「共謀罪」がどのように海外メデアでとりあげられているか、ルモンド紙・フランスを内田樹氏が訳出してくださいました。
2017.05.29
ル・モンドの記事から「共謀罪」について
ル・モンド、5月27日
テロリズムと組織犯罪を防止するためという口実の下に、日本政府はきわめて問題の多い法律的な利器を準備している。あらゆる形態の「謀略」に対するこの法案についての採決が5月23日に衆院で行われ、参院では法案は6月中旬に採決される予定である。後略)
>この法律が施行されると、テロリスト的あるいは犯罪的な活動の準備または実現に関与した個人あるいは集団は捜査の対象となる。
安倍晋三首相によれば、2020年の東京五輪に向かってテロリズムとの闘いの枠組みを作りあげることは彼の「責任」だということである。
この法案を通すことは、彼の説明によれば、2000年に国連で採択された国際的な組織犯罪に対する協定の批准のために不可欠だという
>安倍首相が提出した法案は訴追できる277の犯罪リストを含んでいる。
その多くは知的財産権侵害や許可なしの競艇参加とか国有林での植物伐採のようなテロリズムとの関係が見出し難いものである。
>治安維持法採択の前にも政府はこの法律は共産主義者だけを対象にするものだと言明した。
しかし、1930~40年代において治安維持法は全国民に対して厳格な監視を行い、軍国主義の勃興に反対する人々を沈黙させるために活用された。この軍国主義のキーパーソンの一人が戦犯となったのちに1957年に首相となった岸信介(安倍晋三の祖父)である
。この祖父を安倍首相は尊敬している。
>この法案については国連も不安を感じている。
5月18日付の書簡において、国連のプライバシーについての特別報告者Joseph Cannataciは「『計画』と『準備行動』を構成するものの定義の曖昧さゆえに、法案が恣意的に適用されるリスクに対する懸念」を明らかにした。
氏はまた「テロリズムとも犯罪ともいかなる関係も見られない」犯罪のリストが含まれていることに疑義を呈し、「プライバシーと表現の自由の保護に対する不適切な抑圧」のリスクを指摘している。
>しかし、菅官房長官はこの書簡は「まったく不適切であり、われわれは厳重に抗議する」と反論している。驚くべき反応である。というのは、日本は他のことについては国際法の順守をこれまで強く訴えてきていたからである。