薬物で妻の意識を失わせ、インターネットで募った男性50人に強姦させたとされる事件で、フランスの検察当局は25日、元夫のドミニク・ペリコ被告(72)に禁錮20年を求刑した。
被告は起訴内容を認めている。検察は今後10年間の治療も求めた。
評決と量刑言い渡しは来月となる見通し。
禁錮20年は、フランスにおける強姦罪の最高刑。この日の法廷でロール・シャボー検事は、「長い年数だが、(中略)繰り返し実行された犯行の重大さを考えると、短すぎる量刑でもある」と述べた。
同検事はまた、裁判で実施された精神科医による被告の鑑定に言及。被告には「複数の性的逸脱」が見られるとし、「妻を服従させ、辱め、堕落させたいという欲望を通して快楽を得ようとした」と主張した。そして、刑期を終えて出所する前に再鑑定されるべきだとした。
ジャン=フランソワ・マイエ検事は、この裁判が社会を震撼させたと指摘。問題となっているのは「有罪か無罪かではなく」、「男女の関係を根本的に変えるという点だ」と訴えた。
マイエ検事はさらに、被告の妻だったジゼル・ペリコさん(71)の「勇気と尊厳」をたたえた。ジゼルさんは9月に裁判が始まって以来、審理のほとんどで法廷にいた。
ジゼルさんは匿名を放棄し、公開での裁判を選んだ。そのことでこの事件は大きな関心を呼び、強姦にまつわる社会の風潮をはじめ、性的同意、化学物質による服従(抑圧・暴行の目的で薬物を与える行為)について、国民的な議論が起こった。
他の被告の多くには禁錮10年求刑
裁判が開かれてきた仏南東部アヴィニョンの裁判所の周辺ではこの日朝、「全員に20年の刑を」と書かれたポスターがあちこちの壁に貼られていた。
だが、このきわめて異例な事件で裁かれているぺリコ被告以外の被告50人に、そうした長期刑が言い渡される可能性は低い。
検察によるこの日の求刑で、ペリコ被告の禁錮20年の次に長かったのは、共同被告のジャン=ピエール・マレシャル被告の禁錮17年だった。同被告はジゼルさんをレイプした罪には問われていないが、ペリコ被告の助言と指示を受けて自分の元妻に薬物を投与したうえでレイプしたと認めている。
これまでの裁判では、被告50人の大半が強姦罪を否認。ぺリコ被告に自宅に招かれたとき、ジゼルさんの意識がなかったことに気づかず、レイプしていると「知る」ことができなかったので、有罪にはならないと主張した。
これに対しシャボー検事は、「今は2024年で、彼女が何も言わなかったから同意していたなどという主張はもう通らない」と反論した。
検事はさらに、ジゼルさんが置かれていた状況も、その行動も、「これらの男性たちに、無気力な状態にいた彼女が性行為を受けることに同意したと思わせることにはならなかった」と付け加えた。
被告50人の弁護団は今後3週間にわたり、最終弁論を行う。評決は12月20日までに出される見通し。
この日は「女性に対する暴力撤廃の国際デー」だった。ミシェル・バルニエ首相はそれを記念する演説でこの裁判に触れ、フランスの女性に対する暴力との闘いにとって、分水嶺となるものだと述べた。
男性支配社会の変化が必要と
これまでの裁判では、ジゼルさんも証人となり、「臆病者たちの裁判」と被告らを非難。同時に、「レイプを大したことではないとする」フランスの「マッチョで、男性支配の社会」が変わる必要があると訴えた。
被告の娘カロリーヌ・ダリアンさん(45)も出廷し、自分の半裸写真が被告のパソコンから見つかったと2020年に警察に知らされ、人生が「止まった」と証言。被告に向かい、「犬みたいに孤独に死ねばいい」と言葉を投げつける場面もあった。
ダリアンさんは自分も被告によって薬物を投与され、虐待されたと主張している。被告はこれを否定している
被告は2020年9月、ショッピングセンターで女性3人のスカートの中を盗撮しているところを警備員に見つかった。
警察は捜査の過程で、意識を失っているように見える当時の妻ジゼルさんの画像と動画数百点を被告のパソコン内に見つけた。
これらには、夫妻の自宅で行われた数十回もの暴行の様子が写っていたとされる。虐待は2011年に始まったとされる。