まるぞう備忘録

無題のドキュメント

多重層。金融先物取引のトリックその1。

2013-10-24 10:24:27 | 多重層

レオ・メラッドという人物がおります。

もう高齢のユダヤ系アメリカ人です。

知る人ぞ知る金融界のドンであります。

それまで農作物しか取り扱っていなかった先物市場に、

世界で初めて金融資産商品を導入した人物です。

彼はポーランドに生まれたユダヤ人でした。

しかしヒトラーによる迫害を逃れて、

9歳にアメリカ・シカゴに亡命します。

その後彼は弁護士になるわけですが、

金融の世界にも惹かれていきます。

そしてある時、金融商品を取り扱った

先物市場をつくるというアイデアを実現するため

弁護士をやめて金融界に飛び込みます。

結果、シカゴは世界最大の金融先物市場の街となります。



先物取引とは元々は江戸時代の大阪で生まれました。

お米の豊作不作に関わらず、安定して購入する仕組みでした。

来年のお米は一俵いくらいくらで買いますよ、

と予約して売買するシステムでした。

もし自分が予約入札したお米の価格より、

実際値上がりするとその差分は儲けとなります。

安く仕入れて、高く売れるからです。

しかし逆にもしお米の値段が下がっていれば、

その差分だけ赤字になります。

元々米農家に対して安定して支払うシステムが、

このようにして投機性を持つこともできます。

メラッドはこの先物取引の投機性を更に一歩進めて、

金融商品に先物取引ルールを当てはめました。

勿論一介の青年弁護士では、

そんな市場を作る力はなかったと思います。

おそらく大きなスポンサーが、

彼のアイデアをバックアップしたのでしょう。



彼のこの「金融先物市場」という

アイデアの優れているところは、

一見公平に見えて、実は違うというところです。

大資本が残りの資本を総取りするという

実に巧妙なマネーゲームなのでした。



この巧妙なマネーゲームは、

二つの柱から成り立っています。

まず一つは先物価格の操作性です。

たとえば農作物の先物価格を

正確に予想するのは難しいです。

それは天候に左右されるからです。

豊作なら価格は下がりますが、

凶作なら価格は上がります。

しかし金融商品は価格のコントロールが簡単です。

もし大資本さえ手元にあれば。

たとえば現在1ドル100円とします。

一年後の10月1日に、

1ドル110円で買うと取引しましょう。

この日一日だけでいいですから、

1ドル110円以上であれば儲けになります。

ではどうすればいいか。

直前に手元の円を売ってドルを買えばいいのです。

もちろん少額じゃ意味がないです。

私のお小遣いレベルじゃびくともしません。

しかしもし国家予算並みであったなら?

円は大量に出回り価値が下がります。

それまで100円で1ドルと交換できたのが、

110円とか120円出さないと1ドルと交換できません。

このようにして1ドル110円で先物取引していれば、

当日の円安ドル高によって儲けが出ます。

実際はもっと複雑で巧妙ですが、

簡単にいうとこういうことです。



農作物の先物価格は天候が支配しますが、

金融商品の先物価格は大資本が支配します。

つまり大資本が自由に勝ち負けを決められるのです。

これが一つ目の柱です。

(つづく)





おひさま、ありがとうございます。