名を連ねているメディア幹部・元幹部がいずれも、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や軍事費増額のための増税を当然視し、さらなる軍事力強化・国家総動員体制を主張していたことが判明しました。

 読売新聞グループ本社の山口寿一社長は、初会合で「岸田総理は防衛力の抜本的強化という歴史的な決断をされた」と称賛。第2回会合では、敵基地攻撃能力の保有を当然視した上で、米国製の巡航ミサイル・トマホークを念頭に「当面は外国製ミサイル購入も検討対象になる」と発言しました。「外国製ミサイル」購入を主張したのは山口氏だけです。

 日本経済新聞社の喜多恒雄顧問は、増税を念頭に、軍拡の財源について「国民全体で負担するのが必要だ」と強調しました。また、軍需産業の育成を主張。武器輸出の制約を取り除き、「民間企業が防衛分野に積極的に投資する環境が必要だ」と述べました。

 元朝日新聞主筆の船橋洋一氏は、日米共同で敵基地攻撃能力を強化するために基地の日米共同使用を促進すべきだとし、「特に南西諸島と先島での共同使用態勢を整えるべきだ」と主張。財源について「所得税の引き上げも視野に入れるべきだ」と強調しました。

 重大なのは、「読売」の山口氏が、最終回となる第4回会合で、「メディアにも防衛力強化の必要性について理解が広がるようにする責任がある」と、軍拡を容認する世論づくりをする決意を表明したことです。

 戦後の新聞は侵略戦争推進の過ちの反省からスタートしました。しかし、この反省を忘れ去り、再び戦争推進の過ちを繰り返そうとしています。

 「有識者会議」は昨年9~11月に計4回実施され、11月22日、敵基地攻撃能力の保有や公共インフラ、科学技術など国力のあらゆる分野の軍事動員などを盛り込んだ報告書を政府に提出しました。

⁂     ⁂     ⁂

波動 大軍拡阻止へ徹底報道を

河野慎二

「しんぶん赤旗」2023年1月26日

 岸田首相がタガの外れた大軍拡に走り出し、国民に不安が広がっている。▼戦後日本の安全保障政策を大転換する「安保関連3文書」を閣議決定▼敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有▼防衛費を2027年度にGDP比2%へ倍増▼米国製巡航ミサイル大量購入などが主な内容だ。

 憲法9条の「戦争放棄」を否定し、戦後日本の安全保障政策の根幹である「専守防衛」を投げ捨てるに等しい暴走である。

 岸田首相は、国民や国会への説明はそっちのけにして13日、ホワイトハウスに馳(は)せ参じた。

 TBSの「サンデーモーニング」(15日)がこの問題を特集した。

 至れり尽くせりの土産を手にしたバイデン大統領は喜色満面、「日本の防衛費の歴史的な増額で、日米軍事同盟は現代化する」と「称賛」した。

 岸田内閣の大軍拡が国民にどんな影響をもたらすか。番組は沖縄県石垣島と東京の横田基地を取材した。

 防衛省は石垣島に今年春、陸上自衛隊のミサイル部隊を配備する方針だ。石垣市議会は昨年12月、配備反対を決議した。花谷史郎市議が「こっちが撃てば、相手も撃ち返してくる」と、敵基地攻撃能力の実態を批判。

 東京の横田基地では在日米軍と自衛隊の統合的運用が一段と進められようとしている。市民団体の寉田(つるた)一忠さんは「米軍と自衛隊が一体となって戦争をする相手がいるとすれば、一番危険な基地になる」と訴える。

 番組に出演したジャーナリストの青木理氏は、「戦後日本の矜持(きょうじ)とも言うべき安保政策を大転換して、日米軍事一体化でアメリカの下請けみたいに自らを位置付けているが、果たしてこれでいいのか」と岸田首相の対米迎合姿勢を厳しく批判。総合司会の関口宏氏も「一昔前なら、国会で侃々(かんかん)諤々(がくがく)議論したものだが、何だか静かに進んでしまっている」と国会のあり方に苦言を呈した。

 「サンデーモーニング」は、政府の政策大転換と国民への影響を報道の鉄則通り伝えたものだが、他局では同様な報道が見られなかったため際立つ結果となった。

 通常国会が23日、開会した。「岸田大軍拡」阻止が最大の焦点だ。テレビは腹を据えて、核心に迫る報道に徹してほしい。

 (こうの・しんじ ジャーナリスト)


 今日も雪かき。朝の1回で終わらず、昼からも。おかげで1万歩超えました。
まだまだ雪マークは消えません。


ワクチン

2023年01月25日 | 健康・病気

ワクチンのロット番号について

新庄徳洲会病院 院長の偏屈コラム
  2023.01.11

 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝之准教授がYoutubeチャンネルで、コロナワクチンのロット番号について興味深い講義をされていました。ロット番号とは、ワクチンの接種証明書に「製造番号」として記載されているもので、同じ工程で作られたものであるという証明で、バイアルに分けられてもロット番号が同じであれば中身も同じです。新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンは、脂質の膜の中にウイルスのスパイク蛋白の設計図である遺伝子情報が入っています。理由はわかりませんが、製造過程で脂質の膜に入っているmRNAの量にばらつきが生じます。そのため、体内に注入されたmRNAが細胞に入って作るスパイク蛋白の量にも差が生じますが、このバラツキがかなり大きいことがわかっています。厚生労働省は、その程度やロット番号ごとのmRNA量も把握しているようですが公表しません。さらに脂質膜内に導入されたmRNA量の測定方法も非公表です。理由はすべて製薬会社との契約です。

 スパイク蛋白がたくさんできると、生体はウイルスを中和する抗体をたくさん作ります。これはワクチンとしての効果が強いということですが、同時に副反応も強くなるはずです。ワクチンにより作られたスパイク蛋白に毒性があることはほぼ間違いありません。それは、12歳未満への接種量が1/3になった結果、厚労省が副反応と認めている心筋炎が、12歳未満で非常に少なくなっていることからもわかります。同一のロット番号からは約50万回の接種が可能です。これまで我が国では3億7千万回以上接種されているので、最低でも740種類の異なるロット番号があるはずですが、実際にはその倍以上あるでしょう。一方で、これまでに厚労省に報告されたワクチン接種後の死亡者は1900人を超えますが、ある調査では3種類のロット番号で約50人ずつ、合計150人以上が死亡しています。死亡者数とロット番号の種類数から考えると、同一ロット番号の死者は多くても数人になるはずで、危険なロット番号がある可能性があります。

 本当にワクチン接種は利点が欠点を上回るのでしょうか。感染予防にならないことは厚労省や専門家も認めていますが、最近のデータからは逆に接種するほど感染しやすいように見えます。専門家は重症化予防を強調しますが、陽性者だけでなく死亡者まで増加しているのは、中和抗体が感染防御に悪影響を及ぼしている可能性さえありそうです。副反応が非常に少ないことはマウスの実験では証明されていますが、同様にヒトに当てはまるかは不明です。実際に接種後に血液中のリンパ球が、マウスとは異なりヒトでは減少することも指摘されています。

 ワクチンの有効期限は、当初の6ヶ月から4回延長されて、昨年12月には18ヶ月になりました。欧米ではワクチン接種を推奨する国が減りましたが、我が国では、武漢株に対するワクチンは、変異が進んでからも推奨され続け、今では世界一の接種国になりました。オミクロン株対応ワクチンの輸入も進み、昨年末時点で9800万回分以上が供給されています。モデルナ社はワクチンの生産拠点を日本にも作ることになりました。今後も最大の消費国になりそうです。ワクチン接種は世界規模の人体実験であり、私は効果は半信半疑でしたが、高齢の医療者の一人としてその実験台になりました。実験であるなら、結果を分析して公表するのが最低限のルールです。にもかかわらず、情報開示と説明が不十分で、データの改竄とも言えるような意図的操作までしています。こんなやり方の実験材料になるのはまっぴら御免です。長期的な人体への影響がよくわからない、全く新しいメカニズムのワクチンを、これほど頻回に射ったことは歴史にありません。しかも我々が向き合っている病気は、たちの悪いカゼの一種です。このまま日本は新たなワクチンに高額な支払いを続けながら、その最終処分場になってしまうのでしょうか。

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イベルメクチンは是か非か

掲載日付:2021.10.15

 線虫という寄生虫感染の治療法を発見した功績で、2015年にノーベル生理学・医学賞を大村智氏が受賞してイベルメクチンは有名になりました。もともとは細菌感染に有効なマクロライド系の抗菌薬ですが、主にアフリカなどの途上国で流行する寄生虫感染症であるオンコセルカ症による失明や足が象のように大きく膨れ上がる象皮病などの特効薬として、1980年代から数億人に使用され数多くの人を救ってきました。今度は新型コロナウイルスが細胞や細胞の核の中に侵入することを防ぐことが実験で認められ、実際に使用した結果からも有効である可能性が示唆されました。高額な新薬が使えない途上国では、治療薬としてだけでなく予防薬としても配られ、劇的な効果を示した報告もあります。

 一方でWHOを始め先進国ではその有効性は否定されています。今年3月に治療と予防効果と安全性を示した論文が出ましたが、それが捏造であると指摘され、掲載が撤回された事件がありました。一方でこの指摘への反論も表明されています。安価で有効な治療薬に予防効果もあると、様々な製薬会社が巨額の研究費をつぎ込み、当たれば莫大な利益を生む治療薬や予防薬が日の目を見なくなるから、このような否定的な見解を出したという疑惑さえ囁かれています。確かに、新薬の1/1000以下の低コストで、使用経験も十分に蓄積され安全性も高いとなると人類には福音ですが、今回の騒動を利用して大儲けをしようとしている勢力には大きな脅威となります。

 もともとマクロライド系抗生物質は少し変わったところがあり、1回の内服で効果があるものや、抗菌作用以外の有効性が話題になることが以前からありました。膵臓の手術後に腸の動きを早く戻す効果があり術後の経過が改善するという論文があり、20年前に私も使ったことがあります。私がイベルメクチンそのものを処方したのは疥癬の患者さんに1度だけだと思います。我が国でも一部の医師は新型コロナに対して積極的に使用しているようですが、流通量が少なく個人輸入も行われているようです。また、動物に使用されるものをヒトに転用して副作用が出た例もあるそうです。現段階での使用は難しいかもしれませんが、我が国で発見された薬が話題になっているのだからこそ、国を挙げてその有効性を検証すべきではないでしょうか。

