東京女子医科大学(東京都新宿区)の新校舎建設を巡る背任事件で、別の建設工事でも同大に約1億7000万円を不正に支出させたとして、警視庁は3日、同大元理事長の岩本絹子容疑者(78)(江戸川区東葛西)を背任容疑で再逮捕した。支出先の建築士から現金で約5000万円が岩本容疑者に渡っていたといい、還流した現金の総額は約8700万円に上るとみている。
捜査関係者によると、岩本容疑者は2020年3月~21年9月、同大付属病院「東医療センター」の足立区移転に伴う新病棟(現・足立医療センター)建設工事で、1級建築士の男性(68)に業務実態のない「建築アドバイザー報酬」名目で計16回、同大から現金を支払わせるなどして、計約1億7000万円の損害を与えた疑い。
建築士は20年5月~22年3月、自身の口座に送金された約1億5200万円のうち、住民税などの支払い分を除いた手取り額の3分の2に当たる約5000万円を出金。岩本容疑者の直轄部署「経営統括部」次長だった元職員の女性(52)に現金で戻し、元職員が岩本容疑者にその全額を手渡ししていたという。
岩本容疑者は、新宿区の新校舎2棟の建設工事を巡り、18年7月~20年2月、同様の手口で同大に計約1億1700万円の損害を与えたとして、1月13日に背任容疑で逮捕された。
この工事を巡っては、岩本容疑者が元職員の女性に、施工費(約128億円)の1%(約1億円)を建築士に支払い、3分の2を戻させるよう指示。建築士の手取り額の3分の2に当たる約3700万円が、岩本容疑者に還流したことがわかっている。
新病棟建設工事では20年3月、施工費(約264億円)の0・7%を建築士に支払う 稟議(りんぎ) 書が同大理事会に提出され、承認されていた。警視庁は、岩本容疑者が新校舎の際と同様、元職員に指示していたとみて、詳しい経緯を調べている。
岩本容疑者は、同大の「施設将来計画諮問委員会」の委員長として、校舎や病棟の建設を主導していた。警視庁は、岩本容疑者が還流で得た現金をブランド品の購入などに充てたとみている。