【エルサレム時事】停戦下のパレスチナ自治区ガザでは、イスラエルの軍事作戦で弱体化が進んだイスラム組織ハマスが存在感を取り戻しつつある。イスラエルや米国は「ハマス抜き」の戦後の統治を模索するが、ガザに自治政府の権限が及ばない状況に変わりはない。治安も回復傾向にあり、今後もなし崩し的にハマスの支配が続く可能性がある。
ガザ中部ブレイジの住民は通信アプリでの取材に応じ、軍事作戦継続中は潜伏していたハマスの戦闘員が「公然と活動を始めた」と明らかにした。19日に停戦が発効して間もなく、ハマスが小規模なパレードを行って、停戦に持ち込んだことを「勝利」と誇示したという。
その後、戦闘員に代わり、ハマスが主導する「ガザ政府」の警官の姿が目立つようになった。警官は地域を巡回したり、交通整理を行ったりしているが、住民は「警官の大半はハマスの軍事部門と関わりがある」と指摘している。
ガザでは停戦前、ならず者が支援物資を積んだトラックを襲撃し、高値で転売して利益を上げる行為が相次いでいた。しかし、現地報道によれば、停戦後は警官がトラックを警備し、略奪は発生していない。ガザ政府の報道担当者はロイター通信に「治安の空白を防ぎたい」と語った。
一方、通信アプリ「テレグラム」には、路上に横たわる男性3人にハマス戦闘員が発砲する動画が投稿された。3人はイスラエルの協力者と見なされたという。こうした処刑行為は2007年以降のハマスによるガザ統治下で繰り返されており、住民の「反ハマス行為」に対して容赦しない姿勢は変わっていないようだ。
ガザ政府による復旧作業や支援物資の配給も始まっている。イスラエル軍の激しい攻撃を招いたハマスに対する支持は低下しているものの、「あえて抵抗する者は誰もいない」(住民)のが現状だ。
【エルサレム共同】イスラム組織ハマスは25日、パレスチナ自治区ガザの停戦合意に基づいてイスラエルがガザを南北に隔てる回廊を開放せず、住民の北部帰還が実現しなかったとして「履行を遅らせている」と批判した。イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスが拘束する民間人女性1人の「解放が調整されない限り、北部への帰還を許可しない」と主張した。
合意内容によると、ガザ住民の北部への帰還は25日に始まる予定だった。パレスチナ通信によると、イスラエル軍は、北部に帰還するためガザを南北に隔てる「ネツァリム回廊」の開放を待っていた住民に発砲し、1人が死亡、子どもを含む複数人が負傷した。イスラエル軍は「脅威」に対して警告射撃をしたとし「危害が及んだという報告はない」と主張した。
イスラエルのメディアによると、ハマスが25日に解放した人質4人の中には当初、女性民間人1人が含まれる想定だったという。結局この女性は解放されず、イスラエル側は「義務を果たしていない」と訴えていた
[エルサレム/カイロ/ガザ 25日 ロイター] - パレスチナ自治区ガザでの停戦合意を巡り、イスラム組織ハマスは25日、イスラエルの女性兵士4人を解放した。イスラエルも拘束下のパレスチナ人200人を釈放した。
19日の停戦発効後、身柄交換は2回目となる。
女性兵士は家族と再会し、ヘリコプターでイスラエル中部の病院に運ばれた。イスラエル軍が公開した動画では笑顔と涙で両親と抱き合う姿が映っている。
ハマスが公表したリストによると、200人のパレスチナ人の中には、数十人を殺害した攻撃に関与した罪で終身刑に服していた被拘束者も含まれている。
一方、イスラエルは予定されていた民間人の女性人質が解放されなかったとして、ガザ北部へのパレスチナ人帰還計画を停止すると表明した。
ハマス側は来週に人質を解放するとし、北部帰還の停止は停戦合意違反だと訴えた。
目撃者によると、イスラエル軍は北部に向かうため路上に集まっていた群衆の近くで発砲し、大混乱を引き起こした。
医療関係者によると、イスラエル軍によると思われる発砲で群衆のうち1人が死亡、2人が負傷した。
イスラエル軍は群衆付近で警告のため発砲したが、負傷者については把握していないと説明した。
ハマス、人質4人解放 イスラエルもパレスチナ人200人釈放
【1月26日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区での停戦合意に基づき、イスラム組織ハマスは25日、人質にしていたイスラエル人4人を解放した。イスラエルも、拘束していたパレスチナ人200人を釈放した。今回の停戦合意に基づく身柄交換は2度目。
19~20歳のイスラエルの女性兵士4人は、ガザ市で覆面のハマス戦闘員に囲まれながらステージに上がって手を振り、笑顔を見せ、親指を立てた。4人は赤十字国際委員会(ICRC)に引き渡された後、イスラエルに移送され、「両親と再会した」と軍が発表した。
4人は1年3か月以上に及ぶガザでの拘束を経て、同国の商業中心地テルアビブ郊外の病院に到着。「人質広場」とも呼ばれる広場に設置された大型スクリーンで人々が解放の様子を見守る中、歓喜の涙や拍手、大歓声が上がった。
一方、イスラエルの刑務所当局は、パレスチナ人200人を釈放し、その一部は国外に退去させたと発表した。
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府の拠点ラマラでは、釈放されたパレスチナ人がバスで到着すると、群衆が歓喜に沸いた。
釈放された一人、アザム・シャラルタさんは「私の状況は本当に悲惨だった。残してきた兄弟たち全員が解放されるよう神に祈る」と、囚人服姿で語った。(c)AFP