「我(あ)が恋は
まさかも愛(かな)し
草枕
田胡(たご)の入野(いりの)の
奥も愛しも」
(万葉集)
わが愛(いと)しの恋人は、今の今も可愛くてしかたないが、田胡の入野の奥というほど奥(遠い未来)も、可愛くてしかたないだろうなあ。
草枕は旅の枕詞(まくらことば)。
入野は山あいに入り込んだ奥深い野のこと。
「奥」は古来、時間的にも空間的にも心理的にも遠く深くを意味していました。
風景の奥に目を凝らし、時間の奥に耳を澄ます。
言葉の奥にたたずむものの気配を感じ、命の奥にある何かに気づく。こんなうたを詠む万葉の男心に微笑んでしまいました。
遠い未来を意味する
「奥」という言葉。
人生の奥、言葉の奥を考え心に刻もうと思いました。