衆院選が15日に公示される。スピード解散に踏み切った石破茂首相は9日、“裏金議員”12人を非公認にすると発表し、自民党内は混乱が続いている。各選挙区にどんな影響が出るのか。東京・南関東の注目選挙区について、政治ジャーナリストの野上忠興氏と角谷浩一氏に聞いた。
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【東京ブロック】
7区には、派閥からのキックバック822万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことが発覚した丸川珠代氏が参院からくら替え出馬する。立憲民主党の新代表・野田佳彦氏は9月、同区の街頭で、「自民党自身が厳しい処分を行うべきだった。それをやらないならば、有権者がペナルティーを与えるしかない」と訴えた。
丸川氏は、2010年に国会で「愚か者めが。このくだらん選択をしたバカ者ども絶対忘れん」という過激な野次を飛ばし、炎上騒ぎを起こしたことでも知られる。
「丸川氏はこれまでの高圧的な言動の数々のせいで、女性政治家のわりに女性からの人気が低い」(野上氏)
と両氏とも丸川氏の当選は厳しいと踏む。
8区には、前回の衆院選で自民党の石原伸晃氏を破って初当選し、先の立憲代表選への出馬でも記憶に新しい吉田晴美氏が立候補している。自民党からは同じく女性候補の門寛子氏が出馬するが、野上、角谷両氏ともに吉田氏に軍配をあげる。
「吉田氏はもともと無名の議員だったけれど、代表選に出て一気に知名度を上げた。若々しい印象で、弁舌もしっかりしていて、好感度は高いはず」(野上氏)
「8区はリベラル層が強い杉並区なので、吉田氏が優勢」(角谷氏)
■25歳の“論客”自民候補が殴り込み!
4月の補欠選挙で熱い戦いが繰り広げられた15区は、現職の立憲・酒井菜摘氏のほか、補選で2位だった元格闘家の須藤元気氏、兵庫県の斎藤元彦前知事のパワハラ疑惑に対する日本維新の会の初動に納得できず離党したばかりの金沢結衣氏など、注目候補が再集結する見通しだ。
そこに殴り込みをかけるのが、公募によって自民候補に決まった25歳の新星、大空幸星(こうき)氏。NPO法人「あなたのいばしょ」理事長で、Z世代の論客としてテレビ番組にも引っ張りだこだ。政治家としてのポテンシャルは未知数だが、野上氏によるとまだそれほどの存在感は示せていないといい、激戦の補選を勝ち抜いた酒井氏が再選するのが順当だと見る。
一方の角谷氏は、補選からの下剋上もあり得ると指摘する。
「酒井氏は、補選では辻元清美氏、蓮舫氏、岡田克也氏ら立憲幹部が総動員で応援しましたが、今回はそうもいかない。15区にあたる江東区を地元にもつ須藤氏が有利でしょう」
■「とにかく評判が悪い」萩生田氏
24区の八王子市は、安倍派5人衆の萩生田光一氏が強固な地盤を築いており、前回の衆院選では2位の候補に10万票以上の差をつけ圧勝した。しかし、政治資金収支報告書への2728万円の不記載が発覚した“裏金議員”として、今回、自民党からの公認は得られない。
とどめの一撃となったのが、9月17日付の朝日新聞の報道だ。「安倍晋三首相(当時)が2013年の参議院選挙直前、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の会長らと自民党本部の総裁応接室で面談していたとみられる」と報じられ、掲載された「面談時とされる写真」には、はっきりと萩生田氏の姿が写っていた。
そんな萩生田氏に対し、立憲がぶつけてきたのは、旧統一教会問題を長年追ってきたジャーナリストで元参院議員の有田芳生氏だ。有田氏は昨年4月、安倍元首相死去に伴う衆院山口4区補選で落選したばかりだが、対萩生田氏であれば有田氏に分があると、野上氏は見る。
四面楚歌の状況を受け、本人にも十分焦りはあるようで、
「萩生田氏の周囲からは、『萩生田さんは口を開くたび、俺は落ちるんだ……とぼやいていて、うるさくてしょうがない』といった声が聞こえてきます」(野上氏)
とはいえ、何が起こるか分からぬ選挙戦。当選の可能性もゼロではないが、いずれにせよ待っているのはいばらの道だろう。
「萩生田氏は、安倍派の裏金問題や旧統一教会との癒着以外にも、自民党東京都連にまつわる政治資金規正法違反の疑いが浮上してきています。まさに疑惑のオンパレードで、今回選挙に勝っても、この先、要職に就くのは難しいでしょう」(角谷氏)
