くもり空の下で……

アルコールとギャンブル。依存症からの回復と成長を目指しながらの日々の雑感を発信。趣味の渓流釣りなども公開しています。

ノリちゃん⑥ (ハイエナ)

2022-07-01 22:02:44 | 日記

 

ハイエナ。

色々な意味が含まれていると思いますが、当ブログではこの"ハイエナ"を、

「弱そうなヤツからは、すべてを奪い尽くす。弱っているからこそ、そいつからすべてを奪う。骨までしゃぶる。」

 

そのような意味合いで使っています。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

つづきから……

 

 

 

 

オフクロとセツ叔母さんは和菓子屋が売却され、その家から沢山の物が運び出されている現場を目の当たりにした。

 

そこは二人にとっての実家。

 

 

そこに暮らしていた主、ノリちゃんは行方が分からない。

しかし、携帯電話は生きていた。

 

連絡を取ったのはマート叔父さんだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

運送業の仕事を辞め、スロ屋通いだったノリちゃん。

前の記事で「何度かスロ屋でノリちゃんの姿を見た。」と書きましたが、私はその時に、ノリちゃんと行動を共にしていたチンピラ風な男。薄暗いスロ屋で私はその男をノリちゃんに紹介されていた。Yシャツにネクタイ、しかし両手首に入った花柄のタトゥー。

 

 

ノリちゃん:

「この人と最近はずっと一緒にいるんだよ。」

 

 

嫌な雰囲気だったが、私は適当に挨拶をした。

 

 

 

その頃、ノリちゃんにはヒロ叔父さんに掛けてあった多額の死亡保険金も振り込まれていた頃だった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

マート叔父さんがノリちゃんに連絡を取ってみると、どうやらノリちゃんは街にあるキャバクラの店長をやっているようだった。

 

気が弱く、華奢。でも保険金も沢山入っていたノリちゃん。

 

チンピラたちの格好の餌食。

 

 

チンピラ連中にどう説得されたのかまで私は知らないけれど、取りあえず「名前だけの店長」、「何かあった時の捨駒の店長」をやっていた。

 

 

マート叔父さんは、そのキャバクラヘ行き、ノリちゃんをなんとか説得しようと試みたが、結果はダメだった。。。

言葉巧みに外野に阻まれ撤退。

 

◆◆◆◆◆

 

暫くしてから…………

 

 

そのキャバクラは「風営法違反」違法営業の疑いで、警察によるガサが行われた。

 

だが、そこにはノリちゃんの姿は既に無かった。

 

 

 

県外逃亡。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

そんなことがあってから、

私はノリちゃんには会っていない。

 

 

ノリちゃんが消息を絶ってから、およそ20年が経過しました。

 

その間には、

婆ちゃん、

セツ叔母さん、

マート叔父さん、

 

ノリちゃんの事を親身になって心配していた人たちが亡くなった。

葬式がある度に姉であるノブちゃんと顔を合わせる機会があったけれど、依然としてノリちゃんの消息は解らないままだったた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

ここで、

ふりだしに戻ると、

 

最近になってから、ノブちゃんからメールが頻繁にあった。

そのメールにはこう書かれていた。

 

ノブちゃん:

「ノリが生きているの。今まで確信が持てなかったから言えなかったけれど。」

 

 

 

◆◆◆◆

 

私は……

ノブちゃんにこう返信を打った。

 

 

 

「良かったね。

 

でもさ、

もう、オレには関係ない。

すべてが、今更………なんだよね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノリちゃん(完)

 

 

 

 

 

 


ノリちゃん⑤ (霊感)

2022-07-01 21:29:35 | 日記
  •  

 

 

 

◆◆◆◆

 

つづきから……

 

短気で気の強い私のオフクロ。

 

でも、そんなオフクロは本当に辛抱強く婆ちゃんの介護を続けていた。

寝たきり老人の介護。

 

婆ちゃん:

「マ〜ちゃ、マ〜ちゃ。。。」

 

うめき声のように、毎日、婆ちゃんは何度もオフクロを呼ぶ。

 

 

オフクロ:

「もう( ´Д`)=3

今度は何?」

 

 

 

そう言いながらも、

オムツを取り替えたり、婆ちゃんを車椅子に乗せて自宅近くを散歩したり。

スプーンを使ってお粥を食べさせたり。。。

そんな毎日を送っていた私のオフクロ。

 

 

そんなオフクロがある日、 

私に妙な事を言ってきた。

 

 

 

オフクロ:

「あのさ、

婆ちゃんさ、変な事ばかり口走ってるのよ。」

 

 

私:

「何が?」

 

 

 

オフクロ:

「ヒロが、ヒロが……

女に騙されて………

家が取られちゃう……」

 ……て。

 

婆ちゃんが言うのよ。何回も、ずっと。

 

 

 

私:

「なに???

それ?