 大村氏が名誉教授を務める北里大学は、昨年から臨床治験を開始しました。人手と資金が不足し停滞していましたが、日本の製薬会社が協力に名乗りを上げ、公費の助成もあり、近々結果が発表される所まで来ているようです。もっと早い段階で国が資金援助を行っていれば、すでに結論が出ていた可能性もあります。公平性を保つために北里研究所以外の施設も巻き込み、できれば日本以外の流行国も含めた研究にすればより信頼性も高められたでしょう。役に立つ学問(すぐに金儲けができる研究)を優先し、基礎研究への投資を惜しんだため、ワクチン開発では遅れを取りましたが、既存の薬の有効性を確認するのであれば十分に対応できたと思います。特許切れのため利益がもたらされないこととは無関係でしょうが、イベルメクチンをもともと製造販売していた米国のメルク社は、使用には当初から反対の態度をとる一方で、新型コロナの軽症患者に経口で用いるに抗ウイルス薬を発売しました。重症化や入院を半減させる効果があるようで、米国のFDAに緊急使用の承認を申請しています。この薬の値段が製造コストの40倍であることが米国内で批判されているというニュースがありました。製造コストの40倍というのは、莫大な開発費をかけても実用化されるものが僅かであることを考えるとやむを得ないのかもしれませんが、このような現実を見せつけられると、実はイベルメクチンが有効であるという事実が隠れているのではないかという気もするのですが、ゲスの勘ぐりでしょうか。


 なんでも「金」の時代なのでしょう。「命」より「金」。なんか自公政権の役に立たない武器「爆買い」と同じではないですか。「国」を守るとか「国民の命を守る」とは言ってはみたが、おそらく懐にいくらかバックされるのでしょう。アメリカにただただ貢ぎたい政権に「命」を守るのは自分自身です。
 イベルメクチンは今では国内でも手に入れることもできます。「イベルメクチン通販」で検索すると出てきます。でも、使用には慎重を期していただきたい。一応「抗生物質」ですので耐性菌の問題や、腸内フローラへの影響もわかっていません。

 今日は凄い吹雪です。


小出裕章 「福島第一原発の汚染水問題は日本の原子力の死命を決する問題なのです」

2023年01月24日 | 自然・農業・環境問題

 元京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さん

 元京都大学原子炉実験所助教で原子力廃絶の研究を続けている小出裕章(こいで・ひろあき)さんは語る。「(東京電力)福島第一原発の汚染水をどうするのかという問題は、単に汚染水のことだけではなくて、実は日本の原子力の死命を決する問題なのです」  福島第一原発の敷地内に130トンの東電がいうところの「処理水」、分かりやすくいえば「浄化処理はしたものの主に放射能(物質トリチウム)が残った水」があると言う。「どんなにきれいにしようとしてもトリチウムは絶対に取り去ることはできません」と小出さん。  小出さんは言う。「そのトリチウムで汚染された水を海に流そうと国や東電は言っていますが、やってはいけないことです。トリチウムの半減期は10年です。しかし、いったん海に流して深層に沈めてしまうと、表層に出てくるまでに1000年かかってしまう」  東電の計画では、トリチウムが残る汚染水に大量の海水を混ぜてトリチウム濃度を薄めた上で、沖合約1キロに放出する。政府は浄化処理した汚染水の海洋放出の開始は「2023年春から夏ごろを見込む」としているが、反対の声が上がっている。
 「でも国は必ず海に流します」と小出さんは断言する。
 「それには理由があります。炉心から取り終えた核燃料が250トンあるのですが、その中のトリチウムをどうしようかという話になっています。もし福島第一原発事故がなかったなら、国と東電は青森県六ヶ所村での再処理に回すはずでした」  「六ヶ所村の再処理施設はトリチウムを海に流すと(いう条件で)認可されました。もし汚染水の海への放出が認められないのならば、再処理工場を動かせなくなってしまう」
 「使用済み核燃料の再処理を自民党政権は諦めるわけにはいかない。日本の原子力の死命を決する問題がそこにあるからです」と小出さんは語る。
 六ヶ所村には国の「核燃料サイクル」政策の中核施設が集中している。使用済み核燃料を化学処理してウランとプルトニウムを取り出す「再処理工場」と、それらを混ぜて燃料にする「MOX燃料工場」だ。敷地内に、各地の原発から持ち込まれた使用済み燃料3000トンを保管している。使用済み燃料は全国の原発にもおよそ1万6000トンある。
 使用済み核燃料の処理は、電力会社などの出資で設立された日本原燃(六ケ所村)が担う。だが、1993年の着工から30年経ったいまも稼働していない。97年の完成を目指していたが、相次ぐトラブルや福島第一原発事故などによっての「中断」である。
 日本原燃は昨年の末に「完成時期を2024年度の早い時期」に設定し直した。岸田文雄政権の「原発回帰」方針にのっとって各地の原発の再稼働が進められれば、六ヶ所村での使用済み核燃料の収容能力は限界に近づき、処理が急がれることになる。
 さらに小出さんが問題視するのは日本政府が保有する46トンのプルトニウムだ。長崎型核爆弾を400発作ることができる量である。2013年8月16日のテレビ朝日番組「ニュースステーション」で自民党の石破茂・衆議員議員は次のように述べていた。「原子力発電というのはそもそも、原子力潜水艦から始まったものなのですのでね。日本以外の国は、原子力政策というのは核政策とセットなわけですね。ですけども、日本は核を持つべきだとは私は思っておりません。しかし同時に、日本は作ろうと思えばいつでも作れる。1年以内に作れると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう」
 岸田政権は2022年12月22日、新しいタイプの「次世代革新炉」の新増設や「リプレース」といわれる建て替えをする方向性を打ち出した。次世代革新炉として挙がったのは〇革新軽水炉〇出力30万キロワット以下の小型軽水炉〇高速炉〇高温ガス炉〇核融合炉。
 だが、小出さんは語る。「核融合はできません。仮にできたとしてもやってはいけないと思います。死の灰というダーティーなものを出すのです。核融合のエネルギーはトリチウムです。反応するかどうかの前に、トリチウムそれ自体が放射能物質だから、そういう技術は使ってはいけません。究極的な環境汚染を起こすと思います」
 2011年3月11日、東日本大震災が発生し、それによって巨大津波に襲われた福島第一原発では深刻な事故が起きた。その日に発令された「原子力事緊急事態宣言」は今も解除できないままだ。事故後、一度は原子力からの撤退に向かった。「そして安倍晋三首相ら自民党政権は原発を復活させたいのが本音だったのだろうが、誰もそれを言えなかった。だが、原発回帰を岸田首相は言い出してしまった」と小出さん。
 原発回帰の主な理由の一つとして、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンさが挙げられている。「原子力の燃料であるウランを燃やしてもCO2は出ない。でも、原子力の燃料であるウランを燃やすと核分裂生成物つまり死の灰が出る。核分裂生成物は放射性物質であり、放射線は微量でも生命体に危険を伴う。生命にとって必須の物質であるCO2が悪くて、生命にとって必ず危険を伴う死の灰がクリーンだなどという主張は初めから間違っています」と小出さんは強調した。
 「原発も機械であり事故から無縁ではいられない。事故が起きたらどうするのかという問いに対して、原子力をやっている人たちは非常に単純な答えを出したのです。つまり、都会には原発を作らないことにしたのです。電力の恩恵は都会が受け、危険は過疎地に押し付けられた。こんな不公平・不公正は初めから認めてはいけない」と小出さんは言う。
 ひとたび事故が起こったらどうなるかは福島第一原発事故によって私たちは経験をし続けている。小出さんによると。福島第一原発事故で大気中に放出されたセシウム137は広島原爆にして168発分だと日本政府がIAEA(国際原子力機関)に報告している。
 「面積でいうと約1万4000キロ平方メートルの大地が『放射線管理区域』にしなければならない汚染を受けたのです」と小出さんは説明する。「本来、放射線管理区域では水も食べ物もダメなほどですが、放射能は五感で感じられない。そこが怖いところです」
 「溶け落ちた炉心(デブリ)が今どこにどのような状態で存在しているか、12年近くたとうとする今も分からない。デブリの取り出しは100年たってもできません。そして大地を汚染している放射能の主成分はセシウム137で、その半減期は30年。100年たっても10分の1にし減らないのです」と小出さんは話した。

 小出さんは2023年1月22日に東京都武蔵野市内の「武蔵野プレイス」において、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」が開いた「原発とエネルギーを学ぶ朝の教室」で、「いま、原発回帰を許さない!」と題した講演を行った。150席の会場は満席となった。

 小出さんは原子核工学の専門家。平和利用を志して原子力を学んだが、1970年、宮城県女川での反原発集会に参加したことをきっかけに、原子力利用を止めることを目的として研究を続けることを決意した。京都大学原子炉実験所に勤務しながら反原発を貫き、2015年、定年退職。現在も各地で講演活動を続けている。
 主な著書は、『原発事故は終っていない』(毎日新聞出版)、『フクシマ事故と東京オリンピック』(径書房)、『原発ゼロ』(幻冬舎ルネッサンス新書)など。共著にも『原子力村の大罪』(KKベストセラーズ)などがある。


CO2はいけなくて、放射能は良いのか!
さらに、半減期10年・30年というのは魔法のように聞こえる。あたかも10年・30年で消え去るような錯覚をあたってしまう。

今の日本、問題が山積みです。

さて、今朝は雪かきでしたが昨日ほどではありませんでした。
これが昨日アップしようと思っていた画像です。

 

日本の食の主権を取り戻せ 

2023年01月23日 | 自然・農業・環境問題

EUで使用禁止の食品添加物ナノ粒子・二酸化チタン、日本で広く使用…毒性に懸念

Business Journal 2022.10.16

文=小倉正行/フリーライター

 今、食品添加物ナノ粒子の安全性が問題となっている。食品添加物に使われる金属ナノ粒子は、食品業界で包装材料や着色料、製造助剤として広く利用され、酸化第二鉄が赤色の着色料、二酸化チタンが白色の着色料や包装材料、二酸化ケイ素が粉末の物性改良などに使用されている。

