キングメーカー争いも過熱 石破茂総裁誕生に岸田首相動く?高市氏推し麻生太郎氏はひとり負け?
日刊スポーツ新聞社 2024/9/28
自民党総裁選は27日に投開票され、決選投票の結果、石破茂元幹事長(67)が高市早苗経済安保相(63)を逆転で破り、第28代総裁に選出された。5度目の挑戦での悲願達成。1回目投票で46票だった議員票は、決選投票で189票に激増した。今も麻生派を束ねる麻生太郎副総裁(84)が高市氏支援で動くとの情報が流れる中、新たなキングメーカーを目指す岸田文雄首相(67)が旧岸田派をまとめ、石破氏を押し上げたと見る向きも。麻生氏の影響力低下は必至だが、結局は派閥が水面下でうごめく権力闘争の末、9人が乱立した前代未聞の大乱戦総裁選は幕を閉じた。
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石破氏が初めて味わう総裁選の勝利は、大逆転劇だった。1回目の投票は党員票こそ高市氏と1票差の108票だったが、「同僚に人気がない」といわれる懸案の国会議員票は46票と3位に沈んだ。トップの高市氏と26票差がつき、党内では「石破さんは厳しい」との声も出た。
しかし決選投票で石破氏は国会議員票で高市氏を16票差で逆転。215票対194票と21票の僅差とはいえ劣勢をひっくり返した。
26日夜以降、石破氏と「犬猿の仲」の麻生氏が、決選投票で派閥として高市氏を支援するとの情報が流れた。「石破氏憎し」で高市氏支援で派閥をまとめ「勝ち馬」に乗ろうとしたとみられる麻生氏だが、関係者によると、岸田文雄首相の指示で旧岸田派のまとまった票が、石破氏に流れたとという。「岸田首相は、麻生氏の支援の確約を取れずに今回の出馬見送りに追い込まれた。麻生氏が高市氏を担いで、あわよくば今後もキングメーカーとして君臨しようとすることに、反発があったのではないか」(関係者)。
さらに石破氏支持票が増えた背景には、時にタカ派的な言動で知られる高市氏への懸念から「バランス感覚という良識がはたらいた」(中堅議員)面もあったとみられる。しかし最後は結局、派閥がうごめいた。岸田首相はともかく、安倍、菅、岸田政権でにらみをきかせてきた麻生氏の影響力低下は必至だ。小泉進次郎元環境相(43)を全面支援し、麻生氏と「キングメーカー対決」といわれた菅義偉前首相(75)は、石破氏と関係は悪くない。「麻生氏のひとり負け」(党関係者)との声もある。
石破氏は、4度目の総裁選の後、1度は「もう出るのはやめよう」と決めたが、激動する国際情勢や災害多発など、国民生活に多くの問題を抱えた日本の現状を踏まえ、「最後の戦いに」と退路を断って臨んだ。総裁としての初会見では「国会議員を38年やっているが、こんな総裁選は初めて」と、結果が読めなかった戦いを振り返った。
今後の焦点になるのが衆院解散の時期だ。「野党と論戦を交わし(国民に)なるべく早く審判を受けなければならない」と、国会論戦後の解散を示唆した。その後の出演したBSフジの番組では「年を越えて、というのは想定しにくい」と述べ、年内に行う考えを示した。
人事については白紙としたが、幹事長は「選挙に強いことが重要」と述べ、派閥単位での起用は否定。総裁選で戦った他の8人の要職起用については「それぞれ、最もふさわしい役職にお願いするのは当然のことだ」と述べた。
ただ、裏金事件への国民の評価は、総裁が代わっても変わらない。「日本をもう1度、みんなが笑顔で暮らせる安全で安心な国にする。全身全霊を尽くす」と訴え、総裁のいすにも初めて座った石破氏だが、悲願達成後は、中身が問われる厳しい現実が待っている。【中山知子】