■処分されたのに公認を得た“安部派5人衆”
【南関東ブロック】
注目の“裏金議員”は、千葉3区にもいる。萩生田氏と同じく安倍派5人衆である松野博一氏は、1051万円の不記載により党役職停止1年の処分を受けたが、政治倫理審査会で弁明したことが評価され、党の公認を獲得した。
対抗馬の立憲・岡島一正氏との激しい戦いが予想されるが、角谷氏は「公認をもらったことでピンチは切り抜けた」とみる。野上氏も「前回の衆院選では岡島氏に4万票以上の差をつけて勝利したので、今回も逃げ切るのでは?」と松野氏優勢の見方だが、「共産候補が出馬を取りやめて野党一本化が実現すれば、岡島氏にもチャンスはある」と釘をさす。
(AERA dot.編集部・上田耕司、大谷百合絵)
自民“第2の裏金”問題で鳥取県連代表の石破首相と神奈川県連代表の小泉氏らを東京地検に刑事告発
配信 SlowNews
自由民主党の鳥取県支部連合会(鳥取県連)と神奈川県支部連合会(神奈川県連)で浮上した“第2の裏金”とも言うべき疑惑に関連し、鳥取県連代表の石破茂首相と、神奈川県連の代表で自民党選挙対策委員長である小泉進次郎衆院議員らが10日、政治資金規正法違反容疑(不記載、虚偽記載)で東京地検に刑事告発された。 【写真】自民“第2の裏金”なのか。出所不明のカネはこうして見つかった
告発したのは神戸学院大学の上脇教博之教授。 一連の疑惑は、調査報道グループ・フロントラインプレスの取材で明るみになった。 それによると、鳥取県連の関係では、県連から交付金を受け取った記録がある支部のうち、少なくとも22支部の計30件、総額128万8710円については、それらに対応する支出の記録が県連の政治資金収支報告書に記載されていなかった。そのため、支部側は“出所不明”の資金を県連から受領したかたちになっている。 同様に神奈川県でも、少なくとも計13支部が合わせて51件、総額698万7850円を神奈川県連から受け取ったにもかかわらず、神奈川県連の収支報告書にはそれらに対応する支出の記録がなかった。
こうしたことから、鳥取・神奈川両県の自民党支部が受け取った政治資金は、県連の帳簿に載っていないカネ、すなわち“裏金”だった可能性が出ている。 東京地検への告発状は「通常、『県支部連合会』から『交付金』を受けた側が虚偽記入することは考えられない」とし、交付金をもらった側の支部が虚偽記載をすることはないはずだと指摘。鳥取・神奈川の自民党県連は支部に交付金を渡したにもかかわらず政治資金政治資金に支出の事実を記載しなかったと結論付け、政治資金規正法の虚偽記載や不記載に該当するとしている。
告発対象には、それぞれの県連の会計責任者と事務担当者の計4人も含まれているが、告発状は一連の虚偽記載・不記載は会計責任者だけでは判断はできないと指摘。鳥取県連代表の石破首相、神奈川県連代表の小泉選対委員長が主導したのではないかと結んでいる。 上脇教授は「フロントラインプレスの粘り強い調査には敬服した」としたうえで、「県連の支出が収支報告書に記載されていないということは、その原資も記載されていないことになる。裏金がつくられていることは間違いない」と強調した。さらに「自民党の2つの県連で同じような裏金づくりをしているとなると、全国の都道府県連でこの手口が共有されている可能性がある。この悪質な事件を放置でききないので告発した。東京地検特捜部はぜひ真相を明らかにして刑事事件として立件してほしい」と語っている。 スローニュースでは、自民党鳥取県連と、神奈川県連で明らかになった出所不明の交付金について詳しく報じている。
毎日新聞2024/10/1 19:20(最終更新 10/1 19:20)263文字
総務相に就任した村上誠一郎氏(72)は1日、石破茂内閣の印象について記者団に問われ、「前任者の『負の遺産』をどう解消しながらやっていくのか、非常に難しいなと心配している」と述べた。
具体例として自民党派閥の裏金事件や旧統一教会問題などを挙げた。株価の乱高下や急激な円安についても「残念ながらアベノミクスの、ある意味では負の遺産だ。そういうものに対応しながらやっていくのは非常に厳しいと思う」との見方を示した。