 食品添加物ナノ粒子は腸内での吸収性を良くするためにナノ化されており、食品とともに大量に摂取され、腸内細菌叢だけでなく身体全体への影響を与えることが指摘されている。なかでも二酸化チタンは日本では使用を認められているが、2021 年 5 月にEUでは使用が禁止された。欧州食品安全機関(EFSA)は、二酸化チタンの遺伝毒性に関する懸念は除外できなかったとして、科学的不確実性により食品添加物としての使用は安全とは見なせないという結論に達し、使用を禁止したのである。

問われる食品安全委員会の責任

 食品の安全性をリスク評価する食品安全委員会は、二酸化チタンを含めて食品添加物の腸内フローラに対する影響評価を実施しているのであろうか。同委員会は設置された03年以降、新規に安全性評価の申請がされた食品添加物についてリスク評価を行ってきたが、同委員会設置以前に使用が認められた食品添加物については、腸内フローラに対する影響評価は行われていない。

 10年に同委員会が決定した「添加物に関する食品健康影響評価指針」では、毒性試験は亜急性毒性試験及び慢性毒性試験 、発がん性試験 、生殖毒性試験 、出生前発生毒性試験 、遺伝毒性試験 、アレルゲン性試験などであり、腸内フローラに対する毒性試験は明記されていない。また、「令和元年、自ら評価にて、残留農薬、添加物、遺伝子組み換え食品が腸内細菌に与える影響を調査して、管理措置をとることを要望する提案があったが、具体的なハザードの記載がなかったことから、自ら評価の案件候補に該当しないと判断された」として、リスク評価をしないことを決めている。

 しかし、腸内細菌問題は日々研究が進み脳腸連関が明らかになっている。たとえば大阪大学大学院薬学研究科特任教授の吉岡靖雄氏は「腸内フローラ解析を基盤とした食品ナノマテリアルの安全性評価」で次のように指摘している。

「ヒトの腸内環境は、常在する腸内細菌叢などの外的要因や消化管機能などの内的要因が絶妙に相互作用して正常に維持されている。このバランスは、食生活や食品中の化学物質によって変動し、3大死因である癌・心疾患・脳血管疾患や食物アレルギーの発症・悪化要因になる可能性が指摘されている。昨今の食環境に対する安全への懸念や健康への関心の高まりも相俟って、食品やその添加物には安全であることが強く求められており、今後の食品安全の確保においては、従来手法のみにとらわれることなく、消化管内環境や腸内細菌叢の視点から安全性を科学的かつ包括的に評価する必要がある」

 食品安全委員会は、腸内細菌叢問題を食品健康影響評価の柱に据え、食品添加物の安全性の再評価作業に取り掛かるべきである。

 

小倉正行/フリーライター

1976 年、京都大学法学部卒、日本農業市場学会、日本科学者会議、各会員。国会議員秘書を経て現在フリーライター。食べ物通信編集顧問。農政ジャーナリストの会会員。

主な著書に、「よくわかる食品衛生法・WTO 協定・コーデックス食品規格一問一答」「輸入大国日本 変貌する食品検疫」「イラスト版これでわかる輸入食品の話」「これでわかる TPP 問題一問一答」(以上、合同出版)、「多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴」「放射能汚染から TPP までー食の安全はこう守る」(以上、新日本出版)、「輸入食品の真実 別冊宝島」「TPP は国を滅ぼす」(以上、宝島社)他、論文多数


 ここでもアメリカの顔色をうかがい、忖度し、アメリカの食品を大量輸入して、我が国の国民の命と健康を犠牲にしている。
 もう一方で氣を付けなければならないのは「抗生物質」である。歯を抜けば投与され、ちょとした手術でも投与される。また、ピロリ菌除去にも投与されている。そのほか肺炎などにも使われる有用な薬物である。しかし負の側面もしっかりとらえなければならないだろう。
 こうして自分の腸内フローラが乱れさまざまな体内疾患へとつながっている可能性も無視できない。腸内フローラと言えば乳酸菌。乳酸菌と言えばヨーグルトと思う方も多いと思います。でも、ヨーグルトはお勧めしません。みそ汁や漬物・キムチ・納豆などのほうが良いようです。お急ぎの方は整腸剤ビオフェルミンかビオスリーがよろしいようです。どちらにするかはその人の体質によるようですので事前にお調べ、または薬剤師にご相談ください。

【堤未果の出版記念対談】元農林水産大臣が登場 日本の食の主権を取り戻せ 堤未果×山田正彦

わたしも頑張って「無添加」表示を続けていきたいと思います。


北原みのり おんなの話はありがたい Colabo仁藤夢乃さんの「キモイ」は女性を守るセンサー 少しでもマシな世界になりますように

2023年01月22日 | 社会・経済

AERAdot 2023/01/11 

 若年女性支援団体Colaboに対する攻撃が続いている。ネット上で始まった攻撃は、シェルターや代表の住所を明かすような加害にも広がっている。今後、刑事告訴などもしていくとのことだが、Colaboが受けた被害は計り知れない。

 先日、Colaboを批判する中心に立ってきた男性が東京都に対して出した住民監査請求に対する結果が公表された。結論をいえば、21年の事業費について請求人の訴えが認められたものはほとんどなく、妥当性が疑われる内容については2月までに再調査を東京都に勧告し、内容によってはColaboに返金を求めるというものだった。とはいえ、女性たちを「タコ部屋」に押し込めている、生活保護のお金を取り上げているといったデマの影響はいまだに尾を引き、監査請求の結果が出た後でも、Colaboが税金を使った不正があったかのような声はSNS上に根深い。

 若年女性支援に関わる福祉団体が、ここまで激しい批判にさらされたことは前代未聞だろう。私自身、女性支援団体に取材したり、また実際に関わったりすることもあるが、現場は誰もがみな人生を削るように仕事をしている。凄絶な暴力の末に命からがら逃げてくるような女性たちを、文字通り命がけで守る現場に、「彼女たちは地獄を見ている」と思うこともある。そういう現場で働くソーシャルワーカーたちの声は、ほとんど聞かれることはない。プライバシー保護の観点もあるが、そもそも「声をあげる」余力すらないのが実態だろう。そういうなかでColaboという被害当事者が中心となってつくられた団体は、支援者の声を通した当事者の声ではなく、当事者そのものの声を社会に伝える重要な役割を担っている。

 6年前に代表の仁藤夢乃さんを長期にわたって取材したことがある。当時の取材ノートを振り返り、改めてColaboの存在意義の重さを感じている。

 仁藤さんのそもそもの原点は、東日本大震災後のボランティア活動だ。大学生だった仁藤さんは、宮城県石巻市の避難所で長期滞在し、避難所で出会った高校生たちの声を聞いてきた。高校生たちの「何かしたい」という思いを支援しようと、地元の製菓会社にかけあい、女川高校の生徒たちと「たまげ大福だっちゃ」という和菓子のプロデュースに奔走した。「たまげ大福だっちゃ」は、2011年の9月に発売されたが、被災地の高校生が自ら復興支援にたちあがったこの活動を、多くのメディアが希望として報道したものだった。Colaboは、このプロジェクトをきっかけにつくられた。

 仁藤さん自身が、街をサバイブしてきた女の子だった。「15歳でも働けるよ」と街で男に誘われ、はやり始めていたメイドカフェでアルバイトをしたこともある。「ずっと、身を守ることばかり考えていました」と取材中に話してくれたことが、私の心には残っている。そういう仁藤さんの人生を変えたのが、フィリピン旅行をしたときに見た日本人の買春男性たちだった。彼らは、かつて渋谷で女子高校生だった自分に声をかけてきた男たちと同じ顔をしていたという。なぜ渋谷で起きていることと、フィリピンで起きていることが同じなのだろう。社会の仕組みを知りたい。そういう思いで必死に学び、大学卒業間際の3ケ月間で書き上げたのが『難民高校生』(英治出版)だ。手にした印税75万円を頼りに、大学卒業後も就職ではなくColaboの活動を続けてきたのだ。

 仁藤さんが大学を卒業した翌年、2014年にアメリカ国務省は、日本のJKビジネスが人身取引の温床になっているとの調査報告を発表している。当時、秋葉原を中心にJKを売りにした散歩や、添い寝、マッサージなどの店が次々にオープンしていた。「観光の仕事」というアルバイトかと思って応募したら、男性客に「性器触ったらいくら?」「キスはいくら?」などと聞かれる、男たちが交渉できる店だったりすることは、よくある話、だった。そういうなか、仁藤さんは夜の街に出かけては、「帰るとこある?」「ご飯食べてる?」と女の子たちに声をかけ始めた。時には自宅に泊め、食事を作り話を聞き、必要な支援につなげることもあった。警察に保護された女の子を迎えに行ったことは数え切れない。

 私が仁藤さんの名前を知ったのは、2016年に女性たち自らが企画した、「私たちは『買われた』展」だ。女性たちが自らの体験を文章にし、思いを写真にして展示したもので、今も各地で行われている。ブランドものほしさ、遊ぶ金ほしさに「売っている」と考えられていた女性たちが必死に出した声。「売った」のではなく「買われた」と言いかえることで見えてきたことはあまりに大きかった。

「買う男の人は率直にキモイです。あの人たちは女の人を下に見ているから」

 仁藤さんを通して、そんな話をしてくれる女性たちに会ってきた。「ご飯をごちそうする」と言われコンビニでおにぎりを1個もらい、そのまま男の家に連れて行かれた女の子の話は強烈だった。中学生にしか見えない彼女の手をにぎり、堂々と交番の前を歩いたという。そういう男たちのずるさ、傲慢さ、暴力性を「キモイ」と力強く表現することが、彼女たちの唯一の抵抗でもあった。

