若いときに書いた童話のひとつです。
プーチンのウクライナ侵攻を見て思い出しました。
『泣き虫 窓』
私は窓。われわれ窓の命は何百年と長い。
私は長い間、悲しいことばかり見てきた。
いつも涙で雲っているので、仲間から「泣き虫 窓」と呼ばれている。
それは、ここに住んでいた優しいおばあさんが病気で死んでしまったからだった。
いつも私を磨いてきれいにしてくれ、私にいろんな話しをたくさん聞かせてくれた尊敬するおばあさんだった。
それから、明かりのつかない暗い窓だった。
ある朝、私のそばに一羽の小鳥がやってきた。
それはそれは、とてもきれいな羽根をした小鳥だった
「チュッ!チュ!」
私に話しかけてきた。
「悲しそうな窓さん、元気だして。チュ!」
わたしはその可愛い小鳥に恋をしてしまった。
毎日毎日彼女がやって来るのが待ち通しかった。
冷たく厳しい雨が降っている時もやってきた。
「こんな時までこなくていいよ心配だから」
「だって泣き虫で淋しがりやさんだから休まずきたのよ」
しかし、その日はあまりにも冷たく厳しい雨の日だった。
彼女は疲れて目を閉じて眠ったまま下に落ちていった。
一日中、雨はやまなかった。
翌日晴れた朝、一人の女のこが動かない小鳥を見つけて、街路樹のそばに何かの種と一緒に埋めていた。
わたしはしばらく、曇った窓になってしまった。
ある日、あの地面から大きなひまわりが咲いていた。
私のほうを向いて咲いていた。
私は少し元気になってきた。
それから、戦争がやってきた。
遠くから避難してきた家族がこの部屋に住むようになった。
一人の明るく陽気な女の子が私にほほを付けて外を毎日見ていました。
私はその温もりにドキドキしました。
しかし、そのこは、
「自由に外で遊びたいな」と言っていました。
暗い部屋でみんなでクリスマスケーキを食べていました。
とても幸せそうでした。
翌日、怖い兵隊がたくさんやってきて、みんなを連れて行きました。
少女は車に乗る前に、見上げて私に手を振ってくれました。
しかし、二度と帰ってきませんでした。
戦争が終わり、街に平和が戻ってきました。
また、クリスマスがやって来ました。
私はいまでも涙で曇った「泣き虫 窓」です。
戦争もいじめもない世の中になったら泣き虫を卒業します。
見上げてください、クリスマスの日に泣いている窓を見つけたら、それはわたしです。
ひまわりが窓の方に咲いていたらそこが私です。
みんな、いい子になって私のそばにきてください。
その時を楽しみにいつまでもまっています。
いい子のみんなへ!
泣き虫 窓より
(アンネの日記の彼女が生活していた部屋を見学した時の思い出に書きました。)