ヒロ叔父さん、とっくに死んでるし。」

 

 

オフクロ:

「いや、

そうなんだけどね、

何回も婆ちゃんそんなこと言うからさ。気になっちゃってさ………」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

数日後……

私は知らなかったけれど、オフクロは姉であるセツ叔母さんを連れて、二人でノリちゃんが一人で暮らしている和菓子屋へ様子を見に行っていたようだった。

 

すると!!

そこでは思いがけないことが起こっていた。

和菓子屋。そこはオフクロの実家でもあり、婆ちゃんと爺ちゃんが共に建てた家。

とんでもない事が起こっていた!!

 

 

 

家の外に出された古びた厨房機器。テーブルの数々。

それらを、業者らしき人たちが運び出していた。

オフクロはすぐにその業者に声をかけた。

 

 

オフクロ:

「な、なにをしてるんですか!?貴方たちは。

ここは私の実家で、私の甥っ子がまだここには住んでいると思うんですけど!!!」

 

 

 

業者:

「あー、そうでしたか。

この物件は売却されたんですよね。数日前に。」

 

 

 

オフクロ:

「は?

はい???」

 

 

そこにはノリちゃんの姿は無かった。。。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

この事を、帰ってきたオフクロから聞いた私は、

 

 

「霊感……って、ホントにあるんだな。」

 

 

……などと、妙に呑気に考えてしまった。

 

 

 

 

つづく………


ノリちゃん④ (豹変)

2022-07-01 19:30:02 | 日記

 

◆◆◆◆◆◆

つづきから……

 

 

ヒロ叔父さんの容態は少しづつ悪化していった。

 

末期の癌。

入院を余儀なくされた。

 

 

その頃、ノリちゃんはトラックで食品などを配送する会社で仕事に従事していた。

身長160cmほど、華奢な体つき。

だが、その頃のノリちゃんは一生懸命働いていた。

 

しかし、

今となっては「余計な1言」としか思えない事を言う人物が居た。

マート叔父さんの嫁のフク叔母さん(仮名)

 

 

フク叔母さん:

「ノリちゃん。

仕事も大事だと思うけど。今は仕事なんかしてる場合じゃないんじゃない?

仕事辞めて、お父さんの看病をしてあげなよ。」

 

 

 

ノリちゃんは会社を辞めた。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

ノリちゃんの母、自殺したミチコ叔母さんは金銭面ではシッカリした人だった。

無駄なお金は一切使わない。

「外食なんてとんでもない」……というような人だった。

なので、夫であるヒロ叔父さん、子供たち、そして自分、生命保険はシッカリと掛けてあった。

 

なのでノリちゃんは仕事を辞めたからといっても、ヒロ叔父さんの入院費や自分の生活費で困るような事はなかった。

 

仕事を辞めて父の看病……と言っても、一日中病院に居たところで出来ることは限られている。

ノリちゃんは毎日、スロ屋へ入り浸るような生活を送るようになる。

この私も、当時はスロ中毒だったので、スロ屋の薄暗い中、「ハクション大魔王」を打っているノリちゃんの姿を何度か目撃していた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「ヒロ叔父さん、あと数日の命。」

 

そう連絡を受けた我が家。

オフクロ、私は病院へと向かった。

 

 

病室に入ると、ベッドの傍らで椅子に座っていたノリちゃんが居た。

ヒロ叔父さんの姿を見て驚愕した私。

 

身長は低かったけれど、恰幅が良かった(腹の出た)ヒロ叔父さん。

だけど、病室のベッドに横たわっていた叔父さんはまるで、「スズメの丸焼き」のような姿だった。

 

皮膚はドス黒く変色、骨と皮だけのような姿。

 

 

ノリちゃんは、ただ、

言葉は発せず、ただ虚ろな表情で死にゆく父を見守っていた。

 

 

 

数日後……ヒロ叔父さんはこの世を去った。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

かつては賑やかに暮らしていた和菓子屋の家族。

 

しかし、

そこに残ったのはノリちゃんだけ。

 

 

一人。

 

 

 

 

仕事も辞め、父も居なくなったノリちゃん。

スロ屋通いは続いていた。

 

 

 

 

ヒロ叔父さんが亡くなってから、半年ほど経った頃だろうか。

一人ぼっちになってしまったノリちゃんの事が気になり、私は久しぶりに和菓子屋へ出向いてみた。

チャイムを鳴らすとノリちゃんが扉を開いてくれた。

薄暗い部屋の中へ入ると、もう用済みの厨房器具、新聞紙、食べかけのコンビニ弁当、ペットボトルなどが散乱していた。

 

 

 

私:

「久しぶり、ノリちゃん。最近どうしてるかと思ってさ。」

 

 

 

ノリちゃん:

「んん?

まぁ、ボチボチ。」

 

 

 

私がノリちゃんにそう尋ねても、ハッキリとした返事は返って来なかった。

 

 

そこに居たのは私が知っているノリちゃんではなかった。。。

 

 

 

そこには、かつてのノリちゃんとはまるで別人。チンピラかヤクザのような眼、虚ろな表情をしたノリちゃんが居た。

 

 

 

私は会話をするような気になれず、

すぐにその場を後にした。

 

 

 

 

つづく………