 仁藤さんに話を聞くなかで、彼女が差別的なものを感じると瞬時に、「キモイ」と言ってスッと心を閉ざす瞬間を何度か見てきた。それはまるでサバイブするための本能のように、仁藤さんのなかにあるセンサーなのだと思う。そのセンサーがあるからこそ、仁藤さんは女性たちを守れ、そして女性自身にあるそのセンサーを、鈍らせなくていいんだよ、と言い続けているのだ。女の子が「キモイ」と感じられる感性は、自分を守るための大切な直感だから。もう身を守るために緊張しなくていい、ご飯を食べて、話をして、安心してぐっすり眠れる場。食い物にする大人ではなく、対等に話せる優しい関係があるのだと信じられる場をつくってきたのが、Colaboだ。そういう仁藤さんが、政治問題に率直に発信し、買春する男性をまっすぐに批判するのは当然だろう。

 Colaboへの攻撃は、それだけColaboの活動が世に影響を与えてきたことの証しでもあろう。もの言う女性への攻撃、フェミニズムへのバックラッシュはくり返され続けているが、それでも、Colaboの活動を支援する声も決して小さくはない。仁藤さんへの攻撃に対し、桐野夏生さんら文化人をはじめ、多くの人が支援の声をあげ始めてもいる。

 2023年が始まった。Colaboをはじめ、若年女性支援団体関係者にとってはつらい年明けになってしまったが、このことによって現場が萎縮しないことを望みたい。それにしても、このバックラッシュの正体については、丁寧に考えていきたいと思う。いわゆる“ネトウヨ”と呼ばれる人々を増産し、ヘイトスピーチを助長するような空気をつくってきた安倍さんという“大きなリーダー”が亡くなったことと、今のこの空気はどのようにつながっているのかなど、安倍さん不在後のネットの世界、女性をめぐるリアリティーについても、考察すべきことなのかもしれない。

 少しでもマシな世界になりますように。祈るようなそんな気持ちだ。


 わたしもそう思う。誰がこのようなことをしてくれるだろうか?頭が下がる思いで支援してきたし、これからも支援してゆく。

 よく寝た。今日は昼まで寝ていた。昼を食べて再度布団に潜り込んだが眠れない。治ったか?
 外を見ると雪が積もり吹雪とまではいかないが、かなり視界がきかないほどに降っている。まだ外に出る勇気はない。


「電気代エグい」…光熱費の請求書にショックの声相次ぐ 政府の支援は2月分から お風呂の注意点は?

2023年01月21日 | 生活

「東京新聞」2023年1月21日 

 総務省が20日発表した昨年12月の全国消費者物価指数(20年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比4.0%上昇の104.1で、41年ぶりの高い伸び率となった。中でも電気、都市ガスなどエネルギー関連の上昇が際立つ。使用量が最も高まる冬を迎え、光熱費の請求書の金額に驚く人も増えている。(砂本紅年)

◆昨年比で東京電力は45%、東京ガスは37%それぞれアップ

 「去年よりガスの使用量は減ったのに…」。千葉県内の一戸建てで夫と子ども3人と暮らす女性(44)は、ガス会社からの1月分の請求書を見て驚いた。ガス代は約2万2000円と前月より約1万円増加。昨年同月比で約5000円高い。セットで契約する電気代と合わせると約4万円に達した。
 一般的に気温の低い冬場は、暖房使用などで電気、ガス代とも1年で料金が最も高くなる。特にガスは、冬場に湯船に入る機会が増えがちなことや、低い水温からわかすため多くのエネルギーが必要なことから、大幅に使用量が増える。この女性も「今年は節約で温水式床暖房を使うのをぎりぎりまで待ったけど、思ったより高くなった」とため息をついた。
 都市ガスは2017年、小売りを全面自由化。自由化前の料金体系は、国の認可を受ける「規制料金」と呼ばれ、自由化後もしばらく残っていたが、一部の会社を除いて撤廃され、各社が自由に料金を設定できるようになった。
 燃料費の上昇は料金に反映される仕組みがあり、上昇幅に上限を設けるかどうかはガス会社の裁量に任される。上限のある東京ガスも、昨年10月分から段階的に上限を引き上げており、東京の標準世帯の1月分は7035円と、昨年1月分と比べて37%上昇した。
 電気代も燃料費の上昇が上乗せされており、値上がりが進む。電気は大手電力に規制料金が残っており、昨秋、燃料費の上昇幅の上限に達したことで現在は一定の歯止めとなっているが、自由料金の多くは上限がなく上昇が際立つ。東京電力エナジーパートナーの1月分の自由料金も標準世帯で約1万1000円と、前年比45%の上昇。交流サイト(SNS)などネット上には、数万円から10万円以上という1月分の請求書の写真とともに、「電気代エグい」「節電したのに上がった」などとショックを伝える投稿が相次ぐ。
 政府は2月分から、電気、ガス会社を通して、家庭向けの電気代1キロワット時あたり7円、都市ガス代1立方メートルあたり30円を値引きする。このため、光熱費は1月分がいったんヤマ場となりそうだが、規制料金について東北、北陸電力など大手5社が4月からの値上げを国に申請。東京電力も来週、3割程度の値上げを申請する見通しで、値上げ後は再び家計の負担感が増す恐れがある。

◆ガスなら追いだき、電気給湯なら入れ替えが有利

 光熱費が気になるものの、寒い季節は特に湯船に浸かりたいと感じる人も少なくない。光熱費を抑える入浴法はあるのか。
 環境省の調査によると、電気、ガスなど家庭でのエネルギー消費量は、給湯が全体の4分の1程度を占める。冬場の入浴は、家族で時間の間隔をあけずに入り、ふたを活用するなどして湯温を下げないようにすることが重要だ。
 冷めた湯を温め直す場合は「追いだき機能の活用を」と東京ガスの担当者。一晩おいたお湯でも、湯温が少し残っているなら、お湯張りより追いだきの方がガス代はかからない。給湯の設定温度を下げ、シャワーを出しっ放しにしないことなども節ガスにつながる。
 オール電化住宅などで電気給湯器を使っている場合は仕組み上、「追いだきよりも入れ替えの方がお得」(東京電力エナジーパートナー)。お湯をすべて抜かなくても、残り湯を減らした上で熱いお湯をつぎ足すと、電気代を抑えられる。
 
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年金 最大0.6%削減 23年度 「マクロスライド」発動計画

物価高騰が生活直撃。なのに―

「しんぶん赤旗」2023年1月21日

 2023年度の公的年金額について、厚生労働省は20日、物価上昇分より低い伸び率に抑えて、実質0・3~0・6%削減する計画を発表しました。物価が上がっても年金を上げない「マクロ経済スライド」を3年ぶりに発動しようとしているためです。

 発動を許せば、物価上昇に見合った増額改定となるところ、実際の改定率は物価上昇より低くなります。たとえば、年金を受け取りはじめる67歳以下の人では、国民年金は、本来の改定額から381円削減されて満額で月6万6250円(前年度比1434円増)となります。厚生年金は、夫婦2人の標準世帯で、1260円削減されて月22万4482円(同4889円増)になります。

 物価の値上がりに追いつかない年金額改定では、物価高騰が長期化するもとで、少ない年金収入でやりくりに苦しむ高齢者・国民の生活がいっそう悪化することは必至です。

 年金額の改定は毎年度、前年の物価と、過去3年間の賃金(名目手取り賃金)の変動率を指標にして、改定のルールに基づいて、本来の改定率を定めて行われます。

 厚労省によると、23年度の指標となる物価変動率はプラス2・5%で、賃金変動率はプラス2・8%でした。そのため、本来の改定率は、67歳以下の人には賃金変動率のプラス2・8%が、すでに年金を受け取っている68歳以上の人には物価変動率のプラス2・5%が適用されます。いずれも、物価上昇に見合った増額となる改定率です。

 ところが、厚労省は物価も賃金も変動率がプラスになったことを理由に、「将来世代の年金の給付水準を確保するため」として「マクロ経済スライド」を発動し、発動できなかった21~22年度分とあわせて0・6%を本来の改定率から差し引こうとしています。

 これを許せば、実際の改定率は、67歳以下の人では物価変動率より0・3%低い2・2%に、68歳以上の人では同0・6%低い1・9%となり、公的年金額は、物価の上昇を下回る実質削減となります。


 ようやく年金上げてくれるかと期待していたのだが、まさかの「マクロ経済スライド」?

 昨日から腰や太ももの筋肉が痛い。熱が出る前兆と思い養生しておりました。よく眠れました。今のところ熱も出ず、筋肉痛もなくなっています。今晩ゆっくり寝ると治るでしょう。

 


米WSJも警鐘「ワ○○○打つほど逆効果」が世界に拡散。科学誌『Nature』と子供に推進の「こびナビ」日本はどっちを信じる?

2023年01月20日 | 健康・病気

まぐまぐニュース 2023.01.20

by 小林よしのり『小林よしのりライジング』

 現在コロナ第8波の只中にあり、死者数も急増している日本。マスク着用を徹底しワクチン接種率も高い我が国が、なぜこのような状況に置かれなければならないのでしょうか。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では、漫画家・小林よしのりさん主宰の「ゴー宣道場」参加者としても知られる作家の泉美木蘭さんが、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された記事を引きつつその理由を解説。さらにワクチンを繰り返し打つことにより、人体内で起こる変化について考察しています。世界的科学誌『Nature』の論文と、子供や若者にもワクチンを推進する「こびナビ」、あなたはどっちを信じますか?

世界の笑い者ニッポン。マスク外さずワクチン漬けでもコロナ死者激増の赤っ恥

 フランスの右派政治家フロリアン・フィリポ氏が、こんなことをつぶやいている。

フロリアン・フィリポ

 11月末の時点で、1日70万人にワクチンを接種していた、超マスク、そして今や超ワクチン漬けの日本が、コロナ死者数の記録更新!コビディストは何もかもについて嘘をついていた!彼らの手は血まみれだ!

