2015年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞ほか、
様々な映画祭で話題。本年度のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート中のハンガリー映画。
強制収容所で死体処理に従事するユダヤ人のサウルが、息子の遺体を見つけ、ユダヤ教の教義に基づき葬ろうとする。
舞台は1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所。
ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊をゾンダーコマンドと呼んだ。
仕事中にハンガリー系ユダヤ人のサウルは、ガス室で生き残った息子と思える少年を偶然目にするが、
少年はすぐにナチスによって静かに殺されてしまう。
サウルは少年の遺体をなんとかしてきちんと葬ろうとする……。
仕事とはいえ、毎日繰り返される惨劇。自分も近いうちに、同じ形で処理される事がわかっている中で、まるで機械のように
無表情で機械のようにただただ仕事をこなし
人間性を失いかけていたユダヤ人のひとりの男サウル。
少年の死をきっかけに、その亡骸を正しく埋葬することに全身全霊をかけて行おうとする姿を、
客観ではなく、主観の目線で意図的につくられた構図によって
大量殺戮が行われていた収容所の実態をぼやけたピントでバックに描きながら、カメラはずっと、終始サウルの表情を追い続ける。
それによって観る側も、ずっとその現場を同行しているかのような感覚になる。
主演はルーリグ・ゲーザ。
監督は、タル・ベーラ監督の「倫敦から来た男」で助監督を務め、 本作が長編デビューとなるハンガリーの期待の新鋭ネメシュ・ラースロー。
ハンガリー生まれのパリ育ちで、1977年生まれのまだ38歳!
自身の祖父母が収容所で亡くなっていることから、
「一つのトラウマとして負の遺産を忘れてはならない」という思いを今作に込めた。という。
アウシュビッツで、何が行なわれていたのか、その事実を目撃せよ
7/10(72点)
上映開始。劇場スクリーンのカーテンが小さく狭まった。
35mmフィルムによって撮影されていた。
ただひたすらサウルの表情を追ったカメラを観る観客側は
起っている現実を、起きた事実を 体感させるかのように映し出す。
「鍵穴から覗き見るイメージ」で撮ったという監督の意図した通り、
この作品は現実を目の当りに捉えた撮影手法が評価された一因でもあるでしょうし、
これまでのホロコーストものとは違うところでもある。
サウルの表情ばかりが続くので、正直 眠気を誘うところもあるんだけど
処刑される人たちの中から、自ら入っていってラビを探し出し
どこまでも「この子供を葬ってあげること」に神経を注ぎ全うしようとする姿と
その行方がリアルに伝わるところが注目される。
「今までのホロコースト作品では伝えきれていない悲劇」が、ここではみえてくる。
時間が合う方はぜひ劇場で体感を。
『サウルの息子』予告編
SAUL FIA 2015年 ハンガリー 107min
1月23日より、公開中~
カンヌ国際映画祭にて
主演の方、ひげもじゃ。
監督来日しました~。
GG賞!
アカデミー賞外国語映画賞も最有力。