220909 「国葬儀」議論がバカバカしくなってしまった英国王室の訃報
再掲 by菅野完 2020/9/8 エリザベス女王ご不例。
9/9(金)菅野完 朝刊チェック:今日も声が出ません。休ませて
エリザベス女王崩御により安倍氏の国葬(笑)となった
安倍国葬をめぐる「岸田vs泉」にがっかり〜お互いに株を落とした閉会中審査
2022年9月9日 鮫島浩
岸田文雄首相が安倍晋三元首相の「国葬」について説明する国会の閉会中審査が9月8日に行われた。
内閣支持率を急落させた主因である「国葬」について岸田首相が何を語るのか、「国葬」に対する姿勢がはっきりしない立憲民主党の泉健太代表がどう追及するのか、岸田vs泉の直接対決に注目したのだが、中身の薄い質疑が続き、トコトンがっかりした。
内閣支持率の急落に悩む岸田首相が支持率回復にむけて勝負に出るとしたら、この日の閉会中審査で「国葬撤回」をサプライズ表明すればよかっただろう。
直前の9月6日に「SmartFLASH」が「岸田首相は当初、内閣と自民党の合同葬とする方向で検討していたが、麻生太郎副総裁が『これは理屈じゃねんだよ』と電話で国葬実施を迫った」と報じていた。
岸田首相の本意は「国葬」実施ではなく、麻生氏に押し切られたことで支持率急落を招いたことに忸怩たる思いがあるに違いない。麻生氏との電話でのやりとりが外に漏れたこと自体、岸田首相(あるいは首相周辺)がキングメーカーの麻生氏へ不満を募らせていることを示唆しているといえるだろう(「国葬」をめぐって岸田政権中枢で何が起きているかについては稿を改めて考察したい)。
だとすれば、「国葬」を撤回するのは、この日の閉会中審査が最後のチャンスだった。岸田首相が政権の生みの親である麻生氏と決別し、自立の道を歩む好機でもあったのだ。
派手な立ち回りの苦手な岸田首相がそのような大胆なサプライズに踏み切る可能性は極めて低いと思っていたが、「ひょっとすると・・」というかすかな期待感を抱きながら、私は国会中継をみたのである。
淡い期待は見事に裏切られた。国葬を実施する理由について、岸田首相は①安倍政権は歴代最長だった②外交や経済で功績は大きい③諸外国が弔意を示している④選挙期間中の非業の死であるーーなどと従来の説明を繰り返すばかりで、国民の多数が反対するなかでなぜ強行実施するのか、安倍氏と旧統一教会の関係に多くの国民が疑念を募らせているなかで理解をえられるのかーーといった根本的な疑問については答えずじまいだった。
何のために自分から手を挙げて閉会中審査に挑んだのか、この程度の答弁で支持率を回復できると思ったのか。岸田首相の政治感覚は首相官邸に閉じこもっている間にかなり世間とずれてきたのだろう。
岸田首相が「丁寧な説明」の実践としてアピールしたのは、警護や接遇の予算の見積もりを提示するということくらいだった。細かな予算の内訳を示すことが「丁寧な説明」と思っているとしたら、これほど国民を愚弄しているものはない。
「丁寧な説明」とは、一方的な説明を繰り返すことではなく、「国民の多くの理解を得る」ことである。それを忘れては、国会で空疎な答弁を繰り返して「説明した」と開き直るばかりだった安倍氏と同じではないか。
これに対する立憲民主党の泉代表の追及も極めて甘かった。
泉代表はそもそも国葬に反対といいつつ、開催されれば出席する可能性があるという、極めてあいまいな政治的態度を示し、世論から猛烈な批判を浴びていた。
その姿勢を転換して「岸田首相に直接、国葬の意義をただしたが、説得力のある説明を得られなかった」として国葬欠席を表明する絶好の機会が、この日の閉会中審査のはずだった。私はてっきり質疑の最後に国葬欠席を表明すると思っていた。
ところが、泉代表は冒頭から安倍氏への哀悼の意を重ねて強調したうえ、国葬そのものに反対するというよりも国葬実施を決定した経緯がずさんだったという「手続き論」を展開した。三権の長や各党党首の意見を聞かずに国葬を決定した手続きが誤っているーーという論法である。
たしかにそのとおりだ。しかし国民の関心とはずれている。国民の多くは国葬を実施すること自体に反対なのだ。岸田首相が国会や各党への手続きを経ていたら、泉代表は国葬にあっさり賛成していたのではないかという疑念が拭いきれない。
このやりとりを観ていて、泉代表は心の底から国葬に反対している(国葬実施に怒っている)のではないことが伝わってきた。できれば国葬に出席したいのだろう。だが、世論が猛反発するなかで、賛成はできない。そこで手続き論を持ち出して反対の立場に回ったにすぎないーー多くの国民はそう見透かしたのではないか。
その政治信念のなさこそ、立憲民主党の最大の欠陥だ。
案の上、泉代表は最後に国葬欠席を表明することなく、岸田首相の今後の対応をみて出席か欠席かを決めるという、いかにも受動的なかたちで質疑を終えた。岸田首相が今後、対応を大きく変えることなどあり得ないのに。
世論の反発に同調して反対するけれども、国家権力の決定に異論を唱えて批判勢力とみられることは避けたいーーいかにも優等生的な立ち回りこそ、泉代表の政治家としての本質であり、立憲民主党に政権奪取のリアリズムを感じない最大の理由である。この日の質疑で泉代表の凡庸な政治家像を再確認したのは私だけではあるまい。
泉代表も岸田首相と同様、ダメなリーダーのイメージを挽回する絶好のチャンスを逃したのである。
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配信 中日スポーツ