(※コビディスト:コロナ恐怖を煽り、ワクチン接種を強要する人々に対する蔑称)

ああ、恥ずかしい……。

 武漢で新型コロナが発生した当初は、世界は、被害の広がらない日本に対して、「ジャパニーズ・ミラクル」と賞賛していたものだが、いよいよ「超マスク・超ワクチン漬けなのに被害記録更新しちゃってるアホの例」として、晒されるまでになってしまった。

 日本は、平均寿命世界一の超高齢化国家であり、コロナで寿命を迎えることがブームになるのは仕方がない。死後PCR検査まで行って、コロナ死を見逃さない仕組みも、いまだに崩していない。だが、そこに加えて、超マスク脳・超ワクチン漬けでどんどん免疫系を弱らせてしまっているのだから、もう目も当てられない。

さて、久しぶりに厚生労働省のデータから、コロナ死者の年齢を確認してみよう。
ky20230119-1

やはり、圧倒的に「老人の最期の命のともしびを消す病気」である。

 今月15日に読売新聞が報道したところによると、「第8波」のコロナ死者は、9割超が70歳以上で、感染をきっかけに、持病の悪化や体力の低下で死亡する高齢者が目立つらしい。普通やん。

 入所者は、もともと体が弱っており、体調の変化にも気づきにくいという。やっぱり普通やん。
昨年11月以降に高齢者施設で起きたクラスターは約6,000件で、クラスター全体の6割超にのぼるという。そらそうやろな。
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 厚労省の最新データを確認すると、クラスターの発生状況は、著しく高齢者福祉施設に偏っていた。学校、飲食店、運動施設などではほとんど発生していない。

 外界から隔絶された高齢者福祉施設のなかでの感染なら、「大切な人のために」「おじいちゃん、おばあちゃんのために」という名目で、子どもや若者にワクチンを打たせる意味などないではないか。

 私の祖母は、地元の施設で生活しているが、先週、祖母の暮らす棟の上階でコロナ感染者が3名確認され、3名は施設内で療養、施設は即日外界遮断となった。

通常時は、週2回ほど母が施設へ出向いて、建物の入り口で、介護士の方から祖母の洗濯物を受け取り、新しい衣類や差し入れのおやつなどを渡していたのだが、現在はそれも中止されていて、もちろん面会も禁止である。

日本が「高齢者施設で多数の感染者と死者を出した」とスウェーデンをぶっ叩いた過去

 そもそも、面会できる時期であっても、密閉されたアクリル製の壁ごしに話すだけで、面会者は建物の中に入れてもらえないし、他都道府県から帰省したばかりの人は、面会そのものができないというルールもある。鉄壁のガードである。

ましてや、正月に帰省した孫や子どもたちが、高齢者施設を訪れて、入居しているおじいちゃんやおばあちゃんとベタベタ接触するなんてことは、まず起こらない。

やはり、幼児、子ども、若者には、たとえ体に害のないワクチンであっても、「大切な人のために」打たせる意味などない。

だいたい、「高齢者施設で多数の感染者と死者を出した」という理由で、スウェーデンをぶっ叩いたあの頃は、一体なんだったのか。

 第170回「“スウェーデン失敗”というねつ造報道」は、今から2年半前に書いた原稿だが、当時、世界中がロックダウンに踏み切るというキチ●イ沙汰のなか、スウェーデンでコロナ対策の陣頭指揮をとったアンデシュ・テグネル博士だけが、ロックダウンの有害性を指摘して、断固として世界に同調しなかった。

だが、高齢者施設での死者が多発し、コロナ以前から国内で問題となっていた介護施設の質の低下や、感染症に対する脆弱さがクローズアップされることになった。

テグネル博士は、「戦略そのものは良いが、過去を振り返れば、もっと改善できる部分がある」「将来的には、死者数を止める方法があったかどうかを考えなければならない」と語ったが、マスコミは、これらの言葉の一部分だけを取り上げて、「テグネルが失敗を認めた」「スウェーデンはコロナ対策に失敗した」と大バッシングしたのだ。

 いま、ロックダウンも自粛も移動制限もしていない日本では、「これを打ちさえすれば大丈夫」と喧伝されたワクチンを繰り返し打ちまくった末に、高齢者施設ばかりでクラスターが多発し、多数の死者が出ている。あの時、スウェーデンを叩きまくったマスコミは、日本の現状について、一体どう考えるのだろうか?

何もかもが、日本にとって最悪な方向へ大逆転、である。

米WSJ紙が掲載した『Nature』論文「ワクチンは新たなコロナ変異を加速させているのか?」の衝撃

 最後に、アメリカの一流紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載された記事を要約して紹介したい。タイトルは──

「ワクチンは新たなコロナ変異を加速させているのか?」

 現在、米国北東部では、「XBB型」と呼ばれる、オミクロンの変異種が急速に広がっているが、研究によれば、ワクチン接種を繰り返すと、「XBB型」に感染しやすくなる上に、ウイルスの急速な進化に拍車をかけている可能性を示唆する証拠が増えつつあるという。

 12月19日付の『Nature』誌によれば、「(オミクロンのように)増殖に有利な複数の変異型が、同時に急速に出現することは前例がない」らしく、ウイルスは、より簡単に感染し、すでに体内に作られた抗体からは逃れられるような変異を起こしたと考えられるという。

さらに、この研究では、「免疫刷り込み」が、ウイルスの進化に寄与している可能性が指摘されている。

 当初、人々に投与されたワクチンは、武漢で発生したオリジナルの株を免疫系に記憶させ、退治するよう訓練するのに適したものとして作られていた。しかし、そのオリジナルからは、著しく異なる新種が登場すると、免疫系の反応は鈍くなってしまう。

また、「武漢型」と「BA.5型」の2つを標的とする「2価ワクチン」は、この2つの型に共通する抗体を産生させるものとして設計されているが、これを回避してしまう突然変異が発生しているという。

 ワクチンの追加接種をしまくり、ブレイクスルー感染しまくりの環境のなかで、より存続率の高い型として適合するべく進化して発生したのが、流行中の「XBB型」というわけである。

つまり、大勢がワクチンを打てば打つほど、ウイルスもそれを回避するような進化を重ねてしまい、イタチごっこが止まらないということだ。

推進派も無視できなくなった世界的科学誌「ワクチン逆効果」の論文発表

 『Nature』誌の研究では、「現在、形成されている集団免疫と、BA.5型用のワクチン・ブースターは、オミクロン変異体の感染を効率的に防ぐことはできないかもしれない」と示唆されている。

つまり、3回目、4回目とワクチンを追加接種しても、感染を防ぐことはできないばかりか、さらに感染しやすくなる変異種を生み出す原因にしかならないということだ。

 また、今月『Cell』誌に掲載された研究では、4回の接種を受けた人の抗体レベルは、XBB型に対する抗体をわずかに増加させただけであり、専門家たちは、「追加接種をすればXBB型に対する防御力が向上する」と主張しているものの、それは「偽情報」でしかないという。

 オハイオ州の病院で、医療従事者に対する追跡調査を行った研究では、ワクチンの接種回数が多い人ほど病気になるリスクが高く、ワクチンを3回以上接種した人は、未接種の人の3.4倍、2回接種した人は2.6倍、コロナへの感染率が高くなったという。

論文の著者は、「ワクチンの先行接種回数が多いほど、コロナの感染リスクが高まるという関連性を見出した研究は今回だけではない」とも指摘。

「ワクチン接種による防御について、我々はまだ多くのことを学んでいる最中であり、ワクチンの有効性に加えて、複数回のワクチン投与が、一般的に想定されている有益な効果をもたらしていない可能性を検証することが重要である」と書いている。

 これらを踏まえて世界を眺めると、XBB型が、世界で最もワクチン接種率と追加接種率の高いシンガポールで急増したのは偶然ではない可能性が見えるという。

 CDC(米国疾病対策予防センター)の推計によると、過去数週間、米国内で最もワクチン接種と追加接種が進んでいる北東部のニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、マサチューセッツ州では、XBB株が優勢。だが、他の地域では流行が遅く、中西部で6%、南部で20%程度にとどまっているという。

 記事は、「バイデン政権は、新しい治療法よりも、ワクチン接種に偏重したため、アメリカ人は、新しい亜種に対してますます脆弱な状態に置かれている。なぜ専門家はそのことを心配しないのだろうか?」と締められている。

 ワクチンを打てば打つほど、自然免疫を弱らせてしまう上に、ワクチンによって産生された抗体を回避するようなウイルスの進化を加速させてしまう。

そして、なんの効果もないどころか、すっかり感染しやすい弱い体に変えてしまう薬剤だけが、体内に残されるのだ。

 この記事は、『Nature』『Cell』『New England Journal of Medicine』などの著名な科学誌に掲載された論文をもとに書かれている。

アホの一つ覚えのように「それ、エビデンスはありますか?」「一流の科学誌に取り上げられた論文ですかね?」などなど居丈高に反論を封じて来た専門家たちも、いよいよ追いつめられる時がやってきたようだ。

(『小林よしのりライジング』2023年1月17日号より一部抜粋・文中敬称略)


 打つ打たないは個々の判断であるが、その前提に「情報の開示」が必要である。それでも、調べればある程度のことはわかる。

厚労省の最新データを確認すると、クラスターの発生状況は、著しく高齢者福祉施設に偏っていた。学校、飲食店、運動施設などではほとんど発生していない。

 「外界から隔絶された高齢者福祉施設」の特異性に注目しなければいけないだろう。クラスターが学校、飲食店、運動施設などではほとんど発生していないのは、それはある程度「隔離」ができるからである。「外界から隔絶された」施設では、施設内での隔離が難しい。望まれることは「施設」にではなく、「医療」にである。早期の医療施設への入院、適切な医療がなされていれば…


雨宮処凛がゆく!コロナ禍で考える生活保護〜諸外国との比較から見えてくるもの

2023年01月19日 | 生活

コロナ禍は膨大な困窮者を生み出した。そんな中、生活保護を利用している人が増えているかと言えば、答えはNOだ。

あれから、3年。まさかこれほど長期にわたって日常が奪われるなんて、一体誰が想像しただろう。

そんなコロナ禍は、膨大な困窮者を生み出した。特に飲食・宿泊をはじめとするサービス業、そして非正規やフリーランスで働く人たちの生活に大きな打撃を与えた。

この3年で、困窮者に駆けつけ支援をする「新型コロナ災害緊急アクション」に届いたSOSメールは約2000件。今も連日「昨日ホームレスになった」「3日間、水しか口にしていない」「残金200円」「とにかく身体を休めたい」などの切実なSOSが届く。

具体的には、コロナ前の2019年5月に生活保護を利用している人数は207万8707人。これに対して20年5月は2万人以上減って205万7703人、21年5月はさらに約1万7000人減って204万11人。そして22年5月はそこからさらに約1万6000人減って202万3336人(厚生労働省・被保護者調査より)。一貫して減り続けているのである。

申請件数はと言うと、コロナ禍1年目の20年度の申請件数は前年比2.3%増。21年度の申請件数は前年比5.1%増。やはり思ったほどには増えていない。

その背景にあるのは、「生活保護だけは受けたくない」という忌避感や、「家族に知られたくない」という思いだろう。21年4月より、家族に連絡が行く「扶養照会」については、本人が嫌がる場合は無理にされない方向に運用が変わったが、この変化は今も広く周知されているとは言い難い。

さて、そんな生活保護についての本を1月24日、出版する。

タイトル通り、私たちは「最後のセーフティネット」を、義務教育ですらマトモに教わらずに生きてきた。

非正規雇用率が4割に迫り、単身の貯蓄ゼロ世帯がやはり4割に迫る中、病気や怪我で働けなくなったらアウト、という人の裾野は広がり続けているにもかかわらずだ。

正しい情報を知る機会がないまま、世間には偏見ばかりはこびっているものだから、どんなに困っても「生活保護だけは嫌」という人が後を絶たないのが現実だ。

ちなみにコロナ禍の3年間、私が相談会などでもっとも多くの時間を費やしてきたのは、「”生活保護だけは嫌”という人に、利用するよう説得する」こと。

だって、目の前の人は所持金1000円を切っていて、携帯も止まり今晩初めて野宿になる――などの状況なのである。その場合、使える制度は生活保護しかない。申請が通れば、アパートに転宅する費用も出るので、住まいのない人は「家のある暮らし」に戻れる。家があり、住民票があれば仕事の幅だってぐっと広がる。そして収入が保護費を上回れば保護を卒業すればいい。「以前の暮らし」に戻るためのワンクッションとして利用するのはどうか――。

ということを言っても、首を縦に振る人は少ないのが現状だ。

それでは、諸外国はどのようなやり方で人々を制度利用に繋げているのか。そしてその制度の中身はどんなものなのか。今回、取材してみて驚いた。

例えば韓国の制度。同国の社会保障制度に詳しい五石敬路さん(大阪公立大学大学院准教授)にインタビューしたのだが、とにかく驚きの連続。まず、韓国では偏見を払拭するため、99年に名前を「生活保護」から「国民基礎保障」に変えたのだ。

日本の場合、いろいろなものを失って初めて「パッケージ」としての生活保護が利用できる。が、韓国では、「家賃だけ」「医療費だけ」の形で利用できるのだ。

例えば、今生活が苦しいけれど生活保護の対象にならない人は膨大にいる。都内で一人暮らしをしていて15万円の収入があり、家賃は7万円ほどという人は私の周りにも多くいる。そういう人が、「家賃だけ」支給されたらどうだろう。生活はものすごく楽になるのではないだろうか。ざっくり言えば、韓国ではそのような「家賃だけ生活保護を利用する」ことが可能なのである。それってむちゃくちゃ良くないか? フリーター時代、月収十数万円で半分以上を家賃に持っていかれた頃の私がこの制度を使えたら、人生が激変していただろう。

他にも、持病があって医療費の支払いに苦しんでいるけれど生活保護を受けるほど収入は低くないという人が、「医療費だけ」利用することができる。同様のひとり親世帯の人が、子どもの教育費が足りない時、「教育費だけ」受け取ることができる。セットではなく、バラすだけで、制度利用はぐっとカジュアルにならないだろうか。

それだけではない。韓国では、「生活保護を利用できるのに利用できていない人を発掘しよう」という大キャンペーンが14年から始まった。「社会保障給付の利用・提供及び受給権者の発掘に関する法律」ができて、給付漏れの層を作らない「死角地帯の解消」を政府目標として掲げるようになったのだ。これによって、ソウルの地下鉄などには「死角地帯を探します」「2015年7月以降、基礎生活保障制度がより広く、手厚くなります」「基礎生活保障を申請してください」などのポスターが現れ、「最低生活費いくら以下が対象です」ということも示されているという。

翻って、日本の「死角地帯」は放置されたままだ。ちなみにこの国の生活保護の「捕捉率」(利用できるはずの人がどれくらい利用できているかを示す)は2〜3割と言われている。生活保護を利用すべき人の7〜8割が利用できていないのだ。一方で、フランスの捕捉率は9割。スウェーデンは8割。しかし、日本ではどれくらいの人が死角地帯にいるかのデータもない。が、韓国はこれを割り出した。結果、144万人という推計が出され、その数は着実に減っているという。

もちろん、韓国の制度がすべて薔薇色なわけではない。

若い世代は失業に苦しみ、また高齢世代の貧困率は日本の倍の40.4%。基礎年金の額は20万ウォン(約2万円)ほどで、すべての人が受けられているわけではないという。

が、いい部分はどんどん取り入れていけばいいのではないだろうか。

もうひとつ、本書で取材したのはドイツの生活保護だ。ドイツの制度に詳しい布川日佐史さん(法政大学教授)にインタビューしたのだが、こちらも驚きの連続だった。

ちなみに本題に入る前に、ドイツはコロナ禍初期の対応でも存在感を発揮していたことを覚えているだろうか。

何しろ20年3月の時点で、労働社会大臣(日本の厚生労働大臣)がドイツ国民に「生活保護をどんどん利用してください」と動画で呼びかけ。申請をめちゃくちゃ簡素化して使いやすくした。

それだけではない。同じく3月、ドイツでは、家賃を滞納しても最大2年間は解約できない=追い出せない決まりができた。滞納分はどうするかというと、家主が支援を受ける形だ。

また、コロナ禍は劇場やライヴハウスを閉鎖させ、アーティストの活動の場を根こそぎ奪ったわけだが、やはり3月、ドイツの文化大臣は「アーティストは生命維持に不可欠な存在」と断言。フリーランサーや芸術家、個人業者への大規模支援を約束した。

ということで、詳細を見ていくと、日本との一番の違いは「いろいろなものを失う前に利用できること」だ。

例えば日本の場合、単身であれば残金6万円くらいにならないと対象にならない。しかし、ドイツでは一人当たり現金130万円持ったままで申請できるというから雲泥の差だ。

それだけではない。単身、2人世帯だと80㎡の物件までは持っていてOK。自動車は7500ユーロ(約100万円)以下のものであれば持ったまま保護を利用できるのだ。

ちなみに日本の場合、「持ち家や車があると利用できない」という誤解が広がっているが、持ち家は二千数百万円以下(都内だと三千万円ほど)の資産価値であれば住み続けながら利用できるし、車は通勤、通院などに必要と認められれば持つことができる。一律ダメというわけでは決してないのだ。

ドイツに戻ろう。日本では生活保護の大きな壁と言えば扶養照会だが、ドイツの場合、よほどのお金持ちでない限り扶養照会もなし。これは、大きい。ものすごく大きなことだ。

そんな先進的なドイツの生活保護だが、コロナ禍でさらに進化した。手続きが簡素化され、新規の申請があった時には、6ヶ月間は資産(貯金など)の調査をしないことにしたのだ。しかも単身の人の場合、預貯金が6万ユーロ(約800万円)以下であれば調査なしで利用できるようにしたという。コロナで貯金を取り崩さなくていい姿勢を示したのだ。800万……、すごい……。

また、コロナ以前からドイツでは、家賃滞納者が出たら、大家さんがそれを公的機関に通報する義務があるのだという。追い出すのではなく、その時点でホームレス化を防ぐため、役所の担当者が介入するのだ。これって大きな予算もつけず、日本でもすぐにできそうなことではないか。

さて、他にもたくさんあるので詳しくは本書で読んでほしいが、今すぐに真似できそうなことはたくさんある。少なくとも、「利用者の尊厳を守る」「上から目線はやめる」などは今この瞬間からできることだ。

そんな本書には、他にも多くの専門家が登場している。

生活保護問題に取り組む小久保哲郎弁護士、世田谷区の元生活保護担当職員・田川英信さん、「移住者と連帯する全国ネットワーク」の稲葉奈々子さん、日本に住むベトナム人実習生らを支援する僧侶、ティック・タム・チーさん、約30年にわたって日本の貧困の現場で活動してきた稲葉剛さん、そして「困窮者支援業界のオードリー・タン」と呼ばれる佐々木大志郎さん。

コロナ禍、ただでさえ不安定で先行き不透明な暮らしは、さらに予測不能なものとなった。

誰だって、どんな立場の人だって、いつどうなるかわからない。コロナ禍で失業・減収しなくても、コロナ感染の後遺症によって働けなくなるかもしれないし、稼ぎ手である家族だっていつどうなるかわからない。

あなたが困った時はもちろん、周りの誰かが困った時に、ぜひ思い出してほしい。フル活用できる情報を詰め込んだ一冊だ。


 国民の苦悩が見えない岸田首相。バイデンに肩を抱かれご満悦だ。対等な関係でこのようなことをするだろうか? 


乃木神社参拝に「逆ギレ」反論。立憲・泉健太代表では岸田政権と戦えないワケ

2023年01月18日 | 社会・経済

まぐまぐニュース!2023.01.18

   by 高野孟『高野孟のTHE JOURNAL』

 

    大きな物議を醸した、立憲民主党の泉健太代表による乃木神社への初詣。「近所の神社で祈ることが『軍人を神と崇める行為』とされるとは」と反論し、火に油を注ぎました。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』でジャーナリストの高野孟さんは、乃木神社参拝問題について泉氏の無知と非常識をいま一度振り返り、現下の情勢を考えれば致命的な政治音痴だと厳しく批判。立憲民主党は古臭い左右対立の構図ではなく、リベラル派が泉氏ら保守補完派と決別しなければ軍拡路線の岸田政権とは戦えないと訴えています。

 

高野孟(たかの・はじめ)

1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

 

「立憲民主党」はリベラル派と保守補完派に分裂した方がいい/そうでないと「岸田大軍拡」と戦えないでしょうに

    1月14日付「読売新聞」は「立民『現実路線』、左派系の壁」と題した大きな記事を掲げた。立憲民主党の泉健太代表や岡田克也幹事長ら同党主流は、岸田政権が推進する「反撃能力(という名の敵基地先制攻撃能力)」の保有を(条件付きで?)容認し、あるいは自民党が仕掛ける改憲論議に積極的に応じるため党としての改憲方針を取りまとめるなど「現実路線に転換」しようとしているが、党内の「左派系の壁」に阻まれている。

その状況で泉の「乃木神社参拝」問題が炎上、泉が「何だか息苦しい。近所の神社で祈ることが『軍人を神と崇める行為』とされるとは」と反論するなど、左派との対立が次第に抜き差しならなくなっていることを指摘している。

    私の結論。ここまで来たら立民左派は、泉代表を叩き出すか、自分らが席を蹴って同党から分かれて新党を立てるか、どちらかしかないのではないか。

乃木大将の人物評価を巡る冷泉の指摘

    泉は批判者からの「軍人を神と崇める行為」「軍国主義に追随」といった指摘に対し、「『乃木神社に参拝したら軍国主義に追従すると批判されても仕方ない』とか、もう酷いもんだ。そうした考えの方がよっぽど危険。私は過去の歴史に学ぶし、教訓にもする。乃木神社創建の経緯もある程度は知っている。でも当然だが、軍国主義者ではない。本当に失礼な話」と反論している。

しかし「過去の歴史に学ぶ」「乃木神社創建の経緯もある程度は知っている」というのは本当か。米国在住作家の冷泉彰彦は「まぐまぐ!」を通じて発行するメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の1月10日号で、「乃木神社を『近所の氏神様』扱いで大炎上。立憲・泉代表の無知と無関心」とバッサリ斬り捨てている。

    冷泉は、乃木本人の評価をめぐって、明治9年に山口県萩で起きた士族反乱への曖昧な姿勢、同10年の西南戦争で政府軍として戦い西郷側に軍旗を奪われるという酷い不祥事、それらの心の傷を癒すためなのかその後の「放蕩」、そして日露戦争での司令官ぶりなど色々疑問がありながら、明治天皇に殉死したことから一気に神格化され、「『戦争における自己犠牲』という思想がどんどん美化され……行き着いた果ては、東條政権による『捕虜として捕縛されることの禁止』と『自決の強制』」に他ならなかったと指摘している。

そして冷泉は、このように「乃木神社というのは、かなり、問題のある神社」なので、「仮に乃木という人物への畏敬の念を表したいのであれば、青山墓地にある夫妻の墓に詣でるのが良い」し、「漠然とした理由で神社に参詣したいのであれば、軍神を祀ったものではなく、もっと古来からの由緒のある神社にお参りするのが普通ではないか」と、泉の常識のなさを嘆いている。

「乃木神社」をこの時期に参拝する政治センス

    私が思うに、乃木自身の人物評価とは別に、まず大前提として、薩長藩閥政府が国民に天皇を一神教的な「現人神」と思い込ませて戦争に向かって総動員していくために作り上げた招魂社=靖国神社、楠正成の「七生報国」思想を広めるための湊川神社、後の乃木や東郷平八郎を「軍神」として祀った各社など、国家神道の人工的な装置としての神社に公人として参拝することと、「近所の神社で祈ること」とを同じことだと思う泉の知能程度が問題である。

    私は、古来からの本来の神道とそこに育まれてきたアミニズム的自然信仰に共感し、それこそ「近所の神社」にお参りもし祭祀にも参加するが、それと国家神道の道具として作られた“戦犯神社”とはもちろん峻別する。そんなことも分からないのでは「過去の歴史に学ぶ」「乃木神社創建の経緯もある程度は知っている」というのは嘘であると告白しているようなものである。

    しかもこのタイミングは、タモリが年末のテレビで新年について「新しい戦前になるんじゃないですかね」と言い放ち、岸田政権の防衛費倍増、敵基地先制攻撃能力の保有という剣呑な軍拡路線に不安を抱く多くの人々が「そうだよね」と共感を抱いている時である。その時に軍拡を条件付きで容認するかの態度をとっている野党第一党の党首が乃木神社に参拝することが、一体どういうハレーションを引き起こすのかが読めないというのは、致命的な政治音痴である。

旧民社党のような「是々非々中道政党」は不要

    ところで、泉や岡田は、党内の「左派の壁」を跳ね返して、「もう少し真ん中に軸を移さなければならない」「左に偏った姿勢のままでは、有権者から政権交代の受け皿と見てもらえない」と考え(上記の読売記事)、そのためには岸田の「敵基地先制攻撃能力」論を容認し、改憲論議促進にも応じ、「物分かりの良さ」を示そうとしているのだろう。これは、それこそ歴史に学ぶなら、1960年の安保動乱の最中に米CIAの秘密資金提供によって結成された民社党の「是々非々の中道」という名の自民党補完路線と何ら変わりはない。

    確かに、立憲民主党がそのように旧民社党化すれば、維新や国民民主党と組みやすくなるだろうが、それを人々は「政権交代の受け皿」とは認めまい。むしろ、公明党の神通力が地に落ちつつある中で、それに代わって「自立維国」連立政権が出来て、自民党政治をさらに延命させる役割を果たすだけだと見え透いている。

    しかも、60年前には政治の基本軸は右vs左で、その対立が激化する中で「中道」を掲げる意味はなくもなかった。しかし今では左右対立ではなく、保守vsリベラルが軸で、そこでは両者は背中を向け合うよりもむしろ歴史の同じ方向を向きながら知恵、政策、手法、速度等々を競い合うことになるので、そもそも「中道」という観念が成り立たない。そのことに気づかない人々が、まだ「中道」などという戯言を口にしている。

    さあて、立憲内の本当の立憲民主勢力は、泉・岡田執行部の中道フラフラ迷い込みの馬鹿げた路線にどこまで付き合っていくつもりなのか。キッパリと決別してリベラルの党を立て、社民、れいわ、沖縄の風、共産などとの反軍拡戦線を築くべき時ではないか。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年1月16日号より一部抜粋・文中敬称略)


 昨日は札幌へ行って、帰りが遅くなってしまい、更新も出来ませんでした。
久しぶりに娘と高校1年の孫と回転寿司へ。息子は急に発熱で参加できず、食料など差し入れてきました。昼は星野珈琲で・・・

半分程食べてから氣が付きました。
珈琲は彦星ブレンド(程よい苦味を味わいたい方への重厚なブレンド。
珈琲豆の産地 ブラジル・コロンビア・グァテマラ)美味しいコーヒーでした。


もはや異次元の無能。岸田首相が「少子化うんぬん」を語る前にすべきこと

2023年01月16日 | 生活

まぐまぐニュース!

2023.01.12  by 『きっこのメルマガ』

 年頭記者会見の席上、2023年に挑戦する大きな課題の1つとして「異次元の少子化対策」を上げた岸田首相。しかしながらその具体的な内容は何一つ決まっておらず、多くの国民から疑問の声が上がっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「まずは子どもたちを救うのが先」として、あまりにも多くの子供が食事すら満足に取れないという我が国の惨状を訴えるとともに、まったく手を打たぬ岸田政権を批判。さらに欧州各国で合計特殊出生率を回復させた「最大の少子化対策」を紹介しています。

異次元の無能首相にきっこからの提案

 「アベノミクスの失敗」を隠すために、日銀の黒田東彦総裁が当初の「2年間」という公約を完全に無視して強行し続けて来た「異次元の金融緩和」がようやく終わると思ったのも束の間、今度は岸田文雄首相が4日の記者会見で「異次元の少子化対策」などと言い始めました。それも「異次元の少子化対策を行ないます」と断言したのならともかく、なんと「異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代から『ようやく政府が本気になった』と思って頂ける構造を実現すべく、大胆に検討を進めてもらいます」って、またまた「検討」&「丸投げ」です。

 さすがにコレにはネット上でもお茶を噴き出す人が続出し、「異次元の少子化対策って、もしかして二次元の彼女まで『子ども』として数えるのか?」だの「異次元の少子化対策って、成人年齢を60歳に引き上げて、59歳までの国民を全員『子ども』と見なすのか?」だのと、まるで大喜利状態になってしまいました。さらには、8日放送のTBS『サンデー・ジャポン』に出演したモデルでタレントの藤田ニコルさんも「この言葉を聞いた時に『えっ?』ってなっちゃって。今まで本気じゃなかったんだって、絶望しちゃったというか‥‥」と呆れていました。

 岸田首相は、この「異次元の少子化対策」の基本方針として、「児童手当など経済的支援の強化」「子育てサービスの強化」「働き方改革の推進」の3本柱を挙げましたが、これらは今までさんざんやって来たことで、何ひとつ目新しいものはありません。さらには、具体策もゼロで財源にも言及せず、ただ単に「異次元の少子化対策」というインパクトのある看板を掲げただけなのです。その証拠に、この「異次元の少子化対策」の具体的な内容については、子ども家庭庁に指示して「これから決める」と言うのです。

 思い起こせば一昨年10月の就任会見でも、岸田首相は「新しい資本主義」という看板を掲げましたが、あの時も具体的な内容はいっさい口にせず、「成長と分配の好循環」という抽象的なお題目を壊れたボイスレコーダーのように繰り返すだけでした。そして、それでも一部の記者が「具体的な内容は?」としつこく食い下がると、こともあろうに岸田首相は「具体的な内容は『新しい資本主義実現会議』を発足してこれから決めて行きます」と抜かしたのです。そして、1年以上が過ぎた今も、国民の誰ひとりとして「新しい資本主義」が一体何なのか、まったく分からないままなのです。

 「新しい資本主義」しかり「異次元の少子化対策」しかり、具体的な内容など何ひとつ決まっていないのに、取りあえずインパクトのある看板だけ掲げて「やる気感」や「やってる感」をアピールし、内容は後から考えるって、国民をバカにするにもホドがあります。さらに言えば、この「新しい資本主義」は安倍晋三元首相の「新しい判断」の二番煎じ、「異次元の少子化対策」は日銀の黒田総裁の「異次元の金融緩和」の二番煎じで、ネーミングにすらオリジナリティーのカケラもありません。

 そして、そもそもの話としても、少子化うんぬんを語る前に、まずは「今の子どもたち」を救うのが先でしょう。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の子どもの貧困率は13.5%、100人のうち13.5人の子ども、つまり、7人に1人の子どもが貧困なのです。これは世界平均の12.8%よりも下で、世界ワースト21位なのです。その上、シングルマザーなどの「ひとり親世帯」だけを見た場合には、世界平均が33%なのに対して、日本は何と52%、半数以上の世帯の子どもが貧困で、これは韓国、ブラジルに次いで世界ワースト3位なのです。

 1日3食を食べられない子どもがこんなにたくさんいるのに、この子どもたちへの手当てを何もせずに少子化対策だけしても不幸な子どもが増えるだけです。2012年までの民主党政権下ではゼロだった「子ども食堂」が、安倍政権下の8年弱で全国に5,000カ所以上も作られ、その後の菅政権でも岸田政権でも増え続け、とうとう6,000カ所を超えてしまいました。あたしも毎週木曜日に、近所のお寺がやっている「子ども食堂」のお手伝いに行っていますが、子どもと一緒に食事に来た若いママさんたちは、皆さん口をそろえて「職業の男女格差」と「物価高」と「高すぎる光熱費」に苦しんでいると言います。

 中でもあたしがショックを受けたのは、小学生の子ども2人をパートの掛け持ちで育てている30代のママさんの話でした。昨年の秋、そのママさんが2人の子どもを連れてお寺の「子ども食堂」に初めて来た日、子どもたちは夢中で食べていたのですが、ママさんはお箸を持ったままポロポロと泣き始めたのです。あたしが声を掛けると、「ゆうべは1つのカップ焼きそばを子どもたちに半分ずつ食べさせて、自分は我慢した。子どもたちがたくさん食べているのを見たら涙が止まらなくなった」と言うのです。

 新型コロナ前までは、中堅の衣料メーカーで正社員として働いていて生活に困ることはなかったが、新型コロナで解雇され、どんなに努力しても正規雇用の口が見つからない。仕方なくパートを掛け持ちして休まずに働き続けているが、収入は以前の半分になり、そこに物価高と光熱費の高騰の追い打ち、とうとう子どもたちに満足な食事も作ってやれなくなった…と泣きながら打ち明けてくれました。今では仲良しになり、帰りにはお土産のおにぎりを渡すようになりましたが、今の日本には、こういうシングルマザーが数えきれないほどいるのです。

 帝国データバンクによると、昨年2022年の食品の値上は2万品目を超え、その平均値上げ率は14%を超えています。また、今年もすでに7,000品目の食品の値上が予定されています。あたしがお手伝いしている「子ども食堂」では、複数の農家から形が悪くて出荷できない野菜などを無償で提供してもらって利用させていただいていますが、スーパーなどで普通に食材を買っている人たちは本当に苦労していると思います。

 1月7日、教育格差解消に取り組む公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」は、小学1~6年の子どもを持つ保護者を対象にしたアンケート調査の結果を発表しました。これによると、世帯年収300万円以下の小学生の29.9%、約3割が、昨年秋までの1年間に、学習塾を除くスポーツや音楽などの習い事、旅行やキャンプ、動物園や博物館などのレクリエーションを「1回も体験できなかった」と回答しているのです。

 今は「新型コロナ禍」ということもありますが、「1回も体験できなかった」との回答は、世帯年収が300万円~600万円の小学生は20.2%、600万円以上の小学生は11.3%と、明らかに世帯年収によって格差が生じています。これは、ハッキリ言って「お金がないから子どもを動物園に連れて行けない」という家庭がたくさんあるということです。この調査を実施した「チャンス・フォー・チルドレン」は、「物価高の影響も出ており、親の所得による子どもの体験の格差が広がらないように、公的な補助が必要だ」と指摘しました。

 …そんなわけで、30年以上前、日本と同じく合計特殊出生率が1.5を割り込んで人口減少に向かい始めた先進国の中で、フランスを始め多くの国々は、抜本的対策として「結婚という制度にとらわれず誰もが安心して子ども産み育てられる制度づくり」を推進しました。たとえばフランスの場合は、「結婚は望まないが子どもは欲しい」という女性に対して、結婚して子どもを持った夫婦と同様の公的支援にとどまらず、さらに生活費や家賃の補助として毎月約10万円を支給することにしました。

 この政策によってフランスの女性たちは、結婚しなくとも安心して子どもを産めるようになり、今では合計特殊出生率が1.88にまで回復しました。現在のフランスは、子どもの60%、半数以上が婚外子なのです。アイスランドでは、子どもの70%が婚外子です。他にも、ブルガリア、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、ポルトガル、デンマーク、スロベニア、エストニアなど、子どもの過半数が婚外子という国はたくさん増えました。これらの実例を見れば分かるように、最大の少子化対策はシングルマザーへの手厚い支援なのです。

 しかし、日本の場合は、統一教会と二人三脚で時代遅れの「家制度」に固執して来た自民党政権が、これらの先進的な国々とは真逆の政策を進めて来ました。特に酷かったのが、生活保護費の「母子加算額」を廃止するなど、徹底的な「社会的弱者イジメ」「ひとり親世帯イジメ」を繰り返して来た安倍政権でした。

 そして、その結果が、「ひとり親世帯の52%の子どもの貧困」であり、1.5から下がり続けて、とうとう1.27にまで落ち込んでしまった合計特殊出生率なのです。これは前にも書きましたが、岸田首相が閣議決定だけで勝手に決めてしまった「5年間で43兆円」という防衛予算のわずか100分の1があれば、全国の小中学校の給食を無償化できるのです。これだけで、どれほどの子どもたち、親たちが助かるか。

 岸田首相、「異次元の少子化対策」などという絵に描いた餅では、全国に数えきれないほどいる1日3食を食べられない貧困家庭の子どもたちのお腹は1ミリも膨れません。まずは目の前の現実を直視し、世界ワースト3位の「ひとり親世帯の子どもの貧困」を解消することが、あなたの最優先課題です。あなた方、収入が高く生活が安定している人たちにとって、子どもの貧困問題などは他人事かもしれません。しかし「子どもの貧困率の高い国はGDPの成長率が鈍化する」というデータもあるのです。子どもたちのためだけでなく、回り回って自分たちのためにも、まずは「ひとり親世帯」への支援の拡充を進めてください。これこそが最大の「少子化対策」でもあるのですから。

(『きっこのメルマガ』2023年1月11日号より一部抜粋・文中敬称略)

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もやしも値上がり、毎日ひじき…ぎりぎりの暮らしにあわや追い打ち 生活保護の基準のあるべき姿は

「東京新聞」こちら特報部 2023年1月16日

 2023〜24年度の生活保護費について、厚生労働省が、世帯構成別に据え置きか増額の方針を決めた。物価高を考慮したという。ただ、それに先立ち、生活保護の基準見直しを議論した同省の部会では、多くの世帯で引き下げにつながりかねない検証結果が出ていた。弁護士ら支援団体は、検証方法を改めるよう求めている。社会保障の「最後のとりで」とされる生活保護の基準は、どうあるべきか。(中山岳)

◆生活保護受給者に苦しい物価高

 「年明けから、よく買うもやしが1袋当たり10円ほど値上がりした。安いお店を回ることも体力的にできなくなってきている」。大阪市旭区の小寺アイ子さん(78)は、物価高のつらさを口にする。心臓や肝臓などの病気を患ったことをきっかけに、13年から生活保護を受けている。受給額は月約11万円。ここから家賃4万3000円や、食費、光熱費などをまかなうため、生活のゆとりは全くない。

 電気代を節約するため日中は照明をつけず、エアコンの暖房もほとんど使わない。体調を崩し、毛布をかぶって寝る時間が増えた。1回100円を目安にこつこつ貯金し、孫にクリスマスケーキなどを買うことが楽しみだが、「昨年のクリスマスケーキは、例年より500円ほど高くなっていた」。おかずはひじきを作りおきし、数回に分けて食べる。バランスの取れた食事はできない。

◆厚労省の「基準額引き下げ」に待った

 受給者がぎりぎりの暮らしを迫られる中、専門家でつくる厚労省の部会では昨年、追い打ちをかけかねない検証結果が出た。

 部会は、食費や光熱費などに充てる「生活扶助」の基準額を巡り、生活保護を受けていない低所得世帯の消費水準と比べて、不公平が出ないように検証。すると、75歳以上の単身世帯などの生活扶助基準額が、低所得世帯の水準を上回る結果がでた。この結果をそのまま反映させれば、多くの世帯で生活扶助費が引き下げられる恐れがあった。

 与党から危惧する声も出たため、厚労省は引き下げを見送った。小寺さんは「日ごろからぜいたくなどできない私たち年寄りの世帯に、なぜ引き下げの話がそもそも出るのでしょうか」と無念そうに話す。

◆コロナ禍前のデータが基…「検証手法に問題あり」

 弁護士らでつくる「生活保護問題対策全国会議」は先月5日、部会の議論を踏まえて「『健康で文化的な最低限度の生活を保障する』という生活保護基準の機能が、さらに損なわれる恐れがある」という緊急声明を出した。事務局長の小久保哲郎弁護士は「引き下げ見送りは最低限の措置だ。物価上昇に対応できるように、生活保護水準をさらに引き上げることが必要だ」と主張する。

 緊急声明では、厚労省部会の検証手法に問題があると指摘。検証に用いた参考データは、コロナ禍前の19年に行った全国家計構造調査で、コロナの影響や昨年の物価高を反映していない。さらに、検証で比較対象にする低所得世帯が、年収を段階別に分けたうち下位10%に当たることも問題視する。小久保氏は「こうした世帯は生活保護基準以下の厳しい暮らしをしている人もいる。比較対象にすると、生活保護基準が際限なく引き下げられる恐れがある」と説く。

 小久保氏は、先月に実施した電話相談会でも高齢者らから「物価高でこのままでは暮らしていけない」といった切実な声が多く寄せられたとし、こう訴える。「厚労省は検証手法を見直すべきだ。そして、生活保護では、下回ってはならない絶対的な水準を、早急に確立することが求められる」


まさに「棄民政策」。
高齢者はコロナで死ねって❓
貧しいものは餓死でも病死でも❓

安保法制反対を上回る国民的大運動が必要です。

昨夜のテカテカ道路。